メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第39話「リベンジマッチ!アークサターンVSノーブルヴィーナス!」

 

 

 ――翌々日の月曜日の放課後。学園の地下にあるメカニカルウィッチ学園第六スタジアムにて。

 

『――さあさあ始まりました! (みな)さん大好き学園リーグ戦のお時間です! MCを務めるのは、(みな)さんお馴染み、私ちゃんこと冥道神影と……!』

『はいは〜い、相棒のカロンちゃんだよ〜』

『今回の対戦カードはななな何と! 学園リーグランキングの頂点である不動の一位にして、去年並びに一昨年の全国大会高校生の部の優勝者である、高校生チャンピオンバディの白金会長とヴィーナスちゃんが登場だ! それに対するは、学園リーグランキング六位の美月ちゃんとサターン君です!』

『風の噂では、両者は以前対戦したことがあるらしいけど……公式戦としてはこれが初めてになるね〜』

『私ちゃんとしても非常に楽しみなのですが……どうやら現在、諸事情により少し開始が遅れている様なので、(みな)さんも今暫くお待ち下さい!』

 

 御影とカロンのアナウンスが聞こえてくる中、美月とサターンはバトルフィールドへと繋がる選手用の通路にいた。

 

 元々の予定であれば、今日のプロリーグの試合を終えたネオンたちと麗たちが、もうとっくに到着している筈だった。

 しかし、向こうでちょっとしたアクシデントがあって、タイムスケジュールが予定よりも遅れてしまったらしい。

 それに加え、本格的に梅雨入りした影響で、外は大雨の為、学園に到着するのが遅れているらしかった。

 

 だけど、つい今し方、学園の方から麗たちとネオンたちが到着したとの連絡が入ったので、美月たちはバトルの準備を始めようとした。

 

「お〜い、美月! サターン!」

「ほ、焔……? それに皆も?」

 

 通路の奥からこちらへと走ってくる焔たちを見た美月は、主に焔に対して挙動不審になってしまった。

 

 今日から六月となり、季節的にはもう直ぐ夏になる為、美月は夏服へと衣替えを行なっていた。

 そんな訳で、制服も瑠璃色のセーラーブレザーから白色の半袖のセーラー服へと変わり、膝下まである濃紺のロングスカートも短い物へと変わっていた。

 そして何より、黒いタイツがなくなったことで、足を始めとした素肌が晒されることになり、それを自分が意識している焔に見られることに、美月は恥ずかしさを覚えていた。

 

 それでも、今朝は焔たちは珍しく遅刻ギリギリに来てたし、休み時間も昼休みも、何やら忙しそうに作業していた。

 でも、この感じだと終わったのだろうか?

 

「良かった、間に合って! はい、これ!」

「これは……ブレスレットですか?」

 

 焔がプレゼントして来たのは、手作り感満載のお守りの様なブレスレットだった。

 だけど、綺麗なアクセサリーなどの装飾が施されており、美月に似合う様にデザインされていた。

 

「うん! 美月ちゃんたちが輝先輩たちと学園リーグ戦をするって聞いたから、あたしたち皆で勝利の願掛けを込めて作ったんだ!」

「ぎ、ギリギリになっちゃったけど……何とか完成して良かったよ……!」

「それから、最近学園でいろいろと事件が起きているから、お守りの役割も兼ねているんだ」

「フッ、何事もなければ良いのだがな……」

「焔、マーズ! 小春、ジュピター! 冬馬、マーキュリー! ありがとうございます……!」

「感謝する……!」

 

 美月は焔たちにお礼を言いながら、マジカルウォッチがついていない右腕にお守りをつけた。

 時間も殆どない中、お店で購入と言う選択肢もあっただろうに、わざわざ手作りで作ってくれたことが本当に嬉しかった。

 

「うん! どういたしまして! この煌めきなお守りはきっと美月たちのことを守ってくれる筈だよ! それに、もし何か起きたら、俺たちが必ず助けに行くから!」

「焔君の言う通りよ! だから、気兼ねなくバトルに臨んで、そのまま学園リーグランキングの一位を取るのよ!」

 

