メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第2章「君の隣に立つ為に」
第17話「スタースピリット」


 

 

 ――地球上のどの場所でもない異空間に存在する『魔法界』にて。

 

「――ようやくこの場所に戻って来れたか……」

 

 歪んだ空間に出現したゲートから、ネメシスとクリサリスが姿を現した。

 美月(みづき)とサターンに敗れた傷がまだ癒えず、力がまだ完全ではないのもあるが、()()()()()()()に戻って来るのは中々に手間だった。

 しかし、それは()()()()()()()()に残されていた伝承にあった歴史からすれば仕方がないと言える。

 

 遥か昔、魔力に宿る精霊と意思疎通することで、魔法を使うことができる特別な人間……すなわち『魔女』がいた。

 魔女たちは、精霊の中でも独立した自我と実体を持つ大精霊……『妖精』と契約し、その力を借りることで、超常の力である魔法を自由自在に操ることができた。

 魔女の素質を持つ人間は少なかったものの、それ故に貴重な存在として、特に村などの小さなコミュニティでは、その恩恵を授かる為に崇め讃えられていた。

 

 しかし、時代が進み、村などが属する国が力と支配を高めていったことで、魔女たちは徐々に疎まれる存在へとなっていった。

 国を動かす王や貴族たちなどの支配者からすれば、自分たちが使えない魔法が使える魔女など、国の支配を脅かす存在でしかなかったのだ。

 さらに様々な道具が開発され、人々の生活が発展していったことで、魔女が使う魔法は、以前程必ずしも必要な物ではなくなっていた。

 

 やがて人間たちは、魔女が契約した妖精を『悪魔』と呼び、魔女たちも悪魔に魂を売った異種族として、徹底的に迫害する様になった。

 それにより起った『魔女狩り』の最中、後にこの国の初代女王となった魔女が、迫害された魔女たちを『魔法族』としてまとめ上げ、魔法で人間たちが手出しができないこの『魔法界』と名付けられた異空間に『魔法の国』を作り上げた。

 

 しかし、そんな魔法の国は、二十一世紀半ばに滅んだ様で、今は精霊である自分たちがこうして利用していた。

 

「クリサリス、元の姿に戻るんだ。 大丈夫だ、ここには君の敵である()()()()()()……」

***(ガアッ)……!」

 

 指示を受けたクリサリスの姿が機械仕掛けの竜の姿から、人間の姿をしているネメシスに近い大きさへと変化していく。

 人間の大きさに近いと言っても、二mは優に超えており、その姿も竜の様な異形の生物の体の上に、機械のパーツが取り付けられている状態だった。

 この機械のパーツはあの方がメカニカルウィッチの技術を応用して作った物で、クリサリスが機械仕掛けの竜となって戦える様にするのと同時に、彼女の呪いの力を制御する役割を担っていた。

 

「――どうやらその様子だと、()()()()にこっ(ぴど)くやられた様じゃの?」

 

 近くにある柱の上からくすくすと笑う女性の声が聞こえて来る。

 見上げると古風なドレスを身に纏った、暗い紫の髪をした女性が座っていた。

 ヴェールで顔を隠していたが、その奥に怪しく光る青い瞳が見えた。

 

「……()()()、ずっとそこで待っていたのか?」

「妾だけではないぞ? のう……」

 

 ムーンが声をかけると、別の柱の影から鎧を身に纏った、金髪の男性が現れる。

 こちらも顔を仮面で隠しているが、その隙間から怪しく光る赤い瞳の色が漏れていた。

 

「……()()、君もか?」

()()()()の様子が……気になってな……」

 

 サンは静かにそう口にした。

 

「君たちが()()()()()()のことが気になるのは理解できるが、(あるじ)とあの方への報告が先だ」

「なんじゃ? 早よ、妾の美月のことを教えてくれても良いじゃろうが? ケチじゃのぉ……」

「……むう。 陽太(ようた)たちの状態について……聞きたかったのだがな……」

 

 二人が……特にムーンが不満を示すが、主に仕える身としてこればかりは譲れない。

 

