——全国大会九日目。
『——さあ、全国大会高校生の部の四回戦☆ 続いての試合は、ミライトウキョウ校の七位で一年生の赤火焔君とマーズちゃん☆ そして、去年の全国大会高校生の部の三位で、同校の三位で三年生の
MCのステラの選手の紹介をする声が聞こえて来る中、『火山』のバトルフィールドにブラッドマーズが立っていた。
今回のバトルフィールドの『火山』は、その名の通り、中央に巨大な火山を模した山があり、そこから溶岩を模した炎が流れ出ている、高低差の激しい地形をしていた。焔たちはジャンケンで負けた為出られなかったが、焔たちのチームオールスターズと、王牙たちのチームキングダムの学園リーグ戦の舞台もこれだった。
そしてバトル開始の時刻となったことで、MCのステラがバトルの開始を宣言した。
『それじゃあ皆お待ち兼ね☆ バトルスタートだよ☆』
『焔!』
『そしてマーズ!』
バトル開始の合図と共に、王牙とレオの声が聞こえて来た。
焔とマーズが声が聞こえた方向に目を向けると、火山の頂上に王牙とレオのキングレオがいた。
『
『誠にその通りなのであーる!』
『
『了解なのであーる! 王牙!』
『『マジカルスキル! レオキングタイム・
火山が噴火を起こす中、キングレオが黄金のオーラを纏った。
だけどそれはいつものシンプルな身体強化魔法では無かった。
そもそも、いつもとは比べ物にならないくらいのオーラを纏っており、さらにその余剰のオーラが二つの機体を形作っていった。
「あれは……キングイーグル!?」
「それにキングオルカも!?」
それは王牙の弟たちの
以前の学園リーグ戦の時の非人型では無く、今大会で見た亜人型の姿をしていたが、この三機の組み合わせに焔たちは心当たりがあった。
まさか……!?
『
『合体なのであーる!』
王牙たちのキングレオをコアに、分離したキングイーグルが頭部の一部、肩部の装甲、背部の大型ウィングを構成し、同じく分離したキングオルカが、頭部の一部、腰部の姿勢制御装置、脚部の延長パーツを構成した。
そして三機が合体することで、普通の機体よりも一回り大きい、黄金に輝く機体が爆誕した。
『『爆誕! ハイパーキングレオ!』』
古今東西、皆のロマンである合体変形ロボットの登場に観客席は大観声を上げていた。
だけど焔たちはそれどころじゃ無かった。
まさか、マジカルスキルで合体変形の為の僚機を生み出し、その黄金のオーラで出力を賄うことで、チーム戦戦用の機体であるハイパーキングレオを個人戦で使える様にするなんて……!
以前の学園リーグ戦の時は、美月とサターンのアークサターン、冬馬とマーキュリーのウルフマーキュリー、小春とジュピターのゴーレムジュピターの三機で挑んで尚、五分に近い状況だったのに……!
そんな相手を焔たちは単独で相手にしなければならなかった。
『ハッ! どうだ、焔! マーズ! 驚いたか! ……とは言え、この姿はあくまでも魔法で無理やり再現しているだけだから、時間制限付きで長くは持たねえ……。 だから短期決戦で決めさせてもらうぜ! レオ!』
『最初から全力全開で行くのであーる! 王牙!』
『『マジカルスキル! イーグルフェザー!』』
ハイパーキングレオは背部の大型ウィングのキングウィングから光る羽を次々に発射した。
あれは雷牙たちが使っていたマジカルスキル……!
以前の学園リーグ戦の時は、妨害が入った途中で中止になったが、やはり合体した三機の武装とマジカルスキルを使えるのだろう。
そしてハイパーキングレオはそれと同時に、胸部の獅子の顔の口と、肩部の鳥の足、それから脚部の魚の背中の合計五問のキングキャノンを放った。
それからさらに、腰部の姿勢制御装置のキングコンテナに内蔵した多数のビーム砲を一斉に打ち込んで来た。
「マーズ! 合体マジカルスキルだ!」
「分かったわ、焔君!」
「「合体マジカルスキル! マーズファイア・
ブラッドマーズは炎の影分身を、炎を纏った実体を持つ分身へと生まれ変わらせた。
そして飛んで来る光る羽やビームへと次々に突撃させることで盾にした。
お互いの攻撃がぶつかり合うことで、空中で爆発が巻き起こった。
すると爆発の中からハイパーキングレオが現れた。
『オラオラ!』
「ーーッ!?」
ハイパーキングレオは黄金のオーラで爆炎を防ぎながら、キングウィングを中心とした全身のスラスターの出力にものを言わせて、爆発的なスピードで突っ込んで来た。王牙たちの迷いの無い動きも相まって速い……!
