メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第4章「小さくて大きな夢」
第49話「夏の海と合宿と」


 

 

 ——美月(みづき)とサターンがムーンとサンを止める為に強くなろうと、改めて誓いを交わしたあの日の夜から二週間が経った夏休み初日の土曜日。

 

「——綺麗な海……!」

 

 眩しい太陽に照らされた綺麗な海のあるビーチで、美月は目を輝かせていた。

 美月の今の格好は、ノースリーブの白のワンピースと、リボンのついた麦わら帽子だったが、決して遊びに来た訳ではない。

 いや、確かに遊ぶ予定も入っているのだが、これはあくまでも全国大会高校生の部の本戦出場のシード権が確定した学園リーグランキングトップ十の面々たちによる合宿なのだ。

 

 あの日の夜、美月はサターンから強くなる為に全国大会に出ないかと提案された。

 サターン曰く、全国大会に出場する相棒たちは、強い絆で結ばれていて、その実力も確かな為、修行の場としては最適らしい。

 それに、美月にはせっかく思い出したウィッチバトルが好きだと言う気持ちを、このまま再び失くして欲しくはないらしかった。

 

 そんな訳で、目覚めた一週間後に退院した美月は、学園リーグランキングトップ十が確定する夏休み前の最後の一週間は、毎日学園リーグ戦に明け暮れていた。

 長期間バトルをしていなかったが、事情が事情の為、美月たちの順位は六位のままだったが、流石にそのまま確定と言う訳にはいかず、最後の滑り込みを狙っている面々とバトルすることになった。

 その結果、美月たちは挑戦者全員を返り討ちにし、学園リーグランキング六位の座を確定させたのだった。

 

 閑話休題。今回の合宿に参加しているのは、学園リーグランキングトップ十の上から順に、(ひかる)とヴィーナス、咲良(さくら)とキャンサー、王牙(おうが)とレオ、秀次(しゅうじ)とスコーピオ、(うた)とピスケス、美月とサターン、(ほむら)とマーズ、冬馬(とうま)とマーキュリー、御影(みかげ)とカロン、小春(こはる)とジュピターだ。

 その面々に加え、特別講師のネオンとネプチューン、(うらら)とウラノスの二大チャンピオンバディが引率として参加しており、それから外泊する美月の個人的な付き添いとしてリンと爺やが着いて来ていた。

 

 すると引率の麗と生徒会長の輝が、はしゃいでいる皆に声をかけた。

 

「良ーし、皆! 手始めにビーチで思いっきり遊ぶぞ! 生徒会長、皆に指示を!」

「はい。 じゃあ皆、メカニカルウィッチ組も含め一度男女で別れて着替えてから、また集合してね」

「マスター……暫しのお別れです……」

「アハハ……ヴィーナス、流石に風紀の問題があるからね?」

 

 

*****

 

 

 メカニカルウィッチ学園が保有する大型バスは、主に遠征の際に使用される。

 車内に個室やトイレだけではなく、キッチンやシャワールームなども完備されており、今回は学園が手配したホテルに泊まるものの、キャンピングカーとしても使用できるのだ。

 しかも、美月たちが使っているのは、学園リーグランキングトップ十専用の物である為、個室の広さもそのグレードも普通の物よりも上であった。

 ちなみに、特典により、このバスや泊まるホテルを含めた合宿の費用は全部学園が出してくれるそうだ。

 

 そんな大型バスの中にある更衣室で、美月はリンの手伝いの元、水着へと着替えていた。当然サターンは別室である。

 

「お嬢様、終わりました。 とてもお美しいですよ」

「ありがとう、リン」

 

 美月は自分の肌を他人に……特に焔や輝に見せるのは恥ずかしい為、上下に分かれたセパレートタイプであるものの、ワンピースタイプの様に布地の多い、フリルが多めで足を隠す為のパレオがついた、薄紫の水着を着ることにした。ちなみに、リンが選んでくれた。

 さらに海で遊ぶと言うことで、いつもはハーフアップにしている髪を完全に上で纏めたアップスタイルにし、お守りのペンダントも失くさない様にブレスレットの様に左手につけ、リンに保護と防水の魔法をかけて貰った。

