メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第29話「魔王に挑む無謀な勇者」

 

 

 ――ゴールデンウィークが明けた週を間に挟んだ、翌々週の月曜日。

 

「――はぁ……。 結局……また一週間以上休むことになったせいで、ゴールデンウィークはお友達と遊びに行けませんでした……。 寧ろ皆に毎日お見舞いに来て貰って申し訳ないです……」

「お嬢……美月……」

 

 あれから美月は熱が完全に下がり切らず、何度か症状が振り返したこともあって、ずっと寮の部屋で療養することになってしまった。

 以前、二週間近く休んだ際に、このまま休み続けたらそのままゴールデンウィークに突入してしまうと言う懸念が的中することになってしまった。

 もう五月だと言うのに、まだ両手で数えられる回数しか学校に行けてなかった。

 

 それでも、やっと体調が治ったこともあって、今日から再び登校できる様になったのだが、まだ心が弱っているせいなのか、ネガティブな言葉ばかり出て来てしまう。

 そのせいか、美月は入学式の日の時と同じ様に、学生棟の入り口の近くにある建物の影に隠れていた。

 

 そんな不安そうな様子の美月を見て、サターンがポツリと呟いた。

 

「……美月、焔たちに迎えに来て貰うかい?」

「それはダメです……!」

 

 美月はその提案をすかさず否定すると、暗い表情のまま不安をポツリ、ポツリと口にした。

 

「……こんな私を見たら、焔たちはきっと幻滅します……。 本当の私は弱気で臆病で、人見知りで……お母様から貰った勇気のお呪いに頼ってばっかりで……」

「美月……」

 

 母とムーンたちを失ってからと言うもの、()()()()()()()()()()()()()()()()

 リンや爺やたち家族以外の前では、勇気のお呪いを使っている時のお嬢様人格にならなければ何もできなかった。

 

 こんな自分を変えようと頑張ったけど、全部全部失敗して来た。

 焔と冬馬と小春は初めてできた大事な友達だ。だからこそ、三人に本当の自分を見せて失望されるのが怖かった。

 焔たちのことは信じているけど、どうしてもその不安が消せなかった。

 でも……。

 

「……それでも私は……お母様に安心して見守っていて下さいって言ったんです……。 だから、ちゃんと頑張らなきゃ……」

 

 兄と……サターンと一緒に前に進むと、母に誓ったことは決して嘘なんかじゃなかった。本当にそうしたいと願ったのだ。

 

 だから、いつまでもここで隠れている訳にはいかない。

 美月は目を閉じて、母の形見であるペンダントを両手で握りしめた。

 

「頑張れ、()。 頑張りなさい、()()()……」

「――美月! 大丈夫?」

「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」

 

 どことなくデジャヴを感じる展開が起こった。

 思わず悲鳴声を上げてしまった美月は、バクバクと鼓動する心臓を抑えながら後ろを振り返り、声をかけて来た焔のことを見た。

 

「ご、ごめん! またびっくりさせちゃって……!」

「ほ、焔……どうしてここに……?」

「えっとね……美月が今日からまた登校するって聞いて、冬馬と小春と一緒に今朝迎えに行ったら、リンさんにもう家を出たって言われたんだ。 でも、教室に美月の姿がなかったから……もしかしたら、ここかもって思って探しに来たんだ!」

 

 入学式の日と同じ様に一時間近くこの場でオロオロと立ち往生しているうちに、そんなことになっていたなんて……。

 

「も、申し訳ありません……わ!」

「ううん、気にしないで! 俺たちが勝手にやったことだから! それよりも、まだ何処か体調が悪かったりしない?」

「は、はい……大丈夫です……わ」

「なら良かった!」

 

 勇気のお呪いを途中でキャンセルされた上に、お嬢様人格になるのも久しぶりだから、口調が変になってしまっていた。

 するとそのやり取りを見ていたマーズが、急に思い出したかの様に叫んだ。

 

「あ、そうだ! 焔君、そろそろホームルームの時間よ!」

「そうだった! ありがとう、マーズ! 行こう、美月!」

「きゃっ……!?」

 