だけどどの道、鍛え上げられた直感を持つ王牙たち相手に飛び道具を当てるには、冬馬たちや輝たちレベルの射撃の腕がいる為、こちらとしても近距離戦闘は願っても無いことだった。
近距離戦闘を得意とするパワー型の機体のハイパーキングレオの土俵に上がるのはかなり不利だが、それでもそこに勝機があるならやるしか無い……!
それに近距離戦闘が得意なのは自分たちだって同じだった。
「マーズ! こっちからも行くよ!」
「ええ、焔君! 当たって砕けろよ!」
「「簡易変形!
ブラッドマーズはブラッドウィングを展開して近距離戦闘を想定したスピード特化の姿になった。
さらにブラッドロッドの先端に宿した巨大な赤い月を依代に、三日月の様な形をした巨大な星の鎌を作り出しながら突っ込んだ。
『ハッ! そのマジカルスキルのヤバさは身に染みて知ってるからな! 悪いがそれ以上は成長させないぜ! レオ!』
『噛み砕くのであーる!』
『『マジカルスキル! オルカファング!』』
するとハイパーキングレオは肩部のキングクローと、脚部のキングブレードを四本の犬歯に見立てて、巨大な魔法の牙へと変化させてた。
そしてそのまま、成長し続ける星の鎌の成長を封じ込める様に噛み付いた。
「くっ……! マーズブラッドサイス・
「
ハイパーキングレオは黄金のオーラで出力を賄うことで、マーズブラッドサイス・
そして両者がその場で足を止めて膠着状態になるが……。
『真横がガラ空きだぜ! レオ!』
『喰らうのであーる!』
『『マジカルスキル! レオハンド!』』
そんな中ハイパーキングレオは、フリーな右手のキングナックルを依代に魔法の拳を作り出して、ブラッドマーズの横腹を殴った。
「うわぁっ!?」
「焔君!?」
その攻撃により、マーズブラッドサイス・
『オラオラ! もう一丁!』
さらにハイパーキングレオは、オルカファングを解除すると、左手の分も合わせた二つの魔法の拳を飛ばして来た。
「「合体マジカルスキル! マーズバースト・
ブラッドマーズは咄嗟に、炎の盾と火の魔力が込められたビームを合体させた、爆炎を纏った巨大なビームの剣を生み出して防いだ。
だけどさっきの攻撃で左のブラッドウィングが破損するレベルのダメージを受けた為、押され気味だった。
そのせいでジリジリと背後の溶岩の川へと追い詰められる。このままでは負ける……!だけど……!
「くっ……!? やっぱり王牙先輩とレオは煌めき強いや……! だけどそんな王牙先輩たちに……俺たちが今まで一度も届かなかった……勝つことができなかった相手に、今日こそ勝つんだ! 冬馬の為にも!」
「ええ、焔君! 私たちが不可能なんてないことを証明するのよ!」
王牙とレオは本当に強かった。
リンから美月の過去を聞いた次の日から、たくさん特訓の為にバトルに付き合って貰ったけど、今まで一度も届かなかった。勝てなかった。
流石は学園リーグランキングの三位で、去年の全国大会の三位だ。その実力は間違いなく本物だし。自分たちよりも遥かに上の格上だろう。
だけどそれでも勝つことを諦めたりなんかしなかった。だってそのおかげで、先の三回戦で歌とピスケスに初めて勝つことができたのだから。
そしてそれを冬馬にも伝えたかった。
「
「分かってるわ、焔君! お姉ちゃんに任せなさい! さあ、
「「——シンクロゾーン!」」
焔とマーズは、そんな王牙とレオと言う目の前に立ち塞がる大きな壁を乗り越える為に、そして冬馬に諦めないことの大切さを伝える為に、シンクロゾーンの扉を開いた。
シンクロ率が百パーセントのその先へと至ったことで、人間である焔の赤い瞳にも、マーズの紫の色が混じり合った。
文字通り二人で一つの存在となった焔たちは、臆することなくブラッドマーズを前へと進ませた。
「「前に出ろ!」」
ブラッドマーズはマーズバースト・
「「合体マジカルスキル! マーズブラッドムーン・
そしてブラッドロッドの先端に宿したマーズブラッドムーンにマーズファイアの炎を放ち、さらに反対のブラッドステッキからもマーズバーストを放つことで、三種類の炎を合体させ、太陽の如き赤い月を生み出した。
それを見た王牙たちは嬉しそうな声を上げた。
『出たな! 焔たち最強のトリプル合体マジカルスキルが! それを破ってこその完全勝利だぜ! レオ!』
