「——お嬢様。 次の試合の相手は、お嬢様の世代最強と名高い双子坂様とジェミニ様たちですが……お嬢様とサターンならきっと勝てると信じております。 それからお嬢様が昔楽しめなかった分も合わせてバトルを楽しんでいただけると、元相棒の私としても幸いです」
「ええ。 お嬢様、三回戦の勝利をお祈りしております」
「リン、爺や、ありがとう。 私も、サターンと一緒に世界で一番の相棒であるチャンピオンバディになると言う目標の為に、次の試合も頑張りますね……! ね、サターン……!」
「はい、お嬢様! 頑張りましょう!」
夏凛と千秋とジェミニたちから宣戦布告を受けた後、美月とサターンは控え室に戻ってバトルの準備をしながら、リンと爺やと話していた。
すると同じく控え室にいた
「やあやあ、
「はい。 明日斗博士は言うまでもないですが、千秋君の方も、天才の御霊が手放しで褒めるくらいの才能の持ち主ですからね」
「はい! 先程のうーちゃんたちと焔君たちのバトルと同じくらい凄いバトルを、私ちゃんも期待していますよ!」
「そうだね〜。 次の試合は事実上の一年生世代最強決定戦になるからね〜」
御霊はこの通りハイテンションだったが、開会式の日に見た通り、根っこの部分は美月の素の精霊人格と同じ極度の人見知りな為、人がたくさんいる観客席では無く、関係者以外は入れないこの控え室で観戦している様だった。
そんな御霊の相棒のプルート、それから妹の御影とその相棒のカロンも、彼女の面倒を見る為に基本的ずっとここにいる様だった。
余談だが、リンと爺やも美月たちの試合の時以外は基本的にここで待機していた。
そしてそんな期待の声を受けた美月は、対面用の人間人格のお嬢様口調に切り替えてから返答した。やっぱり自分も人のことは言えない……。
「はい、ありがとうございますわ。 御霊先輩とプルート、それから御影先輩とカロンの機体に答えられる様に頑張りますわ」
ちなみに御霊の名前呼びの許可を出しのは本人では無く、御影たちだった。
曰く、苗字呼びだと姉妹のどっちを呼んでいるのか分からないと言うのもあるが、一番は人見知りの姉には少しでも親しい人を作って欲しいらしかった。
「ガ、ガンバリマス……」
サターンは相変わらず、御霊の前では物凄く気まずそうに顔を逸らしていた。
全部を聞いた訳ではないが、やっぱりどうもサターンもとい兄の知り合いだったらしく、それも大分親しい仲だったらしい。
だけど不可抗力とは言え、自身が人間として死んでしまったことで、
しかしサターンの正体はおいそれと明かす訳にはいかないし……。
美月がそう考えていると、控え室に咲良とキャンサー、それから
「……全く、何負けてるのよ、秀次! 高校生の部最後の全国大会の舞台でアンタたちとバトルするのを楽しみにしていったて言うのに……!」
「そうでござるな。 拙者たちと当たる五回戦まで勝ち上がって来て欲しかったでござる」
「無茶言わないで下さいよ、お嬢〜。 相手は化け……シゼンホッカイドウ校の一位っすよ〜? 凡人の俺たちが勝てる訳ないじゃないっすか〜? そうっすよね、スコーピオ?」
「……ああ。 努力したところで無意味だった……」
咲良は秀次に目をかけているからか、彼が二回戦で負けたことに今だにご立腹な様子だった。
ちなみに今のところ、二回戦で負けた小春とジュピター、秀次とスコーピオ、それからさっきの三回戦で負けた歌とピスケス以外の面々はまだ勝ち残っていた。
するとそんな咲良たちの話を聞いた御霊がふと思い出した様に口を開いた。
「……そうだ、一つ思い出した。 私はシゼンホッカイドウ校の一位の
「それってどう言う……?」
美月が思わず問い返すと、御霊は真剣な顔になった。
「私は学園の寮にある自分の部屋にずっと引き篭もっていたが、それでも学園で起きた事件のことはある程度は把握している……。 だから黒土美月さんの事情も……アークサターンが本来は競技用では無く、実戦仕様の機体だと言うことも理解している……。 そしてこれはあくまでも私の個人的な見解なのだが……カオスサーペンはそんなアークサターンと同じで、おそらくは
「ーーッ!?」
*****
——一方その頃。シゼンホッカイドウ校の控え室では。
「あ!