 それからリンに、日焼け止めを塗った肌の上からも保護の魔法をかけて貰う。美月は色素薄めな肌で日焼けに弱い為、これを忘れる訳にはいかない。

 

 そして、美月は改めて鏡に映った自分の体を見た。

 美月は背は高いものの、全体的にスレンダーで華奢な為、一ヶ月間意識不明になっている間に、体重が激減してしまっていた。

 そんな減った体重を戻す為に、いつもより少しだけ食事量を増やす様にしていたのだが……。

 

「リン、私……別に太ってませんよね?」

「お嬢様、鏡を見てから言って下さい。 寧ろもっとお肉をつけて下さい」

 

 水着で肌を晒す為、美月は少し不安だったが、リンからすれば全然そんなことはないらしかった。

 

 するとそんな美月の後ろからネオンが突然抱きついて来た。

 

「美月、終わった?」

「ひゃっ……!? ね、ネオンさん……?」

 

 ネオンは大人だが、背が子供くらい小さいので気づかなかった。

 美月が振り返ろうとすると、ネオンも抱きつくのを離してくれた。

 

「ネオンさんもその……似合ってますね」

「……ん。 ありがとう、美月」

 

 ネオンは上下が繋がったワンピースタイプの、リボンとフリルが多めの水色の水着を着ていた。

 いつもはツーサイドアップにしているウェービーロングヘアの髪を、シニヨンにすることで圧縮していた。

 そんないろいろな要因も相まって、ネオンは美月よりも九歳上なものの、どうしても幼く見えてしまった。

 

「でしょ? でしょ? ネオンちゃんの可愛さは世界一だからね♪」

 

 そんなネオンの肩の上にいるネプチューンは、手のひらサイズであるものの、おろそいの水着を着ていた。

 これは変身魔法である「マジカルチェンジ」の機能の一つであり、メカニカルウィッチも人間の様に自由に服装をコーディネートできるのだ。

 さらに言えば、ロボットではあるが、当然防水仕様の為、海にも問題なく入れる。まあ、バトルができる時点で今更の話だが……。

 ちなみに、そんなメカニカルウィッチとリンクしているマジカルウォッチも同じく防水仕様である。

 

「美月ちゃんー! 海姫さんー! 終わりましたかー?」

「み、皆待ってるよ……!」

 

 すると今度は小春とジュピターがやって来た。どうやら時間をかけ過ぎてしまったらしい。

 

 小春は上下に分かれたセパレートタイプで、上がおへその上まで隠したキャミソール型になっている黄緑の水着を着ていた。

 こちらはいつもはワンサイドアップにしているセミロングの髪を、三つ編みにしてまとめていた。

 

 そんな小春の姿を見たことで、美月はあることに気づいた。小春の胸元に傷が……手術痕があることに……。

 

「……? どうしたの美月ちゃん? ああ、()()のこと?」

「あ、ごめんなさい、小春……! ジロジロと見てしまって……!」

 

 すると案の定、小春にその視線を気づかれてしまった。

 だけど、小春は全然気にすることなく、カラッと笑った。

 

「ううん、別に良いよ! そう言えば、美月ちゃんにはまだ、あたしの昔の話をしてなかったっけ?」

「は、はい……! ジュピターから、幼い頃大きな病気だったとは耳にしましたが……」

「うん。 あたし、生まれつき大きな病気で何度も入退院を繰り返しててさー。 ()()はその手術痕なんだ。 まあでも、今はせっかく海に来たんだし、楽しい時間の為にも、この話はまた今度時間がある時にするね。 じゃあ、そろそろ行こっか?」

「はい……! 今、行きます……!」

「……ん。 分かった……」

 

 

*****

 

 

「お、お待たせしました……わ……!」

 

 その後、小春たちと共に集合場所であるビーチの浜辺へと向かった美月は、皆と合流していた。

 水着でいる恥ずかしさから、思わず素の精霊人格の口調になりかけるが、ここには焔や輝たち以外の面々もいる為、咄嗟にお嬢様人格改めて人間人格のお嬢様口調へと切り替える。

 

「「……」」

 

 そんな美月の姿を見た焔と輝は固まったまま動かなくなってしまっていた。

 

「あ、あの……? 焔……? 輝先輩……?」

 

 リンは大丈夫だと言っていたが、やっぱりどこか変だったのだろうか?

