メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第42話「勇気よ輝け!」

 

 

 ――美月ちゃんのことを助けられる様になりたかった……。 何もできない弱虫な僕のことを助けてくれた彼女のことを……。 大嫌いな自分を変えるキッカケをくれた彼女のことを……。 初めて好きになった彼女のことを……。

 

 美月から勇気のお呪いを貰った輝は、その日を境に、今までの何もできない弱虫な自分を変える為に努力する様になった。

 女の子と間違われるくらいに背が低く細身な体を大きくする為に、少食だったのを改善して、食事量を増やすことにした。勿論、食事の内容のバランスもちゃんと考えた。

 それから、姉である光に教えて貰いながら、苦手だった勉強にも取り組んだ。自分は容量が悪くて、何度も同じところで躓いたけど、光は何度も丁寧に教えてくれた。

 また、運動も頑張ることにした。美月のことを助けられる様になる為にも体を鍛えることは必須だった。体が軟弱過ぎて、最初は本当に苦しかったけど、だけど、好きな子に頼って貰える様になりたい一心で頑張った。

 勿論、直ぐに効果が出る訳ではないけど、それでも自分が少しずつ変わっていけいてる様な気がしていた。

 

 そんな中、輝が小学二年生に上がると、明日斗博士の助手としてずっと海外にいた輝の母である輝美が、JP国に建てられたメカニカルウィッチ研究所で働くことになり、これからは家族皆で暮らせる様になった。

 しかし、そんなメカニカルウィッチ研究所の式典が行われた日に、百名もの死傷者が出る大規模な爆発事故が起きたことで、輝美は帰らぬ人となった。

 

 輝は母と直接会った記憶はあまりなかったが、それでも母はほぼ毎日連絡を入れて来てくれたし、誕生日などの大事な日にはちゃんと家に帰って来てくれていた。

 そんな母が亡くなった悲しみに暮れる輝に、同じ様に悲しい筈の光と父である光一と、ルミとエールを始めとした白金家に引き取られた人工精霊たちがずっと寄り添ってくれた。

 

 そして、長い時間をかけて母との別れに区切りをつけた輝は、美月もあの事故で彼女の母と兄、それから家族であったメカニカルウィッチを亡くしたと耳にすることになった。

 皆に支えて貰った自分とは違って、そんな支えてくれるであろう人たちを全て亡くしたと言う美月のことが輝は心配で心配でたまらなかった。

 そんな美月の姿を再び目にしたのは、事故から一年以上経った後のことだった。

 

「み、美月ちゃ……」

「……」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。初めて会った時に見せてくれたあの天使の様な笑顔は完全に消え、年齢にそぐわないくらいに大人びた表情をする様になっていた。

 それはまるで周囲の人間に対して壁を作っている様で、周りもそんな美月のことを住む世界が違うお姫様として扱う様になっていた。

 でも輝は、美月が本来は自分と同じ人見知りで、勇気のお呪いを使ってそんな自身を変えていることを知っていた。

 だから……。

 

「――頑張れ、私……。 頑張りなさい、わたくし……」

 

 美月が誰にも見られない場所で、目を閉じ、首にかけたペンダントを必死に握りしめながら、自身に言い聞かせる様に、震えながら勇気のお呪いを唱えている姿を、輝は見つけた。

 

(――ッ!? 美月ちゃん……!)

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに気づいた。

 輝はそんな美月のことを助けたかった。今度は自分が助けると言う約束を守りたかった。その為に自分を変える努力をして来た筈だった。

 しかし……。

 

()()()()()()()()()のお近づきになろうなんて……とんだ身の程知らずがいたものだな!」

「そうそう! 生まれも、立場も、才能も、何もかも違うのよ?」

「住む世界からして違うお姫様なのに……」

「まるで()()()()()……いや、勇者ですらないな……」

 

 周りは美月のことを、今世界で最も影響力のある明日斗博士の娘と言う生まれを持ち、世界を管理するワールドユニオンのトップであるアダム議長に声をかけられる程の立場を持つ、特別な存在として扱っていた。

 それから、歴代最強にして例外中の例外と言われた海姫ネオンと同レベルの才能を持ち、それ故に周りが相手にならないからウィッチバトルを辞めたと好き勝手に噂していた。

 そして、そんな美月のことを助ける為に、その隣に立てる様になろうとした輝のことを、無謀な勇者だとバカにして嘲笑った。

 

(僕は……! 僕は……!)

