メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第14話「たった一つの願い」

 

 

「――これが……僕と言う存在が生まれた経緯です……」

 

 サターンが明かした秘密に学園長室にいる誰もが何も言えなくなっていた。

 美月も、彼が兄の最後の願いによって生まれた精霊で、その兄は死後呪いとなって今は魔石の中にいると聞いて、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。

 

 ネメシスと名乗る正体不明機(アンノウン)による襲撃の後、美月は保健室で簡易的な治療と検査を受けてから、サターンと一緒に学園長室に呼ばれ、こうして話を聞かれることになった。

 

 先ず初めに学園長が開口一番に、学園内に侵入者を許したことを頭を下げて謝って来た後、通信と言う形で現れた白金代表から、侵入者の行方は国の機関が追っているが、その足取りが全く掴めていないことを伝えられた。

 それから美月が魔力が見える目のことを伏せてネメシスが人間では無く精霊だったと話した後、その正体と彼女が口にしていた、今回の事件の黒幕であろう()()()について話し合うことになった。

 

 一応、先日の式典での事件の容疑者でもあるワールドユニオンも犯人の候補に上がったのだが、すぐに否定されることになった。

 何故なら、人工精霊から感情を消去し、人間の道具として扱うワールドユニオンが、精霊自身にあそこまでの力を委ねるなど絶対にあり得ないからだった。

 白金代表曰く、ワールドユニオンは人工精霊を完全に信用していないからこそ、まだ完全な無人機は完成しておらず、中にストッパーにもなる人間を乗せているらしかった。

 そして、それ以上に今のワールドユニオンの技術を持ってしても、あれだけの機体を作るのは不可能だと断言された。

 

 そこで犯人の候補に上がったのが、他でもない父である明日斗博士だった。

 そもそもネメシスはサターンと似ている点が多かった。共にワールドユニオンの管理するデータにない存在で、その機体性能も普通の機体はおろか、軍用の機体すらも凌駕していた。

 そんな物をワールドユニオンにすら気づかれない様に、どこの企業の力も借りずにほぼ個人で開発できるのは、メカニカルウィッチの開発者である明日斗博士以外あり得なかった。

 

 それでも、あの場でサターンの正体を聞いた輝が、ヴィーナスを開発した暗闇博士などの例を上げたりして庇ってくれた。

 それから、言い方は悪くなるが、美月を狙うのなら最初からネメシスを送り込めば良い筈……つまり、サターンを護衛として送り込んで来た説明がつかないと言ってくれた。

 

 サターンとネメシスの様な存在を作れるのは明日斗博士だけ、でもそれなら両者を戦わせた理由が分からない。

 そんな状況で父への疑念を晴らすべく、人間の姿となったサターンは自らの秘密を口にしたのだった。

 

「……僕は父の……明日斗博士の元で、ネメシスの様な存在を見たことがありません……。 それに明日斗博士は、僕の美月を守りたいと言う()()()()()()()()を聞き入れて、この機体を……アークサターンを作り、護衛として送り込んでくれたんです……! だから……!」

 

 サターンは必死に語った。父が美月の命を狙う筈などないと。自分と同じ存在など、人の手で作れる物ではないと。精霊たちが組織するもう一つの敵がいると聞かされていたと。

 そして、自分の秘密を決して他言しない様に頼んで、頭を深く下げた。

 

『……ありがとう、話してくれて。 そして、辛い話をさせてすまなかった。 私もこの国の代表として、このことは決して他言しないと誓おう。 サターン君の秘密は必ず守ってみせる』

「私も学園長として、生徒たちのプライバシーは決して漏らさぬと誓おう。 どうか安心してくれ」

「……ありがとうございます」

 

 白金代表と学園長は、大人としてサターンを安心させる様に優しくそう言ってくれた。

 

 結局、明日斗博士でもワールドユニオンでもない第三勢力の調査は白金代表が引き続き続けることになった。

 

