——学園の地下にあるメカニカルウィッチ学園第八スタジアム『氷海』にて。
「チャンピオンバディに勝つなんて……焔たちは本当に凄いです……! サターン……! 次は私たちの番ですよ……!」
「はい、お嬢様! ネオンとネプチューンの強さは異次元ですが……それでも、アース博士たちを助けに行くのを認めて貰う為にも、勝ちに行きますよ!」
焔たちのエキシビジョンマッチを見届けた美月とサターンは、隣のスタジアムに移動し、バトルの開始を待っていた。
今回クロノスサターンは、ムーンとサンがムーンユニットとサンユニットを持っていってしまっていた為、唯一手元に残っていたアークユニットを装備していた。全国大会の事件の際に使っていた装備だ。
そして、『氷海』には、そんなクロノスサターンの他に、マリンネプチューン、そして、生まれ変わった『シュテンキャンサー』と『トップレオ』と『ドウジスコーピオ』と『セイレーンピスケス』が立っていた。
シュテンキャンサー、トップレオ、ドウジスコーピオ、セイレーンピスケスの四機は、元のオーガキャンサーとキングレオとステルススコーピオとマーメイドピスケスと基本的な装備構成こそは同じだが、そのシェルエットは大きく変化していた。
すると、咲良が号令をかける様に声を上げた。
『さあ、アンタたち! 新旧生徒会メンバーの意地を見せるわよ!』
『ああ! ハイパーキングレオを超える、俺様たちの最強の機体を見せるぜ!』
『うす! サポートは任せて下さいっす!』
『それじゃあ、
残りの生徒会メンバーも声を上げると、四機はバラバラに分離し始めた。
シュテンキャンサーを核とし、トップレオと合体することで四肢を延長しながら、普通の機体よりも一回り大きな姿になっていく。
そんな中、ドウジスコーピオが機体各部を接続するアタッチメントパーツの役割を担い、さらにセイレーンピスケスが上下真っ二つに分離して上半身を盾に、下半身を剣にすることで、武器となった。
そして、鬼の様な蟹の顔の横に、獅子と蠍の顔を合わせた三つの顔を持ち、さらに人魚の武器を構えた、赤と黄と緑と青の四色が混じり合った、巨大な機体が爆誕した。
『『『『『『『『——合体変形! 『ゾディアックサイン』!』』』』』』』』
ゾディアックサイン。合体前の機体とは全然違う名前だが、確か意味は黄道十二星座だった筈……。
しかし、四機が合体しているせいで、着地と同時に足元の氷がグラグラと揺れ、その一部が割れてしまった。
今回のバトルフィールドの『氷海』は、大半が海を再現した水中に沈んでおり、一応は地上専用の足場となる氷があちこちに内ではいるが、不安定で壊れやすいので、必然的に水中戦を強いられる上級者向けのステージなのだ。
まあ、でも水中戦が得意な歌たちの機体も合体しているし、最悪水中に落ちても多分大丈夫だろう。
そして、全員の準備が整ったことで、ネオンとネプチューンがバトルの開始を宣言した。
『……ん。 言っておくけど……前回とは違って、今回は私たちも普通に動くから……。 せいぜい頑張って……』
『んじゃ♪ せいぜい悪足掻きして見せてね♪ バトルスタート♪』
——バトル開始の合図が聞こえた次の瞬間……足元の氷が全て破壊された。
「ーーッ!?」
「何だと!?」
足場を失ったクロノスサターンと近くにいたゾディアックサインは、そのまま水中に沈んでしまった。
あまりの魔法の発動速度に、美月の一手先の未来が見える目でも対応が遅れてしまった。だけど、同時に魔力が見える目のお陰で、遅れて何をされたのかを把握できた。
バトル開始の長後に、地上専用の足場を破壊して、自らのテリトリーである水中に強制的に引き摺り込むなんて……ネオンたちは間違いなく本気だ……!
そんなマリンネプチューンは異次元の速度で、水中を突き進んで来た。いつものマイペースな彼女たちからは想像ができない程のスピードだ……!