「レ、レイ!? 何でここにいんだよ!? 関係者以外立ち入り禁止だぞ!?」
「え〜と、人混みのせいで、ママとルミとエールと逸れちゃって……気づいたらここに……」
「また迷子なのかよ……! しかも前の時もだが、とんでもない方向音痴じゃねぇか……!」
「
レイが知らない場所に辿り着くと、そんな自分を見た天魔とカプリコーンが頭を抱えていた。
すると控え室にいた女子生徒とメカニカルウィッチの少女が、興味深げな様子で近づいて来た。
「ほえ〜、あの学園の一匹狼の不良で有名な
「そう言えば、編入して来たばかりの一年生の
「うるせぇぞ、
「ひ〜、やっぱりおっかないだべ〜! トーラス、行くだべ!」
「だな、
天魔が怒鳴ると、闘子と呼ばれた少女とトーラスと呼ばれたメカニカルウィッチの少女は慌てて何処かへ走り去って行った。
天魔は不機嫌そうだったが、そんな彼の言った応援と言う言葉にレイはとあることを思い出した。
「あ、そうだ! 中継でだったけど、零お姉ちゃんたちの二回戦の試合見たよ!」
「……ボクたちの?」
「うん! 何か良く分からないけど、兎に角、凄かった! これからも応援してるね!」
「……そう」
レイの応援に零が淡々とした様子で返事をしていると、その様子を見ていた天魔が横から口を挟んで来た。
「あ〜、でも、その蛇遣異の相手は秀……ミライトウキョウ校の奴だったんだぞ? レイの応援している黒土美月と
「ん〜? でも、良く知らないしな〜。 私が応援しているのはあくまでも、憧れの美月お姉ちゃんたちと、ママの弟の輝お兄ちゃんたち、それからこの前迷子になった時に知り合った、零お姉ちゃんたちと天魔お兄ちゃんちゃんたちだからな〜」
「俺たちもかよ!?」
「レイも物好きねぇ……」
天馬たちは意外そうな反応をしていた。
だけどレイからすれば、迷子の自分を助けてくれた良い人たちなので、応援するのは当然なのだが……。
「うん! 中継でだったけど、天魔お兄ちゃんたちの一回戦と二回戦の試合も見たよ! あ、そう言えば、零お姉ちゃんたちの機体と、天魔お兄ちゃんたちの機体って
「あぁ……まぁ……それはな……」
事実、零たちの機体と天魔たちの機体は細かい武装は違うが、主武装は大剣に変化する大型の銃とブースターを搭載したシールドと言うのは共通していた。
何故かその指摘を天魔はぼかそうとしているが、もしかしたら仲が良いに気づかれたのが恥ずかしいのだろうか……?
それはさておき、レイはこの前のお礼をする為に、自分のバックからある物を取り出した。
「はい、コレ! 零お姉ちゃんたちと天魔お兄ちゃんたちに! この前のお礼を込めて、私が作った手作りのお守りなんだ! 勿論、勝利の願掛けもしてあるよ!」
それは折り紙を折って作った花だった。でもそれだけでは無く、ルミとエールの魔法によって、本物の花と同じ手触りと匂いを得た限り無く本物に近い物だった。その上、本物じゃなくてあくまでも紙なので枯れることは無い様になっていた。
ちなみに、数日前に美月たちと輝たちにも同じ物を渡しておいた。
「……おう。 ありがとよ、レイ……」
「……まあ、中々に良いセンスじゃない」
「……」
天魔たちが少し照れくさそうに紙の花を受け取って制服のポケットの中に収める中、零はそれを両手で持って興味深げに見つめていた。
「……どうした、蛇遣異?」
「……綺麗」
「……意外だぜ、お前にもそんな感情があったんだな……」
天魔の指摘を受けた零は、改めてレイを見るとソワソワしだした。
「……えっと……」
「零お姉ちゃん……? どうしたの……?」
「……ああ、こう言う時は『ありがとう』って言うんだよ、蛇遣異」
天魔からそう言われた零はしどろもどろと言った様子で口を開いた。
「……あ、ありがとう……」
「うん! あ、そうだ! このお花、髪飾りにも使えるから、私が零お姉ちゃんに付けてあげるね!」
零が初めて見せた態度に嬉しくなったレイはそう提案した。
「あ! レイ、待て!?」
すると天魔が慌てた声を上げていたが、レイは早る気持ちに押されて、零の髪にお花を取り付けた。
……コツン、と何やら
レイがそう考えいると、零は髪に取り付けられたお花を、自身の相棒のサーペンスに見せた。
「……サーペンス。 ……どうかな?」
「……自分には分からない。 ……が、
(……?