『……話は変わるのだが、今回の被害者である美月さんたちには明日、学園の外にある病院で検査を受けて貰うことにらなっている。 まだ侵入者の行方が掴めていないから、国の方で護衛を付ける予定なのだが、美月さんの方は大丈夫か?』

「はい、分かりましたわ。 ですが……白金代表、一つだけお願いがありますの……。 明日の病院の検査が終わった後で良いので、どうしても行かなければならない場所があるんですの……」

『その場所とは?』

「……『黒土邸』。 わたくしが生まれ育った場所ですわ」

『そこは……そうか、明日は君の母の……』

「はい、命日ですの……」

 

 美月が頭を下げて向かいたいと頼んだ黒土邸は、ミライトウキョウの郊外にある母の実家だった。

 そこは十年前のあの日の出来事が起こるまで、美月が暮らしていた場所であり、亡き母が埋葬された場所でもあった。

 

 確かに十年前の事件が原因となり母と兄は亡くなった。

 でも、最後に母と別れた後、母はまだ生きていたのだ。

 父曰く、その場に一番に駆けつけた母の相棒であったクリサリスのおかげで、母は僅かながら延命できたらしい。

 でも瀕死の状態であることには変わらず、父が持ち得る技術や伝手などのあらゆる手を使ったが結局……。

 それから約一週間後に母は息を引き取った。

 その後父は母の遺体を黒土邸に埋葬したと言う……。

 

 全部全部自分が眠っている間の出来事だった。自分は母の最後に立ち会えなかった。

 

 ――もし、もう少し早く目を覚ませば、母ともう一度会えたのだろうか?

 

 でも、時間を巻き戻す術など、この世には存在しない。どんなに願っても、やり直すことなんてできはしない。

 

「……迷惑をかけてしまくことは分かっていますわ……! でもっ……! 明日だけは……お母様の命日だけは……わたくしは母が眠る黒土邸に行かなければなりませんの……! わたくしはお母様にさよならを言えなかった……! だから、せめてっ……!」

「僕からもお願いします……!」

 

 美月が涙を流しながら頭を下げて必死に頼み込んでいると、サターンも一緒に大人たちへと頭を下げた。

 

「……父さん、僕からもお願いします。 確かに今学園から離れるのは危険ですが……それなら僕とヴィーナスも美月さんの護衛に加わります。 どうか聞き入れてくれませんか?」

「輝先輩……!」

「僕も……美月さんと()()だったからね……。 その気持ちは分かるんだ……」

 

 輝が口添えしてくれたことで、白金代表も思うところがあったのか、仕方がないと言った表情で口を開いた。

 

『……君たちの思いは分かった。 どのみち明日は一度学園の外にある病院に行って貰う必要もあることだし……。 追加の護衛の方も手配しておこう。 学園長もそれでよろしいでしょうか?』

「学園に侵入者を許した私が、安全の為に学園に残ってくれと言っても説得力はあるまい……。 ただし、くれぐれも気をつける様に……」

 

 ネメシスの襲撃により危うく行けなくなるところだったが、無事に元々の予定通り黒土邸に向かうことになり、美月は安堵する。

 そして、改めて周りの人たちに頭を下げて感謝を口にした。

 

「ありがとうございますわ……!」

「ありがとうございます……!」

「良かったね、美月さん。 それにサターン君も」

「サターンも、輝先輩も、ありがとうございますわ……!」

「白金輝……感謝する」

 

 それから、後は大人同士の話があるからと言われて、輝と一緒に退出した。

 

 

*****

 

 

「――美月! 大丈夫だった!? どこも怪我してない!?」

 

 廊下に出ると、焔たちが心配する様に駆け寄って来た。

 どうやらずっと外で待っていたらしい。

 

「ありがとうございますわ、焔。 わたくしはこの通り、大丈夫ですわ」

「良かった……!」

 

 ネメシスから狙われたこともあり、最優先で救助され、一番に保健室に運ばれて、その後学園長室へと呼ばれたせいで、こうして入れ違いになっていたが、焔たちの無事を見て改めて安心する。

