メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第52話「合宿の夜!皆で夏の思い出を作ろう!」

 

 

 ——むかしむかしある所に、悪逆の限りを尽くした三体の妖怪がいましたとさ。 その三体の妖怪……天狗、妖狐、鬼に苦しめられていた人々を救う為に、異邦から訪れた皆様が一人で立ち向かったとさ。 巫女様は激闘の果てにその三体の妖怪に打ち勝ち、もう二度とその力で悪さできぬ様に封印したとさ。 しかし封印された三体の妖怪は、今も尚自身を封印した皆様に……人間に深い恨みを抱き、力を取り戻す機会を伺っていると言われているとさ……。

 

 ……と言う感じの肝試しのストーリーを聞いた美月と輝は、指定されたルートである、ビーチの近くにある山の麓を歩いていた。

 

 肝試しと言うことで、外側は古典的な提灯、内側は最先端な魔法の灯と言う凝った物を渡された。

 ちなみに、マジカルウォッチは緊急時のSOSを除いて使用禁止である。懐中電灯などのいろいろなら機能が内蔵されているので当然の措置ではあるが……。

 相棒のメカニカルウィッチ組が仕掛け組に回った理由の一つもそれと同じだった。彼らが一緒だと仕掛けを全部看破してしまいかねないのだ。

 

「あ、あの……()()()()、大丈夫ですか?」

「だだだ大丈夫だよ! みみみ美月ちゃん!」

「それは大丈夫じゃないやつです……」

 

 そんな訳で、美月は今は輝と二人きりと言うこともあり、昔の呼び方で呼んでいた。

 輝は今はこうして、勉強も運動もできる王子様の様なルックスを持つ生徒会長になったが、昔は自分と同じで弱気な性格だったことを美月は思い出していた。何と言うか、昔みたいで可愛い……。

 

 まあでも、輝がこんなに怖がるのも無理はなかった。

 メカニカルウィッチが普及して魔法が使える様になったことで、こう言ったイベントの仕掛けのクオリティは段違いになったのだから。

 事実、昔の()()()()()()は精霊の仕業だと立証されいてる為、仮に()()が紛れ込んでいても気づけないくらいにリアルな雰囲気に仕上がっていた。

 そして、これがメカニカルウィッチ組が仕掛け組に回ったもう一つの理由だった。

 

「みみみ美月ちゃんは、僕が守る!」

「輝ちゃん……」

 

 正直な話、美月は昔から……正確に言えば十年前より後から、ホラー系に恐怖を感じることは無くなっていた。

 自分が精霊と人間が混じっている状態だからか、怪現象よりも人間の方がよっぽど怖かったし、この魔力が見える目でそう言ったものも全部看破できた。

 

 そう言う意味では美月もメカニカルウィッチ組に混ざるべきなのだが、自分の今の状態についてはまだ焔や輝たちに話せていないので仕方がない。

 家族であるサターンやリンや爺やたち以外で最初に相談した、同じ魔女であるネオンたちに他言したら碌なことにならないと強く言われたのだ。

 まあでも確かに、焔や輝には昔のことを知られているとは言え、実は一度死んで精霊と人間が混じった存在になりました、と言う重い話を更にするのは流石に気が引けた。

 

 それにこんなに怖がりな輝にその話をして、もし卒倒でもされたらショックで泣く自信があった。

 

(そうだ……!)

 

 するとそんなことを考えていた美月はちょっとしたイタズラを思いついた。

 輝が恐怖で周りが見えていないのを利用して、気配をそっと消して彼の背後に回り込んだ。

 

「あれ……? 美月ちゃん……?」

 

 自分が姿を消したのに気づいた輝が辺りをキョロキョロと見回す中、一手先の未来が見える等しい魔力が見える目を利用して、その死角を取り続ける。

 そして、後ろを振り向いた輝の背後からその肩をポンポンと叩いた。

 

「みみみ美月ちゃんなの……??」

 

 輝が恐る恐ると言った様子で振り向いて来た。

 今だ……!幽霊のポーズ!