 焔たちはそう言うと、応援の為に観客席の方へと向かって行った。

 それを見送った美月は、改めてバトルの準備を始めた。

 

 美月は手始めに、勇気のお呪いを呟いて、意識をお嬢様人格へと切り替えた。

 輝にはもう既に、本来の自分のことを明かしているとは言え、バトルの時やシンクロゾーンに入る時など、本気になる時はこっちの方が良かった。

 

「サターン! 皆の応援に応える為にも、輝先輩たちに勝ちに行きますわよ!」

「はい、お嬢様! 行きますよ!」

「「――マジカルチェンジ!」」

 

 ――変身魔法が発動すると、巨大な光と大きな音と共に、スーパーメカニカルウィッチとなったアークサターンが顕現した。

 

 

*****

 

 

 今回のバトルフィールドである『花畑』は、その名の通り、辺り一面の満開の花畑が特徴的で、その見た目から女性人気が高かった。

 全体的に少し高低差のある丘になっているが、見晴らし自体は良い為、目立った障害物のない『荒野』と同様に、地形に左右されずにバトルしやすいバトルフィールドになっていた。

 

 そんな花畑にアークサターンとノーブルヴィーナスは、互いの位置を視認する様に立っていた。

 そんな訳で、美月と輝はバトル開始前に、専用の回線でやり取りしていた。

 

『それじゃあ、()()()()。 正体不明機(アンノウン)の介入に警戒しつつ、学園リーグ戦として本気のバトルをしよう』

「ええ、よろしくお願いしますわ!」

 

 バトルの為に自分もお嬢様人格になっているから、あまり人のことは言えないが、輝は大事な話をした次の日には、もう元の生徒会長としての話し方に戻ってしまっていた。

 そのことに少し距離感を感じる中、輝がオープン回線で声を発した。

 

『それじゃあ、冥道(めいどう)さん。 進行を頼むよ』

『お任せ下さい、白金会長! それでは、(みな)さん、お待たせしました! 学園リーグ戦、バトルスタートです!』

 

 バトル開始の合図に合わせて、焔たちがいつもしている様に、美月たちもアークサターンをスタートダッシュさせた。

 

「先ずは距離を詰めますわよ、サターン!」

「了解です、お嬢様!」

 

 アークサターンとノーブルヴィーナスは共に、攻撃と防御とスピードが高い次元で揃っているバランス型の機体だ。

 だけど厳密に言えば自分たちの機体は近距離戦闘を得意とするパワー寄りで、その一方で輝たちの機体は遠距離戦闘を得意とするスピード寄りだ。

 それ故に距離を詰められればこちらが有利になるが、逆に距離を取られると不利になってしまう。

 

 それをお互いに理解しているので、美月たちが機体のスラスターに火をつけ一気に突っ込んで来る前に、輝たちは飛行魔法を発動させ、機体を一気に上空へと飛翔させた。

 そのまま背部のノーブルマルチウイングを発射すると、両手のノーブルガンソードで牽制を兼ねた狙撃を放って来た。

 さらに二機のドローン武器からも狙撃を放って来る。

 

「当たりませんわ!」

 

 相変わらず正確無比な狙撃だったが、美月も魔力が見える目でその射線を読んで回避する。

 だけど、今飛び上がっても、きっと前回のバトルの時の様に空中で撃ち落とされてしまうだろう。

 それなら……。

 

 美月たちがそのまま回避に専念していると、輝たちは上空からだけではなく、多方面から射線を通す為に、ドローン武器を左右から回り込む様に降下させて来た。

 それを確認した美月たちはすかさず動いた。

 

「「マジカルスキル! プラネットファイア!」」

 

 アークサターンの背中に炎の光輪を発生させ、マジカルブーストを超える速度で飛び上がった。

 二機のドローン武器をすれ違う様に追い越し、そのまま置き去りにする。

 

『しまった……!?』

 

