——全国大会十日目。
『——さあ、全国大会高校生の部の五回戦☆ 続いての試合は、ミライトウキョウ校の七位で一年生の赤火焔君とマーズちゃん☆ そして、同校の九位で二年生の
MCのステラの選手を紹介する声が聞こえて来る中、『遊園地』のバトルフィールドに、ブラッドマーズとシャドウカロンがそれぞれ離れた場所に立っていた。
『遊園地』のバトルフィールドは、その名の通り、観覧車やジェットコースター、それからメリーゴーランドやコーヒーカップ、そしてお化け屋敷と言った建物が建てられており、その性質上、特に子供たちからは大人気のステージだった。
そんな光景を、秀次とスコーピオは観客席の一番後ろの人があまりいない場所から、どこか恨めしそうに見ていた。
「……
「そうだな……」
するとそんな秀次たちの元に、天魔とカプリコーンがやって来た。
そして天魔は自分とは親ぐるみの付き合いと言うことで、気さくな態度で話しかけて来た。
「おーす、秀次」
「あれ? 天魔じゃないっすか? 次の黒土さんとの試合の準備は良いんっすか?」
「あー、別に良いんだよ。 どうせ俺らみたいな凡人じゃ、あの明日斗博士の娘に勝てる訳ないからな。 ま、
天魔はそう口にすると、ここから少し離れた場所にいる零とサーペンスを見た。
するとそんな零たちの元に駆け寄って来たレイが、嬉しそうな表情で何かを話し始めた。
その光景を見たカプリコーンが笑い声を上げた。
「キャハハハッ! アイツらと言い、天魔と言い、レイから妙になつかれてやんの!」
「チッ! ハァ……全く、どうしてこうなったんだか……」
天魔はため息を吐くと、ポケットから棒がついた小さなキャンディを取り出して、口に咥えた。
それからもう一つキャンディを取り出すと、秀次に渡して来た。
「秀次も食うか?」
「お、サンキューっす。 それにしても、どっちが勝つと思うっすか?」
「あ? それは冥道御影に決まってるだろ? 強さに大きくムラがあるとは言え、俺たちの世代最強だぜ?」
「……と言っても、あの白金会長がいるのに加え、近距離戦闘が鬼の様に強い人たちが多い三年生世代と、天才と名高い双子坂姉弟に、あの明日斗博士の娘の黒土さんがいる一年生世代に挟まれた、外れ世代の二年生世代の中での話っすけどね」
秀次は自嘲気味にそう口にした。しかしそれは世間からも言われていることだった。
すると天魔とカプリコーンは険しい顔になった。
「……そうだな。 だが冥道御影だけは例外だ……。 何て言ったってアイツは、
「チッ……!
*****
——『遊園地』のバトルフィールドにて。
「「マジカルスキル! マーズファイア!」」
コーヒーカップの近くを流れていた川の中から奇襲して来たシャドウカロンに、ブラッドマーズはカウンターを放った。
最初の学園リーグ戦の時と同じ手はもう喰らわない……!
『『完全変形!
するとシャドウカロンは、一瞬で潜水艦から人型へと完全変形を行い、両腕のシャドウマルチシールドで防御した。
さらにそのまま、シャドウマルチシールドからビームの刃を発生させて切り掛かって来た。
「ーーッ!? マーズ! 御影先輩たちの対策として用意したマジカルスキルを使うよ!」
「ええ、焔君! 行くわよ!」
「「マジカルスキル! 炎の剣!」」
焔とマーズは購買部で買ったメモリーカードを使って習得した一派的な魔法を発動させた。
ブラッドマーズのブラッドロッドとブラッドステッキの先端に、炎の様に自由自在に形を変える剣が生成された。
シャドウカロンのビームの刃は刀身が曲がると言う特性があって厄介だが、これなら対応することができた。
しかも炎の熱により、鍔迫り合いの度に相手にダメージを蓄積させることができる。
『くっ……! 焔君たちもやりますね! それでしたら……! カロンちゃん!』
『了解だよ〜、御影ちゃん』
『『完全変形!