 一応、輝先輩から焔たちの無事と、ついでにサターンの秘密が聞こえていたを遠回しに確認したが、気づいた様子はなかったと伝えられてはいたのだが……。

 

「……それよりも、巻き込んでしまって申し訳ありませんでしたわ。 今回の襲撃者の狙いはわたくしでしたの……。 わたくしのせいで皆も危うく命を……」

 

 美月は罪悪感から頭を下げて謝る。

 

 今この場に皆無事に揃っているのは結果論でしかない。一歩間違えれば誰が死んでいてもおかしくなかった。

 自分なんかと関わったせいで、命の危険にさらされたのだ。

 これを理由に距離を取られても仕方がない……そう覚悟を決める。

 

 しかし、焔はそんな美月の肩を優しく掴んでそのまま押すと、下げていた顔を上げさせた。まるで謝る必要なんてないと言う様に。

 

「美月は何も悪くないよ! 悪いのは全部襲って来た奴の方だよ! それに美月は俺たちの命を助けてくれた!」

「焔君の言う通りね。 私たちを助けてくれて感謝するわ」

「そうそう! それにあたしたち皆無事だったんだからそれで良いじゃん! 終わり良ければ全て良しって言うし……!」

「う、うん……小春ちゃんも皆も無事で本当に良かった……!」

「……友達を助ける為に、戦うことを選んだのは僕たち自身の意思だ。 だから君の責任ではない」

「フッ、そうだな、冬馬」

 

 少しも責めることなく、そう言ってくれる焔たちの言葉はとても温かった。

 すると一歩後ろで見守っていた鈴鳴先生が側まで来て、優しく頭を撫でてくれた。

 

「皆の言う通りよ、美月さん。 先生はね、巻き込まれたんじゃないの……大事な生徒を守りたくて自分から飛び込んだの……」

「それが教子の信条ですから」

「うん、ベルの言った通りだよ。 だから美月さんが気に止むことなんてないんだよ」

 

 その言葉に心が救われる様な気がした。この人たちと出会えて良かったと、そう思った。

 

「先生……皆……ありがとう……ございますわ……!」

 

 

*****

 

 

 ――翌日。病院で検査を終えた美月は、急なことだったにも関わらず、元の自分の護衛の仕事を優先してくれた草刈たちの運転する車に乗って、黒土邸へと訪れていた。

 

「――ただいま、お母様」

「……」

 

 車から降りた美月は、そう口にすると、持って来た古い鍵を使って、閉まっていた門の錠を開けて、敷地内へと足を踏み入れた。

 

 今の時代、こんな古い方法を使っている家は殆どないだろう。

 母は詳しくは教えてくれなかったが、黒土家はいろいろと()()がある一族だったらしい。

 WWⅢに大きく関わったとして、一度没落し、母が子供の頃は()()()()()と呼ばれ、魔女の館として地元から恐れられていたそうだ。

 

 兄は……サターンは黙ったままだった。まるで自分には「ただいま」と言う資格がないと思っている様に見えた。

 

 ムーンたちが亡くなった……『自我崩壊』したのは、事件があったあの日だったが、父は兄の命日に関してだけは教えてくれなかった。ただ「母の命日と一緒にお参りしてあげてくれ」と言うだけで。

 サターンの秘密を知った今なら分かる。兄は人間としては死んだが今は……。

 そのことについて、まだ頭の整理はついていなかった。

 

「じゃあ、美月さん。 僕たちはお屋敷の前で待機しているよ」

「輝先輩、無理を言って申し訳ありません……。 お母様と……それからお兄様が眠る庭園には、どうしてもわたくしたちだけで行きたいんです」

「うん、分かってるよ。 何かあったら僕とヴィーナスもすぐに駆けつけるから」

「はい、お任せ下さい」

「よろしくお願いしますわ、輝先輩。 それにヴィーナスも」

 