美月はそんなネオンたちを前に、お守りのペンダントを両手で握り締め、勇気のお呪いを唱えた。
「——頑張れ、私……! 頑張りなさい、わたくし……!」
相変わらず、人間人格は応えてくれないが、それでも気の持ち様だ。美月は精霊人格の素の口調から人間人格のお嬢様口調を真似た物へと切り替えた。
そして、世界で一番の相棒であるサターンへと呼びかけた。
「——サターン……! ネオンさんとネプチューンに勝って、わたくしたちが守られるだけの存在じゃないことを証明しますわよ……!」
「はい、お嬢様! 僕たちの強さと覚悟を見せましょう!」
「「——シンクロゾーン!」」
シンクロ率が百パーセントのその先へと至ったことで、人間である美月の
文字通り、二人で一つの存在となり、一心同体、人機一体となる。
「「マジカルスキル! プラネットダーク!」」
そして、続けてクロノスサターンの全身に黒い炎を纏わせ、魔王システムを擬似的に発動させた。
「「マジカルスキル! プラネットファイア!
クロノスサターンはクロノス
『合わせるわ、美月! キャンサー!』
『了解でござる、咲良! サターンを援護するでござる!』
『『——シンクロゾーン!』』
そんな中、咲良たちもシンクロゾーンを発動させた。王牙たちと秀次たちと歌たちはシンクロゾーンを使えないものの、ゾディアックサインの動きが早くなった。
さらに……。
『『マジカルスキル!
ゾディアックサインは合計十本の『鬼神の太刀』と『鬼神の小太刀』をサブアームを使って装備すると、その全てに炎を纏わせた。
さらに、主武装の『ピスケスバスターソード』と『ピスケスシールド』を構えながら突撃した。
『……ん。 無駄……』
『そうそう♪ あたしたちに勝てるのは、あの
『『合体マジカルスキル。
すると、マリンネプチューンは、攻撃を反射する鏡の盾と、相手を取り囲む様に展開した転移門を繋げた防壁を展開して、美月たちの魔法を跳ね返した。
「ーーッ!?」
「チッ!」
『くっ!?』
『やはり手強いでござる!?』
自分たちの魔法を食らったクロノスサターンとゾディアックサインがダメージを受ける中、ネオンたちは躊躇いなく追撃して来た。
『『合体マジカルスキル。
マリンネプチューンは追尾性能を持つ魔法の槍を放って来た。
不味い。あれは回避不可能の魔法だ。
「サターン……!」
「分かっています、お嬢様!」
「「マジカルスキル! プラネットツリー!
それに対し、クロノスサターンは、クロノス
『俺様たちだって黙ってやられないぜ! レオ!』
『ゾディアックサインはハイパーキングレオの力も使えるのであーる!』
『『マジカルスキル! レオキングタイム・
ゾディアックサインは全身に黄金のオーラを纏うと、その余剰のオーラでキングレオとキングイーグルとキングオルカを作り出し、さらにハイパーキングレオへと合体させることで、それを盾にした。
それにより、何とかネオンたちの魔法を防ぎきったが、さっきから防戦一方だ。
クロノスサターンはもう一人の兄の宿った特別な魔石と、アークユニットの魔石の力を、ゾディアックサインはサターンの契約魔法により得た力を四機分合わせた出力を持っていると言うのに……!
その一方で、マリンネプチューンは国から支給された最上位の魔石のリミッターを解除しているが、その出力はこちら側の機体には劣っている。しかし、ネオンの持つ本物の魔女の力がそのハンデを簡単に覆していた。
やはりネオンたちは強い。本物の魔女の力の練度も自分よりも遥かに上だ。
だけど、弱音を吐いてなんかいられない。兎に角、この流れを変えなくては……!
「サターン! もう一度仕掛けますわよ!」
「了解です、お嬢様!」
「「マジカルスキル! プラネットウォーター!