 

 そんな周りの声に耐えきれなかった輝は、美月から逃げ出した。逃げ出してしまった。

 

 

*****

 

 

 ――今度は自分が美月ちゃんを助けると言う約束を、僕は守れなかった……。 家族を失って一人ぼっちになった彼女に、何もしてあげられなかった……。 だから、せめて周りの誰かを助けられる様な人になりたかった……。 そうすれば、いつか美月ちゃんのことを助ける様になれると思った……。 そう思いたかった……。

 

 あの一件以来、輝は今まで以上に自分を変える為の努力を重ねた。

 周りからバカにされてもそれを跳ね返せる様に、たくさん食べて身長を伸ばし、勉強も運動も完璧になる様に頑張った。

 それから、白金家に引き取られた訳ありの人工精霊の助けになれる様に頑張った。少しでも力になれる様に努力した。

 

 そして、そんな輝が中学一年生になった時のことだった。ある日、ヴィーナスが父に連れられて白金家にやって来た。

 

「――この子が今日から家で預かることなった子だ。 一応『V(ブイ)』と言う呼び名があるのだが……これは名前とは言えないんだ……。 だから、二人でこの子の名前を考えて欲しいんだ」

「……」

 

 白金家に引き取られた訳ありの人工精霊は、その境遇から人間に対して心を閉ざしていて、初対面から強い不信感を見せて来る子が多かった。

 だけど、V(ブイ)と呼ばれた子にはそう言ったものが一切なく、不信感どころか感情らしきものが一切見えなかった。

 それは、明日斗博士が用意したと言う西洋人形の様な容姿をしたメカニカルウィッチの体も相まって、本物の人形に見えてしまいかねない程だった。

 

「ほら、輝。 この子に名前を付けてあげて?」

「……僕が?」

「ええ、この子のことを助けたいんでしょ?」

「……!!」

 

 光が自分の肩をポンっと叩きながらそう口にした。

 

 父が言っていたV(ブイ)と言う名前とは言えない呼び名に、感情を一切見せない様子を見るに、この子の境遇はきっと想像できないくらいに重いものなのだろう。

 輝は、そんなこの子の助けになりたかった。力になりたかった。

 だから先ずは、この子にちゃんした名前を……この子に相応しい名前をあげたいと思った。

 

「……ヴィーナス。 ヴィーナスはどうかな?」

 

 輝が考えたのは金星の星の名前だった。

 

 惑星X(エックス)の衝突がWWⅢ(ワールドウォースリー)の原因となったことで、宇宙や星を見ることはおろか、それに関する名前を聞くことすらもタブーになる中、そんな空気を変えたのが、メカニカルウィッチの開発者である明日斗博士だった。

 明日斗博士が妻の影響でメカニカルウィッチに星の名前を付け、さらに初代チャンピオンバディのきららたちを始めとした黎明機(れいめいき)の選手たちがそれに続いたことで、それが縁起物として一種のブームになっていた。

 

「……ヴィーナス」

 

 その星の名前を聞いたその子は……ヴィーナスは初めて反応を見せてくれた。それはとても綺麗な声だった。

 

「……うん。 きっと君に似合う名前だと思うんだ……」

「……!」

 

 だけど結局、輝はヴィーナスが自身の境遇に悩んでいたことに気づくのに長い時間がかかってしまった。ヴィーナスが自ら命を断とうとするところを偶然目撃するまで、輝は自分から踏み出すことができなかった。

