メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第53話「小春ちゃんのウィッチバトル教室!」

 

 

 ——合宿が終わってから一週間近くが経った、七月最後の週の水曜日。

 

 夏休みの序盤はいろんなことがあった。

 

 合宿から帰って来た次の日の月曜日は、焔の誕生日だったので、チームオールスターズの皆で誕生日会を開くことになった。

 焔が十六歳になったことに、マーズが相棒の立場よりも姉の立場を全開にして号泣し続ける中、彼の大好物であるとんかつを中心としたオードブルやケーキを皆で食べた。

 それからパーティーの途中で、御影と生徒会メンバーの皆も遊びに来てくれた。秀次は咲良に引きずられて来た形だったものの……。

 そんな訳で、メカニカルウィッチが大好きな焔の要望で、合宿の時みたいに皆でウィッチバトルをすることになったのは良い思い出だ。

 友達の誕生日会に参加したのは初めてだったので、本当に楽しかった。

 ちなみに美月の誕生日は一月だが、冬馬も同じ一月で、輝は十一月だと聞いたので、次の誕生日会が楽しみだった。

 

 その後、偶然にもネオンもその日が誕生日だったので、ネプチューンの「絶対に来て!!」と言うお誘いの元、彼女たちの住む高級マンションに向かうことになった。

 ……とは言え、呼ばれたのは同じ魔女である美月と、同じ本来(オリジナル)の精霊であるサターンだけだったが……。寧ろ他の人たちは絶対に連れて来るなと念押しされた。

 そんなネオンたちの住む場所は、流石国内並びに世界でトップのプロリーグの選手と言うだけあって、美月の住んでいた高級マンションと同レベルのものだった。何でも成人したその日に実家を出てから、ずっとここに住んでいるらしい。

 だけど、ネオンのダウナー気味な性格と、ネプチューンの子供っぽい性格が原因なのか、部屋はノーコメントとしか言えない惨状になっていた。これでも一応、昼間に誕生日を祝いに来てくれた麗とウラノスが片付けを手伝ってくれた後らしいが……。

 そんな訳で、二十五歳になったネオンの誕生日を、人間と同じ大きさの姿に変身したサターンとネプチューンと一緒に祝うことになった。

 人数も四人だった為、焔の誕生日会と比べると静かなものだったけど、これはこれで良いと思った。

 

 閑話休題。そんな美月は今現在、定期検診の為に病院に訪れていた。

 

 この未来病院は国立の病院で、美月は今年の四月以降は特にお世話になっていた。

 四月のメカニカルウィッチ学園の事件の翌日に検査に訪れたのを皮切りに、その日に起きた黒土邸での戦いで目覚めた力の影響で一週間程入院することになり、さらに五月に無理が祟って意識不明で倒れて運び込まれることになり、挙げ句の果てには、六月に学園で再び起きた事件の際に覚醒した力の後遺症で丸一ヶ月も入院することになった。

 一学期中に三度も倒れて病院に運ばれたせいで、周りの皆には本当に心配をかけたと思う。そのせいで病弱と言うイメージが学園中に完全に広まってしまったが、そろそろ否定できなくなって来たので、それについてはもう諦めた。

 

 そして、そんな美月の担当医になったのが、今目の前にいる青水小雪(あおみずこゆき)先生だった。

 

「——うん。 美月さんの検査結果を見たけど、取り敢えず大きな異常はなさそうだね」

「はい、()()()()

 

 青水先生は女性でありながらイケメンと言う言葉が似合うクールビュティーな人で、その苗字から察する通り、冬馬の母でもあった。

 冬馬と苗字が同じで、容姿もどこか似ているからもしかしたらと思って尋ねてみたら、案の定だった。

 

「これで良しっと。 美月さんのデータをまとめたから、病院のデーターベースに入れといて貰えるかな?」

「分かりました、青水先生。 お任せ下さい」

 

 青水先生の指示を受け取ったナースの女性は、リンや爺やたちと同じ、人間と同じ大きさの最先端のロボットの体を使っているメカニカルウィッチだった。

 この体はまだ開発途中の為、一般には普及していないものの、メカニカルウィッチの力が特に必要とされる病院や消防や警察などに、まだ一部ではあるが普及し始めていた。

 