 それを見た輝たちは、直ぐにドローン武器を反転させ、アークサターンを追いかけさせた。

 それと同時に、二丁の銃剣による狙撃を継続しながら、機体をさらに上空へと上昇させた。

 だが……。

 

「逃しませんわ! サターン!」

「はい、お嬢様! 一気に決めますよ!」

「「マジカルスキル! サターンスラッシュ!」」

 

 美月たちは、輝たちの狙撃をアークシールドで受け止めながら、アークソードの刀身を延長させた。

 さらにプラネットファイアの炎をサターンスラッシュに纏わせることで威力の増大させる。

 そのまま魔力が見える目を使って、必中コースでノーブルヴィーナスへと放った。

 

『くっ……!? ヴィーナス!』

『はい、マスター……!』

『『マジカルスキル! ヴィーナスセイバー』』

 

 避けられないことを悟った輝たちも、すかさずノーブルガンソードの銃身に光の剣を発生させ、マジカルスキルをマジカルスキルで迎撃しようとした。

 だが、パワーならこっちが上の為、そのままヴィーナスセイバーごと切り裂いた。

 

『くっ……!?』

『マスター!?』

 

 そのまま爆発に飲み込まれたが、まだ落とし切れていない。

 美月はトドメを刺すべく、アークサターンを突っ込ませようとした。

 

「このまま一気に……! ――ッ!?」

 

 しかし、後ろから追いついて来たドローン武器の射撃を察知し、咄嗟に機体に回避行動を取らせた。

 だが、それとほぼ同時に爆発の煙の中からも射撃が飛んで来る。立て直すのが早い。

 しかも、片方を避けても、もう片方が避けられない様に放たれていたこともあり、回避できずに攻撃を受けてしまった。

 

「きゃあっ……!?」

「お嬢様!?」

 

 そのまま下へと落下するが、地面に激突する前に機体のスラスターを全開にし、何とか着地に成功した。

 

「お嬢様、ご無事ですか!?」

「ええ、わたくしは大丈夫ですわ……。 それに、初めてノーブルヴィーナスにダメージを与えられましたわ」

 

 花畑の中からアークサターンが空を見上げると、機体の顔の左頬から左肩にかかる部分に明確なダメージを受けたノーブルヴィーナスがこちらを見下ろしていた。

 ダメージを受けた位置の関係で、どこか左目から涙を流している様にも見えた。

 その機体の周辺にノーブルマルチウイングを展開させているのを見るに、もう同じ手は通用しないだろう。

 

「やっぱり輝先輩たちは強いですわ……! でも、わたくしたちだって、輝先輩たちに負けてから、この学園でいろんなバトルを経験して来たのです……!」

「ええ、僕たちだって強くなったんです! もうあの時とは違います!」

 

 入学式の日の焔とマーズとの始まりのウィッチバトルから、輝とヴィーナスとの非公式のスーパーウィッチバトル、それから御影とカロンと歌とピスケスとのタッグ戦、王牙とレオとのチーム戦などいろんなバトルがあった。

 そして、焔とマーズとの本気のバトルに、二大チャンピオンバディであるネオンとネプチューンとのエキシビジョンマッチもあった。

 この学園で行って来た数々のバトルが、美月とサターンの経験値となり、二人はここまで強くなれた。

 

 美月は目を閉じて、母の形見であるペンダントを両手で握りしめ、勇気のお呪いを重ねがけした。

 

「――頑張れ、私! 頑張りなさい、わたくし!」

 

 この学園の頂点である輝たちと言う巨大な壁を乗り越える為に、サターンと共に限界を越える。

 

「サターン!」

「お嬢様!」

「「――シンクロゾーン!」」

 

 シンクロ率が百パーセントのその先へと至り、人間である美月の紫水晶(アメジスト)の瞳にも、サターンの真紅の色が混じり合う。

 文字通り二人で一つの存在となり、一心同体、人機一体となる。

 だけど、それだけでは終わらない。シンクロゾーンで繋がった美月とサターンは、新たな魔法を呼び覚ました。

 

