メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第34話「エキシビジョンマッチ!天王寺麗とウラノス!」

 

 

 ――お昼休み。学園の地下にあるメカニカルウィッチ学園第七スタジアムにて。

 

 今回のバトルフィールドである『天空城』は、その名の通り、中央に立つ巨大な城を含めた土地が、反重力により浮島として空中に浮かんでいた。

 城がある中央の浮島の周辺には、いくつもの小さな浮島が浮かんでおり、仮に下に落ちても反重力で強制的に上に戻される様になっていた。

 ……とは言え、地上戦を主体にした機体よりも、空中戦を主体にした機体が有利なのは明らかな為、必然的に飛行魔法などの難しい魔法が使える上級者向けのステージになっていた。

 

 そんな天空城でスカイウラノスとバトルしている、ブラッドマーズ、ウルフマーキュリー、ゴーレムジュピター、ノーブルヴィーナス、シャドウカロンの姿を、美月は観客席から見ていた。

 

(……焔、私を置いて行かないって……一人にしないって言ったのに……!)

 

 あの後、先ずは学園リーグランキングの一位と二位で、去年の全国大会の優勝者と準優勝者である、輝と咲良が戦力的に別れてそれぞれのチームのリーダーを務めることになった。

 それからネオンから指名されている美月と、リーダーの二人を除く面々の希望を聞くことになり、焔はやはり従兄弟と言うこともあって麗の方を希望し、それに冬馬と小春が乗っかってしまった。

 一方でネオンの方には、歌は当然として、意外なことに王牙が希望して来た。

 逆に御影はかなり頭を悩ませていて、秀次はどっちでも良いと言った感じだった。

 すると咲良が、秀次を引き取るついでに、個人的に美月に注目しているから、ネオンとバトルするチームのリーダーをすると言った。

 その結果、麗とバトルする輝、御影、焔、冬馬、小春のチームと、ネオンとバトルする咲良、王牙、秀次、歌、美月のチームに別れることになってしまった。

 

(うぅ……先輩たちばかりのチームで肩身が狭いです……! せめて、輝先輩がいてくれたら……!)

 

 美月は心の中で悲鳴を上げながら、焔と輝に助けを求める様に、二人の機体を目で追っていた。

 

 

*****

 

 

「――やっぱりうら……チャンピオンバディは煌めき強いや!」

「ええ! 流石、私と焔君の夢の目標だわ!」

 

 中央の浮島にある城の城門の前で、麗とウラノスの機体であるスカイウラノスが、学園リーグランキングトップ十の自分たちを圧倒していた。

 

 スカイウラノスは純白の白を基調とし、空を思わせるターコイズブルーの明るい緑掛かった青い装飾を纏った機体で、鎧を着込んだ戦士を思わせる、全体的にマッシブな体型をしていた。

 その両肩の盾や、腰部のコンテナ、さらに背部のバックパックなどの機体の各部に『スカイウェポン』と呼ばれる大量の武装を装備しており、それを合体変形させることで、全ての武器種を扱うことができた。

 それこそが、麗とウラノスが、ネオンとネプチューンに勝つ為に生み出したと言う、最強のバトルスタイルであった。

 

 だが、それはあくまでも理論上は強いだけで、使いこなすとなると話は変わってくる。

 現にチャンピオンバディに憧れた人たちが真似をしても、結局は中途半端な器用貧乏にしかならなかった。

 しかし、麗たちはネオンたちに勝つ為に、血の滲むような努力を重ね、各武器種を完璧に使いこなせる様になっていた。

 

 焔は従兄弟として、そんな麗たちの強さを昔から良く知っていた。

 だからこそ、焔は限界を超えて麗たちと言う巨大な壁を乗り越える為に、相棒であり姉でもあるマーズの名前を叫んだ。

 

()()()()()()()! チャンピオンバディに、俺たちの全力をぶつけるよ!」

「ええ、焔君! お姉ちゃんに任せなさい!」

「「――シンクロゾーン!」」

 

 シンクロ率が百パーセントのその先へと至ったことで、人間である焔の赤い瞳にも、マーズの紫の瞳の色が混じり合った。

 文字通り二人で一つの存在になった焔たちは、自分たちが新たに生み出した魔法を使った。

 