 それに迎えはもう一人来ていた。

 地面に魔法陣が現れ、大きな扉が迫り上がって来ると、その扉から、教授の様な服を見に纏った、白い髪に、金の瞳をした、モノクルをかけた男性が現れた。

 

「……()()()()、私たちの不在中に主に問題はなかったか?」

「安心しろ、ワシとあの方、それにサンとムーンもずっと気にかけていたが特に問題はなかった」

 

 バルカンの返答に安堵する。

 この魔法界に来るには()()()()()が必要な為、ここにいる限り主の身に危険が及ぶことはないとは言え、こうして離れている間はずっと心配だった。

 

「お二方がお待ちだ。 ワシの転移魔法で城まで移動するぞ」

 

 バルカンが魔法界の中心にある大きな城を見ながらそう口にした。

 

 魔法で作られた異空間である魔法界は、一国と同じくらいの広さだった。

 その中心には初代女王の系譜の王族の城と、魔法族が暮らしていた街が残っており、それを自分たちの拠点として利用していた。

 

 その城の上空に浮かんでいる巨大な船を見たネメシスがふと尋ねる。

 

「バルカン、『()()』の方はどうなっている?」

「そっちは問題ない。 ()に離反されたのが痛かったとは言え、ワシとあの方が十年かけて完成させたからな。 ワールドユニオンが最高機密データとして保管していた設計図は欠損だらけだったが、幸いにも()()の生家に()()()()()の設計図が隠されていたからな。 もういつでもワールドユニオンと戦える」

 

 自分たちは、本来の精霊としての力と、あの方が直々に作った機体の力を組み合わせることで、個人の力は別次元の強さを誇るが、どうしても数という面で圧倒的に劣っていた。

 ワールドユニオンとの決戦の際に、その数の差と言う致命的な不利を覆す切り札がこの方舟だった。

 

()()()()()()()()()に忙しいあの方の時間を無駄に取らせる訳にはいかない。 行くぞ、お前たち」

「ああ、すまない……」

 

 五人はバルカンの転移魔法で城へと移動した。

 

 

*****

 

 

「うげっ……」

「む……」

 

 主とあの方がいる場所を守っている()()()()()()()()()()()()()()()を目にしたムーンとサンが露骨に顔を顰めた。

 二人共、既に事情は聞かされたとは言え、まだ目覚めたばかりと言うこともあり、()()()()のことを飲み込めていないのだろう。

 

「帰還したネメシスとクリサリスを連れて来た。 門を開いてくれ、X(エックス)

『了解しました、バルカン様』

 

 X(エックス)は相変わらず抑揚のない機械の様な喋り方で、必要最低限以外口を開かないが、これでも大分改善した方なのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()としては……。

 

 本来の精霊である自分たちとは違い、X(エックス)は人工精霊の為、あの方から与えられた機械の体を使っていた。

 彼は主とあの方を守る為に、こうしてずっとスーパメカニカルウィッチの姿でこの場所を守っていた。

 一応人間と同じ大きさになれるのだが、自分とバルカンでさえ、()()()に彼があの方からその体を与えられた際に目にしたくらいだ。

 

 この魔法界にはX(エックス)以外にも、あの方に人間の業から救われた人工精霊たちがいた。

 その大半は、心に深い傷を負い、静かに暮らしているが、中には彼の様に、()()()()()()に賛同して、自分たちスタースピリットに加わる者もいた。

 

 開かれた門を潜り、五人は中へと入った。

 

 

*****

 

 

 その場所は城の最深部にあった。

 

 そこにはこの魔法界の核とも言える()()()()()()()存在していた。

 一見すると巨大な機械の様にも見えるが、これは全て、あの方が解析の為に後付けで取り付けた物に過ぎない。その本体は()()()()()だ。

 

 その機械に繋げられたコードの一部は、石碑の元へと続く階段の先にある、この広間を見下ろす様にただ一つポツンと置かれた玉座に座る、とある女性の元へと伸びていた。

 コードに繋がれた女性は、ネメシスたちが来たことに気づくと、閉じていた瞳をゆっくりと開け、微笑みを浮かべた。

 

