メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第51話「ビーチエキジビジョンマッチ!(後編)」

 

 

「「マジカルスキル! ヴィーナスフォーリンエンジェル!」」

「くっ……! やっぱり輝とヴィーナスの新しいマジカルスキルはとんでもない速さね!」

「ますますその強さに磨きが掛かっているでござる!」

 

 他の機体から離れた場所で、咲良とキャンサーのオーガキャンサーと、輝とヴィーナスのノーブルヴィーナスが一対一のバトルを繰り広げていた。

 

 白い光と黒い光が無限大を描く様に重なり合った光輪を頭部に浮かべたノーブルヴィーナスが、天使の様な白い翼と悪魔の様な黒い翼の二組の対となる四つの翼をはためかせ、白い翼の力で飛行魔法以上のスピードでバトルフィールドを駆け抜けていた。

 輝たちは以前も大概な強さをしていたが、この新たな魔法を生み出したことで、本当に手がつけられない強さになっていた。

 

 だけど、自分から足止めを買って出た以上、このまま防戦一方でいる訳にはいかない。

 それに足止めと言わずに、ここで輝たちに勝って、今までのリベンジを果たすつもりだった。

 

「キャンサー! まずは距離を詰めるわよ!」

「了解ですござる、咲良!」

「「マジカルスキル! 兜蟹流(かぶとがにりゅう)壱式(いちしき)」」

 

 オーガキャンサーは、一度右手以外の鬼ノ太刀を納刀すると、その一本の刀と足裏に炎を纏わせた。

 そして次の瞬間、マジカルブースト以上のスピードでノーブルヴィーナスの元へと飛び上がり、突きを放った。

 

「ヴィーナス!」

「はい、マスター」

「「マジカルスキル! ヴィーナスセイバー!」」

 

 一気に懐に飛び込まれたノーブルヴィーナスは、ノーブルガンソードの先端に光の剣を発生させることで、その突きを受け止めた。

 さらにそれと同時にオーガキャンサーの左右からノーブルマルチウィングのビームを放つ。

 しかし……。

 

「「弐式(にしき)! 参式(さんしき)! 肆式(よんしき)!」」

 

 オーガキャンサーは足裏に纏わせた炎を使って空中で華麗なステップを行い、左右からの攻撃を回避した。

 そのまま左手で引き抜いた二本目の刀にも炎を纏わせ、右側のドローン武器へと袈裟斬りを繰り出す。

 さらに同じ様に、バックパックのサブアームで引き抜いた三本目の刀で、左側のドローン武器へと逆袈裟斬りを繰り出す。

 そして、四本目の刀でノーブルヴィーナスを一文字斬りで薙ぎ払った。

 

「くっ……!?」

「マスター……! この流れは不味いです……!」

 

 咲良たちのマジカルスキルは、レキシキョウトにある実家の兜蟹(かぶとがに)家が運営する道場で教えられている剣術を元にしたものだった。

 兜蟹流は二刀流で戦う剣術であり、その特徴は攻撃と移動の動きを一体化させた攻防一体の技と、他の技から他の技へと連続で繋げられる点だった。

 咲良たちはその特徴を利用することで、デフォルトで搭載されているものを除いた、機体に搭載できるマジカルスキル十個の枠を、兜蟹流(かぶとがにりゅう)壱式(いちしき)から拾式(じゅっしき)で埋めることで、移動能力を持つ攻防一体の技を連続で放ち続けられるバトルスタイルを確立していた。

 

「「伍式(ごしき)」」

 

 そして、オーガキャンサーは五本目の刀にも炎を纏わせて、真っ向斬りを放った。

 ノーブルヴィーナスは咄嗟にヴィーナスセイバーに黒い翼の力を纏わせ、それを受け止めた。

 

「「くっ……!? 何てパワー……!?」」

 

 両者共に相手のマジカルスキルの力に驚愕の声を上げる中、膠着状態に陥った。

 だけど、咲良たちにはまだ次があった。

 兜蟹流の奥義とも言える陸式(ろくしき)と、強くなる為に咲良たちが独自に生み出した漆式(しちしき)から拾式(じゅつしき)の三つの技が……。

 

