——十二月一日の火曜日。ワールドユニオンの本拠地のエデンにて。
「——戻って来たんだな……俺とウラノスが出会った、全ての始まりの地に……。 そして、チャンピオンバディになった場所に……」
「ああ……! だけど、今回は、俺らはチャンピオンバディとして、止めなきゃならねぇ奴らがいるんだ!」
「そうだな、ウラノス!」
エデンにある空港へと到着した
この場所には、かつて
戦後、そんな国の跡地に、人工島を作り、その上にこうしてワーリドユニオンの本拠地が建てられた。
この場所は、地球上のどの国にも属していない国際的な中立地域だが、魔法科学による最先端術で、世界で最も発展した場所となっていた。
魔力や人工精霊を研究する世界最大規模を誇る巨大な研究所に、メカニカルウィッチを設計開発する工場や実験場などの施設。
その周辺には世界大会の会場としても使われる、既存の全ての種類のバトルフィールドのスタジアムを内蔵する巨大な競技場。
果ては世界平和を維持すると言う名目で、名国の軍を統合して作られたワールドユニオン軍の本部など、世界の中枢とも言える建物が集まっていた。
そして、島の中央にはシンボルとも言える、人類初の宇宙エレベーターが世界を見下ろすように建てられていた。
(やっぱり何と言うか……この場所は聖域と言っても過言ではない雰囲気がありますね……)
エデンの建物の殆どは、平和のイメージカラーである純白になっており、まさに穢れなき白亜の都市になっていた。
美月も明日斗博士の娘として、父の代理で何度かこの場所に来たことがあったが、やはり思わず気圧されてしまう。
すると、そんな美月に、護衛としてついて来た、
「美月様、気をつけな。 ここはもうワールドユニオンのお膝元なんだから……」
「そうですねぇ……。 こうしてアダム議長に正式に面会する形で来た以上、表立って仕掛けてくる可能性は低いとは言え、油断できませんからねぇ……」
「そうっす! オイラたちみたいな特殊部隊が裏から監視しているは確実っすからね!」
草刈の特殊部隊のメンバーの中で、今回同行が許可されたのは、美月の元御影の三人だけだった。残りのメンバーは、JP国で待機しており、もしもの時は白金代表が用意した援軍と一緒に駆けつけることになっていた。
草刈たちとは協力関係になったとは言え、前科が前科なので、いざという時に抑えられる様に、三人だけにし、さらに、裏切り対策にスタン機能付きのマジカルウォッチを装着させていた。
その起動権を持っているのは、白金代表と美月とサターンとリンと爺やで、草刈たちもそれを素直に受け入れていた。
美月としてはそこまでしなくてもとは思うが、そうは思っていないサターンが、三人に厳しい視線を向けた。
「言っておくが……お嬢様の信頼に免じて、お前たちを信用することにしただけだ。 だけど、もしまた妙な真似をしたら、絶対に許さないからな」
「はい、どうかお嬢様の信頼を裏切らない様にお願いします」
「我々もしっかりと見張らせて貰うので……」
リンと爺やも、サターンに同意していた。
「分かっているさ……。 アタシたちも行動を持って信用を示して行くからさ……」
草刈たちはそんな厳しい視線を向けられても、それを受け入れていた。
すると、そんな中、ネオンとネプチューンが美月の隣を潜入する様に、割り込んで来た。
「……ん。 大丈夫。 私がそいつらを含めたワールドユニオンから、美月を絶対に守るから……」
「そうそう♪ 少なくともあたしたちは普通の人間には絶対に負けないから、美月も安心していなよ♪」
「は、はい……! よろしくお願いします……わ……!」
そんな風に美月を守る仲間同士でバチバチと火花を散らす中、白金代表の声が聞こえて来た。
「良し。 皆揃っているな」
「「「はい!」」」
今回エデンにやって来たのは、美月とサターン、焔とマーズ、冬馬とマーキュリー、小春とジュピター、輝とヴィーナス、御霊とプルート、御影とカロン、咲良とキャンサー、王牙とレオ、秀次とスコーピオ、歌とピスケスの子供組。それから、麗とウラノス、ネオンとネプチューン、きららとポラリス、リンと爺や、草刈と水島と炎炉、白金代表とその他護衛の人たちの大人組と言った面々だった。