クロノスサターンは、周囲に展開した水を、クロノス
『援護するっす! スコーピオ!』
『了解だ、秀次。 自分たちの意地を見せるぞ』
『『マジカルスキル! スコーピオステルスバレット!』』
ゾディアックサインは、サブアームに装備した『ドウジスナイパーライフル』を筆頭とする火器から一斉にビームを放って、その全てを不可視の攻撃へと変化させた。
そして、スコーピオステルスバレットの援護を受けたクロノスサターンが、マリンネプチューンへと突っ込んだ。
しかし……。
『確かに美月の力は凄い……。 だけど、私には届かない……』
『そうそう♪ 一般人のなけなしの援護があっても、その事実はひっくり返らないよ♪』
『『合体マジカルスキル。
それに対し、マリンネプチューンは、無数の水竜たちに竜巻を起こさせて対処した。
それにより、クロノスサターン諸共、ゾディアックサインが放った攻撃も弾き飛ばされた。
『まだですわ……! サターン……!』
『はい、お嬢様! まだまだこれからですよ!』
『『マジカルスキル! プラネットライト!
クロノスサターンは、クロノス
しかし……。
『『マジカルスキル。
マリンネプチューンはマリン
そして、そこから召喚された海神が、美月たちの魔法をあっさりと撃ち落とした。
『『合体マジカルスキル。
「しまっ……!?」
さらに、
不味い。このままでは詰まされる……!
『美月さん! サターン君! 今助けます! いきますよ、ピスケス!』
『ええ、私たちのとびっきりの魔法をぶつけるわよ、歌!』
『『マジカルスキル!
そんな中、ゾディアックサインは最強のマジカルスキルであるフィールド魔法を発動すると、生み出した分身たちに水の柱を身に纏わせ、巨大な渦を描く様に水中を泳がせ、巨大な大嵐を巻き起こそうとした。
しかし……。
『『マジカルスキル。
マリンネプチューンは、重ね替えする様に最強のマジカルスキルであるフィールド魔法を発動させた。
それにより、バトルフィールドの魔力に宿る精霊たちを従わせ、メカニカルウィッチの根幹である魔力を強制的に取り上げた。
そして、魔力を失ったゾディアックサインはその動きを止めた。
本物の魔女である美月ならこの状況でも多少は動けるが、今は
まさに詰みと言った状況だ。
『……ん。 言った筈……美月よりも遥かに弱いあなたたちなんて論外だと……。 美月の力になれるのは、同類である私だけ……。 あなたたちなんて最初からお呼びじゃない……』
そんな中、ネオンが無慈悲にそう口にした。
『大丈夫だよ、美月……。 美月のことは一生、その檻の中で守ってあげるから……。 だから、美月は安心して私に身を預けて入れば良いから……』
「ね、ネオンさん……」
ネオンの声色は優しいものだったが、それを聞いた美月は無意識の内にゾッとしてしまった。
それに、それではダメなのだ。アースたちを助ける為にも、そして、
だけど、このままでは打つ手がない……!
すると、そんな中、咲良たちの声が聞こえて来た。
『まだよ……! このまま終わってたまるもんですか!』
『そうでござる! 勝負はまだついていないのでござる!』
シンクロゾーンを発動しているおかげが、ゾディアックサインは魔力を奪われて尚、どうにか動こうとしていた。
『無駄無駄♪ ネオンちゃんみたいな特別な力を持たないあなたたちがいくら頑張ったところで、意味なんてないんだから♪ 一般人は大人しく蚊帳の外にいなよ♪』
それを見たネプチューンは煽る様にそう口にした。
しかし……。
『確かに私にはネオンさんたちみたいな特別な力はありません! だけど……私はそれでも諦めたりなんかしません! だって、憧れのネオンさんたちに追いつきたいから! ピスケス!』
『そうね、歌……! 歌の思いを……いいえ、
例え隔絶した力の差があったとしても、歌たちは決して折れることはなかった。
そして……。
『『——シンクロゾーン!』』
歌とピスケスは、ネオンとネプチューンと言う目の前に立ち塞がる大きな壁を一緒に乗り越える為に、シンクロゾーンの扉を開いた。
それにより、ゾディアックサインが動き出そうとする。
『おい、レオ! 咲良たちと歌たちまでもがシンクロゾーンを発動させてんのに、俺様たちはこのままなんて、カッコ悪いよな?』
『そうなのであーる! だから、吾輩たちも今こそ限界を超える時なのであーる!』
『『——シンクロゾーン!』』
さらに、王牙とレオもシンクロゾーンの扉を開いた。
そして……。
『『『秀次(君)!』』』
『『『スコーピオ(殿)!』』』
『ああもう分かってるっすよ! こうなったら俺たちだって、皆と同じ領域に辿り着いて見せるっすよ! スコーピオ!』
『ああ。 自分たちだって、皆には負けていない筈だ……!』
『『——シンクロゾーン!』』
秀次とスコーピオもシンクロゾーンの扉を開いたことで、遂にゾディアックサインが完全な状態となって、動き出した。
そして、そのままクロノスサターンを捕らえている檻を破壊した。
「ありがとうございますわ……!」
「助かった!」
『ーーッ!? よくも美月を……! だけど……シンクロゾーンを発動させたくらいで……!』
檻から出た美月を見ながら、ネオンは焦りと怒りの混じった声を上げた。
余裕が消えたネオンはいつもよりも大きな声でネプチューンに呼びかけた。
『ネプチューン……!』
『大丈夫だよ、ネオンちゃん♪ あたしたちからすれば、シンクロゾーンなんて、スタートラインに過ぎないんだから♪ 敵にすらならないよ♪』
『だけど容赦はしない……!』
『『合体マジカルスキル……!