 オーガキャンサーは続けて六本目の刀を引き抜き、六刀流に炎を纏わせた。

 そして、突き、袈裟斬り、逆袈裟斬り、一文字斬り、真っ向斬りを同時に繰り出し、アスタリスクのマークを描く様に斬撃を放った。

 

 ——その時だった。

 

「このまま一気に……! ーーッ!?」

 

 咲良は咄嗟に技を中断させて、横槍を入れる様に飛んで来た狙撃を切り捨てた。

 その乱入者の名前を咲良は叫ぶ。

 

「チッ! 秀次!!」

 

 ついさっき歌たちを落としたばかりだと言うのに、もう自分たちの方にも狙撃が飛んで来た。

 不味い。自分で言っていた、フィールド魔法を展開した歌たちを狙撃され、輝たちの相手をしている時に横槍を喰らうと言う最悪のパターンになっていた。

 

 そして、技の連鎖を途切らせた咲良たちの隙を、輝たちが見逃す筈がなかった。

 

「隙ありだよ」

「しまっ……!?」

「咲良!?」

 

 オーガキャンサーは、ヴィーナスセイバーに切り裂かれたことで、マジカルバリアを破壊されて戦闘不能になった。

 

 

*****

 

 

「くっ……! 間に合いませんでしたか……!」

 

 美月は地面へと落下したオーガキャンサーを見て、急の声を上げていた。

 アークサターンを急いで駆けつけさせたものの、アークソードとアークシールドを回収していていたせいで、遅れてしまった。

 自分たちが秀次とスコーピオのステルススコーピオを逃してしまったせいで、咲良が言っていた負けパターンになりかけていた。

 

 すると小春がそんな美月を元気づける様に声を上げた。

 

「美月ちゃん! まだまだ二対二だから、全然チャンスがあるよ!」

「ですが……輝先輩たちの相手をするのに、スナイパーの位置が不明なままでは……」

 

 美月としても、相手が輝たちだけなら互角に立ち回れると思っているのだが、このままでは咲良たちの二の前なのは明らかだった。

 

「うーん、ジュピターアタックでまた目眩しをしても良いんだけど……」

「で、でも……小春ちゃん……。 それだといつまで経ってもスナイパーの位置が……」

「うん、ジュピターの言う通りなんだよね……。 やっぱりスナイパーの位置を見つけ出すしかないか! 良し、ジュピター!」

「えっと……今度はあれかな?」

「「マジカルスキル! ジュピターソード!」」

 

 するとゴーレムジュピターは両手のゴーレムマルチシールドを重ね合わせ、内蔵されたビーム砲から巨大なビームにも見えるビームの刃を発生させた。

 

「美月ちゃん! 霧蠍(きりざそり)先輩たちの機体は砂浜にいないんだよね?」

「ええ、この目で見える限りは! 恐らくは海の中か、建物や木の影に隠れている筈ですわ!」

 

 ステルススコーピオは光学迷彩で姿を消せるとは言え、美月の魔力が見える目の前では無力だった。

 だけど、ステルスドローンを使って狙撃の軌道を曲げているせいで、今だに隠れている場所を掴めずにいた。

 

「ありがとう! 冬馬たちが海の中にいたから、必然的にもう一つの場所かな? 美月ちゃんたちは輝先輩たちの相手をお願い!」

「分かりましたわ! サターン!」

「はい、お嬢様!」

「「マジカルスキル! プラネットダーク!」」

 

 美月たちは温存していたプラネットダークを切り、時間制限はあるが魔王システムを擬似的に発動させた。

 そんなアークサターンが、ヴィーナスフォーリンエンジェルを発動したノーブルヴィーナスの元へと飛び上がる中、ゴーレムジュピターは巨大なビームの刃を振り下ろした。

 

「浜野のおじさんとおばさん! それからビーチちゃんもごめんなさい!」

『あー!? うちの海の家が!?」』

 

 レプリカとは言え、海の家を木っ端微塵にされたことで、MCを務めていたビーチが悲鳴声を上げた。

 しかし、そんな海の家があった場所から何かが飛び出した。姿こそは見えないが、舞い上がった砂嵐のおかげでその位置は丸分かりだった。

 

「見つけた!」

「チッ! 心情的に狙われにくい場所の筈だったんすっけどね!」

 