 

「う、恨めしや〜!」

「……!!」

 

 すると輝はその場で固まった。だけど、想定よりもビックリしてくれない。

 不味い。滑ったかもしれない……そう考えた美月は、顔を真っ赤にしながら慌てて言い訳をした。

 

「ご、ごめんなさい……! 私の着ている白い服と言えば、幽霊が着ているイメージかなって思って……! 輝ちゃんの緊張をほぐすつもりだったんです……!」

 

 そんな美月の今の格好は、朝と同じノースリーブの白のワンピースと言う、ある意味幽霊っぽいものだった。

 まあ事実、美月は一度死んでいるので半分幽霊とも言えなくもないのだが……。

 

 すると輝は固くなっていた顔を緩めて笑い出した。

 

「フフフ……! ありがとう、美月ちゃん。 おかげで緊張がほぐれたよ」

「……! それなら良かったです……! あ、そうだ……! 輝ちゃんは怖いのが苦手みたいですし……手を繋ぎませんか……?」

「……!! み、美月ちゃん、良いの?」

「は、はい……! イタズラをしたお詫びになるかは分かりませんが……!」

「う、うん……! 是非、お願いするよ……!」

 

 そして、美月は左手で提灯を持ったまま、右手を輝の手と繋いだ。

 輝も手を繋いで安心したみたいだし、これでもう大丈夫だろう……。

 

 ——美月もこの時はそう思っていた。

 

 

*****

 

 

 ——肝試しの仕掛けは前座からしてフルスロットルだった。

 

「あれ……? 歌書記じゃないか……! どつして一人でいるんだい?」

「うぅ……白金会長……。 焔君と逸れちゃって……」

「それは大変だ……! だけど、もう大丈夫だよ!」

 

 道端で一人、顔を隠して泣いていた歌?を見つけた輝が、心配のあまり近寄って行く。

 

 輝と手を繋いでいる美月は、魔力が見える目で歌?の正体も分かっていたが、流石にお口をチャックしていた。

 だけど、これが無くても、焔と歌のペアは最初に出発して、自分と輝のペアは最後に出発したので、冷静に考えれば気づける筈なのだが……。

 

 すると歌?は顔を隠していた手を退け、のっぺらぼうの顔を露わにした。

 

「アリガトウゴザイマス、白金会長……!」

「ヒュッ……」

 

 輝の息が止まった。

 

 すると今度は美月たちの背後の影から、自分たちとそっくりなドッペルゲンガーが音もなく現れた。

 それに気づいた美月が後ろを見ると、ドッペルゲンガーもとい、マジカルチェンジで一時的に変身したカロンが目をパチクリさせた。ちなみに歌?の正体もピスケスである。

 しーっと内緒のジェスチャーをして来たので、自分もコクリと頷くと、カロンは輝の肩をポンポンっと叩いた。

 

「みみみ美月ちゃん……!?」

 

 さっきのイタズラのせいで美月の仕業だと思われた様だが、自分は今は両手が塞がれているのは輝もじっている筈だった。

 冷静さを失った輝が後ろを見ると、そこには彼そっくりに化けたカロンが無表情で立っていた。

 

「……」

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」

「ひ、輝ちゃん……! 落ち着いて……!」

 

 女の子の様な悲鳴を上げて走り出した輝に引っ張られる形で、美月も全力で走る羽目になった。

 

 

*****

 

 

 ——お札のある最初のスポットにて。

 

『ククク……』

「ここここれだね……!」

「はい、そうみたいですね」

『ククク……』

「これは仕掛け。 これは仕掛け。 これは仕掛け。 これは仕掛け。 これは仕掛け」

「ひ、輝ちゃん、落ち着いて下さい……!」

 

 お札の置いてあったスポットは、見るからに呪われていそうな雰囲気のある廃神社だった。勿論、魔法で作り出したハリボテだが、凄いクオリティだった。

 そしてこの場に訪れてからずっと、周囲の木々の中から不気味な笑い声が聞こえて来ていた。

 

「みみみ美月ちゃん……! 早く行こ……」

 

 ——輝が急いでその場を離れようとしたその時だった。

 

「う……」

「ククク……! 逃さぬのであーーる!!」

「ヒュッ……」

 

 人間を遥かに超える大きさの天狗もとい、レオがいきなり目の前に降って来た。

 