「……青水先生、緊急の連絡が入りました。 入院している患者さんの容体が急変したそうです」

「分かった。 直ぐに行くにから、アタシのマジカルウォッチに患者さんのデータをお願い。 じゃあ、美月さん、また来月の定期検診の時に」

「はい、青水先生。 ありがとうございました」

 

 急いで患者さんの元へと向かっていった青水先生を見送った美月も診察室を後にした。

 

 

*****

 

 

 美月が診察室から出ると、少し離れた場所からこちらを見ている、スーツを着てサングラスを掛けた人たちの姿が目に入った。

 彼らは学園の外にある病院に定期検診に行く美月の護衛であり、今日はプロリーグの試合があって来られない二大チャンピオンバディのネオンとネプチューン、それから麗とウラノスの代わりとして、白金代表が手配した人たちだった。

 勿論、黒土邸の事件の際に、ワールドユニオンの刺客が護衛の中に紛れていた反省を生かして、身辺調査は念入りに行ったそうだ。

 ……とは言え、既にサターンが護衛としてずっと側にいてくれているので、あまり変に目立たない為にも、護衛の人たちにはいざという時に駆けつけられる位置で待機して貰っていた。

 

 ワールドユニオンの刺客と言えば、草刈(くさかり)水島(みずしま)炎炉(ほのおろ)の三人を始めとした特殊部隊の面々は、今も尚口を閉ざしたまま、国に身柄を拘束されているらしかった。

 草苅たちは自分を狙って何度も襲って来た敵だったが、それでもこの十年近く一緒にいた思い出や、前回の戦いで自身の命を盾にしてでもムーンから守ってくれたことから、美月は複雑な感情を抱いていた。一度どこかでちゃんと話ができると良いのだが……。

 

 それからこの前の戦い以降、ムーンとサンも姿を見せなくなっていた。

 それは二大チャンピオンバディが自分を護衛してくれているからなのか、それともワールドユニオン軍の一部がJP国に滞在する様になったからなのか、理由は定かではなかった。

 だけど白金代表経由で、JP国の外でネメシスとクリサリスがワールドユニオン軍と度々戦闘を起こしていること、それからバルカンが何やら怪しい動きをしていることを知らされた。

 

(……今週から始まる全国大会では、何事も起きないと良いのですけど……)

 

 美月がそう思っていると、病院のロビーから大勢の人の声が聞こえて来た。

 何事だろう?と美月がロビーへと向かうと、テレビがロビーの空中に映し出した映像の中に映るアイドルの女の子に向かって観声を上げていた。

 

『〜〜♪』

「あ、ステラちゃんだ……!」

 

 ステラはJP国の国民的アイドルとも言える存在で、ロングヘアの金髪を、ハートの形をしたお団子型のツインテールにした、アスタリスクの模様が入った碧い瞳を持つ、メカニカルウィッチの女の子だった。

 数年前にデビューした彼女は、その綺麗な歌声による圧倒的な歌唱力で一気に人気が急上昇し、人工精霊であるが故に実質的に年を取らないアイドルとして爆発的な人気を集めていた。

 しかも最近は、人間と同じ大きさの最先端のロボットの体を手に入れて等身大の存在になったことで、その人気は止まることを知らなかった。

 

『ありがとう〜☆ 最新曲の『キラキラ☆アステリズム』でした〜☆』

「ステラちゃん〜!」

「可愛い〜!」

「元気出たよ〜!」

「ありがとう〜!」

 

 ロビーにいた人たちはテレビの向こうにいるステラに向けて、大観声を飛ばしていた。

 やっぱり彼女の歌には人を惹きつけ元気にする不思議な力と魅力があるのだろう。

 

「やっぱりステラちゃんの歌は綺麗です……!」

「お嬢様も彼女のファンなんですか?」

「は、はい……! 実は……」

「わあ〜〜!! 流石ステラちゃん! 凄い、凄ーい!」

 