後は現地で合流する予定の面々がいるのだが……。
すると、その面々に声をかける役割を任されていたきららに、白金代表が尋ねた。
「きららさん。
「連絡によるともう来ているらしいです。 多分もう直ぐ……」
——その時だった。
「——きららーー!!」
女性の元気な声が聞こえて来た。
その声の主は空港のエントランスをバタバタと走って来ると、そのまま車椅子のきららの背後から抱きついて来た。
「久しぶりルー!」
「ええ、久しぶりね、
「
「ああ。 元気そうだな、ポラリス」
蘭と呼ばれた女性と、竜と呼ばれたメカニカルウィッチの男性を見て、焔たち子供組がざわつき出した。
無理もない。だって、その蘭たちは初代チャンピオンバディのきららとポラリスの長年のライバルとして、あまりにも有名だったから。きららたちが引退して、今の二大チャンピオンバディが代頭するまで、彼女たちが長年ワールドランキングの一位の座にいたのだから……。
「蘭ちゃん。 私たちとの再会の挨拶も良いけど、皆にも挨拶しないと……」
「そうだったルー! じゃあ、気を取り直して……」
きららに促された蘭は改めて美月たちの方を見た。
「皆、蘭のこと知っていると思うけど……一応自己紹介するルー! 蘭は
「
年齢的には三十代のきららの一つ上だが、その言動と言いかなり子供っぽく若々しく、子供組に混じっていても違和感がないくらいだった。
そんな彼女の相棒である
そして、彼女たちこそが、人口の多いCN国のトップにして、世界全体で見ても上澄中の上澄とされるトッププレイヤーだった。
「フッ、蘭たちは相変わらず気が早い。 私たちを待たずに先に名乗りを上げてしまうなんて……」
「まあ、きららさんたちに久しぶりに会えて、気が早ってしまってのでしょうし……仕方がありませんわ」
「ハロー! きらら! ポラリス! 久しぶりね!」
「連絡は取り合っていましたけど……こうして直接会うのは久しぶりですからね」
すると、そんな中、遠くから大人たちがやって来た。
その人物たちは、蘭たちに続く今のワールドランキングの上位の面々だった。
そんなオールスターを目にした焔たち子供組がますますざわつき出す中、そんな彼らは名乗りを上げた。
「フッ、初めまして、美しきレディたち! それから、ナイスなダンディたち! 私の名はアーサー・パラディン! UK国出身のワールドランキングの四位だ! そして、彼が……」
「ペガススだ! 私たちの輝きに見惚れると良い!」
アーサー・パラディンは、銀の髪を後ろで束ねた、金の瞳を持つ、イケメンの男性だった。
彼は三十代半ばであるが、若い頃と変わらないイケメンフェイスを維持していた。まあ、ナルシスト気味なので、残念なイケメンになっているのだが……。
そんな彼の相棒であるペガススは、銀の髪に、青い瞳をした男性だった。
「お、お初にお目にかかりますわ……! わたくしはアーミラ・サハラーと申しますわ……! EP国の出身で、ワールドランキングの五位ですわ……!」
「「「私たちはアーミラ様の護衛兼従者のアルゴよ!」」」
アーミラ・サハラーは、ロングヘアの金の髪に、紫の瞳を持ち、頭部に黄金の髪飾りをつけた、小麦色の肌の女性だった。
彼女は高貴な名家の出として有名なお嬢様だが、言葉の節々に気弱な感じが出ていて、美月は不思議と親近感を覚えた。
そんな彼女の相棒であるアルゴたちは、金髪に、赤と青の瞳のオッドアイに加え、おでこに緑の瞳がある女性たちだった。二人で一つのジェミニたちと似た、三人の人工精霊が合体した存在らしい。
「ハロー、皆! アタシはコーラル・リーフよ! AU国出身で、ワールドランキングの六位よ! そして、アタシの弟の……」
「サザンクロスだ! コーラル姉ちゃん共々よろしく頼むぜ!」
コーラル・リーフは、ロングヘアの黄緑の髪をポニーテールにした、ピンクの瞳を持つ女性だった。
彼女は冒険家としても名高く、リアルファイトでも頼りになりそうな鍛えられた体をしていた。
そんな彼女の相棒のサザンクロスは、黄緑の髪に、青い瞳をした男性だった。
「フンッ、妾の名はヒュドラーだ。 おい、お主ら何をしておる? 図が高いぞ? 頭を垂れよ?」