 そのままゴーレムジュピターがステルススコーピオにトドメを刺そうとするが……。

 

「させないよ! ヴィーナス!」

「はい、マスター」

「しまっ……小春!?」

 

 輝たちは何と、美月たちの攻撃を捌きながら、小春たちへとドローン武器を飛ばした。

 この一手先の未来が見えるに等しい魔力が見える目を持ってしても、あまりに速過ぎる動きに対処が間に合わなかった。

 この前の学園リーグ戦の時は互角だったのに、自分が丸一ヶ月も眠っていた間に、輝たちは遥かに強くなっていた。

 

「くっ……!? ごめん、美月ちゃん!」

「小春ちゃん!?」

 

 ドローン武器の放ったビームを隙だらけな背中に喰らったゴーレムジュピターは、そのままマジカルバリアを破壊されて戦闘不能になった。

 これで一対二……だけど、小春たちの作ったチャンスを無駄にする訳にはいかない。

 

「「マジカルスキル! サターンスラッシュ! そして、マジカルスキル! プラネットファイア!」」

 

 ステルススコーピオが再び隠れる前に、プラネットファイアの炎を纏わせたサターンスラッシュを放った。

 事実上のマジカルスキル三つの重ねがけでオーバーキル気味だが、絶対に逃す訳にはいかないので仕方がない。

 

 すると避けられないことを悟ったのか、ステルススコーピオがステルススナイパーライフルを構えた。

 

「しゃーないっすね。 俺たちも冥道さんたちの様に置き土産を残すところしますか。 スコーピオ!」

「了解……」

「「マジカルスキル! スコーピオショット」」

 

 するとステルススコーピオは元々の消音(サイレンサー)の効果に加えて、魔法によって光学迷彩(ステルス)の効果を獲得した不可視の弾丸を明後日の方向に撃ってから、マジカルバリアを破壊されて戦闘不能になった。

 

 その謎の行動に違和感を感じた美月がその不可視の弾丸を目で追おうとすると、ノーブルヴィーナスがドローン武器と共に攻撃を仕掛けて来た。

 

「お嬢様! 来ます!」

「ーーッ!?」

 

 サターンの声に意識を引き戻された美月は、咄嗟にその攻撃を受け止めた。しかし、アークサターンが一度地上へと撃ち落とされる。

 サターンの言う通り、輝たち相手によそ見をしている場合ではない。

 

「サターン! プラネットダークが発動している内に決めますわよ!」

「はい、お嬢様! 真正面からのマジカルスキルの撃ち合いなら、僕たちは絶対に負けません!」

「「マジカルスキル! サターンアークブレイク!」」

 

 アークサターンは剣と盾を合体させ、アークX(クロス)アックスを作り出すと、暴力的なまでの魔力を内包した究極の一撃を放った。

 

「臨むところだよ! 僕たちとしても、まだまだ美月さんたちにら負けたくはないからね! ヴィーナス!」

「はい、マスター。 美月さんたち……この勝負はヴィーナスとマスターの勝ちです」

「「マジカルスキル! ヴィーナスノーブルゲート!」」

 

 それに対して、ノーブルヴィーナスはノーブルマルチウィングで光の門を作り出し、そのにノーブルガンソードのビームを撃ち込み、その威力と数を増大させた無限の攻撃を放った。

 

 ——両者の最強のマジカルスキルがぶつかり合うが、パワーに勝るアークサターンがそのまま押す……その筈だった。

 

「ーーッ!?」

「何!?」

 

 美月の耳が死角から飛来して来る存在を感じ取った次の瞬間、不可視の弾丸がアークサターンの背中に命中した。

 

(これはさっきの……!? でも、ステルススコーピオと一緒にステルスドローンも機能を停止したから、狙撃の軌道は曲げられなかった筈……いや違う、これは焔たちのマーズファイアと同じ追尾式!? 輝先輩たちもそれを知っていたから、敢えてこの撃ち合いに乗って……!)