「「マジカルスキル! 幻影の炎! +(プラス)マーズファイア!」」

 

 幻影の炎で作り出したブラッドマーズの影分身をマーズファイアの弾丸にすることで、炎を纏った実体を持つ分身へと生まれ変わらせた。

 

「「合体マジカルスキル! マーズファイア・陽炎(かげろう)!」」

 

 そのままドローン武器の様なら動きで、一斉にスカイウラノスへと突撃させる。

 

『へへっ! 焔とマーズなら、シンクロゾーンに至れるって思ってたぜ! それに、それが焔たちが言っていた合体マジカルスキルか! ウラノス!』

『おう、麗! 焔たちの力がどれ程の物か、確かめてやろうぜ!』

 

 スカイウラノスは両肩の『スカイシールド』に収納されていた『スカイランス』と、バックパックに装備していた水晶の『スカイスフィア』を合体させ、長杖の『スカイロッド』を作り出した。

 

『『マジカルスキル! ウラノスバリア!』』

 

 スカイウラノスの周囲に、青いバリアが生成された。

 そこに分身たちが群がることで大爆発が起きる。

 しかし、あくまでも破壊できたのはバリアだけで、中のスカイウラノスは無傷だった。

 

 焔は合体マジカルスキルを防がれた悔しさから、思わず声を漏らした。

 

「くっ……! ()()()()、硬い!」

『いいや、()()()()()()()()()()()()()()()()()ウラノスバリアを破ったのは見事だぜ、焔! この威力で追尾性能付きは凶悪だ!』

 

 自分たちにウィッチバトルを教えてくれた麗たちだったこともあり、お互いに相手のマジカルスキルの性能を把握していた。

 

 麗たちはネオンたちとは違い、魔法の扱いがそこまで上手い訳ではない。何なら、自分たちの方が才能があると誉めてくれたくらいだ。

 それ故に、麗たちは普段はプロの基準である三つ同時発動が限界らしかった。

 

 しかし、それでは機体にセットできる()()()()()()()()()ができるネオンたちに敵わない為、麗たちは発想を変えたらしい。

 つまり、三つ同時が限界なら、一つのマジカルスキルで三つ分を補えば良いじゃん、と。それを三つ同時に使えば、実質的に九つ同時に使える様なもんじゃん、と……。

 言うだけなら簡単だが、それには消費する魔力も増えるし、難易度も上がるなど、いろいろな問題があった。

 

 それでも麗たちは、ネオンたちに勝つ為に、消費する魔力は一つ分でも威力は三倍のマジカルスキルを本当に作ってしまった。

 それはウラノスバリアだけではなく、麗たちの使う固有魔法は基本的に三倍の威力なのがデフォルトになっていた。

 

『お返しだぜ、焔!』

『喰らいやがれ!』

『『マジカルスキル! ウラノスブースト!』』

 

 スカイロッドの先端に巨大な魔法の弾丸が生成された。

 これは各武器の攻撃を必殺技並の威力に引き上げた上で、さらに三倍の威力にすると言う汎用性の高い魔法だった。

 

 そんなスカイウラノスの背後の影が動いた。

 

『『マジカルスキル! カロンシャドウダイブ!』』

『貰いましたよ!』

『巻き添え自爆は嫌なんだけどな〜』

 

 魔法で影に潜っていたシャドウカロンが、死角から麗たちに奇襲を仕掛けた。

 御影とカロンの自爆覚悟の突撃にによって、発射寸前の魔法が暴発した。

 

『おっと危ねえ!』

 

 それに気づいた麗は、スカイロッドを咄嗟に投げ捨てて距離を取った。その爆発に御影たちの機体が巻き込まれる。

 しかし、その爆発の中から分離してドローン武器となった四肢が現れた。

 合計八つのドローン武器がスカイウラノスを取り囲むと、一斉にアンカーを放った。

 

『これならどうです!』

『成程! 面白いギミックだ!』

 

 スカイウラノスは腰部のコンテナに装備した『スカイライフル』と『スカイナイフ』を合体させて、『スカイガンソード』を作り出し、両手に装備した。

 それを使ってアンカーを斬り払いながら、射撃でドローン武器を落としていく。

 

