メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第32話「君の隣に立つ為に」

 

 

『――ななな何と言うことでしょうかッーー!? 何と美月ちゃんたちまでもがシンクロゾーンの動きをしております!! これが美月ちゃんたちの本気! とんでもない強さです! ですが、それを引き出した焔君たちも負けじと喰らいつく! 熱い! これは熱いぞ! 最高のバトルだ!』

『うんうん、見ているこっちまでバトルしたくなっちゃうよ〜』

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ〜〜!!」」」

 

 御影とカロンの声と、観客席の大観声がバトルフィールドを包み込む中、シンクロゾーンへと至った二機が、激しいぶつかり合いを繰り広げていた。

 

(これが美月たちの本気……! 本当に煌めき凄いや!)

 

 呪縛を打ち破った美月は本当に強かった。

 勿論、その強さは、明日斗博士が作ったアークサターンや、相棒であるサターンに支えられている部分もあるだろう。

 だけど、美月自身も十年近くウィッチバトルから距離を置いていたとは思えないくらいに凄いバトルセンスを持っていた。

 

 美月の不調をサターンがカバーしている時は、攻撃的なバトルスタイルが目立っていた。

 だけど今は、彼女が防御面を補完することで、弱点らしき弱点が無い、攻防一体のバトルスタイルになっていた。

 さらに美月の強みは防御だけではなかった。寧ろ彼女のいざと言う時の思い切りの良さを生かした攻撃こそが、本当の強みだろう。

 

 そして、バトルの決着をつけるべく、今正にそれが発揮されようとしていた。

 

『サターン! わたくしたちの本気を、焔たちにぶつけますわよ! このバトルに勝つ為に!』

『はい、お嬢様! 勝ちに行きますよ!』

 

 一度大きく距離を取ったアークサターンがアークソードとアークシールドを合体させ、アークX(クロス)アックスを作り出した。

 さらにその斧の元へと周囲の魔力が集まり出した。

 

(サターンアークブレイクが来る……!)

 

 サターンアークブレイクは、入学式の日の始まりのウィッチバトルで、自分たちを倒したサターンスラッシュを超える、美月たちの最強のマジカルスキルだった。

 

 その威力は絶大で、サターンスラッシュなら兎も角、これをマジカルシールドで防ぐのは、自分たちの限界である四つ同時発動を持ってしても、多分無理だろう。

 ……と言うか、三重仕様のマジカルシールドでも防げない攻撃は基本的には受け止めてはいけない部類の物だ。

 だけど、美月の一手先の未来を見ているに等しい力に、シンクロゾーンの動きが加わっている今、回避なんて手段は取らせてくれないだろう。

 

 それにせっかく美月が自分と向き合ってくれているのだから、このマジカルスキルを真正面から打ち破って、勝ってその隣に立ちたかった。

 だから……。

 

「マーズ姉ちゃん! 美月たちの最強のマジカルスキルを破る為に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「ええ、焔君! ()()()()()()()()()!」

「「マジカルスキル! マーズブラッドムーン!」」

 

 焔たちは、歌たちの指導のおかげで、フィールド魔法を完全な形で発動できる様になっていたが、今回はあえて以前と同じ仕様で発動した。

 そのおかげで、本来ならば発動までに時間がかかる筈のフィールド魔法を瞬時に完成させた。

 ブラッドマーズのブラッドロッドの先端に、魔力の塊である巨大な赤い月が宿った。

 

「「+(プラス)マーズブラッドサイス!」」

 

 さらに焔たちは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を打ち破って発動させた。

 そして、そのまま二つのマジカルスキルを合体させた。

 

「「合体マジカルスキル! マーズブラッドサイス・暁!」」

 

 魔力の塊である巨大な赤い月が、三日月の様な形へと変化することで、機体のサイズを優に超えた巨大な星の鎌へ変貌した。

 バトルフィールドの魔力を吸い上げ今も尚、成長し続けている星の鎌の赤い色は、とても綺麗で美しく、見た者を魅了するくらい神秘的だった。

 

『ほわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!? ななな何と!! 最強のマジカルスキルであるフィールド魔法すらも合体させてしまったッーー!?』

『いやはや……発想が凄すぎて、カロンちゃんもちょっと言葉が出ないね……』

「綺麗……まるで宇宙(そら)()()()()みたい……!」

「……()()()()()()()()()()()()だ……!」

 

 バトル中にどんどん進化する焔たちの可能性は、御影のテンションをキャパオーバーさせ、カロンの語彙力を驚きで喪失させる程だった。

 そんな彼のことを無謀な勇者だと嘲笑う者は、もう一人もいなかった。

 

 ――寧ろ焔たちが()()()()()()()()()()()()()()()()姿()を幻視していた。

 

 

*****

 

 

『焔もマーズも頑張れー! それに、美月ちゃんとサターンも頑張れー! どっちも頑張れー!』

『み、皆ファイトだよ……!』

『ああ! 焔もマーズも! それに、美月さんもサターンも! どっちも負けるな!』

『フッ、俺も両方を応援しているぞ……!』

 

 小春とジュピター、冬馬とマーキュリーは自分のことも応援してくれていた。それが本当に嬉しかった。

 

(本当に……皆とお友達になれて良かったです……!)

 

 美月は感謝の気持ちを胸に、真正面に見えるブラッドマーズのことを……焔のことを改めて見つめた。

 

(ありがとう、焔……! 貴方がいてくれたから皆とお友達になることができました……! こうしてもう一度ウィッチバトルに向き合うことができました……! だけど、私はこのバトルで負けるつもりはありません……! だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()……! だから……!)

「「マジカルスキル! サターンアークブレイク!」」

 

 美月は()()()()()()()()()()()()、マジカルブーストを使ってアークサターンを突撃させながら、マジカルスキルを放った。

 それとほぼ同時に、焔たちも逃げることも臆すこともなく、真正面からブラッドマーズを突撃させて来た。

 

 そして、両者の最強のマジカルスキルがバトルフィールドの中央で激しく激突し、激しい光と大きな音が巻き起こった。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」」

『『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッーー!!』』

 

 美月とサターン、そして焔とマーズのそれぞれの魂の叫び声が響き渡った。

 

(くっ……! 焔たちは本当に凄いです……!)

 

 焔たちの合体マジカルスキルに、自分たちの最強のマジカルスキルであるサターンアークブレイクですら押し負けてしまっていた。

 

 元のままでも十分に強力だった物が合体した上に、フィールド魔法の特製でバトルフィールドの魔力を吸い上げて、今も尚、威力が上がり続けているせいで、本当に手が負えなくなっていた。

 そのせいで、マジカルブーストの加速を加えて尚、機体が徐々に後ろに下がられれてしまう。

 

 だけど、諦めるつもりなんて微塵もなかった。

 

「サターン! わたくしたちも、()()()()()()()()()()()()()()()!」

「はい、お嬢様! 僕たちは限界はこんなものじゃありません!」

 

 シンクロゾーンで繋がった美月とサターンの思いが、新たな魔法を呼び覚ました。

 

 アークサターンのアークウィングの後ろに魔力が集まり、炎を纏った巨大な光輪が生成された。

 それはまるで焔とマーズをイメージしている様だった。

 

「「マジカルスキル! プラネットファイア!」」

 

 光輪が生み出す炎により、マジカルブーストを遥かに超える加速力を得たアークサターンが、焔たちの合体マジカルスキルを押し返した。

 それだけではない。さらに光輪が生み出す炎がサターンアークブレイクを包み込み、紫の光と赤い炎が合体することで、その威力を極限にまで増大させた。

 

「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッーー!!」」

 

 どこまでも進化し続ける最強のマジカルスキル同士がぶつかり合った。

 そして、お互い威力を相殺が間に合わなくなったことで、スタジアム全体を揺らす程の大爆発を起こした。

 