 美月がサターンと話していると、近くから見知った声が聞こえて来た。この声は……。

 

「小春……?」

「あれ、美月ちゃんじゃん! あ、もしかして、定期検診で来たの?」

「はい。 小春は?」

「あたしもなんだ! もうすっかり元気になったとは言え、術後の定期検診は大事だからね!」

 

 そう言えば、小春は生まれつき大きな病気で何度も入退院を繰り返していたと言っていたが、まさかこの病院だったとは……。

 そんな小春の後ろには、両親であろう女性と男性がいた。

 

「あ、美月ちゃんは初めて会うよね! あたしのママとパパだよ!」

「初めまして、小春の母の緑木風花(みどりぎふうか)と言います。 小春とジュピターから美月さんの話はいつも聞いています」

「初めまして、小春の父の緑木良馬(みどりぎりょうま)と言います。 小春とジュピターがいつもお世話になっています」

「あ、いえ……! 私……んんっ、わたくしこそ、いつも小春とジュピターと仲良くさせて頂いておりますので……!」

 

 美月は初対面の人の前と言うことで、咄嗟に素の精霊人格から人間人格へと意識を切り替えた。

 小春の両親は、元気いっぱいな彼女とは反対に、二人共落ち着いた口調をしていて、どこか儚そうな雰囲気を持つ風花の体を、良馬が優しく支えていた。

 

 すると小春が何かを思い出した様に急に声を上げた。

 

「あ、いけない! 皆に会いに行く約束をしているんだった! ママ! パパ! 定期検診ももう終わったし、行ってくるね!」

「ええ、分かったわ、小春。 でも、無理はしない様にね?」

「ジュピター、小春のことを頼んだよ?」

「う、うん……小春ちゃんのことは任せて……!」

 

 美月が緑木家のやり取りを見ていると、小春が急に自分の目の前までやって来た。

 小春はそのまま美月の手を取った。

 

「美月ちゃん! この後時間ある?」

「今日の定期検診ももう終わったので、特に予定は……」

「じゃあさ! じゃあさ! もし良かったら、あたし主催の『ウィッチバトル教室』に参加してみない?」

 

 

*****

 

 

「やっほー、皆!」

「げ、元気にしてたかな……?」

「「「「わ〜い、小春お姉ちゃんとジュピターだ!」」」」

 

 その後、小春からの誘いを受けることにした美月は、未来病院の中にある院内学級に来ていた。

 小春とジュピターが車椅子に乗っている子供たちに挨拶をする中、美月とサターンも院内学級の先生たちに挨拶をしていた。

 

「初めまして、私は院内学級の教員を務めいる四季恵(しきめぐみ)と言います」

「私は四季(しき)先生の同僚のシーズンです」

「は、初めまして、わたくしは黒土美月(くろつちみづき)と申します……!」

「僕はお嬢様の相棒のサターンです」

 

 四季先生は年配の女性の教員で、シーズンはそんな彼女の相棒と言うよりかは、長年の仕事仲間であるらしかった。

 この前の浜辺夫妻とビーチの様に、大人の人たちはメカニカルウィッチと相棒以外の関係性を築いていることが多かった。

 

 そんな中、美月の存在に気づいた子供たちが興奮した様子で声を上げた。

 

「あれ? このお姉ちゃんってもしかして……!?」

「俺、テレビで見たことある! 明日斗博士の娘の黒土美月……さんだ!」

「え!? 有名人じゃん! 凄ーい!」

「き、綺麗な人……!」

「ええっと……!」

 

 子供たちが向けて来る目に美月は思わずたじろいだ。

 明日斗博士の娘として扱われるのは今だにプレッシャーがあるのだが、子供たちなら仕方がない。

 

 すると四季先生が子供たちを宥めた。

 

「ほらほら、皆。 まずは挨拶からでしょう?」

「「「「はーい!」」」」

 

 四季先生の言うことを聞いた子供たちは、自身の相棒と一緒に名乗りを上げた。

 