『勿論であーる、王牙! 吾輩たちも全力を持って迎え撃つのであーる!』
『『マジカルスキル! イーグルキングアタック! そして、マジカルスキル! オルカキングアタック!』』
ハイパーキングレオは黄金のオーラを纏った左右のキングナックルを発射した。
するとドローン武器の纏ったオーラが、それぞれ巨大な鳥と、巨大な魚へと変化した。さらに溢れ出る余剰のオーラが合体して獅子も生み出した。
そして太陽の如き赤い月と、獅子と鳥と魚が激突した。
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッーー!!」」
『『があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!』』
とんでもないパワーを持つお互いの魔法同士がぶつかり合ったことで、バトルフィールドの地形を変化させる程の光と衝撃が巻き起こった。
『ぐっ……!? チッ!』
『王牙!?』
そしてハイパーキングレオが押し負ける形で、お互いの魔法が打ち消された。
こっちもブラッドロッドが砕け散ったことでマーズブラッドムーン・
キングマントで本体のダメージは防いだ様だが、千偶一際のチャンスだった。
「「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッーー!!」」
ブラッドマーズはボロボロになったキングレオの元へと突撃した。
『チッ! させるかよ!』
それを見たキングレオも胸部のキングキャノンで迎撃しようとして来るが、その発射前にブラッドステッキを投げつけた。
『何!?』
ブラッドステッキがキングキャノンに突き刺さることで、誘爆を起こした。
その隙にブラッドマーズは、腰のブラッドリボンを右手に巻き付かせてナックルガードにしながら、キングレオの頭部を思いっきり殴りつけた。
『ぐはっ……!? ハハッ……! この俺様たちを倒すなんて……焔とマーズは本当にやるじゃねぇか! 益々気に入ったぜ!』
『王牙!? くっ……!? 悔しいが、吾輩たちを超えたのはお見事だったのであーる!』
王牙たちが最後にそう言うと、キングレオもマジカルバリアを破壊されて戦闘不能になったことで、その場に膝を突く形で動かなくなった。
それを見たMCのステラがバトルの決着を宣言した。
『決まったー☆ 勝者はミライトウキョウ校の七位で一年生の赤火焔君とマーズちゃんのブラッドマーズだー☆ 焔君たちは一度負け寸前まで追い詰められていたけど……それでも諦めずに前に出たことからこそ、逆転勝利を掴めたんだね☆ いや〜、色んな意味で熱い試合だったね☆ きっと皆の胸にもいろいろ届いたんじゃないのかな☆』
*****
「焔……! マーズ……! 本当に凄い……! 流石は僕の……僕とマーキュリーの最初のライバルだ……!」
「フッ、そうだな、冬馬……!」
ポツンと離れた場所でマーキュリーと一緒に焔たちの試合を見ていた冬馬は、自分の胸の中に熱い炎が灯されたのを感じていた。
この気持ちを冬馬は知っていた。ずっと昔、きららとポラリスを……本物のヒーローを見た時に感じた気持ちだった。
格上が相手だろうが、劣勢になろうが、決して諦めずに立ち上がるヒーローの様なカッコ良さ。
自分もこんな風になりたいと思ったのだ。きららたちの様なチャンピオンバディに……本物のヒーローになりたいと思ったのだ。
だけど夏凛たちに何度も負け続ける内にすっかりこの始まりの気持ちを失くしてしまっていた。
それでも焔とマーズ、それから小春とジュピターのおかげでようやく思い出すことができた。
するとそんな冬馬の耳に、麗とウラノス、それから小春とジュピターの声が聞こえて来た。
「いや〜、学園リーグランキングの三位で去年の全国大会高校生の部の三位である王牙君とレオ君に勝つなんて、焔とマーズは本当に凄いな!」
「ああ! これで四回戦突破! あと三回勝てば優勝だぜ!」
「本当に凄いよ、焔! マーズ! 最後まで諦めない姿は最高にカッコ良かったよ! どこかの誰かさんとは違ってね!」
「こ、小春ちゃん……落ち着いて……!」
小春は一瞬こちらを向くと、すぐにプイッとあっちを向いてしまった。
やっぱり怒ってる……!?ま、不味い……!?