「「マジカルスキル! プラネットダーク!」」

 

 アークサターンの全身が黒い炎に包まれたかと思うと、胸部の装甲の一部が展開し、内部にあった魔石が剥き出しになった。

 さらに背中のアークウィングが展開し、悪魔の手をした巨大な翼へと変形した。

 

 その姿は魔王システムを発動した実戦の時に近いが、厳密には違う。

 魔王システムを発動している時以外はロックがかかっていて、競技用のバトルでは使えないアークウィングなどの武装を使用する為に、擬似的に発動させたのだ。

 勿論、競技用のルールには則っているし、流石に無限の魔力ではない為、時間制限もある。

 だけど、これなら競技用のバトルでもこの機体の力を十分に発揮することができる。

 

 そのままアークサターンは、アークソードとアークシールドを合体させてアークX(クロス)アックスを作り出した。

 

「「マジカルスキル! サターンアークブレイク!」」

 

 美月たちは、アークX(クロス)アックスを依代にした紫の光の剣に、黒い炎を纏わせる形で、自分たちの最強のマジカルスキルを放った。

 暴力的なまでの魔力の光が、遥か上空にいるノーブルヴィーナスへと襲いかかった。

 

 

*****

 

 

「くっ……!? 新しいマジカルスキル!? いや、それよりも……! ヴィーナス!」

「はい、マスター……!」

「「マジカルスキル! ヴィーナスノーブルゲート!」」

 

 焔とマーズとの学園リーグ戦で、過去のトラウマから解き放たれた美月の進化は予想以上のものになっていた。

 あのバトルをキッカケに、美月とサターンがシンクロゾーンを自由に発動できる様になったことは把握していたが、まさか今度は魔王システムを擬似的に発動させるマジカルスキルを生み出すなんて……。

 

 ノーブルヴィーナスは、周囲に展開させていたノーブルマルチウィングを円を描く様に旋回させ、巨大な光の門を生成させた。

 そこに向かってノーブルガンソードのビームを撃ち込むことで、その威力と数を増大させる。

 

 アークサターン相手に真正面からパワー勝負を挑むのは悪手なのは分かっている。だけど、こうやってある程度威力を打ち消さなければ、回避すらもままならない。

 しかし……。

 

(()()()()()()()……!? 解決した筈なのに……!?)

 

 美月たちと焔たちの学園リーグ戦見て以来、輝は不調を患っており、その影響がバトルにも出てしまっていた。

 だけどその原因は分かっていた。焔に対して顔を赤くした美月を見て心を乱されたからだ。

 美月との約束を破り、彼女が一番辛い時期に何もできなかった自分に、好きになる資格も、好きになって貰う資格もないと言うのに……。

 

 自分のこの気持ちを、何度も何度も戒めようとしたが無理だった。溢れ出て来てしまった。

 だから、美月に自分との過去を話すことにした。約束を破った自分の罪を打ち明ける為に。

 でも、それには自分のことを思い出して欲しいと言う打算も混じっていた。

 そして、改めて美月のことを守ると誓ったことで、解決したつもりだった。

 

(……以前、美月ちゃんを守る為に、悩んでいたサターン君に無理に発破をかけた僕がこんなザマなんて……!)

 

 四月に起きたメカニカルウィッチ研究所の事件で、輝は自分の姪のレイを助けてくれた美月と再会した。

 その時に、メカニカルウィッチを悪用させない為に、テロリスト相手に戦うことを選んだ美月の姿を見て、やっぱり自分を助けてくれた昔の彼女のままなんだと思った。

 そして、今度こそそんな美月を助けられる様になりたいと思った。

 

 その数日後、メカニカルウィッチ学園に入学した美月を見て、彼女が昔のトラウマに今だに苦しんでいたことを思い知らされた。自分が彼女が一番辛い時期に何もできなかったせいで……。