「僕、春太(しゅんた)!」

「相棒のスプリングだよ!」

「俺は照夏(てるなつ)だ!」

「相棒のサマーよ!」

「うちは秋華(しゅうか)!」

「相棒のフォールだ」

「あ、あたしは……舞冬(まいふゆ)です……」

「相棒のウィンターと言います」

 

 子供たちは皆小学生で、春太と照夏が男の子、秋華と舞冬が女の子だった。相棒たちの性別はその逆である。四季先生とシーズンも含め、全員異性の相棒とは珍しい……。

 

 そして、皆が自己紹介を終えたことで、小春が待っていましたと言わんばかりに手を高く上げた。

 

「良〜し! じゃあ皆、お待ちかね! あたしが主催の『ウィッチバトル教室』を始めるよ!」

「「「「わ〜い!」」」」

 

 それから小春の先導の元、教室内に置いてあったウィッチバトル用のスタジアムに子供たちが集まった。

 子供たちは車椅子ではあるが、相棒たちが魔法でその補佐をしていた。

 

 ウィッチバトルはスポーツ競技ではあるが、病気の子供たちも遊べる様に、シンクロ率の上限を五十パーセントに抑え、負担を最小限にした『セーフティーモード』と言う機能があった。

 この機能は、相棒と一緒にバトルをしてみたいと言う病気の子供たちの声を聞いた、父である明日斗博士が後付けで追加したものなので、世の中にはこの機能があることを知らない人も多かった。

 ……とは言え、それはあくまでも手のひらサイズのロボット同士がバトルするウィッチバトル限定の話で、巨大なロボット同士がスーパーウィッチバトルでは中に人が乗り込む都合上、別の問題も出て来るので、年齢制限と合わせて流石にそちらの方は難しいのが……。

 

 そんな訳で、目立った障害物の無い一番プレーンな『荒野』のバトルフィールドに、美月とサターンのアークサターンと、照夏たちの機体と秋華たちの機体、それから小春とジュピターのゴーレムジュピターと、春太たちの機体と舞冬たちの機体が降り立った。

 今回は三対三のティーチングバトルをすることになった。

 懐かしい。自分も最初のバトルはリンと一緒に、初代チャンピオンバディのきららとポラリスにティーチングバトルをして貰ったものだ。

 

「それじゃあバトルスタート」

 

 バトルの進行は四季先生が担ってくれた。

 

「よっしゃー! 行くぞ、サマー!」

「ええ、照夏!」

「うちらも行くよ、フォール!」

「ああ、秋華」

 

 槍をメイン武器にした照夏たちの機体が真っ直ぐに突っ込む中、弓をメイン武器にした秋華たちの機体がそれを援護した。

 

「ひっ……! どうしよう、ウィンター……!」

「大丈夫ですよ、舞冬さん。 落ち着いて下さい」

「スプリング! 僕たちが舞冬ちゃんたちを守るよ!」

「了解だよ、春太君!」

 

 一方で杖をメイン武器にした舞冬たちの機体を庇う様に、剣と盾をメイン武器にした春太たちの機体が前に出た。お姫様を守る騎士(ナイト)みたいでカッコいい。

 

「その調子ですわ!」

「ふむ、良い筋だ……!」

「皆、凄いよー! よっ! 未来のチャンピオンバディ!」

「が、頑張って〜!」

 

 ちなみに美月たちと小春たちは、後ろから良い感じに援護するのに徹していた。このバトルの主役はあくまでも子供たちなのだ。

 

 子供たちはド派手な魔法を使ったバトルをとても楽しんでいた。

 これなら普段は闘病生活で体を満足に動かせないストレスも解消できるだろうし、自身の病気に対する暗い気持ちも吹き飛ばせるだろう。やっぱりウィッチバトルは良いものだ。

 

「ふふっ、子供たちが楽しそうで良かったわ。 それに、小春ちゃんもすっかり元気になったみたいで安心してわ。 ね、シーズン」

「はい、四季先生。 子供たちも、小春ちゃんの様に元気になってくれると良いですね」

 

 それを見た四季先生とシーズンも嬉しそうに微笑んでいた。

 