 成程。これが肝試しのストーリーに出て来た三体の妖怪で、自身を封印しているお札を手に入れようとしていると言う設定の元襲って来るのか、と美月が呑気に考えていると、またもやその手が引っ張られた。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」

「て、輝ちゃん……!? だから仕掛けですってば……!」

 

 

*****

 

 

 ——次のスポットにて。

 

「しくしくしくしく……」

 

 次の廃神社では妖美な炎を身に纏った九つの尻尾を持つ狐耳の美少女が泣いていた。

 

「ヴィヴィヴィヴィーナスだよね……??」

 

 流石に自身の相棒と言うことで、輝もその正体に気づいたらしい。ちなみに炎の演出はマーズだ。

 するとヴィーナスはハイライトの消えた目で輝を見ながら、うっとりとした笑みを浮かべた。

 

「ああ、愛しの旦那様……! ヴィ……私は旦那様がいらっしゃるのを心待ちにしておりました……! このお札が欲しいのでしょう? 旦那様をここに置いて行くのであれば、これを差し上げましょう」

「「「え??」」」

 

 自身を封印しているお札を手に入れようと襲って来る設定はどこに行った。裏で隠れているマーズの素の声も聞こえて来たのだが……。

 輝もいくらヴィーナスだと頭では分かっていても、こんな不気味な場所に置いて行かれるのは嫌なのか、青い顔で頭を横にブンブンと振っていた。

 

 するとマーズが気を利かせて、ヴィーナスが持っていたお札を魔法でこちらに飛ばして来た。

 輝は急いでそれを拾い上げると、慌ててこの場から去ろうとする。

 

「いいい行こう、美月ちゃん……!」

「は、はい……!」

 

 しかし……。

 

「アアアの逃ゲナイデ旦那様アァァァァァァァァァァッーー!!」

「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」」

 

 ヴィーナスは演技とは思えない危機迫る表情をしながら、猛スピードで追いかけて来た。

 その怖さは輝だけではなく、美月も思わず悲鳴を上げるレベルだった。

 

 余談だが、マーズがヴィーナスの足止めてくれなければ、絶対に追いつかれていた。

 

 

*****

 

 

 ——そして、最後のスポットにて。

 

「判決ッ!! 軽々しくみづ……少女と手を繋いだ輝の罪は、八つ裂きの刑とするッ!! やれ、お前たちッ!!」

「フッ、さあ罪人よ……! 刑罰の時間だ……!」

「ひ、ひき肉にしちゃうぞ……!」

 

 最後の廃神社には一体の鬼もとい、サターンと、その子分である二体の鬼もとち、マーキュリーとジュピターがいた。

 いやもう鬼と言うより閻魔大王になっている気がする。設定はどこに行った。

 

 すると案の定、サターンは自身を封印していると言う設定を無視して、お札を美月の元へと飛ばした。

 

「ふむ……そこの清き魂を持つ少女はここを通るといい……。 ただし、そこの輝にはあ……鬼として話があるので残る様にッ!!」

「んんっ、鬼様」

「ん? 今、お兄様って言った?」

「言ってません……!」

 

 美月がジト目で見つめると、サターンが思わずたじろいだ。良し、この調子だ。

 

「じー」

「ぐぬぬ……仕方あるまい……! その少女に免じて、ひか……少年もここを通ることを認めよう!」

「ありがとうございます」

 

 勝った。

 

 

*****

 

 

 ——ビーチへと戻る帰り道にて。

 

「本当にありがとう、美月ちゃん……!」

「いえ、寧ろサターンがすみません……!」

 

 無事に三枚のお札を回収した美月と輝は、手を繋いだ状態で歩いていた。

 

 そんな二人の前に、ここら辺に無い筈の墓地が現れた。それにこの魔力は……。

 すると墓場の地面から甲冑を着た骸骨が這い出て来た。

 

「恨メシヤデゴザル!!」

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」

「わっ……! 輝ちゃん……!?」

 