 入学式の日と同じ様に、焔に手を引かれながら教室に向かう。

 そんな中、焔が何かを思い出したのか、急に振り返って声をかけて来た。

 

「そうだ! 大事なことを忘れてた! 美月の体調のこともあるから今すぐにって訳じゃないけど……。 俺とマーズは、美月とサターンと本気のバトルがしたいんだ!」

「そ、それって……」

 

 確かに学園長にも、登校を再開した後も暫くはバトルを含めた過度な運動は控える様にと言われていたが、そんなことはどうでも良かった。

 

 どうしても思い出してしまう。入学式の日の始まりのウィッチバトルの時の観客席からの声を……。

 ()()()()()()()()()()()()()、焔たちだって悪く言われてしまう……。

 

 思考がネガティブになっているせいで、返事を返せずにいると、焔が改めて宣言して来た。

 

「うん! 美月たちの次の学園リーグ戦の相手は俺たちがしたいんだ!!」

「ええ! そこで私たちの特訓の成果を……全力を見て欲しいの!」

「だから、俺とマーズは、美月とサターンに挑戦状を申し込むよ!」

 

 

*****

 

 

 ――さらに一週間後の月曜日の放課後。

 

『――さあさあ始まりました! (みな)さん大好き学園リーグ戦のお時間です! MCを頼めるのは、(みな)さんお馴染み、私ちゃんこと冥道御影と……!』

『はいは〜い、相棒のカロンちゃんだよ〜』

『今回の対戦カードは私ちゃんも大・注・目!! 学園リーグランキング六位の美月ちゃんとサターン君! それに対するは、焔君とマーズちゃんです! そ・し・て、今回は同じチームオールスターズのメンバー同士のバトルと言うことで、特別ゲストにお越し頂いております! どうぞ!』

『はいはーい! 緑木小春です! 焔も美月ちゃんも頑張って! 周りの声なんて気にしちゃダメだよ! 周りの人たちも、あたしの大事な友達のことを好き勝手言うのは止めてよね!』

『……落ち着け、小春。 焔たちの凄さが分からない、見る目の無い人たちに何を言っても無駄だ。 それよりも今回ばかりは、僕たちも応援に専念しよう』

 

 御影とカロンのアナウンスに加え、小春と冬馬の応援が聞こえてくる中、輝たち生徒会メンバーは来賓用の観客席がある個室に集まっていた。

 

 学園リーグランキングトップ十の特典を使ってまで貸し切ったのには理由があった。

 小春と冬馬が怒っている様に、周囲の声が酷かったからだ。

 特に焔たちは入学式の日に美月たちに挑んで返り討ちにあっているせいで、無謀だと嘲笑う生徒が多かった。

 曰く、明日斗博士の娘が苦戦している様に見えたのはチーム戦だったからで、学園リーグランキングトップ十の魚波歌と冥道御影相手にも一対一なら勝っていただろうし、同じく獅子谷王牙相手にも途中で中止にならなければ勝っていた筈だ。

 曰く、そんな明日斗博士の娘をチームに引き込み、そのおこぼれで学園リーグランキングに入った身でありながら、再びバトルを挑むなど、身の程知らずな無謀な奴だ。

 

「……ったくよ! 雑魚共が口にする雑音が煩わしったらありゃしないぜ! 噂話をする暇があるなら少しは強くなる努力をしろってんだ! これだから弱い奴は嫌いなんだぜ!」

「全く持ってその通りであーる! この学園はプロを目指す場である筈なのに嘆かわしい限りであーる!」

 

 この部屋を貸し切る提案を最初にしたのは王牙たちだった。

 理由は見ての通り、周囲の声を聞いてかなり不機嫌になっていたからだ。

 特にここ最近は焔たちの特訓にずっと付き合っていたこともあって、そんな自身が気に入った相手を嘲笑う声に本気でブチギレていた。

 