 

 するとそれぞれの相棒であるマーズとジュピターが、固まっている焔と輝の顔をペチペチと叩いた。

 

「焔君! 焔君! 女の子を見つめたまま固まるのは心象が悪いわよ!」

「ーーッ!? あ、うん……! ごめん、マーズ……!」

「マスター。 マスター。 女の子をあまりジロジロと見るのは良くないと思います。 見るならヴィーナスにして下さい」

「——ッ!? あ、うん……! って、ヴィーナス……?? 本当に最近、どうしたの……??」

 

 相棒の手によって焔と輝が再起動している間に、美月の相棒であるサターンが自分の肩の上に飛び乗って来て、そのまま二人を威嚇した。

 

「フシャーー!! みづ……お嬢様を狙う輩共めッ!! 前にも言ったが、この僕に勝たない限り、お嬢様はやらんからなッ!!」

「おに……サターン、止めて下さい!!」

 

 場が混沌(カオス)になる中、副会長の咲良が手をパンパンと叩いた。

 

「はいはい、わちゃわちゃするなら自由時間になってからにしなさい。 輝がボケっとしてるから、アタシが代わりに指示を出すわ。 皆、午前中は自由時間としてビーチで好きに遊んで良いけど、お昼の十二時になったら海の家に集合するのを忘れない様にね?」

「「「はい!」」」

「す、すまない、()()副会長……」

「気にしないで、輝」

 

 

*****

 

 

 そんな訳で、各々は好きにビーチで遊ぶことになった。

 

 ——まずは、咲良たちと王牙たち。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」」

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッーー!!」」

 

 ゴリ……体育会系の咲良たちは、遊びに来た筈なのに本気(ガチ)の遊泳対決をしていた。

 しかも、キャンサーとレオも、大きさの不利に負けずに泳いで着いて行っていた。

 

 ——続いて、秀次たち。

 

「いや〜、皆暑苦しいっすね〜」

「……」

 

 荷物番を自ら買って出た後、ビーチパラソルの下でトロピカルなミックスジュースをお供に、マジカルウォッチに入っているゲームを遊んでいた。

 

 ——それから、歌たちと御影たち。

 

「見て、見て、みーちゃん! 綺麗な貝殻を見つけました!」

「うーちゃん! うーちゃん! こっちには綺麗なお魚さんがいます!」

「やっぱり、私たちの庭である水の中は最高ね」

「うんうん、海の中なら夏の暑さも気にならないからね〜」

 

 元々バトルでも水中戦が得意な歌と御影は、ピスケスとカロンの魔法でダイビングを楽しんでいた。

 

 ——そして、美月たち。

 

「マジカルスキル! マーズファイア!」

 

 焔の攻撃が美月へと飛んで来る。

 美月はそれを迎撃……できずに、生身の体で食らってしまった。

 

「きゃっ……!?」

 

 ボールが明後日の方向へと飛んでいくのと共に、美月が砂浜の上で尻餅をついた。

 

「焔、貴様ッ!! ええい、選手交代だッ!! 美月は僕が守るッ!!」

「コラ、サターン! 遊びにマジギレするのは止めなさい!」

「ぐぬぬぬぬ……!」

 

 それを外から応援していたサターンが乱入しようとするのを、マーズが間接攻撃を加える形で押さえ込んでいた。

 

 現在、美月たちは交代で二対二対のビーチバレーを行っていて、サターンを含めた人工精霊組は応援に回っていた。

 一応ウィッチバトルの様に、相棒と一緒に魔法ありのド派手なビーチバレーもできたのだが、流石に初心者にいきなりそれは難易度が高い為、まずは人間組で普通のビーチバレーをすることになったのだ。

 だから、さっきのマーズファイアもスパイクに合わせて焔が叫んだだけである。

 