シャドウカロンは人型から潜水艦へと再び完全変形すると、影のある地面の中へと潜った。
だけどその対策も用意してあった。
「マーズ! 今度はあのマジカルスキルを応用するよ!」
「ええ、焔君! アレね!」
「「マジカルスキル! マーズクラフト!」」
焔たちは今度は、御影たちだけでなく、この先バトルすることになるであろう輝とヴィーナス、それから美月とサターンを見据えて作った、自分たち専用の魔法を発動した。
ブラッドマーズは跳び上がると、空中に浮かぶ足場を作って、その上に着地した。
『な、何と!? これでは攻撃が届きません!?』
『そんなの有り〜?』
するとシャドウカロンが影の中からひょっこりと顔を出して来た。
それを見たブラッドマーズは両手の杖から通常攻撃の魔法弾を連射した。
『アイタタタ……!? か、カロンちゃん! 一時撤退しますよ!』
『アイアイサ〜』
攻撃を受けたシャドウカロンは直ぐに影の中に潜ると、近くにあるお化け屋敷へと逃げて行った。
「待て!」
*****
大きな音と共に、お化け屋敷の屋根を破壊したブラッドマーズが、中へと入って来た。
それを見ていた御影とカロンは、ドローン武器へと分離させ、あちこちに隠れさせていた四肢と四つのシャドウマルチシールドを一斉に動かした。
「レッツゴー!」
「捕獲しちゃうよ〜」
ブラッドマーズを包囲する様に展開させた合計八つのドローン武器から内蔵型アンカーを一斉に放った。
『ーーッ!? マーズ!』
『分かってるわ、焔君!』
『『マジカルスキル! マーズクラフト!』』
するとブラッドマーズはさっきのマジカルスキルを再び発動させて、バリアの様な物で機体を覆った。
そのバリアにアンカーが当たると、ぐにゃん、と言う音と共に跳ね返された。
ゴムみたいになっているせいで、上手く突き刺さらない……!
「それでしたら切り裂くまでです……!」
シャドウカロンは一度アンカーを戻すと、シャドウマルチシールドに内蔵された銃口を構えながら、四肢の『シャドウクロー』でゴムみたいなバリアを切り裂いた。
そして中にいたブラッドマーズへと攻撃を仕掛け……いや、違う!?これは幻影の炎の分身!?
同じく
「しまっ……!?」
『『はあッーー!!』』
「ほわあッ!?」
「御影ちゃん!?」
不意打ちを受けたシャドウカロンはお化け屋敷の壁を貫通する形で外へと吹っ飛ばされた。
そんな自分たちへとブラッドマーズが追撃して来る。
「不味いです……!? カロンちゃん!」
「また仕切り直しだね〜」
「「マジカルスキル! シャドウブレード!」」
シャドウカロンは足元の影から影の刃を発生させることで、ブラッドマーズの進路を塞いだ。
『くっ……!?』
そしてその隙に散らばらせていたドローン武器を回収して、近くを通っていたジェットコースターに飛び乗った。
「アディオスですよ、焔君!」
*****
ブラッドマーズが外に出ると、シャドウカロンがジェットコースターに乗って遠くへと逃げようとしていた。
「マーズ! 今度は輝先輩たちの対策として用意したあのマジカルスキルだ!」
「ええ、焔君! 一気に追いつくわよ!」
「「マジカルスキル! 炎の翼!」」
焔たちは同じくメモリーカードを使って習得した一派的な魔法を発動させた。
ブラッドマーズの背後に二対の炎の翼が生えたことで、一気に空へと飛翔した。
輝たちの使う飛行魔法とは違って、これを使うには炎系の魔法の相性との相性が良くないといけないが、マーズならば問題なかった。
するとそんなブラッドマーズを目にしたシャドウカロンが、シャドウマルチシールドに内蔵されたビームバルカンを連射して来た。
だけど加速力に優れたこの炎の翼ならば回避は簡単だった。
「「マジカルスキル! マーズバースト!」」
そしてブラッドマーズは、ブラッドステッキの先端から火の魔力が込められたビームを放った。
それがシャドウカロンへと直撃すると、機体が魔力の粒子になって消えた。これは……分身……!?
「焔君! 狙撃が来てるわ!」
思わず驚愕する中、マーズの声によって焔は現実に引き戻された。
「ーーッ!? マーズ!」
「「マジカルスキル! 爆炎の……」」
分身を囮に別方向から飛んできたビームを防ごうとするが間に合わず、ブラッドマーズは吹っ飛ばされてしまった。
「うわあっ!?」
「焔君!?」
*****
「むむむ? 仕留めきれませんでしたか……!」
「頑丈だね〜」
一方その頃。観覧車の頂上では、シャドウカロンがシャドウマルチライフルを構えながら立っていた。
シャドウマルチライフルと名が付いているが、シャドウカロンの物は一派的な手持ち式とは異なっていた。
胸部の装甲を展開させて露出させた内部の魔石をエネルギー源兼銃口として扱っており、シャドウカロンの胴体その物が巨大なライフルになっていた。
それにより、さっきの狙撃に使った収束型のビーム他、拡散型のビームなど、いろんなビームを高火力で放つことが可能になっていた。
その一方でブラッドマーズは、遊園地のエントランスにあるメリーゴーランドの前まで吹っ飛ばされていたが、まだ戦闘不能になっていない様だった。
どうやらブラッドウィングの魔力を吸収する機能で威力を弱めた様だ。
姉である御霊とプルートのマジカルスキルである『プルートアルターエゴ』を使って、中に乗っている自分たち以外は完全に同一の存在の分身を生み出して、それを囮に狙撃したものの……こうして仕留めきれなかった上に、位置もバレてしまった。
それならもう位置バレを気にする必要もないだろう。
「カロンちゃん! お姉ちゃんたちのマジカルスキルを使って一気に決めますよ!」
「あれ疲れるんだけどな〜。 まあ、いっか〜」
「「マジカルスキル! プルートゴーストキャノン!」」
シャドウカロンは魔石の上に何重との魔法陣を重ねる様に展開すると、辺り一面の魔力をまるでブラックホールの様に飲み込んでいった。
そしてそれを元に超巨大なビームを発射した。
超巨大なビームが、通り道にある遊園地の乗り物を破壊しながら、ブラッドマーズへと降り注ぐ。
『ーーッ!? マーズ! あの時の様に行くよ!』
『ええ、焔君! 防ぎ切るわよ!』
『『マジカルスキル! マーズブラッドムーン!』』
するとブラッドマーズはブラッドロッドの先端に、魔力の塊である巨大な赤い月を宿すことで、超巨大なビームを受け止めた。
やはり以前と同じく、
「くっ……! これでもダメでしたか……!」
そしてとうとう、焔たちは御影たちの切り札を防ぎ切ってしまった。
自分たちの練度が足りないせいで、姉たち程の規格外の威力は出せていないとは言え、これを防ぎ切るなんて……!