 そんなスカイウラノスの元に、飛行魔法で飛んでいるノーブルヴィーナスによるビームの雨が降り注いだ。

 さらにそれと同時にノーブルマルチウィングが左右から襲いかかる。

 

『どうした! どうした! 射撃が甘いぞ!』

『へっ! 高校生チャンピオンバディの力はこんな物かよ!』

 

 しかし、麗たちは、輝たちの正確無比な狙撃を躱しながら、射撃で射撃を撃ち落とた。

 

『くっ……!? ()()()()()……!?』

『っ……!』

 

 あの輝とヴィーナスが珍しく苦悶の声を漏らしていた。

 

 そんなノーブルヴィーナスを撃ち落とそうと、スカイウラノスが狙いを定めた……その時だった。

 死角からウルフマーキュリーの氷の矢による狙撃が音もなく飛んで来た。

 

『――ッ!? 危ねえ!?』

 

 それに間一髪気づいた麗は、咄嗟にスカイガンソードを投げて、その軌道を逸らした。

 

『くっ……! マーキュリーアローが防がれた……!』

『完璧なタイミングだったのだがな……!』

『ハハッ! 焔から冬馬君たちの狙撃は凄いって聞いていたが、今のは本当に危なかったぜ! ウラノス!』

『おう、麗! 先にアイツから仕留めるぜ!』

 

 スカイウラノスはスカイシールドに収納されている『スカイブレード』の二つ合体させて『スカイボウ』を作り出した。

 

『『マジカルスキル! ウラノスブースト!』

 

 残ったスカイガンソードを矢に、一機だけ中央の浮様から離れた小さな浮島にいるウルフマーキュリーに狙撃を放った。

 

『『マジカルスキル! ジュピターウォール!』

 

 だが、スカイウラノスの攻撃を、間に割って入ったゴーレムジュピターが、盛り上がった地面に樹木が絡みついた自然の盾を作って受け止めた。

 自然の盾が破壊されるが、その反動で攻撃を弾き返しした。

 

『ウラノスブーストを防ぐなんてやるじゃないか! 小春ちゃんたちのガッツも凄いって、焔たちから聞いてるぜ!』

『ありがとうございます! でも、あたしたちは防御だけじゃないんです! 行くよ、ジュピター!』

『う、うん……! 頑張るよ、小春ちゃん……!』

『『マジカルスキル! ゴーレムジュピターサモン!』』

 

 ゴーレムジュピターが両腕を地面に突き刺すと、城の瓦礫でできた巨人が現れた。

 そのまま召喚した巨人を引き連れ、スカイウラノスに攻撃を仕掛ける。

 

『冬馬たちも、焔たちも、あたしたちに合わせて!』

『『マジカルスキル! マーキュリーウルフハント!』』

 

 小春の要請に応える様に、ゴーレムジュピターと巨人の後ろから、冬馬たちが放った狼の形をした矢の軍団が現れた。

 

 焔もまた、小春の要請に応えるべく、準備を始める。

 単騎では敵わなくても、幼馴染三人ならば、麗たちに届く筈だ。

 

「「マジカルスキル! マーズブラッドムーン! +(プラス)マーズブラッドサイス!」」

 

 ブラッドマーズのブラッドロッドの先端に宿した巨大な赤い月を依代に、三日月の様な形をした巨大な星の鎌を作り出した。

 

「「合体マジカルスキル! マーズブラッドサイス・(あかつき)!」」

 

 そして、ブラッドマーズは、スカイウラノスを挟み撃ちする形で攻撃を仕掛けた。

 

 それを見た麗たちは臆することなく、不敵に笑った。

 

『良い連携だ……! だけど、俺たちもチャンピオンバディとして、負けるつもりはないぜ! そうだろ、ウラノス!』

『当然だぜ、麗! 世界最強の力を見せてやろうぜ!』

 

 スカイウラノスは二振りのスカイブレードをスカイシールドに収納すると、今度はその盾を連結させて『スカイアーマーシールド』を作り出して装備した。

 その大盾でゴーレムジュピターと巨人を真正面から受け止めた。

 