「まあまあ、王牙先輩たちも、落ち着いて下さい。 私も()()()()()()()()()()()()()()。 ……とは言え、仕方がない面もあると思いますよ。 美月さんたちの強さもそうですが……それ以上にあの明日斗博士の娘だと言う影響があまりにも大き過ぎるんです……」

「歌の言う通りね。 メカニカルウィッチの開発者である明日斗博士は、今最も世界で影響力のある人物よ。 そんな人の娘である美月さんを生徒たちが特別視してしまうのも無理はないわ……」

 

 歌たちの話に輝は内心同意していた。

 でも、()()()()()()さえ無ければ、ここまで酷くはならなかった筈だ。

 あれを期に妻と息子を亡くした明日斗博士は人前に滅多に姿を現さなくなり、一方で美月は唯一生き残った娘であるのと同時に、彼の代理として周囲から過剰なまでの特別視を向けられることになってしまった。

 そして、その結果……。

 

 当時の美月のことを思い出して思わず手に力を込めていると、突如部屋のドアがバンッと開かれた。

 

「――遅くなって悪かったわね」

「誠に申し訳ないでござる」

 

 その声と共に部屋に入って来たのは、ロングヘアの桜色の髪を高い位置でポニーテールにした、赤い瞳を持つ、美月よりも高身長な少女だった。

 強い意志を感じさせる声をした彼女の名は兜蟹咲良(かぶとがにさくら)

 自分と同じ三年A組にして、生徒会副会長であるのと同時に、学園リーグランキング二位の地位にいる少女だった。

 そして、去年並びに一昨年の全国大会の準優勝者で、決勝で自分たちとバトルした相手でもあった。

 そんな彼女の相棒であるキャンサーは、赤い髪に、緑の瞳をした男性で、その独特な口調の通り武士の様な雰囲気をしていた。

 

「イテテ……。 お嬢、良い加減に離して下さいよ! 俺、ここまで引きずられて来て、恥ずかしかったんっすよ!」

「……」

 

 そんな咲良と一緒にやって来た秀次が抗議する様に声を上げていた。

 相変わらず無口なスコーピオは黙ってその様子を見ているだけだったが……。

 

「フンッ! ()()()()()()()()()()()()()()何言ってるのよ! アンタのサボり癖は、アタシはちゃんと把握しているんだから!」

「いやいや! 俺だって()()ばかりは、ちゃんと真面目に見るつもりだったんっすよ!」

「それを信じて欲しかったら、少しはアタシのチームと生徒会にも自分からを出しなさいよ! こうしてアタシがいつも探しに行かないと、アンタは全然来ないじゃないの!」

 

 秀次は、咲良の作ったチーム鬼神(きじん)のメンバーであり、生徒会に入ったのも彼女が推薦したからだった。

 咲良曰く、「やればできる子なのに、いつも適当に手を抜くので、自分が矯正する。 その能力は自分が保証する」だそうだ。

 こうした光景はいつものことだが、秀次も文句を言いつつも、咲良のことをお嬢と呼んで慕っているので、仲は悪くないのだろう。

 

 何はともあれ、誘ったのはこちらなので来てくれた二人に声をかけた。

 

「兜蟹副会長も、霧蠍庶務も、来てくれてありがとう。 すまないね、焔君の特訓に付き合った訳でもないのに……」

「気にしないでちょうだい、輝。 ……それと()()()()()()()()()()()()っていつも言ってるでしょう?」

「……まあ、それは追々ね……」

 

 自分の態度を見て、咲良はため息を吐くとそのまま言葉を続けた。

 

「ハァ……まあ、良いわ。 どの道、アタシも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から……」

「あ、俺もお嬢と同じっす! そんな訳で、俺のことは気にしないで欲しいっす!」

「……だから、静かに観戦できる今回の誘いは、寧ろ好都合なのよ。 それにあの子……病弱か何か知らないけど、ずっと休んでばっかりだったし……。 アタシたちとバトルする前に()()いなくなられても困るのよ……」

「そうでござる! 拙者たちはあの者らとバトルして、()()()()()()()()()()()()()()()のでござる!」

 