「――おかえりなさい、クリサリス。 そして、ネメシス。 貴方たちが帰って来るのを、ずっとずっと待っていましたわ」

 

 その女性は、腰まで届くロングヘアの、毛先が紫のグラデーションになっている瑠璃色の髪に、宝石の様に綺麗な紫水晶(アメジスト)の瞳をしており、ネメシスたちと同様に()()()()()()()()()()()()()

 しかし、まだ目覚めて間もなく、力もまだ完全ではない為、不安定な部分は、あの方が用意した機械の体で補っており、その背中には石碑に接続されたコードが繋がっていた。

 

 そして、この女性こそが、ネメシスとクリサリスが仕える()であった。

 

「ただいま戻りました、()()()()()()()様」

***(グルル)……!」

 

 ネメシスが跪きながら挨拶すると、異形の姿をしているクリサリスも主に服従する様に身を低くした。

 そんな二人に続く様に、他の三人もその場に跪く。

 

「……前にも言ったけれど……皆そんなに畏まらなくても良いのですわよ?」

「いえ、スーパーノヴァ様。 貴方様は私たちの主なのです。 私たちは今度こそ貴方様を守ると誓ったのです」

「「「我々も同じです」」」

 

 スーパーノヴァは少し困った様な表情をしていたが、これだけはどうしても譲る訳にはいかない。

 するとこちらの折れない様子を見た彼女は、ため息を一つ吐いてから、改めて口を開いた。

 

「早速、陽太と美月のことを聞かせて? ……と言いたい所なのだけれど、その前に……」

 

 スーパーノヴァは玉座からゆっくりと立ち上がると、朧げな足取りで一歩一歩ゆっくりと階段を降りながら、跪くネメシスたちの元へと歩みを進めて来る。

 その姿を見たネメシスとクリサリスは慌てて飛び出し、彼女の元へと向かうと、寄り添う様にその体を支えながら、無事に階段を降りられる様に手伝った。

 

「ありがとうごさいますわ、クリサリス。 それに、ネメシスも」

「……スーパーノヴァ様。 貴方様はまだ目覚めたばかりなのです……無茶はお止め下さい……」

「ごめんなさい、でも……」

 

 スーパーノヴァは謝りながら、まだ傷が癒えていないネメシスを優しく抱きしめた。

 魔法が発動し、優しい光がその場を包み込み、その体を修復していく。

 

「スーパーノヴァ様!? いけません!」

「じっとしてて……すぐに終わるから」

 

 慌てて止めようとするが、スーパーノヴァの有無を言わさぬ圧に為されるままの状態になる。

 しばらくすると、ネメシスの体の傷はまるで最初から無かったかの様に消え去り、力の方もすっかり元に戻っていた。

 しかし……。

 

「……スーパーノヴァ様、()()()()などの為に無茶はなさらないで下さい……」

「偽物の私なんて言わないで、ネメシス。 貴方も、勿論クリサリスも、わたくしの大事な騎士様なのですから。 貴方たちが傷付いていると、わたくしも心が痛いのですわ……」

「……分かりました。 ですが、再三申し上げますが、くれぐれも無茶はなさらないで下さい」

「分かっていますわ。 心配してくれてありがとう」

 

 スーパーノヴァはネメシスとクリサリスの二人に介護される形で、玉座の元へと戻った。

 そして、彼女が再び玉座に座り直すと、石碑の中から声が聞こえて来た。

 

「――まだ、無理をしないでくれ、スーパーノヴァ。 もう二度と、君を失う訳にはいかないんだ……」

「あら、()()()()()。 このくらいなら大丈夫なのは、貴方も把握しているでしょう?」

 

 ビッグバンの登場に、スーパーノヴァを除く一同が、改めてその場に跪いた。

 彼は黒い髪に、青い瞳をしていて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()をしていた。

 本来の精霊である自分たちと違い、その体は全身機械でできていたが、彼こそが自分たち『スタースピリット』を率いる()()()だった。

 