 その際に、ヴィーナスと相棒になった輝は、そんな彼女の為にも、それから将来、父である光一の様になる為にも、メカニカルウィッチ学園に入学することにした。

 

「――このアタシとキャンサーに勝つなんて、アンタたち中々やるじゃない! 白金輝とヴィーナス……その名は覚えたわ!」

「――この俺様とレオを倒すなんて、気に入ったぜ! お前たちをこの俺様たちのライバルとして認めてやるぜ!」

 

 そこで咲良たちと王牙たちに出会った。

 同級生である咲良たちは、自分たちのことをライバルであり友人であると言ってくれた。

 でも、輝は美月を一人ぼっちにしてしまった負い目から、それを素直に受け入れることができなかった。

 

「――白金先輩!! それに、ヴィーナスちゃん!! 去年の全国大会高校生の部を拝見しました!! 是非、私ちゃんとカロンちゃんとバトルをお願いします!!」

「――わ、私が生徒会の役員をですか……!? わ、分かりました……! 白金先輩のご期待に応えられる様に、ピスケスと一緒に頑張ります……!」

「――あ、どうもっす! 俺はお嬢……じゃなくて、咲良先輩の推薦で生徒会に入ることになった者っす! スコーピオ共々、お手柔らかにお願いするっす!」

 

 その翌年、御影たちと歌たちと秀次たちと出会った。

 後輩である御影たちは、自分たちのことを皆を助けている頼れる先輩として慕ってくれた。

 でも、輝は美月のことを助けられなかった負い目から、素直にそれを受け入れることができなかった。

 

 誰もが自分のことを、完璧超人の生徒会長だと、いつも皆を助けている王子様の様な人だと、言ってくれた。

 だけど、輝は美月との約束を破ってしまった身として、どうしてもその評価を受け入れることができなかった。どれだけ頑張っても、自分のことを認めることができなかった。

 

 

*****

 

 

『――敵ハ、デリートスル』

 

 今までこちらを攻撃したことなかったヴィーナスは、接近しようとするアークサターンを見て攻撃を仕掛けて来た。

 ノーブルマルチウイングを左右に展開し、二丁のノーブルガンソードと共に必殺の威力となったビームを、殺す気で放って来る。

 さらに操っているワールドユニオンの機体の一部を仕向けて来るが、それを御影たち二年生組が押し留めていた。

 

『くっ……!? ()()()()この剣捌きは間違いないわ! あなたは()()()()()ね!?』

『何と言うことでござるか!?』

『チッ! マジかよ!? レオ! サンの剣捌きは覚えているな?』

『勿論であーる! 忘れる筈がないのであーる!』

『……ほう、我と陽太があの時相手にした(わらべ)たちが……ここまで大きく……強くなっているとはな……』

 

 その一方で、操られたワールドユニオンの機体を捌きながら、アークサターンへと炎の斬撃を飛ばして来るサンを、桜たちのオーガキャンサーと、王牙たちのキングレオが必死に足止めしていた。

 

 そしてそれは、ムーンの足止めをしている焔たちも同じ状況だった。

 

『『『『『『合体連携マジカルスキル! トライスターバースト!』』』』』』

『おのれ!! どこまでも邪魔を!! 妾の美月を渡せえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッーー!!』

 

 ムーンに操られた機体は、その原因である黒い魔石を破壊する……つまり暴走した機体を倒すことで解放することができた。

 でも、暴走したヴィーナスの場合はそれとは別に、()()()()()()()()()()()()()()()もある。

 それ故に、ただ倒すだけで解決するとは思えなかった。その事実に輝は悔しそうに叫んだ。

 

「……何で僕はいつも、一番大事な時に何もできないんだ……! やっぱり僕じゃ……ヴィーナスのことも、美月さんのことも、助けられないのか……!?」

 

 そんな輝に対して、サターンが喝を入れる様に怒鳴って来た。

 