 咲良とキャンサーはそう語りながら、バトルフィールドに立つアークサターンに目を向けていた。

 それに釣られる様に自分もそちらへと視線を向けた。

 

 今回の学園リーグ戦の舞台となったのは、学園の地下にあるメカニカルウィッチ学園第二スタジアムだった。

 そのバトルフィールドは『荒野』で、目立った障害物が無い構造故に、地形によるまぐれが起きることなく、実力差が顕著に現れる。

 そして、ウィッチバトルとスーパーウィッチバトルでスケールこそは違えど、美月たちと焔たちの始まりのウィッチバトルの時と同じ種類のバトルフィールドだった。

 

 学園リーグ戦のバトルフィールドは基本的にランダムで選ばれるとは言え、何かの因果を感じてしまう。

 

「……運命か、偶然か……。 いや、きっと……」

 

 

*****

 

 

『――俺とマーズは、このバトルで美月とサターンに勝ーーつ!! そして、()()()()()()()()()()!!』

『ええ! だから、私と焔君の可能性を見抜けないお間抜けさんたちは、よーーくその目に焼き付けることね!』

 

 バトルの前に、焔とマーズが大胆不敵な勝利宣言をしたことで、観客席がざわつき出した。

 

「相手は()()()()()()()()()だぞ!?」

「それにあの明日斗博士が作った機体でしょ?」

「住む世界からして違うお姫様相手に何て無謀な……!」

「まるで魔王に挑む無謀な勇者……いや、勇者ですらないな……」

 

 つい先程まで自分たちに向けられていた、目と耳を塞ぎたくなる様な視線と声が、焔たちの方へ向かっていった。

 そのおかげで、泣きそうになっていた顔をやっと上げることができた。

 

 するとその視線の先では、ブラッドマーズが周囲の声に臆することなく、堂々と立っていた。

 焔の赤い瞳の色と、マーズの紫の瞳の色が混じり合ったその瞳は、どこまでも真っ直ぐに自分たちを見つめていた。

 

(焔……どうしてそこまで……?)

「……お嬢様。 今、貴方が見るべき相手は観客席の人たちではりません。 目の前に立っている焔とマーズです」

「おに……サターン……。 分かっています……わ」

 

 バトルスタートに備えて、お嬢様人格に意識を切り替える。

 すると御影たちのアナウンスが聞こえて来た。

 

『はいはい! 観客席の皆さんも落ち着いて下さい! 少しシャラップですよ!』

『御影ちゃん、少〜しお口が悪くなってるよ〜』

『おっとこれは大変失礼致しました! んんっ、それではお待たせしました! 学園リーグ戦、バトルスタートです!』

 

 きっと焔たちなら、いつも通りバトルスタートの合図に合わせて、初手から真っ直ぐに突っ込んで来る筈……。

 それに備えるべく、機体を動かそうとするが……。

 

『――美月や。 妾が死んだと言うのに……どうしてバトルをしているのじゃ? 何でそんなに楽しそうなのじゃ? 何で笑えるのじゃ? 妾は本当に失望したよ。 だから、()()()()()()を破った美月の元に、こうして化けて現れたぞ?』

「――ッ!?」

 

 療養している時に、リンの方から昔の話を切り出され、改めてちゃんと話し合ったおかげか、聞こえたのはムーンの幻聴だけだった。

 でも、それに連鎖する形で、声こそは聞こえないが壊れたリンの姿が脳裏に映ってしまった。

 

 そのせいで、体が固まってしまい、それに連動する様にアークサターンも動けなくなる。

 そんな自分たちの元に、()()()()()()()()()()()()()()ブラッドマーズが突っ込んで来た。スタートダッシュが格段に速くなっている。

 

『行くよ、マーズ!』

『ええ、焔君!』

『『マジカルスキル! マーズファイア!』』

 

 そのまま焔たちの代名詞でもある、蝙蝠の形をした魔法の炎が放たれた。

 追尾式で避けられないこともあるが、奇しくも入学式の日の始まりのウィッチバトルの時と同じ様にトラウマで上手く動けないので、サターンに迎撃を頼むしかない。

 

「サターン、お願いします……わ!」

「はい、お嬢様!」

 

 魔力が見える目でその軌道を正確に読み取ろうとすると、ふとした違和感に気づいた。

 

(いつもより魔力量が多い!?)