 それから美月を守る役目を持ったサターンに精神的な弱さがあることに気づいた。

 だから、いざという時に美月に取り返しがつかないことが起きない様に、荒療治になってでもそれを治すことにした。例え、それで彼女に嫌われることになっても……。

 そう覚悟はしていたが、傷ついたサターンの姿を見て、ショックを受けている美月の姿を見るのは胸が痛かった。

 

 だけど結局、自分の行動など殆ど意味はなく、美月とサターンは黒土邸での戦いで、自分たちの力で本当の意味で相棒となった。

 そして、逆に僕はこうして相棒であるヴィーナスの足を引っ張ると言う様になってしまっていた。

 

「マスター……! シンクロゾーンを……!」

 

 いつもは冷静なヴィーナスがどこか悲痛な声で叫んでいた。

 確かにシンクロゾーンを発動できれば、この状況からも逆転できるからもしれない……。

 

 でも、自分が原因でヴィーナスとのシンクロ率が低下してしまっていた。

 周りにはそれが悟られない様に、操作技術でカバーすることで誤魔化しているが、チャンピオンバディである麗たちとのエキシビジョンマッチの際はその影響がもろに出ていた。

 麗たちに狙撃の甘さを見抜かれ、挙げ句の果てにシンクロゾーンが不発してしまった。今までそんなこと一度もなかったと言うのに……。

 それ故に輝は躊躇した。

 

「で、でも……」

「お願いします、マスター……!」

 

 それでもヴィーナスは引き下がらない。こんなにも必死な彼女を見たのはいつ以来だろうか?

 だけどヴィーナスの言う通り、今はそれしか方法がなかった。

 

「分かった……行くよ、ヴィーナス!」

「はい、マスター……!」

「シンクロゾーン!」

「シンクロゾーン……!」

 

 しかし、やはりシンクロゾーンは発動しなかった。

 

「――ッ!? やっぱり僕のせいで……!」

「どうして……!? ()()()()()()()()()()()()()()()……!?」

 

 ヴィーナスはまるで信じていたものに裏切られた様に悲痛な叫び声を叫んだ。

 

「嫌だ……! 嫌だ……! ()()()()()()……! ()()()()()()……! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のに……!」

「ヴィーナス……?」

 

 輝はここ最近は、自分の悩みに苦しんでばかりで周りがろくに見えていなかった。

 でも、こうしてまるで小さな子供の様に泣き叫ぶヴィーナスの姿を見て、()()()()()()()()()()()()()()()()()ことにようやく気づいた。

 

 そしてそんな二人が、シンクロゾーンを発動させた美月たちに対抗できる筈もなく、ノーブルヴィーナスは、ヴィーナスノーブルゲートごとアークサターンブレイクの光に飲み込まれた。

 大ダメージを受けた機体が地上へと落下して行く。

 

「マスター!? マスター!?」

 

 ヴィーナスの悲鳴が、輝の胸に突き刺さる。

 

 ヴィーナスが自身の兵器としての生まれに苦しんでいたのは知っていた。

 だから、自身の生まれに苦しんで命を断とうとしたヴィーナスを救い、彼女にも他の皆の様にちゃんと喜怒哀楽があるんだと教える為に……証明する為に相棒になった。

 そして、ヴィーナスと一緒にシンクロゾーンへと至り、高校生チャンピオンバディになったことで、彼女の苦しみを救えたのだと思っていた。

 でも結局、ヴィーナスは今も尚、こうして苦しんでいた。自分は彼女の相棒なのにそれに全然気づけていなかった。

 

 自分のことを助けてくれた美月を、今度は自分が助けられる様になりたかった。でも、なれなかった。

 だからせめて、美月みたいに、自分も誰かを助けられる様な人になりたかった。でも結局、なれていなかった。

 

(……美月ちゃんのことを助けられない……守れない僕のままだった……。 ……ヴィーナスのことを助けられない……救えない僕のままだった……。 ……ああ、やっぱり僕は……今もまだ美月ちゃんと出会う前の……何もできない弱虫な僕のままだ……)

 

 

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