「きゃあっ……!?」

「お嬢様!?」

『うわぁっ……!?』

『焔君!?』

 

 その衝撃によりアークサターンはバトルフィールドの外壁に叩きつけられた。

 さらにその近くに真っ二つに折れたアークX(クロス)アックスが突き刺さる。

 マジカルバリアはギリギリ壊れていないが、機体のダメージは深刻だった。

 

 そして、さっきの大爆発でバトルフィールド全体を包んでいた土煙が晴れて来ると、御影が声を上げた。

 

『こ、これは……相打ちでしょうか……!?』

 

 その言い方からするに、恐らくはブラッドマーズも同じ様な状態なのだろう。それなら、焔たちもまだ動ける筈だ。

 だから、ボロボロの機体を立ち上がらせ、全身のスラスターに火をつけ、再び突撃させた。

 

「まだですわ……!」

『まだだ……!』

『「まだ決着はついていないッ……!!」』

 

 自分の声と重なる様に焔の声が聞こえて来た。やっぱり……。

 

 機体の魔力は空も同然で、マジカルスキルなんてもう使えないので、アークサターンの両腕のアークガントレットをかぎ爪の様に展開する。

 一方でブラッドマーズも腰に装備したブラッドリボンを右手に巻き付かせた。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」」

『『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッーー!!』』

 

 両者の渾身のパンチがぶつかり合い、その衝撃で右腕がバラバラになった。

 その衝撃で、お互いに一歩後ろに後退してしまう。

 それでも、今度はまだ残っている左腕を構え、再び一歩前に踏み出した。

 

「「焔たちには!!」」

『『美月たちには!!』』

『『「「絶対に負けないッーー!!」」』』

 

 両者の最後のパンチが、お互いの機体の頭部に決まった。

 それと同時に、二機はその場で動きを止め、バトルフィールドが静寂に包まれた。

 

 そして、次の瞬間、マジカルバリアが砕け散る音と共に、アークサターンとブラッドマーズの二機はその機能を停止させた。

 

 

*****

 

 

 学園がバトルの勝敗の判定を録画で確認するのを待つ最中、サターンに促された美月は機体から降りて、バトルフィールドで焔と対面していた。

 

「ありがとう、美月! 最高に楽しくて笑顔になれる、煌めくバトルにできた! 俺も本当に楽しかった! だから、()()バトルしようね! ()はもっと煌めくバトルにしてみせるから!」

「勿論ですわ……!」

 

 興奮した焔は、美月の手を両手で握ると、目を輝かせながら、顔を目と鼻の先まで近づかせて来た。

 焔が()()と、()と、言ってくれたことが自分も嬉しかった。

 

「……それに、お礼を言うのはこちらですわ、焔……! 皆のおかげで、ウィッチバトルが大好きだった気持ちを思い出すことができましたわ……! わたくしも、本当に楽しかった……!」

「本当!? 良かった! 美月がウィッチバトルが好きだった気持ちを思い出してくれて……バトルを楽しんでくれて!」

 

 それを聞いた焔が嬉しそうに笑う中、御影とカロンの声が聞こえて来た。

 

『――(みな)さん、大変長らくお待たせ致しました! バトルの決着を録画を確認したところ……コンマ数秒の誤差すら無い、完全な相打ちと言う結果が確認されました! よってこのバトルはドロー……引き分けです!!』

『いや〜録画判定があるから、完全な引き分けってかなり珍しんだけど……これ程のバトルなら納得だよね〜』

 

 その結果を耳にした焔が再び口を開いた。

 

「引き分けか〜! 勿論、バトルに勝ってなかったのは凄く悔しいけど……でも、これで少しは美月に追いつけたかな? 美月の隣に立てる様になれたかな?」

「っ……!」

 

 美月は焔の言葉に罪悪感を覚えた。

 彼がそう言ってくれているのは、勇気のお呪いを使っている時のお嬢様人格の自分だ。

 