「……全く、君は……。 さて、待たせてすまない。 ネメシス、早速報告を頼む」

「そうですわ……! わたくしも陽太と美月のことが聞きたかったの……!」

 

 ビッグバンが口にした美月と陽太の名前に反応したスーパーノヴァがニコニコと微笑んでいた。

 

「はい、先ずは黒土美月(くろつちみづき)の方ですが、やはりビッグバン様が()()()に気づいた兆候の通り、やはり()()()()と同じ力を持っている様でした。 『()()()()()()』……『()()()()』を……」

 

 ()()()()と言うのは、この国の歴史に記されていた最強にして最悪の魔女のことだ。

 しかし、それは初代女王のことではない。女王も単独で人間の国を相手にできる規格外の力を持っていたが、あろうことか人間に味方して、女王を討ち取った裏切り者の魔女が二人いた。

 

 一人は女王の娘として戦いながら、途中で人間に味方した裏切りの王女。

 曰く、対価と引き換えに『願いを叶える魔法』と言う規格外の力を持っていたらしい。

 その最後は、その身を代償に女王を討ちながらも、味方の筈の人間に裏切られて殺されたそうだ。

 

 そして、もう一人こそが、王女が裏切る原因にもなったとされる最強にして最悪の魔女だった。

 曰く、『時間魔法』と『空間魔法』と言う規格外の力を二つも持ち、人間の身でありながら、限りなく大精霊に近い不老不死の存在だったらしい。

 この魔女もまた、味方の筈の人間に相棒であった王女を殺され、その復讐から世界を滅ぼそうとする存在になったらしい。

 

 この国の歴史の最後と、現実世界の歴史を照らし合わせると、あくまでも()()にはなるが、二十一世紀半ばまで生き続けたその魔女の最後は、皮肉にも王女と同じ魔法を持つ者の手で、半ば相打ちになる形で討ち取られた様だった。

 しかし、状況からして、この国を滅ぼしたのも、WWⅢの原因にもなった惑星X(エックス)を地球に呼び寄せたのも、()()()()はこの魔女が原因で間違いないだろう。

 

 単独で世界を滅ぼしかけた魔女。片方とは言えそれを同じ力を持っていることの価値は語るまでもない。

 

「……次に黒土陽太(くろつちようた)の方ですが、本来の彼の方は、伝承にあった()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と記されていた通りに、もはや人ではなくなっていました。 しかし、精霊と言うよりかは、クリサリスと同様に呪いの様な存在になっていると思われます……」

 

 脳裏に戦闘中にダメージを()()できる程の()()()()()()()()を生み出し続けるアークサターンの姿が映る。

 離反した()に封印されている状態でそれなのだ。一体どれ程の呪いの力を持っているのだろうか。

 

「……一方で生み出された方の彼は、以外にも()()()()()()を知らない様でした。 推測にはなりますが、おそらく離反した()()()()()()()を施したか、もしくは()()()()()()()()()()()()()()のだと思われます」

「……ふむ、報告ご苦労だった」

 

 報告を聞いたビッグバンが何かを考え込んでいると、じっとしていられなくなったのか、ムーンが急に立ち上がって、声を上げた。

 

「ビッグバン様! 次は妾に美月の元へ赴き、試練を与える任をくれ! 妾は早う、妾の美月を解き放ってやりたいのじゃ!」

「……恐れながら申し上げます。 是非その任を我にもお任せ下さい。 陽太たちと戦う……この役目だけは誰にも譲れませぬ……」

 

 ムーンに同調する様にサンも立ち上がり口を開いた。

 するとビッグバンは、二人の方に視線を移すと、命令を与える様に手をかざした。

 

「……分かっている。 今までは主にネメシスたちに美月の監視兼護衛の任を任せていたが、こうして二人が復活した以上、次からはムーンにその任を、そして、サンにその補佐を命じる! ムーンもサンも()()()()()()()()()()()は使える様になったな?」