「いつまでウジウジしている気だ、輝! 美月を守る為にも僕に弱さを自覚して貰うと、入学式の日に僕をボコボコにしたのはお前がだろうが!?」

「……それは本当にすまなかった……」

「フンッ! これじゃあ、あの時と立場が逆じゃないか!」

 

 サターンは輝のことを叱りつつも、目の前の戦闘に対して、微塵も気を抜いていなかった。

 当たればタダではすまないヴィーナスの攻撃の雨を躱しながら、一歩一歩確実に距離を詰めていく。

 

「……だけど、()()()()()()()()()()()()()さ……。 僕も美月のことを守れない弱い自分が大嫌いだったからな……」

「……サターン君」

「……でも、あまりそう言うことを口にしていると、()()()()()()()()? ()()()()()()()()()()……」

「……!!」

 

 サターンの言葉に、輝はハッとした。ムーンも輝が相棒であるヴィーナスを傷つけていると指摘していた。

 自分だけじゃなく、ヴィーナスも悩んでいたと思っていたが、それはきっと間違いだったのだ。正しくは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだろう。

 

 その事実に気づいた輝は思わず問いかけた。

 

「……サターン君は、その時どうしたんだい?」

「……あれは僕にとっての一生の恥でもあるんだが……あの時は美月と……妹と初めて大喧嘩することになって、思いっきり泣かれたんだ……僕が泣かせてしまったんだ……。 でもその時に、ちゃんと美月と話し合ったおかげで、こうして本当の意味で相棒になれたんだ……」

「そっか……話してくれてありがとう……」

「フンッ!」

 

 サターンは少し恥ずかしそうにしていたけど、そのおかげで輝も自分が今すべきことが分かった。

 輝はヴィーナスを助ける為に、自分の命を賭ける覚悟を決めた。

 

「……サターン君、頼みがあるんだ……! 少しの間で良い……ノーブルヴィーナスに組みついて、その動きを止めて欲しいんだ……!」

「……何をする気だ、輝?」

「ノーブルヴィーナスに乗り込んで、今も尚苦しんでいるヴィーナスのことを助け出す! そして、もう一度ちゃんと話し合う!」

「危険過ぎる!」

「覚悟の上だよ……!」

 

 サターンが心配して来るのも当然だった。

 今のヴィーナスは、ムーンからドス黒く禍々しい魔力に満ちた黒い魔石を撃ち込まれ、さらに内部でも謎のシステムが暴走している状態だ。

 そんなヴィーナスの中に乗り込めば、どんな影響が出るか分からない。だからヴィーナスも、咄嗟に輝のことを逃したのだろう。

 でもこれは、ヴィーナスを助ける為にもどうしても必要なことだった。彼女の相棒である自分がやるべきことだった。

 

 そんな輝の覚悟を見たサターンが、深いため息を吐いた。

 

「はぁ……分かったよ。 どうせ、輝は止めても聞かないだろうからな……。 ……全く、一度覚悟を決めたら絶対に曲げないところは、美月そっくりだよ……」

「……それは過分な評価だよ……」

「いいや、美月の兄である僕が言うんだから、間違いない……!」

 

 サターンはそう口にすると、遥か上空からこちらを見下ろしているヴィーナスのことを改めて真っ直ぐに見つめた。

 

「しっかり掴まっていろよ! マジカルスキル! プラネットファイア!」

 

 そして、アークサターンの背中に炎の光輪を発生させ、一気に上空へと飛び上がった。

 

『脅威ハ排除スル』

 

 そんなアークサターンサターンへと、ノーブルヴィーナスが銃剣とドローン武器による狙撃を放って来る。

 しかし……。

 

『そうはさせないっすよ! 早くヴィーナスを止めて下さい、白金会長!』

『援護する……』

 

 秀次たちのステルススコーピオが、展開しているステルスドローンを使って、ステルススナイパーライフルの狙撃を分裂並びに屈折させた。

 それをヴィーナスの狙撃に当ててその弾道を僅かに逸らすことで、アークサターンが真っ直ぐに突っ込める様に援護してくれる。

 