 そんな訳で美月は今は、これを期に女の子同士もっと仲良くなろうと言ってくれた小春とペアを組、焔と冬馬を相手に戦っていた。ちなみに輝は審判をしていた。

 美月もまた、小春の誕生日は六月なのに、自分は一ヶ月間意識を失っていたせいでちゃんと祝えなかったので、願ってもない提案だった。

 

 すると焔がネット越しに謝って来た。

 

「ごめんね、美月。 大丈夫?」

「だ、大丈夫です……! 私が運動があまり得意じゃないのが悪いのですから……!」

 

 美月は明日斗博士の娘として勉強には死ぬ気で力を入れていたが、運動の方は……と言う具合だった。

 それは昔は食が細いせいで体調を崩しやすかった上に、明日斗博士の代理として呼び出されて体育を含めた授業を欠席していたからだった。勉強は家でもできたが、わざわざ家で運動をするかと言うと……。

 

 ウィッチバトルの時は、この魔力が見える目を使ってイメージした動きを、サターンが完璧に再現してくれるからこそ、とんでもない動きができるが、所詮生身の体ではこれが現実だった。

 

「じゃあ、行くよ!」

 

 そして、プレーが再開された。

 焔は今度は小春に向かってサーブを打った。運動が苦手な自分を狙わないなんて優しい。

 

「それ! 美月ちゃん!」

 

 それを小春が完璧にレシーブした。昔病気だったのが信じられないくらいの運動神経だ。

 

「は、はい……! 小春、お願いしま……あっ……! ご、ごめんなさい……!」

「大丈夫! 任せて!」

 

 それを運動が苦手な美月が変な方向にトスしてしまった。

 しかし、小春がその小さな体からは想像ができないくらいのジャンプ力で、美月のトスしたボールへと飛び上がった。

 

「マジカルスキル! ジュピターアタック!」

 

 再三言うが、叫んでいるだけで普通のスパイクである。

 それが冬馬の元へと向かい……。

 

「ぐえっ!?」

「冬馬ッーー!?」

 

 冬馬のメガネを吹っ飛ばした。顔面レシーブである。

 マーキュリーの悲鳴が響き渡る中、小春が慌てて駆け寄って行った。

 

「わわっ!? ごめんね、冬馬!」

「き、気にするな……小春……。 それにしても……小春は本当に元気になったな……」

「もお〜、いつの話をしてるのさ!」

 

 そんな小春に、冬馬は砂浜の上に大の字に倒れならかも、ヨロヨロと右手を上げ、親指でグットマークを作っていた。

 

 

*****

 

 

「大丈夫だよ、美月」

「安心して、美月さん」

「焔……! 輝先輩……! 絶対に手を離さないで下さいね……!」

 

 その後、美月は泳ぎ方を教えて貰う為に、焔と輝と一緒に海の中に入っていた。

 

 サボ……欠席しまくっていた体育の授業の中でも、水泳の授業に出た記憶が全くない美月は、カナヅチレベルで泳げなかった。

 一応、生家である黒土邸に備え付けられた大きなプールで、母と兄とムーンたちと一緒に遊んだことがあるので、全く泳いだことがない訳ではないのだが、いかんせん十年以上も前の話だ。

 だから海に遊びに来たのもこれが初めてだった。

 

 ちなみに、小春は現在、顔面レシーブと夏の暑さで倒れた冬馬を、ジュピターとマーキュリーと一緒に浜辺で看病していた。

 

 美月も最初は、海神の名を関する魔法を使っていることから、ネオンは泳ぐのが得意なのではないかと思って相談したのだが……。

 

『……ん。 そう言うことなら私に任せて……。 それに、()()()()()()()()なんだね……。 同じで嬉しい……』

『ありがとうございま……って、待って下さい……! ()……??』

『うん……。 私も運動が苦手だったから……体育の授業は全部、魔法でなんとかした……。 美月も私と同じ魔女だから……コツを覚えれば、バレずに魔法を使うのは簡単だよ……』

『ごめんなさい……普通に泳げる様になりたいので、この話は無かったことに……』

 

 ……と言う訳で、美月は頼りにしている焔と輝に泳ぎを教えて貰うことにしたのだ。

 

 そんな美月は焔と輝にそれぞれ手を引かれる形で、必死に足をバタバタと動かしていた。

 