 

 それに気づいた時にはもう既に遅かった。

 自分が足を引っ張ってシンクロ率が低下している今、サターンに伝えるのが間に合わない。

 アークソードがマーズファイアを撃ち落とした瞬間、爆発が起き、その場を包み込む様に土煙が巻き起こった。

 

「――ッ!? これは……囮か!?」

 

 遅れてサターンもこの攻撃が、最初から視界を遮る為の物だったことに気づいた。

 焔たちはいつも初手でこれを使って来る為、自分もサターンも反射的に対応してしまった。

 

 そして、土煙が徐々に晴れる中、ブラッドマーズの影分身が高低差を活かしてこちらをドーム上に囲う様に包囲していた。

 

「今度は幻影の炎か!? しかも、動きがいつもと違う!?」

 

 今までの焔たちの影分身は、良く言えばシンクロ、悪く言えば単調な面があった。

 しかし、今はまだ拙いながらも一機一機が少しずつ違う動きをしており、お互いの位置を頻繁に入れ替える様に動いていた。分身の使い方が上手くなっている。

 

 でも、この魔力が見える目の前には、それは殆ど意味をなさない。

 直ぐに本物を……死角である背後から迫って来る本体を見つけた。

 

「サターン、見つけました……わ! 決めます……わ!」

「了解です、お嬢様!」

「「マジカルスキル! サターンスラッ……」」

 

 ――その瞬間、真上からマーズファイアが飛来した。

 

「――ッ!? 上から!?」

「ええい!? いつの間に!?」

 

 視界外ではあるが、美月の耳がその声を聞き取ったことで、ギリギリの所でその存在に気づくことができた。

 咄嗟にサターンスラッシュの軌道を真上に変更して、その攻撃を防ぐ。

 でも、実質的にこちらのマジカルスキルも不発になってしまった。

 

 魔力量を増やした最初の攻撃とは反対に、減らすことで隠密に特化した攻撃になっていた。

 それに加え、本体の位置がバレることを逆に利用して、影分身たちと共に、本命の攻撃を巧妙に隠していた。

 もし自分のこの力がなければ、今のでやられていてもおかしくはなかった。焔たちは明らかに強くなっていた。

 

 そんな自分たちが押されている光景を見た観客席がざわついた。

 

「嘘……明日斗博士が作った機体と、その娘が押されてる?」

「何言ってるの! メカニカルウィッチ開発者である明日斗博士の娘が負ける訳ないでしょ!」

「じゃあ入学式の日の時みたいに、三分くらいその場を動かずに遊ぶつもりだってのか?」

「そうに決まってんだろ! 相手があまりにも弱いせいで、最初から本気を出したら直ぐに終わってしまうからな!」

(お願い……もう止めて下さい……!)

 

 ……いつもいつもこうだった。父の娘として勝って当然だと言われた。負けることなんて許されなかった。

 だから、()()()()()()()()()を使ってでも、死に物狂いでバトルするしかなかった。

 その結果、自分なんかとバトルをしたせいで……比べられたせいで、ウィッチバトルを辞める子が出てしまった。相手の相棒の絆を壊してしまった。

 そして、その果てに自分のせいでリンが死ぬところだった。

 

 楽しくなんてなかった。笑顔になんてなれなかった。皆自分から離れていった。

 きっと()()()()()()()を破ったから(ばち)が当たったのだ。

 

 美月の紫水晶(アメジスト)の瞳から涙が零れ落ちる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!」

『――美月!』

「焔……?」

 

 焔の声を聞いた美月は顔をゆっくりと上げると、縋る様に彼のことを見た。

 

『――大丈夫だよ! 俺たちがこのバトルで、美月を縛る呪縛を()()()()()()()()! ()()()()()()()()()()!』

 

 

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