 悲鳴を上げた輝に引っ張られる中、美月は別の恐怖を感じていた。

 ウラノスは魔法でコース全体の雰囲気作りをしていた様だが、ここに来るまでにスコーピオの魔力だけ全く感じ取れなかったのだ。見えない恐怖が美月は怖かった。

 しかし結局、美月と輝がビーチへと戻るまで、スコーピオは何もして来なかった。

 

 

*****

 

 

 ——ビーチにで。

 

「う〜ん……う〜ん……」

「ああ、愛しの旦那さ……んんっ、マスター。 よしよし、もう大丈夫ですよ」

 

 ビーチに戻って来て緊張の糸が切れて倒れた輝をヴィーナスが嬉しそうに看病していた。

 そんな輝を見た咲良と王牙が苦笑いをしていた。

 

「……全く、輝が怖いのがダメだったなんて知らなかったわ。 去年と一昨年の肝試しでは必死に隠していたのね」

「けど、輝の素が知れて良かったじゃねえか?」

「ええ」

 

 それから美月は、最後まで姿が見えなかったスコーピオが、ネプチューンと同様にずっとこの海の家に残っていたことを知った。

 だけど、それを知ったメカニカルウィッチ組のみんなが、「え?? じゃああのスコーピオは??」と、青い顔をしていた。どうやら()()が紛れ込んでいたらしい。

 

 空気が凍る中、マーズが手をパンパンと叩いた。

 

「みみみ皆! 肝試しでは怖がらせちゃった分、花火ショーで皆を笑顔にするわよ! そしてそれで、()()()()()()()も追っ払うわよ!」

「「「おー!」」」

 

 マーズの元に一致団結したメカニカルウィッチ組の皆は、早速用意してあった手持ち花火や手持ち噴射花火や線香花火、それからロケット花火や打ち上げ花火と言った面々に魔法をかけていった。

 

 すると魔法をかけられた花火たちが、まるで命を吹き込まれた様に火を灯し、空中へと舞い上がった。

 花火たちは太陽やお城や木々などのシェルエットを作り出し、海の家の前に即興の舞台を作り上げていた。

 その中でもマーズの魔法は、皆を仕切っているだけあって凄かった。流石、マーズファイアと言った炎系の魔法の使い手なだけはある。

 

「綺麗……!」

「美月!」

「焔?」

「ほらほら、せっかくの煌めきな花火ショーなんだから、前で見なきゃ勿体ないよ!」

「きゃっ……!?」

 

 花火ショーに見惚れていた美月の元にやって来た焔が、その手を掴んだ。

 ちょっと意識している異性に急に手を引かれたことで、美月は恥ずかしさから顔を赤くした。

 でも、花火ショーのおかげで誰にもバレてない筈……。

 

 そして、美月が焔と一緒に花火ショーの舞台の最前列へと向かうと、丁度花火で『勇者と魔女』と言う文字を書いていたマーズが自分たちを見てニヤリと笑った。

 

「さあさあ、私たちの舞台である『勇者と魔女』のゲストとして……勇者役を焔君に、魔女役を美月ちゃんにお願いしようかしら?」

「お、俺!?」

「私……んんっ、わたくしですか……!?」

「ほらほら、二人共早く!」

 

 マーズに促された美月は、人前と言うことで精霊人格から人間人格へと慌てて意識を切り替えた。

 本物の魔女である自分が魔女役に指名されるなんて、どんな偶然だ。

 

 そして、そんな自分と焔が舞台に立つのを確認したマーズがストーリーを語り始めた。

 

「——むかしむかしある所に、規格外な魔法の力を持つ一人の魔女がいました! 魔女は決して人に害を為す人物ではありませんでしたが、その規格外な強さを恐れた周囲の人たちは、魔女と距離を取るだけではなく、魔王と呼んで恐れる様になりました! やがてその噂を悪い意味で聞きつけた勇者たちが、周囲を恐怖で支配する魔王を討ち果たさんと挑みましたが、魔女はその全てを返り討ちにしました! そしてそのせいで、その噂は益々悪い意味で広がることになりました!」

 

 何処かで聞いたことがある様な話だった。この配役と言い、まさか自分がモデルなのだろうか?