『ソレナラバ』

 

 それを見たヴィーナスが、今度はドローン武器本体を質量兵器としてぶつけようとして来る。

 

『そうはさせませんよ! 行って下さい、白金会長!』

『ノーブルマルチウイングは私たちが抑えるわ!』

 

 歌たちのマーメイドピスケスの分身が次々に体当たりを仕掛けることで、ドローン武器を数の暴力で無理やり押さえ込んだ。

 さらに……。

 

『カロンちゃん!』

『了解だよ〜』

 

 御影たちのシャドウカロンが機体の四肢をパージし、ドローン武器として展開した。

 そのままノーブルヴィーナスに四方八方からアンカーを打ち込みその動きを一時的に止めた。

 

『……!?』

『今です、白金会長!』

「助かる! 行くぞ、輝!」

「うん! ありがとう、皆!」

 

 そして、アークサターンは動きを止めたノーブルヴィーナスに組みつき、銃剣を撃たせない様にその両腕を掴み拘束した。

 

「――契約魔法!」

 

 さらにアークサターンの無限に等しい膨大な魔力がノーブルヴィーナスを包み込んだ。

 しかし、これを使っても暴走したヴィーナスを正気に戻せる訳ではない。これはあくまでもヴィーナスを暴走させている、ムーンのドス黒く禍々しい魔力を少しでも抑え込み、輝をサポートする為だ。

 

 そして、皆のおかげでヴィーナスの元へと辿り着いたことで、輝はアークサターンのコックピットのある魔石の中から出ようとした。

 そんな輝を見た美月がポツリとつぶやいた。

 

「ハァ……ハァ……輝……先輩……」

「美月ちゃん……」

 

 輝が後ろを振り返ると、美月は今も尚、過呼吸で苦しそうにしており、顔色もかなり悪かった。

 それも無理もないだろう。美月は十年前の事件で亡くしたムーンのことをとても大切に思っていた。それこそ、過去のトラウマの原因の一部になり、長年苦しみ続けるくらいに……。

 そんなムーンと最悪の形で再会してしまったのだ。そのショックは計り知れないだろう。

 

 だからこそ、輝はそんな美月を安心させる様に微笑みながら、ゆっくりとその口を開いた。

 

「……ごめんね、美月ちゃん……。 美月ちゃんが一番辛い時に何もできなくて……約束を守れなくて……。 だから、今度こそあの時交わした約束を果たすよ……! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()のことを助けて、美月ちゃんの相棒であるムーンのことも止めて、皆を守ってみせるよ!」

「……!」

 

 そう力強く宣言した輝を、美月が紫水晶(アメジスト)の瞳から涙を流しながら見て来た。

 その目には期待と不安が入り混じっていた。

 

「……その為にも、()()()()()()()()()()()()()()()()を使わせて貰うね……!」

「輝ちゃ……!」

 

 美月が最後に、自分の名前を呼びながら手を伸ばそうとしていたが、輝は振り返ることなくアークサターンの外へと飛び出した。

 

 外ではアークサターンとノーブルヴィーナスが互いに組み合って膠着していた。

 風が強く感じる。ヴィーナスの元まで思いっきりジャンプすれば届くだろうが、もし落ちたら命はないだろう。それにもし仮に中に飛び込めたとしても無事では済まないかもしれない。

 

 死ぬのは怖い。だけど、それよりもヴィーナスを失うことの方がもっと怖かった。

 だから、輝は苦しんでいるヴィーナスの元へと走り、思いっきりジャンプした。

 

 ――命を賭けてヴィーナスの元へと飛び出した輝の脳裏に、走馬灯の様にあの日の記憶が甦って来る。

 

『――ありがとう! そうだ! それなら、『勇気のお呪い』を作ってみない?』

『僕も……?』

『うん……! えっと……()()()って名前はどんな字なの……?』

『えっとね……(かがや)くって言う字なんだ……!』

『そっか……! じゃあ……!』

 

「――勇気よ輝け!!」

 

 

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