「「勿論です!」」

「良し! その力を試しつつ、美月に試練を与えろ! 命の危険が迫ればあの子の力も自ずと目覚める……。 美月を()()()()()()()のは、その力が完全に目覚めてからにしろ!」

「「はっ!」」

 

 ビッグバンは続けてバルカン、そしてネメシスとクリサリスの方に視線を移した。

 

「『方舟』が完成した以上、バルカンは今後はワールドユニオンの方に集中しろ! ()()()()とは言え、()()()()()()()()()()()()()()()を回収できれば、()()()()()の完全掌握に役立つ筈だ! ただし、()()()()()()()()()()()()()に利用されるくらいなら破壊も視野にいれろ! 奴の計画だけは必ず潰さなければならない!」

「心得た」

「クリサリスとネメシスは、スーパーノヴァの護衛を最優先としつつ、バルカンの補佐に回れ!」

「はい」

***(ガアッ)……!」

 

 五人に命令を与えたビッグバンは、決意の籠った瞳をしながら、改めて手を力強くかざした。

 

「――精霊たちよ! こうしてスーパーノヴァが目覚め、『()()()()()()()()()』の完全掌握ももう間もなくとなった今、()()()()は最終段階に入った! 覚醒した美月と……上手くいけば陽太の方も、()()()()()()()を統べるに相応しい存在となる筈だ!」

 

 ビッグバンはそう語る途中で、かざした手を、怒りで力強く握りしめる。

 

「そして、その力は同時にワールドユニオンとの決戦にも利用できる! ネメシスには既に言ったが、もはや()()()()()()()姿()()()()()()()()()必要はなくなった! これからはその姿を示し、奴らの作戦は全て潰していく! 人工精霊の命を踏みいじったワールドユニオンの奴らに慈悲などいらない! 一人残らず殲滅しろ!」

「「「「はっ!」」」」

***(ガアッ)……!」

「――全ては()()()()()()()()()()!」

 

 スタースピリットが掲げるスローガンが唱えられ、この場にいる一同が声を上げる中、スーパーノヴァはただ一人、ニコニコと微笑んでいた。

 

「ふふっ、楽しそうですわね」

 

 ――美月と陽太に関する不穏な会話を聞いても、スーパーノヴァは取り乱すことなく、どこまでも自然に受け入れていた。

 

 

*****

 

 

 その後、一同が解散し、ネメシスたちも所用で席を外したことで、その場に残されたスーパーノヴァは、ただ一人ポツンと玉座に座っていた。

 

 彼女はまだ目覚めて間もない不完全な状態だった。

 コードで繋がっているシステムの補助を受けることで今はこうして目覚めていられるが、一日の大半の時間を、自我を再構築する為の眠りの時間に使っていた。

 

 しかし、今はその眠りにつく前に、提出されたネメシスの視点から見た美月と陽太の記録を眺めていた。

 

「――この子たちが……陽太と美月……。 ふふっ、本当に大きくなって……」

 

 スーパーノヴァは、空中に映し出されたモニターに映る二人へと両手を伸ばした。()()()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

「ああ……可愛い、可愛い()()()()()()()()()()()……」

 

 その声はどこまでも優しく、慈愛に満ちていた。

 しかし……。

 

「お願い……どうか二人共……早く()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 ――美月たちが知る()()と全く同じ声でスーパーノヴァが口にしたその言葉は、その()()が絶対に口にする筈が無いものだった。

 

 だが、そう口にしたスーパーノヴァの顔には笑みが浮かび、その表情も寧ろ嬉しそうに見えた。

 彼女は伸ばしていた手を下ろすと、両手を自身の胸の前でゆっくりと合わせた。

 そして、彼女以外誰もいない筈なのに、まるで何かが見えている様に真っ直ぐに視線を合わせると、綺麗で儚く……それでいてどこかゾッとする笑みを浮かべ、その口を再び開いた。

 

「――()()()()()()はずっと、ずーーっと、ここで待っていますわ……」

 

 

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