 

「そんな中、魔王の噂の真実を知ったある一人の勇者が、魔女のことを救わんと立ち上がりました! 勇者は魔女に勝ってその隣に並び立つことで、彼女も自分と同じ一人の人間だと周りに証明することにしたのです! そしてその戦いも最後の時を迎えようとしていました!」

 

 即興の舞台だからか、場面がいきなりクライマックスになった。

 

 そんな訳で、魔法で光る杖になった花火を渡された美月は、魔法で目の前に浮かんでいる小さな文字のセリフを読み上げた。

 

「わたくしよりも弱い貴方が、どうやってわたくしのことを救うのですか?」

 

 美月は今まで父である明日斗博士の代理として、大勢の人の前に立つ機会が多かったこともあり、用意されたセリフを読み上げるだけなら割と簡単にできた。

 

 すると魔法で光る剣となった花火を手にした焔が同じ様にセリフを口にした。

 

「魔女様に勝ってその隣に立つことで、君も俺と同じ一人の人間なんだって皆に証明するよ!」

 

 焔は堂々とした様子でセリフを口にしていた。カッコいい……。

 おっといけない……自分の番だ。

 

「なら、わたくしに勝って、証明して見せなさい……!」

 

 美月がセリフと共に光る杖を適当に振ると、メカニカルウィッチ組の皆が魔法でド派手な演出を始めた。

 魔法で巨大なドラゴンのシェルエットとなった花火が星空の下を羽ばたく。

 それを見た焔が光る剣を適当に振ると、ド派手な魔法の斬撃の演出が起こり、ドラゴンを撃ち落とした。

 

 それを始めとし、吸血鬼(ヴァンパイア)人狼(ウェアウルフ)人形(ゴーレム)天使(エンジェル)悪魔(デーモン)などのシェルエットが次々に星空の下に浮かび上がるのと共に、花火を使った綺麗な魔法の様々な演出が舞台を彩った。

 そんな音と光を最大限に活用した、綺麗で神秘的な光景に美月が思わず目を奪われていると、いつの間にか焔がら目の前まで来ていた。

 

「これで俺の勝ちだ……!」

 

 焔は一度光る剣を下ろしてから、その続きを口にした。

 

「もうだ丈夫だよ! これからは俺がずっと魔女様の隣にいるから!」

 

 そのセリフを聞いた美月は、焔たちと学園リーグ戦をした後のあの時のやり取りを思い出していた。

 それにこの後のセリフもあの時の会話に近いものだった。

 

「……わたくしを置いて行きませんか?」

「うん、絶対に置いて行かないよ!」

「……わたくしを一人にしませんか?」

「うん、絶対に一人にさせないよ!」

「……わたくしとずっと一緒にいてくれますか?」

「うん、約束するよ! 俺はずっとみづ……じゃなかった魔女様の隣にいるって!」

 

 焔は最後に少しセリフを間違えていたが、美月は寧ろその間違えた部分が嬉しかった。

 

「——ありがとう、勇者様……! 約束ですよ……!」

 

 美月は天使の様な満面の笑顔で、最後のセリフを口にした。

 

「……!!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ〜〜!!」」」

 

 そんな美月の笑顔を見た焔が固まる中、舞台が終わったことで、観客の皆が大観声と共に大きな拍手をしていた。

 

 そんな中、一歩離れた場所で見ていた麗とネオンが何かを話していた。

 

「ハハハッ! 懐かしいな、ネオン! 俺たちも昔、こんなやり取りをしたっけ!」

「……ん。 麗がいてくれて……本当に良かった……」

 

 どうやらネオンと麗も似た様な経験をしていたらしかった。

 話を考えたマーズの相棒である焔は麗の従兄弟なので、もしかしたら自分たちとネオンたちの両方をモデルにしたのかもしれない。

 

「凄い、凄〜い! 次はあたしが魔女役をやりたい! 冬馬! 勇者役をやってよ!」

「ぼ、僕!?」

 

 舞台の最前列ではしゃぐ小春と、恥ずかしそうな冬馬の声が聞こえる中、美月はふと星空を見上げた。

 こんなに綺麗な星空なら、見守ってくれている亡き母にも自分の声が届く様な気がした。

 そう考えた美月は心の中で母へと語りかけた。

 

(——お母様。 私は今、幸せです……!)

 

 

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