 美月は焔の手を自分から離すと、母の形見であるペンダントを握りしめた。

 でも、これから打ち明けることに、勇気のお呪いを使うことはできなかった。

 

 勇気のお呪いを解いた美月は、目を閉じて懺悔する様に口を開いた。

 

「……焔、()()()()は……()は……本当は焔にそう言って貰える様な人間じゃないんです……」

 

 もう焔には隠し事なんてしたくはなかった。本当の自分のことを知って欲しかった。

 

「本当の私は弱気で臆病で、人見知りで……皆の前では、お母様から貰った勇気のお呪いを使って、お母様の真似をしていただけなんです……。 勇気のお呪いに頼らないと私、は本当は何もできないんです……」

 

 自分から打ち明けて起きながら、幻滅して失望されるのが怖くて、涙が頬を伝い、声も震えてしまっていた。

 

「……知ってたよ。 ()()()()……」

「え……?」

 

 焔の言葉に美月は思わず目を見開いた。

 

「どう言うことですか……? じゃあ、初めて出会った入学式の日から……?」

「ううん……それよりも少し前……街中でチャンピオンバディのバトルの映像を見て皆が笑顔になる中、俺は一人だけ悲しそうな表情をしている女の子のことを……美月のことを見つけたんだ」

「あ……」

 

 その言葉で美月も思い出した。

 サターンと出会ったあの日、メカニカルウィッチ研究所に向かう途中、車酔いをして休憩の為に、大きなショッピングモールに立ち寄った時のことを……。

 そこで、自分と同い年くらいの少年少女と、その相棒たちのことを見つけたことを……。

 

「……あの子たちが焔たちだったんですね……」

「そっか……美月も俺たちのことを見つけてたんだね……」

 

 あの日、美月が焔たちのことを見つけた様に、焔もまた美月のことを見つけていたのだ。

 ある意味あの日が、美月と焔が初めて出会った日だったのだ。

 

 焔は、美月を安心させる様に微笑みながら、改めて口を開いた。

 

「俺はいつも……美月が勇気を持って頑張っているの姿を見て凄いって思ってた! 正体不明機(アンノウン)や暴走したハイパーキングレオに襲われた時だって、美月は勇気を持って立ち向かって、俺の……皆の命を助けてくれた! 美月は、自分は本当は何もできないって言ってるけど……そんなことはないよ! だって、そんな強さを含めた全部が美月なんだから!」

「焔……でも……」

「うん、美月の言う通り……周りの人たちから明日斗博士の娘として特別視されたせいで、美月が自分の内面を……弱さを周囲に明かせなかったことも分かっている……。 だけど、これからは俺が……ううん、俺たちが友達として美月の隣にいるから! そして、そんな周りの人たちを変えるキッカケになってみせるから! だから、もう大丈夫だよ!」

「焔……!」

 

 その言葉を聞いた美月の紫水晶(アメジスト)の瞳から涙がボロボロと溢れた。

 だって、初めてだった。皆が自分から離れて行く中、家族以外の他人で、そう言ってくれた人は。焔みたいな人は。

 だから、信じたいけど、信じられなくて、美月は思わず縋る様に問いかけた。

 

「……私を置いていかない?」

「うん、絶対に置いていかないよ!」

「……私を一人にしない?」

「うん、絶対に一人にさせないよ!」

「……私とずっと一緒にいてくれますか?」

「うん、約束するよ! 俺はずっと美月の隣にいるって!」

 

 焔がそう約束してくれたおかげで、美月もやっと安心できた。

 彼なら自分とずっと一緒にいてくれると思えた。自分も彼とずっと一緒にいたいと思った。

 

 美月は、自分の瞳から溢れる涙を両手で何度も拭った。

 それでも、嬉しさのあまり流れる涙を止めることはできなかった。だって本当に嬉しかったのだ。

 だけど、焔には泣いている顔じゃなくて、ちゃんと笑顔でお礼を言いたかった。

 だって、今ならきっと心から笑えるから……。

 

「――ありがとう、焔……! 約束ですよ……!」

 