 その隙に焔たちは背後を、冬馬たちの狼の形をした矢は側面から攻撃を仕掛けようとした。

 しかし……。

 

『『マジカルスキル! ウラノススカイウィング!』』

 

 スカイウラノスの背中に、暴力的なまでの魔力量を誇る巨大な光の翼が出現したことで、その反動でブラッドマーズと、狼の形をした矢は吹き飛ばされてしまった。

 

 ウラノススカイウィングは麗たちの切り札の一つだ。

 圧倒的なパワーとスピードを機体に付与することで、ウラノスの由来でもある天空神に相応しい飛行性能を得ることができる。

 

 それは、ゴーレムジュピターと巨人を抱えたまま空を飛翔できる程だった。

 スカイウラノスは虹を描く様な軌道で、ゴーレムジュピター諸共、ウルフマーキュリーがいる小さな浮島へと突っ込んだ。

 

『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?』

『小春ちゃん!?』

『うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?』

『冬馬!?』

 

 その衝撃により、ゴーレムジュピターとウルフマーキュリーのマジカルバリアを破壊した。

 さらに小さな浮島が崩壊したことで、二機は下へと落ちていった。

 

 それとは反対にスカイウラノスは、もう遥かを上空を飛行していた。

 そのまま飛行魔法を凌駕するスピードで、ノーブルヴィーナスの元へと迫る。

 

『行くよ、ヴィーナス!』

『はい、マスター……!』

『シンクロゾーン!』

『シンクロゾーン……!』

 

 輝たちはシンクロゾーンを発動させようとした様だったが、何故か逆に動きが止まってしまっていた。

 

『――ッ!? 何故……!?』

『っ……!』

 

 ただでさえ、スピードで負けているのに、そんな隙を見せてしまったのはあまりにも致命的だった。

 麗たちは、いつの間にか持ち替えていた『スカイソード』の二振りで、すれ違い様にノーブルヴィーナスを切り裂いた。

 

『くっ……!?』

『マスター!?』

 

 その衝撃でマジカルバリアを破壊されたノーブルヴィーナスは、中央の浮島から投げ出される様に下へと落下していった。

 そんな中、スカイウラノスはもう中央の浮島にある城門前まで戻って来ていた。

 

 だけど、焔はこのまま負けるつもりなんて微塵もなかった。

 すると御影たちの声が聞こえて来た。

 

『焔君! マーズちゃん! 私ちゃんたちが援護するので一緒に攻撃しますよ!』

『分かりました、御影先輩!』

 

 ドローン武器である手足を全て落とされながらも、まだ本体が無事だったシャドウカロンが胸部の装甲を展開して、中にある魔石を露出させた。

 

『『マジカルスキル! プルートゴーストキャノン!』』

 

 ブラックホールの様に周囲の魔力を食い尽くした超巨大なビームが発射される。

 焔たちもそれに合わせる様に、マーズブラッドサイス・暁を振り下ろした。

 

『ハハッ! 相手にとって不足はないぜ! そうだろ、ウラノス!』

『ああ、麗! 全部ぶった斬ってやろうぜ!』

『『マジカルスキル! ウラノススカイカリバー!』』

 

 スカイウラノスは二振りのスカイソードと二つのスカイシールドを合体させ、巨大な大剣であるスカイバスターソードを作り上げた。

 さらに、それを依代として、機体の大きさを優に超える超巨大な光の剣を召喚する。

 

 そして、規格外の三つのマジカルスキルが激突した。

 その衝撃によって城が崩壊していく中、焔たちは必死に機体を踏ん張らせていた。

 

「俺とマーズ姉ちゃんの最強のマジカルスキルを使っているのに……!」

「やっぱり規格外過ぎるわ!」

『お姉ちゃんのマジカルスキルを借りているのに……!』

『冗談じゃないよ〜』

 

 マーズブラッドサイス・暁とプルートゴーストキャノンを足して、ギリギリ拮抗できるくらいだった。

 

 ウラノススカイカリバーは麗たちの最強の切り札だ。

 究極を体現したこのマジカルスキルは、ネオンたちの切り札である海神の支配する空間(ネプチューンマリンフィールド)に唯一対抗できると言われているだけあって、天空神の名前に相応しい規格外の力を持っていた。