「アワワワワ……!? ヒュドラー!? 初対面の人にその言い方はやめようって言ってるよね!! あ、えっと……僕はリオ・フロレスタ……! BR国出身で、ワールドランキングの七位をやっています……!」
リオ・フロレスタは、黒い髪に、青い瞳を持ち、メガネをかけた、褐色肌の男性だった。
彼はメカニカルウィッチの研究者としても有名で、明日斗博士に迫る逸材としても有名だった。
そんな彼の相棒のヒュドラーは、黒い髪に、金の瞳をした女性で、その気性難は大分有名だった。
「煌めき凄いや! 記念すべき最初の世界大会で活躍した『
「そうね、焔君! まさに、レジェンドたちね!」
「レジェンドたちに会えるなんて感激だ……!」
「フッ、冬馬。 気持ちは分かるが少しは落ち着け……」
「凄い、凄ーい! 最強の助っ人だよ!」
「う、うん……! 本当に凄いメンバーだよね、小春ちゃん……!」
『黎明の星々』、それは『黎明の一番星』と呼ばれた初代チャンピオンバディのきららたちと鎬を削りあったライバルたちの呼び名だった。
十年前の事件が原因できららたちが引退する中、最初の世界大会からずっとワールドランキングの上位の座を守り続け、時には世界で一番の相棒であるチャンピオンバディの称号を手にしたこともある蘭たちは、まさにレジェンドと言っても差し支えない存在だった。
だが、助っ人はこれで終わりでは無かった。
さらに三人の大人たちがアーサーたちの後ろから現れた。
「きららさん! ポラリス! お久しぶりです!
「俺っちの名はオリオンだ! へへっ、カイ共々よろしくな!」
カイ・ハンターは、青い髪に、青い瞳をした、褐色肌の男性だった。
彼はUS国の本国から遠く離れた南の島の出身で、麗たちの同世代の新世代としても有名だった。
そんな彼の相棒のオリオンは、青い髪に、赤い瞳をした男性で、少しおっちゃらけた性格をしていた。
「ああ、きららお姉様……! ポラリスお姉様……!」
「ほら、ナーシャ。 貴方の番ですわよ」
「……!! ……おほん、ナターリヤ・ダイヤモンドよ! RU国の出身で、ワールドランキング九位よ! 覚えておきなさい! フンッ!」
「わたくしはカシオペアですわ。 どうか、ナーシャと仲良くして上げてね?」
ナターリヤ・ダイヤモンドは、ロングヘアの銀の髪に、銀の瞳をした女性だった。
彼女もまたネオンたちと同世代の新世代として有名で、先程のカイたち共々名乗りを上げていた。
そんな彼女の相棒のカシオペアは、銀の髪に、紫の瞳をした女性で、ナターリヤをナーシャの愛称で呼びながら、まるで娘の様に世話していた。
「最後は私たちデスねー! ボンジュール、
「グルル……! オイラはケルベルス! 美味しいお菓子と楽しいバトルが大好物だ!」
ブール・パティスリーは、金の髪に、金の瞳をした男性だった。
彼の兄、シュクル・パティスリーは、最初の世界大会にも出ていた『黎明の星々』の一人で、今はFR国一のパティシエとして活躍しており、ケルベルスとは今も相棒だが、バトルの方は歳の離れた弟に任せてあるのは、割と有名な話だった。
そんな彼らの相棒たちのケルベルスは、金の髪に、赤い瞳をした女性で、三人の人工精霊が合体したアルゴとは違って、彼女は三つの人格を切り替える三重人格をしていた。
「いやはや、まさかワールドランキングのトップ十が揃うとは……驚きだよ」
「そうですね、御霊。 これは予想以上のメンバーですね」
「本当に凄いですよ! 私ちゃん、大感激です!」
「どうどう、御影ちゃん、少し落ち着こうね〜」
『黎明の星々』だけではなく、『新世代』の面々まで呼ぶなんて、初代チャンピオンバディのきららたちの人脈は本当に凄かった。
彼女たちがキッカケでウィッチバトルを始めた子たちも多く、今のワールドランキングトップ十のカイたちとナターリヤたちもその口らしかった。
すると、そんなカイたちは、同世代の麗たちにも声をかけた。
「麗君もウラノス君も、久しぶり!」
「ネオンちゃんとネプチューンも暫く振りね!」
「私たち『新世代』、レジェンドメンバーである『黎明の星々』にも良いところを見せられる様に、頑張るのデース!」
「ああ! カイ君もナターリヤちゃんも君も、今回はライバルでは無く味方としてよろしくな!」