*****
——『天空城』のバトルフィールドにて。
『——さあ、全国大会高校生の部の三回戦☆ 続いての試合は、明日斗博士の娘で、ミライトウキョウ校の六位で一年生の美月ちゃんとサターン君! そして、現在の中学生チャンピオンバディで、レキシキョウト校の一位で一年生の双子座が夏凛ちゃんとジェミニ君ちゃんたちのバトルだよ☆ 優勝候補同士にして、共に今の一年生世代最強と名高い両者による初めてのバトル……果たして一年生最強の座を手に入れるのは、どちらになるのかな☆』
美月の耳にMCのステラの選手の紹介をする声が聞こえて来た。
今回のバトルフィールドの『天空城』は、城のある中央の浮島と、周辺のいくつもの小さな浮島が反重力によって空中に浮かんでおり、必然的に飛行魔法などの難しい魔法が使える上級者向けのステージになっていた。美月たちはバトルしなかったが、二大チャンピオンバディの
そしてバトル開始の時刻となったことで、MCのステラがバトルの開始を宣言した。
『それじゃあ皆お待ち兼ね☆ バトルスタートだよ☆』
「サターン! 中学生チャンピオンバディの夏凛ちゃんたちは、高校生チャンピオンバディに輝先輩たちに匹敵する強敵ですわ!」
「はい、お嬢様! 気を引き締めて行きましょう!」
バトル開始の合図を受けて、アークサターンの全身のスラスターに火を付けると、城のある中央の浮島へと向かわせた。
夏凛たちのデュアルジェミニは、バトル中に装備ごとバトルスタイルを切り替えられる為、何をしてくるか分からない。だからせめてアークサターンが一番バトルしやすい場所でバトルすることにした。
そしてアークサターンが中央の浮島にある城の城門の前へと辿り着くと、丁度デュアルジェミニも姿を表した。
人形の様な見た目のデュアルジェミニ本体と、一緒に随伴している犬?の様なサポートメカの『
ちなみに、サポートメカは本体の同じ様にコアとして魔石を搭載することはルール上禁止だが、それさえ守ればこうして自由に随伴させることができた。それでも例えサポートメカが残っていても本体が落とされたらその時点で負けだし、そもそも本体とは別に同時に操作するのが難しいと言う難点もあるが……。
そしてそんなデュアルジェミニと双子丸に、様々な追加武装を取り付けることで、完全武装に近い姿になっていた。
しかもその武装は二回戦が始まる前の、各学園リーグランキングの一位の紹介の時に見た機体たちが装備している物に似ていた。まさか……!?
『美月ちゃん! サターン! うちらの世代の幻の王者に勝つ為に、千秋がとっておきの装備を用意してくれたんよ! まあ、全部乗せでバランスは悪くなったけど……うちが頑張れば何も問題はないんよ! 行くよ、ジェミニたち!』
『『手始めにこれなのですー!』』
『『『簡易変形! リブラモード! そして、マジカルスキル!
デュアルジェミニは双子丸に搭載していた『
さらに最強のマジカルスキルであるフィールド魔法を発動させると、本体に火と水と風と土の力を付与しながら、同時にそれぞれの力を宿した四体の実体を持つ分身を生み出した。
「これはカイウンフクオカ校の一位の……!」
「エンジェルリブラと同じ武装とマジカルスキル……!」
夏凛たちがいろんな武器種や魔法を使えるのは聞いていたが、まさか他校の学園リーグランキング一位とほぼ同じものが使えるなんて……!