 今回黒土邸に来ることにすら無理を言ったのに、さらに無理を頼んだ自覚はある。

 それでも、亡き母が眠る場所。そして、兄の……人間の体が眠る場時のである屋敷の裏にある庭園で、兄と……サターンと二人で静かに話をしたかった。それに、母とも……。

 

 空は暗い雲で覆われているが、まだ雨は降っていないので、この場で待たせることになる輝や護衛の人たち為にも急がなければ……。

 

 ――美月が母にお供えする為に持って来た花束を手に、サターンと一緒に庭園へ向かおうとした……その時だった。

 

 スーパーメカニカルウィッチが現れる時の特有の光と音が聞こえたかと思うと、黒土邸の正面の門を突き破って、何十機もの機体が続々と足を踏み入れて来る。

 式典を襲った機体と同型の黒で統一されたワールドユニオンの軍用機たちだった。

 

「――ッ!? お嬢様!!」

 

 その光景を見たサターンが本来の人間の姿へと戻り、自分を守る様に立ち塞がった。

 

「美月さん!」

 

 輝先輩たちも急いでこちらへと駆け寄って来る中、その後ろにいた護衛の人たちも襲撃者に対処するべく動き始めていた。

 

 ――そんな最中、敵が現れた前方からではなく、()()()()銃声が聞こえて来た。

 

「今の音は……!?」

 

 慌てて後ろを振り向くと、護衛の人たちが次々に銃で撃たれて、血こそは流れていないがその場に倒れ伏していた。

 そして、その銃を手にしていたのは、自分の護衛の草刈と水島と炎炉の三人だった。

 

 目の前の光景に理解が追いつかない美月は、震える様に声を絞り出した。

 

「ど、どうして……!?」

「……安心しな、倒れた人間は死んじゃいなよ、あくまでも無力化しただけだ。 アンタたちの方は終わったかい?」

「私は問題ありませんねぇ」

「オイラも大丈夫でやんす!」

 

 三人は今まで一度も聞いたことがない口調に変わっていた。

 

「美月様には感謝してるよ。 白金代表のガードが固くて難儀していたけど……元々護衛を務めていたアタシたちが追加の枠に入り込めたのは本当にラッキーだった」

「貴方たちは……まさかっ……!?」

「行くよ、お前たち!」

「「了解です、リーダー!」」

「「「――マジカルチェンジ!」」」

 

 美月が頭に浮かんだ事実を受け入れる暇もなく、三人は黒い機体を手にすると、そう叫んだ。

 巨大な光と大きな音と共に現れたのは先日の式典で戦った機体だった。

 黒を基調とし、それぞれ()()()の装飾が入った機体の色も、()()()()()()()も間違いない。この魔力が見える目が証明していた。

 じゃか先日自分を襲ったのは……?

 

「つ……あ……」

「ワールドユニオンッーー!!」

「大事な式典の日だけではなく、美月さんにとって大切な日である今日という日にまで!」

『フンッ、何のことやら? アタシたちはあくまでも美月様とサターンを狙うテロリストさ。 悪いけど一緒に来て貰うよ』

 

 長年信頼していた人たちから裏切られた事実にショックを受ける美月を見たサターンと輝が怒りの声を上げる。

 そのまま両者が一触即発となり、今すぐにでもこの場で戦いが始まりそうになる。

 

「止めて下さいッーー!!」

「……お嬢様」

「……美月さん」

 

 ――それを美月の悲痛な叫びが止めた。

 

 周囲を敵の機体に囲まれ、現在進行形で銃口を向けられながらも、自分を庇うサターンと輝の一歩前に出て、草刈の乗る機体の前へと立つ。

 

「……お願い……します……。 この場所で……戦わないで下さい……。 お母様とお兄様が眠るこの場所を……荒らさないで下さい……。 静かに……眠らせてあげて下さい……」

 

 美月は瞳から大粒の涙を流しながらも、必死に頭を下げて懇願した。

 それが例え、自分を襲って来た相手だとしても……。十年前の事件を起こしたワールドユニオン相手だとしても……。どうか、どうか、これだけは……。

 

 そんな美月の姿を見た草刈が、通信音声で返答した。

 