「……」
『新世代』の同い年の面々で話をしていたが、ネオンだけは会話に加わろうとせず、一人距離を取っていた。
(ネオンさん……)
そんなネオンを見て、美月が少し心配になる中、白金代表が改めて口を開いた。
「良し。 きららさんが声をかけてくれたメンバーとも無事に合流できた様だな」
ワールドユニオンに対抗する為に集まった面々、自分たちの力を示して参加を許可された美月たち子供組、いざという時に頼みの綱となるきららたち大人組、それをまとめる白金代表と、彼の手配した護衛の人たち、それから、その他数名……。
このメンバーが、エデンに向かい、消息を絶ったアースとムーンとサンを救出するチームメンバーだった。
(お父様……ムーン……サン……待っていて下さいね……)
美月が改めて決意をする中、スーツを着た男性が、タブレットを片手に、自分たちの元へとやって来た。
「黒土美月さん、白金代表、それから、他の
その男性は美月たちの前に来ると、片手で自身のメガネをクイっと上げた。
「初めまして、私は
名前からしてJP国の出身に見えるが、アダム議長と同じガーディアンの性は、アダムチルドレンの一人……つまり孤児なのだろう。
「黒土美月さんと白金代表が申し入れた、アダム議長との面会の件ですが……アダム議長は今手が離せないので、申し訳ありませんが、面会できるのは明日になります。 そこで、本日は、秘書である私が、ここ……エデンの案内をさせて頂きます」
どうやら英斗がここに来たのはそれが理由らしかった。勿論、裏で何かを企んでいる可能性は捨ておけないが……。
「それでは
*****
その後、ホテルに荷物を置いた美月たちは、英斗の案内の元、エデンを回った。
まずは、JP国にあるメカニカルウィッチ研究所の大元になった、巨大な研究所。
ここには美月も明日斗博士の代理として、何度か足を運んだことがあった。相変わらず巨大な大規模な施設だ。
それから、隣接されているメカニカルウィッチを設計開発する工場や実験場などの施設も回った。
次に世界大会の会場としても使われる、巨大な競技場。
夏の全国大会高校生の部となったJP国の競技場も広かったが、ここの競技場は桁違いに広かった。
特に焔たち子供組は、憧れの舞台を前に、興奮を隠しきれていない様子だった。
そして、ワールドユニオン軍の本部。
ワールドユニオンの矛であり、盾である、力の象徴。美月もこれまで非公式の特殊部隊と何度も戦いを繰り広げて来た。それから、全国大会の決勝戦の後の事件の際は、その正式に部隊とも……。
そこは軍の関連施設が集まっており、養成学校に、訓練場、格納庫などがあった。
「——こちらは、ワールドユニオン軍の食堂になります」
そんな中、美月たちは休憩スペースも兼ねている食堂へと案内された。
すると……。
「あらあら、美月ちゃんじゃない〜。 ボンジュール」
軍の制服を来た女性が、美月に馴れ馴れしく挨拶して来た。
「ーーッ!? 貴方は……っ!?」
美月はその女性と面と向かって会うのは初めてだったが、ここに来る前に事前に教えられていた情報から、その人物のことを知っていた。
それに何より、全国体高校生の部の決勝戦の後に起きた事件で、
その時のことを思い出した美月が、思わず身構えていると、サターンが代わりに声を上げた。
「フォー・ガーディアン! ワールドユニオン軍最強部隊のガーディアンズのメンバー!」
「あらあら、やっぱり知られちゃっているわよね〜。 まあ、アタシたちはパパの懐刀として有名だかね〜」
その正体は、ワールドユニオン軍最強と名高いガーディアンズの一員にして、アダム議長の養子のアダムチルドレンの一人であるフォー・ガーディアンだった。
しかも彼女だけではなく、その後ろには、同じ部隊のトゥー・ガーディアンとスリー・ガーディアンもいた。
「……黒土美月、サターン。 ……海姫ネオン、ネプチューン。 貴方たちがお
「……全く、まさか黒土さんたちが、ここに直接乗り込んでくるなんて、流石に予想外でしたよ……」
そして、ガーディアンズの面々の一部と対峙する中、フォーが改めて口を開いた。
「——改めまして、ワールドユニオンへようこそ、美月ちゃん〜」