 それから何度かチームを変えてティーチングバトルを行った。

 美月たちは微笑ましい気持ちで子供たちをサポートした。

 しかし、最後の最後で……。

 

「あ、そうだ……! 小春お姉ちゃんたちと美月お姉ちゃんたちってどっちが強いんですか?」

「俺もそれ気になる!」

「うちも! うちも! ねえねえ、本気のバトルをやって見せて!」

「き、気になります……!」

 

 まさかの子供たちからの要望で、小春たちと本気のバトルをする流れになった。

 そして、それに小春が乗ってしまった。

 

「良ーし、美月ちゃん! あたし、皆の前だから今日はいつもの倍の二百パーセントの力で行くよ! いざ、バトル!」

「え?? こ、小春……!? 待っ……!」

(——が、頑張れ、私! 頑張りなさい、わたくし!)

 

 突如始まった本気のバトルに対応するべく、美月は慌ててお守りのペンダントに触れながら、勇気のお呪いを唱えた。

 

 小春が最初の宣言した通り、子供たちの応援の力を受け取ったゴーレムジュピターは本当に強かった。

 シンクロゾーンに片足突っ込んだレベルの強さを発揮した小春たち相手に、美月たちはシンクロゾーンを発動させて何とか勝利できたものの、本当に疲れた。

 

 その後、本気のバトルを見て火がついた子供たちに、もう一回バトルしようとヘトヘトの体を引っ張られる中、思わぬ助け舟が現れた。

 冬馬とマーキュリー、それから焔とマーズが、幼馴染の小春の手伝いにやって来たのだ。

 ただ、冬馬はそれとは別に、母である青水先生にお弁当を届けに来る用事もあったらしい。何でも青水先生は仕事に熱心な分、私生活は抜けている面があるらしい……。

 それから冬馬たちが来る途中で出会ったらしい、輝とヴィーナスも一緒にやって来ていた。何でもヴィーナスと一緒にいろんなことを経験したいらしい。

 

 すると本気のバトルを見せた美月たちと小春たちよりも強く、テレビにも顔が映る高校生チャンピオンバディの登場に、子供たちの興味が一気に移った。

 輝たちが子供たちの勢いにたじろぐ中、四季先生に少し休む様に言われた美月と小春は別の場所で休憩することにした。やっぱり小春も流石に疲れたらしい……。

 

 

*****

 

 

「——着いたよ、美月ちゃん! それに、サターンも!」

 

 美月は小春の案内の元、未来病院に入院する患者の憩いの場であり、この病院のシンボルである大きな木が植えられた中庭へと来ていた。

 

「初めて来たけど……自然がとても綺麗な場所です……!」

「……そう言えばお嬢様は、入院中は殆ど部屋から出られませんでしたからね……」

 

 サターンの言う通り、美月は入院中は『時間魔法』の後遺症の影響と、身の安全の問題などでずっと個室にいた。

 だから個室の窓から、入院する患者がこの場所に度々訪れているのを美月は見ているだけだったが、こうして実際に足を運んだことでその理由が分かった。

 この病院のシンボルである大きな木がたくさんの魔力を内包しているおかげか、この場所に来ると元気が貰えるのだ。

 

「ここはね……私と小春ちゃんのお気に入りの場所なんだ……!」

「うん! あたしも入院していた時は、ジュピターと一緒に良くこの場所に来てたんだ! だから、ここにはいろんな思い出があるんだ! それにね、冬馬とマーキュリーとも、ここで出会ったんだよ!」

「冬馬たちと……?」

 

 美月が思わず聞き返すと、小春は中庭にあるベンチに腰掛けて、その隣を手でポンポンっと叩いた。

 美月が促された通りに座ると、小春は懐かしいものを思い出す様に、手術痕のある自身の胸元を服の上から触りながら、その口をゆっくりと開いた。

 

「……そう言えば、この前海に行った時に美月ちゃんから()()のことを聞かれてたっけ? あの時は話を後回しにしたけど……今は時間もあることだし、あたしの昔の話をするね? 聞いてくれるかな?」

 

 

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