 

 美月が秀次たちの置き土産のカラクリと、輝たちの狙いに気づいた時にはもう遅かった。

 そのままヴィーナスノーブルゲートのビームの嵐に飲み込まれたアークサターンは、マジカルバリアを破壊されて戦闘不能になった。

 

 それを見たMCのビーチがバトルの決着を宣言した。

 

『決まったー! やっぱり高校生チャンピオンバディの実力は伊達ではなかったー! ……と言う訳で、今年のビーチエキシビジョンマッチの勝者は、ミライトウキョウ校の男子チームだよー!』

 

 

*****

 

 

 その後、ビーチエキシビジョンマッチを終えた美月たちは、午後は近くにある、地元のウィッチバトルの大会の会場にもなっている、トレーニング施設へと向かった。

 そこで二大チャンピオンバディである麗とウラノス、ネオンとネプチューンの指導の元、みっちりと特訓を行った。

 そして、それが終わった後に、今日泊まる朝食付きのホテルに荷物を置きに行った美月たちは、こうして日が暮れる時間帯に海の家まで戻って来ていた。

 

「ハハハッ! 改めて礼を言わせてくれ、ミライトウキョウ校の生徒さんたち! 今年のビーチエキシビジョンマッチも大盛り上がりだったよ!」

「そうだねぇ。 お客さんたちも大喜びだったからねぇ」

本当(ほんと)、最高の前哨戦だったよ! 全国大会も頑張ってね、皆!」

 

 浜野夫妻とビーチは感謝の言葉を口にしながら、海の家特性のスペシャルコースのバーベキューを振る舞ってくれた。

 

 バーベキューグリルの網の上で焼かれる、串に刺された肉や魚、それから野菜などの良い匂いがしてくる。

 流石、スペシャルコースと言うだけあって、肉は鶏肉と豚肉と牛肉の定番の三種類が、魚は海老やホタテやタコやイカなどの海の幸が、野菜はパプリカや玉ねぎやきのこやコーンなどの色とりどりな面々が揃っていた。

 さらにそれだけではなく、ご飯物として焼きおにぎりが、そしてデザートとして焼きパイナップルや焼きマシュマロなどが用意されていた。

 ちなみに、ドリンクも飲み放題である。

 

「ハハッ! この極上の肉は俺様が頂いたぜ!」

「ちょっと王牙! それはアタシが育ててた肉よ! 返しなさい!」

「みーちゃん! みーちゃん! このホタテとっても美味しいですよ! 一口どうぞ!」

「ありがとうございます、うーちゃん! それでしたら、こっちの海老も美味しいので、一口どうぞ!」

「いや〜仕事の後の甘い物は格別っすわ〜」

 

 皆は和気あいあいとした雰囲気で食事を楽しんでいた。

 どくやら咲良と王牙は肉系が、歌と御影は魚系が、秀次は甘い物が好きらしい。

 

 するとそんなことを考えながら椅子に座っていた美月の元に、両手に料理が乗ったお皿を抱えた焔たちがやって来た。

 

「はい、美月! それだけじゃ足りないだろうから、いろいろと取って来たよ!」

「あ、ありがとうございます、焔……!」

 

 美月は焔が取って来てくれた肉と魚と野菜がバランス良く乗ったお皿を受け取った。

 すると美月の隣に座った焔が、肉が山盛りに乗ったお皿から肉を刺した串を手に取り、豪快にかぶりついた。ワイルドでカッコいい……。

 それから焔の隣に座った冬馬が魚介類を中心に食べており、美月の隣に座った小春が野菜類を……と言うか殆どが大好物のピーマン系のパプリカの山を頬張っていた。

 やっぱり以前聞いた通り、焔は肉系が、冬馬は魚系が、小春は野菜系が好きらしい。……とは言え、焔と小春はそれ系ばっかりで偏食し過ぎな気もするが……。

 

「う〜ん、このお肉凄く美味しい! 美月も食べてみなよ!」

「そうそう! 美月ちゃん細いんだから、もっと食べないと!」

「まあ……そうだな……」

「は、はい……! では……!」

 

 美月が焔にちょっとだけ見惚れていると、皆がそう促して来た。冬馬は少しだけ元気が無い気もするが……。

 だけど、皆の言う通り、美月は焼きパイナップと焼きマシュマロなどのデザート系しか口にしていなかったので、心配されるのは当然であった。

 