しかも二回戦で見た限り、元となった『
厄介極まりないが、対処方法自体は分かっているので、何とかするしか無かった。
「サターン! 復活する分身は無視して本体を一気に倒しますわよ!」
「了解です、お嬢様!」
「「マジカルスキル! プラネットファイア!」」
アークサターンはアーク
パワーに優れた火の分身とスピードに優れた風の分身を銃槍と剣で薙ぎ払い、水から武器を作り出す水の分身と土から壁を作り出す土の分身を背中のアーク
『くっ……!? 予想以上の強さやね!?』
分身を蹴散らして、懐へと飛び込むと、四つの属性の力で強化されたデュアルジェミニに、銃槍を受け止められた。
だけど銃槍を受け止めるのに精一杯な様だ。そこで残っている剣による攻撃でデュアルジェミニを吹っ飛ばした。
『きゃあっ!?』
『『夏凛!?』』
「今ですわ、サターン!」
「はい、お嬢様!」
「「マジカルスキル! サターンスラッシュ!」」
そして一気に決めるべく、プラネットファイアの焔を纏ったサターンスラッシュを叩き込んだ。
『まだや! ジェミニたち!』
『『次はこれなのですー!』』
『『『簡易変形! アリエスモード! そして、マジカルスキル!
するとデュアルジェミニはリブラモードの武装をパージして、盾にすることで時間を稼いだ。
その隙に双子丸に搭載していた『
さらに本体に魔法で黄金の羊毛を纏わせることで、サターンスラッシュを跳ね返した。
「くっ……!? 今度はサンスイミヤギ校の一位の……!」
「ゴールデンアリエスと同じ武装とマジカルスキルか……!」
アークサターンがアークシールドで慌てて防御すると、デュアルジェミニが竜の様な爪と翼と尾を振り回しながら、刀で切り掛かって来た。
でも今は反撃できない。二回戦で見た限り、元となった『アリエスゴールデンアーマー』は、確か……三分間だけありとあらゆる全ての攻撃を無効化し、跳ね返す無敵の魔法だった筈……。
対処方法は効果が切れるまで逃げる以外無い。
「サターン! 一旦距離を取りますわよ!」
「はい! それしかありませんね!」
アークサターンはプラネットファイアの炎を利用して一気に距離を取った。
『逃さないんよ! ジェミニたち!』
『『続いてはこれなのですー!』』
『『『簡易変形! サジタリウスモード! そして、マジカルスキル!
するとデュアルジェミニは無敵の魔法をあっさりと解除してアリエスモードの武装をパージした。判断が早い。
それから双子丸に搭載していた大型のクロスボウの『
さらに合計十問の火器から枝分かれしてどこまでも増えていく超火力のビームを一斉に放った。
「今度はオヤシロシマネ校の……!」
「クニツサジタリウスと同じ武装とマジカルスキルまで……!」
二回戦で見た限り、元となった『サジタリウスクニツインフィニティ』は、確か……相手に逃げる場所を与えない範囲攻撃の魔法だった筈……。
対処方法は真正面からの防御しかない。
「サターン! 防ぎますわよ!」
「はい、お嬢様!」
「「マジカルスキル! プラネットツリー!」」
アークサターンは降り立った小さな浮島から巨大な木の根を伸ばし、自然の盾を作り出した。
そしてデュアルジェミニの超火力のビームを真正面から受け止めた。
中学生チャンピオンバディの夏凛たちは確かに強い。だけど自分たちだってこうして互角に立ち回れている。
だからそこからさらに一歩先へと行く為にも、美月は目を閉じてお守りのペンダントを両手で握りしめ、勇気のお呪いを重ねがけした。
「——頑張れ、私! 頑張りなさい、わたくし!」
そして夏凛たちに勝つ為に、いつか一緒に世界で一番の相棒であるチャンピオンバディになるサターンへと声をかけた。
「サターン! 中学生チャンピオンバディの夏凛たちに勝ちに行きますわよ!」
「はい、お嬢様! ついでに一年生の最強の座も頂きましょう!」
「「——シンクロゾーン!」」
シンクロ率が百パーセントのその先へと至ったことで、人間である美月の
文字通り二人で一つの存在となり、一心同体、人機一体となったアークサターンは、剣と盾を合体させてアーク
「——さあ、ここからが本番ですわ!」