「良いよ、美月! その調子!」

「着実に上手くなってるよ、美月さん」

「ほ、本当ですか……!?」

 

 お世辞かもしれないが、焔と輝に褒められたことで、美月はパッと顔を輝かせた。

 

 ——その時だった。

 

「きゃ……!?」

「美月さん!?」

 

 輝がいた右側から波が襲って来た。

 自分は焔と輝を見ていたから、二人は美月を見ていたせいか、それに気づくのが遅れてしまった。

 そのせいで、輝と手を離してしまい、美月は片側のバランスを失ってしまった。

 

「美月!」

 

 すると反対の手を掴んでいた焔が美月を引き寄せた。

 美月もまた泳げない不安から思わず焔に抱きついた。

 

「美月、大丈夫?」

「は、はい……何とか……」

 

——ピーッ! ピーッ! ピーッ! ピーッ! ピーッ!

 

 すると美月の耳に、ホイッスルの音が聞こえて来た。

 これは海やプールにいる監視員が持っているホイッスルの音だろうか?

 もしや何かしてしまったのだろうか、と考えた美月が、焔に抱きつきながら音がした方向を見ると、そこにはサングラスをかけた少年が……人間と同じ大きさの姿に変身したサターンが、ホイッスルを全力で吹いていた。

 

「焔、貴様ッ!! 何、人の妹に抱きついているんだッ!! 健全な距離を保たんかッ!!」

「ーーッ!? ご、ごめん、美月……!」

 

 サターンの叫び声に、焔は顔を赤くしながら咄嗟に離れてしまった。

 

「ほ、焔……!? 待って……!?」

 

 美月は頼りにしていた焔と輝の手を失ったことで、パニックになり、バタバタともがき出した。

 

「美月ちゃん!」

「ひ、輝ちゃん……!」

 

 そんな美月へと輝が手を伸ばして来る。

 美月は縋り付く様にその手を掴むと、そのままパニックから輝へと抱きついた。

 

「美月ちゃん、大丈夫?」

「あ、ありが……」

 

——ピーッ! ピーッ! ピーッ! ピーッ! ピーッ!

 

 またしてもホイッスルの音が聞こえて来る。

 いい加減に怒った美月がサターンの方を見ると……そのサターンの口を、マーズがサイズ差に負けることなく塞いでいた。

 その代わりに、ホイッスルを音を鳴らしていたのはヴィーナスだった。

 

「美月さん……! その格好でマスターに抱きつくなんて、あまりにもハレンチ過ぎます……!」

「ヴィーナス……??」

 

 ヴィーナスのあまりの圧に、輝が思わずたじろぐ中、今度はさっき以上の大波が襲って来た。

 

「ーーッ!?」

 

 さっきのトラウマで美月が思わず身を震わせていると、誰かがその波に乗る形でサーフボードで近づいて来た。

 サーフボードの上にいるのは、海の様な青緑の髪をシニヨンにした、ワンピースタイプの水色の水着を着た、サングラスをかけた子供……じゃなくて、ネオンだった。

 

 ネオンはそのままサーフボードから飛び降りて、魔法で海の上を走ると、焔と輝を置き去りに、美月をお姫様抱っこの形で回収した。

 

「それじゃあ、王子様方♪ お姫様は貰って行くよ♪」

「ネオ……じゃなくて、ネプ……」

「は〜い、美月♪ それは内緒だよ♪」

 

 こうしてお姫様抱っこされたことで、美月はネオンだと思っていた人物が、人間の姿に変身したネプチューンだと気づいた。

 いくらサングラスで顔を隠しているとは言え、ネプチューンはサターンと違って、自分が本来(オリジナル)の精霊だと、周りには話していないから、バレたら不味い筈なのに……!?

 

 そんな不安を覚える美月をお姫様抱っこしたまま、ネプチューンはサーフボードの上へと戻った。

 

「さあ、美月♪ ネオンちゃんが呼んでるよ♪」

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」

 

 ——その後、人気(ひとけ)の無い場所でネオンと合流した美月は、魔法無しでも普通に泳げるネプチューンに泳ぎを教えて貰うことになったのだった。

 

 

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