マリンネプチューンは最強のマジカルスキルであるフィールド魔法同士を合体させ、世界を書き換えて海の世界を作り出した。
これこそが、美月の『時間魔法』と同じレベルの規格外さを持つ『空間魔法』の真髄……!
それでも、負けない……!絶対に勝って見せる……!白金代表に認めて貰う為にも……。ネオンたちに認めて貰う為にも……!
「サターン……! わたくしたちも全力で行きますわよ……!」
「はい、お嬢様! 僕たちの全てをぶつけましょう!」
「「合体マジカルスキル! サターンクロノスワールド・
クロノスサターンは周囲の景色から色を奪って灰色の世界にすると、まるで時を止める様にその動きを極限にまでスローにした。
そして、最強のマジカルスキルであるフィールド魔法の力を取り込むことで、超巨大な黒い竜へと変身して突撃した。
さらに……。
『美月! 援護するわ! 歌! アタシたちのマジカルスキルをまとめなさい!』
『任せて下さい、咲良先輩!
『『『『『『『『合体連携マジカルスキル! ゾディアックブラスター!』』』』』』』』
ゾディアックサインは
『ーーッ!? 余計な真似を……!』
『邪魔者は消えちゃえ!』
マリンネプチューンは、直ぐに海にゾディアックサインを飲み込ませ、マジカルバリアを破壊して戦闘不能にした。
だけど、咲良たちは最後に道を残してくれた。だから、後は美月たちが決めるだけだ。
「「はあぁぁぁぁぁーーッ!!」」
超巨大な黒い竜が真っ直ぐに突っ込む。
『まだ……!』
『あたしたちは最強なんだから!』
しかし、マリンネプチューンも他の四つの合体マジカルスキルを同時に発動させて迎え撃った。
そして……。
「ーーッ!?」
「くっ!」
攻撃を受け止められたクロノスサターンは、マリンネプチューンの目の前で動きを止めた。
機体の各部には、転移門で跳ね返された攻撃の跡がつき、魔法の槍が突き刺さり、召喚獣が噛み千切り、鎖が縛り上げるなどの、数々のダメージの痕跡があった。
そして、クロノスサターンは限界を迎え、マジカルバリアを破壊されて戦闘不能になった。
結果は美月たちの負け……ではない。
『……! 嘘……!?』
『まさか麗たち以外にも、あたしたちに勝つ子たちが出て来るなんて……!?』
限界をを迎えていたのはマリンネプチューンも同じであり、クロノスサターンとほぼ同時に、マジカルバリアを破壊されて戦闘不能になった。
つまり結果はドローだ。
そして、その結果を見ていた白金代表のアナウンスの声が聞こえて来た。
『——結果は引き分けだったが……確かに美月さんを始めとする皆の強さを……覚悟を見せて貰った。 よって、君たちがアース博士たちを助けるチームに加わることを認めよう』
——こうして、美月たちは自分たちの強さと覚悟を証明することができた。