『……美月様には、悪いと思ってる。 でも、これがアタシたちの仕事なんだ……。 だから、これがアタシたちの答えだよ……!』

「止めッーー!?」

 

 草刈の機体が屋敷の方へと振り返り、その銃口を向けた。

 それを見て咄嗟に叫ぶが、その引き金は既に引かれていた。

 放たれたビームが屋敷の一室に着弾する。その場所から火の手が上がり、屋敷に炎が広がっていく。

 

「あぁ……!?」

 

 母と暮らしたこの場所が……自分と兄が生まれ育った大切な場所が壊される……。全部全部燃えていく……。

 このままじゃ、母と兄の墓がある庭園の方にも火が……。母と兄が眠る場所が燃えてしまう……。めちゃくちゃに踏み荒らされてしまう……。

 

 その事実に絶望した美月は、まるで糸が切れた人形の様にその場に崩れ落ちた。

 

「……もう嫌だよ。 どうして……どうして……こうなるの……? 助けて……お母様……。 助けて……お兄様……」

 

 美月はその宝石の様に綺麗な紫水晶(アメジスト)の瞳からボロボロと涙を溢しながら、縋り付く様に助けを求めていた。

 

 

*****

 

 

「――泣かせたな、()()を!! ワールドユニオンッーー!! 僕はお前たちを絶対に許さないッーー!!」

 

 泣いている美月を守る様に機体を呼び出したサターンは、激しい怒りの炎と殺意でその身を焦がしていた。

 

『サターン君! ()()()()()()()()()()()()()()()! でも、今は冷静になるんだ! 敵の数があまりにも多過ぎる!』

 

 ノーブルヴィーナスに乗った輝が何かを言っていたが、そんなのはもうどうでも良かった。

 美月を泣かせ、苦しめ、傷つけたコイツらは殺す。慈悲などいらない。

 

 ――敵を殲滅するべく、魔王システムを起動しようとした……その時だった。

 

**(グル)**********(ァァァァァァァァァァ)()ーー!!』

 

 暗雲の立ち込める空から、精霊の言葉が分かるサターンにすら獣が吠える声にしか聞こえない雄叫びが響いた。

 その場にいる全員が手を止め、空を見上げると、暗雲の中から巨大な竜が現れた。

 

 ()()()()()()()()白を基調とし、緑の装飾が入った機械の体を持ち、この場にいる機体よりも遥かに大きな機械仕掛けの竜だった。

 

『あれは……メカニカルウィッチ……なのか……?』

 

 自分たちの機体とはまるで違う、人型でない異形の機体を見て、輝が思わず疑問を口にした。

 

 全員が警戒を強める中、()()()()()()()()()()()()()()がパージされる様に切り離された。

 そのまま()()の様に、超スピードで正面玄関の前へと降り立った。

 その衝撃で玄関の道と花壇が破壊され、周囲が土煙に包まれる中、サターンはいち早くその正体に気づいた。

 

 忘れる筈がない。上にいる竜と同じ機体色をして、特徴的な剣を持った騎士の様な機体のことを。美月の命を狙った敵のことを。

 

「ネメシスッーー!!」

『――さあ、終わりにしようか、黒土美月。 そして、サターン』

 

 現れたのはネメシスだった。

 昨日の敗北の記憶が甦る。自分では勝てない敵を目にして、体が恐怖で震える。本能が逃げろと叫ぶ。

 それでも戦わなければいけない。美月を守る為にも。

 

 敵がネメシスだろうが、ワールドユニオンだろうが関係ない。

 今度こそ絶対に美月を守るんだ。奴らに手出しはさせない。指一本だって触れさせたりなんかしない。

 陽太の最後の願いは自分の願いでもある。

 例え自分が彼の偽物でも、この願いだけはきっと本物だ。これだけはきっと、もう一人の本物の自分にだって負けない。

 

 ――美月だけは絶対に守る。 それが僕の……サターンの()()()()()()()()なのだから……。

 

 

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