 それは美月が少食気味なのもあるが、一番の理由はこう言ったアウトドアの場での食事は初めてで、どう食べれば良いのか分からなかったからだった。

 相棒兼兄のサターンに相談しようにも、メカニカルウィッチ組は一足先に食事を終えて、この後の以前の準備に向かったし、付き添いのリンと爺やは離れた場所に座ったまま、自分のことを見守ってくへているだけだった。

 

 そんな訳で、美月は串の持ち手と先端の両方を持ち、恐る恐ると言った様子で肉を口にした。

 

「美味しい……!」

「でしょ! でしょ!」

 

 いつも食べている物よりも大分ワイルドな味付けだったが、和気あいあいとした空気も合間ってか、とても美味しく感じた。

 やっぱり皆で食べるご飯は美味しいと思っていた美月は、ふと輝のことを思い出した。

 

 輝がさっきから一言も話していないことに気づいた美月が、彼に目を向けようとすると、立ち上がった麗が手をパンパンと叩いた。

 

「良ーし、皆! メカニカルウィッチ組の皆の準備が終わったみたいだ! ……と言う訳で、今からミライトウキョウ校伝統の肝試しを始めるぞ!」

「……ん。 頑張って……」

「あたしたちは高みの見物をしてるからね〜♪」

 

 麗が説明する隣で、椅子に座っているネオンがお酒をチビチビと口にしていた。一応成人しているとは言え、絵面が……。

 

 ちなみに、二大チャンピオンバディのエキシビジョンマッチの勝者は麗たちだった。いくらルール上とは言え、本物の魔女であるネオンたち相手に勝てる強さは、世間から人間辞めてると言われるだけのことはあった。

 負けたネオンは、「流石、麗……。 他の人たちとは違う……」と、何だか嬉しそうだったし、ネプチューンは負けた時はキレまつぐていたけど、今はこうして落ち着いていた。

 ……と言うか、ウラノスも準備の手伝いに行ったのに、ネプチューンはそんなの知るかと言わんばかりに、ずっとネオンの側にいた。

 

「ルールは簡単! 二人一組のペアで、指定されたルートを周って、三枚のお札を回収してからこのビーチまで戻って来るだけだ! だけど、メカニカルウィッチ組の皆がいろいろ仕掛けをしているからな! ……と言う訳で、ペアをくじ引きで決めていくぞ!」

「「「は〜い!」」」

 

 ——そんな訳で、くじ引きをした結果……。

 

「歌先輩! よろしくお願いします!」

「はい、頑張りましょうね、焔君……!」

 

 まずは焔と歌のペア。師弟コンビらしい。

 

「わ〜い! 冬馬と一緒だ! よろしくね!」

「ああ、よろしくな、小春」

 

 次に小春と冬馬のペア。幼馴染コンビだ。

 

「ぐぬぬ……! よりによって、王牙先輩とですか……!」

「ああ? それはこっちのセリフだぜ、御影!」

 

 続いて御影と王牙のペア。犬猿の仲のコンビだが、大丈夫なのだろうか?

 

「さあ、行くわよ、秀次! このアタシに着いて来なさい!」

「うぃ〜す、お嬢」

 

 それから咲良と秀次のペア。舎弟?コンビらしい。

 

「輝先輩……! よろしくお願いしますね……!」

「……」

「輝先輩……?」

 

 そして、美月と輝のペア。こちらも幼馴染?コンビだ。

 

 しかし、輝は美月の声に反応を示さなかった。珍しい……。

 不思議に思った美月が輝の顔を見ると、その顔は真っ青になり、よく見れば体もガクガクと震えていた。これはまさか……。

 

 輝がさっきから一言も話さなかった理由に勘付いた美月は、他に人には聞こえない様に、自分の口元を両手で隠しながら、彼の耳元で口を開いた。

 

「あ、あの……()()()()ってもしかして……怖いのがダメなんですか……?」

「ーーッ!?」

 

 すると図星だったせいか、輝がビクッと震えた。それか自分の息が耳に当たってビックリさせてしまったからかもしれないが……。

 そんな輝はいつもより大分固い笑みを浮かべながら、カタコトな声を発した。

 

「ソ……ソンナコトナイヨ……」

 

 ——そんなことあるやつだった。

 

 

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