するとそんな焦る冬馬の元に、輝とヴィーナスがやって来た。
「やあ、冬馬君。 どうやら焔君たちのバトルを見て、君
「焔さんたちから話は聞いていましたが……この様子なら大丈夫そうですね」
「輝先輩たちも知っていたんですか……!?」
輝たちにも悩んでいたことが知られていたことで、冬馬は恥ずかしさから頭を描いた。
だけどそんな中、冬馬は輝の言葉の中に違和感を見つけた。
「……ん?
「意外かい?」
「は、はい……! だって輝先輩たちはその……高校生チャンピオンバディで誰よりも強いので……自分よりも弱い相手から得るものなんて無いのかと……」
冬馬はずっと格上の存在は自分たちなんか見ていないのだと思っていた。
しかし輝はそれを否定する様に首を横に振った。
「そんなことないさ。 だって焔君たちは
「僕たちがライバル……?」
冬馬は思わず問い返した。
「うん。 何も自分よりも強い相手、同じくらいの相手だけがライバルじゃ無い……。 ライバルって言うのはきっと、自分が勝ちたい相手、バトルしたい相手のことを言うんじゃ無いのかな? 僕も特に
「そうですね、マスター。 ヴィーナスも
輝の言葉に冬馬はハッとした。
そうだ……自分たちもそう思ったから、最初のバトルの後、焔たちとライバルになりたいと思ったのだ。
ライバルと言うのは、強さと弱さだけで決まる関係じゃ無かった。
冬馬がそのことを思い出していると、輝がヴィーナスの言葉で何か思い出した様に口を開いた。
「そうだ……! きっと美月さんたちも僕たちと同じ気持ちだと思うよ? 彼女は君たちのことを大切な友達でライバルだと言っていたからね……」
「ーーッ!? 輝先輩、すみません! 僕、謝りに行かなきゃ!」
「うん。 行ってらっしゃい、冬馬君」
輝の言葉に弾かれる様に、冬馬は急いで走り出した。
*****
「……ん。 美月。 この調子で四回戦も頑張ってね……」
「そうそう♪ 後四回パパッと勝って、高校生チャンピオンバディになっちゃいなよ♪」
「うん! 応援しているね、美月お姉ちゃん!」
バトルの準備の為に観客席を後にしようと立ち上がった美月に、ネオンとネプチューンとレイが声援を送って来た。
「はい、精一杯頑張って来ますわ。 何て言ったって、四回戦の相手である冬馬とマーキュリーは、わたくしたちのライバルですもの。 ね、サターン」
「はい、お嬢様。 冬馬たちの狙撃は本当に脅威ですからね」
……と口で言ったものの、美月には心配事があった。
(……でも私、冬馬に何かしてしまったみたいなんですよね……。 嫌われてしまったのでしょうか……)
美月はこの前のビーチエキシビジョンマッチ以降、冬馬に避けられていることをずっと気にしていた。特に先日は思いっきり目を逸らされ、逃げられてしまった。
そのことを悩みながら美月が観客席を後にしようとすると、バタバタとした足音と共に誰かがやって来た。
「美月さん!」
「と、冬馬……!?」
現れたのは冬馬だった。
避けられていた相手が逆にやって来たことで、美月の頭はパニックになった。
(ど、どうしよう……! 原因は分からないけど……兎に角、謝らないと……!)
「あ、あのっ……冬馬……!」
「美月さん、本当にごめん!」
「え?」
すると冬馬が急に頭を下げて来た。
「僕の心が弱かったせいで、僕は最近はずっと美月さんのことを避けて来た! 焔のライバルとなった君には勝てないって勝手に思ってた! 夏凛に勝った君には勝てないって勝手に思ってた!」
「冬馬……」
「それは紛れも無い事実なのかもしれないけど……それでも僕は……僕たちは、君の……君たちのライバルでありたい……! そして勝ちたい……!」
冬馬はそう言うと顔を上げた。そして決意の籠った瞳を、しながら、その口を開いた。
「——だから僕とマーキュリーは次の四回戦で美月さんとサターンに挑戦するよ! そして勝って見せるよ! そうだろ、マーキュリー!」
「フッ、そうだな、冬馬……。 当たって砕けろの精神で行こうじゃないか……!」