 美月は天使の様な満面の笑顔でそう伝えた。

 まだ紫水晶(アメジスト)の瞳から涙が溢れていて、泣き笑いに近い形だったが、それでも心から嬉しそうな、とても綺麗な笑顔だった。

 

 そして、それを見た焔も満面の笑顔を浮かべながら、口を開いた。

 

「……!! やっぱり、美月には笑顔が一番似合うね! 俺、美月のこと()()()だよ!」

「ふぇっ……!?」

 

 焔が口にした()()と言う言葉を聞いてた美月の頭は、一瞬でキャパオーバーを起こし、爆発してしまった。

 

(え……?? す、好き……?? ほ、焔が……?? わ、私を……?? それって笑顔がってこと……?? それとも……??)

 

 頭から湯気が出ていると錯覚するくらい熱くなり、自分の顔が赤くなるのを感じた美月は、恥ずかしさから両手で顔を必死に隠した。

 だけど、その姿を見て心配した焔に触れられたことで、美月は限界を迎え、倒れてしまった。

 

 

*****

 

 

「……は??」

 

 美月の兄として後方で腕組みする様に見守っていたサターンは、突如ぶち込まれた爆弾に、理解が追いつかなかった。否、脳が理解することを全力で拒んでいた。

 それでも顔を真っ赤にした美月の……妹の姿を見て、現実を突きつけられたことで、感情が一気に爆発した。

 

「ば、馬鹿野郎ッーー!? 焔ッ!! いや、赤火焔ッ!! 僕はお前に……いや、貴様に美月のことを頼むと言ったが、そう言う意味で言ったんじゃないッ!!」

 

 サターンは兄としての口調で怒鳴り散らした。

 もうバトルの中継は終わっているから観客席には聞こえないから大丈夫……などと言うことは、もはやどうでも良かった。仮に聞こえていたって、今はそんなの気にしている場合ではなかった。

 

「僕は美月のお兄様として、絶対に認めんぞッ!! だって、妹はまだ十五歳で、未成年で、子供で、まだこんなに幼いのにッ!! 早いッ!! 早過ぎるッ!! せ、せめて後三年経って成人してから……あばばばばばばばばばば!!」

 

 サターンはぶっ壊れた機械の様に情緒不安定になっていた。

 それでも、例え脳を破壊されたとしても、妹を守ると言うたった一つの願いの為に、戦闘不能で動けない筈のアークサターンの機体を、謎の気合いと根性で動かした。

 

 しかし、サターンと同じ様に、謎の気合いと根性で動いたマーズがそれを止めた。

 

『コラコラ! せっかく私の弟君と、サターンの妹ちゃんが良い感じになりそうなんだから邪魔しないの! お互い姉と兄として見守りましょう?』

「ええい、離せマーズッ!! 僕は妹を守らねばならないんだッ!! 美月のお兄様としてッ!! もう一人の黒土陽……!」

『ちょ……それ聞かれたらダメなやつッ!! わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!』

 

 暴走したサターンをマーズが必死に止める中、その足元では焔が慌てた様子で、倒れた美月を抱き抱えていた。

 

「み、美月、大丈夫!?」

「ふぇぇ……」

 

 

*****

 

 

「良かったですね、リン……!」

「ええ、グリ……! お嬢様がまた笑顔になってくれて本当に良かった……!」

 

 観客席の最前列にいたリンは、美月が再び天使の様な笑顔を見せてくれた嬉しさから、涙を流していた。

 そんな自分の体を支えてくれているグリも微笑みながら涙を流していた。

 

 ここからでは声こそは聞こえなかったが、それでも美月の側にいた自分なら、彼女の表情からどんなやり取りをしたのかが直ぐに分かった。

 リンは遠目に見える美月の姿を目にしながら、嬉しそうに口を開いた。

 

「――お嬢様の笑顔を取り戻してくれて、本当にありがとうございます……! これからもお嬢様をよろしくお願いします……!」

 

 

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