 

 でも、これでもまだ全力じゃない。()()()()()()()()()()()()()()

 

『まだ行けるよな、ウラノス!』

『当ったりめぇよ、麗!』

『『――シンクロゾーン!』』

 

 麗たちの全力が……シンクロゾーンが発動したことで、ウラノススカイカリバーの威力が別次元に見えるくらいに増大した。

 それと真正面からぶつかり合える者など、ネオンたち以外にいる筈もなく、ブラッドマーズとシャドウカロンは自身のマジカルスキル毎吹き飛ばされた。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」

「焔君!?」

『ほわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?』

『御影ちゃん!?』

 

 マジカルバリアを破壊され、戦闘不能になった機体が空中へと投げ出される中、焔はスカイウラノスの姿を……憧れのチャンピオンバディの姿をその目に焼き付けていた。

 

(やっぱり麗兄ちゃんたちは煌めき強い奴や……!)

 

 無傷のまま学園リーグランキングトップ十の五人を倒した麗たちは、スカイウラノスのスカイバスターソードを天高く掲げながら、勝利を宣言した。

 

『これが俺とウラノスの……』

『世界で一番の相棒の……』

『『チャンピオンバディの力だ!!』

 

 

*****

 

 

「――まさか、本当に焔たちに無傷で勝つなんて……。 それに輝先輩たちまで……」

「それに、チャンピオンバディは、基本的に焔たちと同じ武器種を使って勝利しています……」

 

 観客席からバトルを見ていた美月とサターンは思わず言葉を溢していた。

 

 バトルが始まる前までは、どこまでも進化する焔たちと、自分たちよりも強い輝たちなら、チャンピオンバディが相手でもハンデがあればもしかしたら、と思っていた。

 だが、結果として麗たちは、使用する武器種を相手と同じ物に合わせた上で、無傷で勝利した。流石はチャピオンバディだ。

 

 そんな美月たちの耳に、歌とピスケス、それから王牙とレオのやる気に満ちた声が聞こえて来た。

 

「さあ、ピスケス!! いよいよ、憧れのネオンさんたちとバトルする時がやって来ましたよ!!」

「わ、分かったから……! 少し落ち着きなさい、歌……!」

「よっしゃ! 最強と呼ばれる海姫ネオンさんたちを超えるぞ、レオ!」

「勿論であーる、王牙! 吾輩たちが最強を名乗る為にも、必須条件なのであーる!」

 

 隣のスタジアムに割れ先にと走っていく歌たちを見ながら、秀次とスコーピオがポツリと呟いた。

 

「あの海姫さんたち相手に勝てる訳ないのに、やる気出してどうするんっすかね〜?」

「理解不能……」

「秀次、何か言ったかしら??」

「な、何でもないっすよ、お嬢!!」

 

 咲良に睨まれた秀次は、逃げる様に去って行った。

 

 その様子を見ていた美月も隣のスタジアムに移動しようとした。

 しかし……。

 

「待ちなさい、美月……」

兜蟹(かぶとがに)先輩……?」

 

 美月は呼び止められたことで足を止めた。

 

「咲良で良いわ……。 丁度アタシたちだけになれたし……いつまでも隠しておくのは性に合わないから、個人的にアンタたちに注目しているって言った理由を話しておくわ……」

 

 それから、咲良は一度目を閉じて深呼吸をしてから、その口を改めて開いた。

 

「……アンタにとっては辛いことを思い出させてしまうかもしれないから、先に謝らせてちょうだい、ごめんなさい……」

「誠に申し訳ないでござる!」

 

 咲良とキャンサーは頭を下げた。

 

「……でも、ちゃんと話しておきたかったの……アンタのお兄さんのことを……陽太(ようた)君のことを……」

「お兄様の知り合いだったんですの!?」

 

 咲良から兄の話が出たことで美月は思わず叫んだ。

 頭を上げた咲良は、そんな美月を見ながらも、どこか遠い表情をしていた。

 

「……ええ、陽太君はアタシの最初のライバルで……憧れの人だったの……」

 

 

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