しかも今の反動で、機体がガス欠になってしまった。
だけどこれを防がれたのなら、どの道最後の切り札を切る他なかった。
自分とカロン、そして姉とプルートの四人で生み出したあのマジカルスキルを……。
「カロンちゃん! こうなったら
「ええ〜? あの
「自爆技じゃありません!
「まあ、確かに、焔君たちにはトリプル合体マジカルスキルがあるから、こっちもこれを使うしかないか〜。 それじゃあ、行くよ〜」
「「マジカルスキル! プルートカロンワールド!」」
*****
「なっ!? このマジカルスキルは一体……!? フィールド魔法なのか……!?」
「そんな……!? 杖系の武器無しで……!?」
焔たちが驚愕の声を上げる中、まるで世界が崩壊する様に遊園地の地面に地割れが起こり、壊れた地面や乗り物が重力に逆らう様に空へと浮かび始めた。
その原因であろうシャドウカロンは、遥か遠くの観覧車の頂上で、巨大な魔力の黒とピンクの球体をそれぞれ両手に発生させて、それを一つに融合しようとしていた。
それを見て直感で分かった。これは本来は杖系の武器なしでは使えない筈の、最強のマジカルスキルであるフィールド魔法だと……。
それだけでも凄いのに、さらに自分たちのフィールド魔法であるマーズブラッドムーン……さらにそれを元にしたマーズブラッドムーン・月食よりもヤバい威力になっていた。
何なら二大チャンピオンバディの麗とウラノス、それからネオンとネプチューンのそれぞれの切り札であるウラノススカイカリバーと
これを完全に発動されたら確実に負ける……!
「マーズ! 御影先輩とカロンのこの魔法は煌めき凄い! ……言うか、ヤバい! 絶対に止めるよ!」
「ええ、分かってるわ、焔君!」
御影とカロンは本当に強かった。
強さに大きくムラがあり、油断すると癖があるので、特訓に付き合って貰う中で勝ったこともあったが、それでも御影たちが絶好調の時は、まだ一度も勝った試しが無かった。
そして今は間違いなくその絶好調の状態だった。
「行くよ、
「ええ、焔君! お姉ちゃんに任せなさい!」
「「——シンクロゾーン!」」
焔とマーズは、そんな御影とカロンと言う目の前に立ち塞がる大きな壁を乗り越えるために、シンクロゾーンを発動させた。
シンクロ率が百パーセントのその先へと至ったことで、人間である焔の赤い瞳にも、マーズの紫の色が混じり合った。
文字通り二つで一つの存在となった焔たちは、この状況を打破する為の合体マジカルスキルを生み出した。
「「マジカルスキル! 炎の翼!
ブラッドマーズはマーズクラフトで作り出した巨大な翼に炎の翼を纏わせることで、二つのマジカルスキルを合体させた。
「「合体マジカルスキル! マーズクラフト・
そして目にも止まらぬスピードで空へと飛翔した。
そのままシャドウカロンの元へと一直線に突撃する。
さらに……!
「「マジカルスキル! 炎の剣!
ブラッドマーズは今度はマーズクラフトで作り出した巨大な剣に炎の剣を纏わせることで、二つのマジカルスキルを合体させた。
「「合体マジカルスキル! マーズクラフト・
そして二つの合体マジカルスキルを発動させたブラッドマーズが、シャドウカロンの懐へと飛び込んだ。
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッーー!!」」
『ーーッ!?』
シャドウカロンは融合させた巨大な魔力の黒とピンクの球体を解放しようとしたが、その瞬間、マーズクラフト・
『ほわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ〜〜!?』
『御影ちゃん!?』
そして真っ二つになったシャドウカロンは、マジカルバリアを破壊されて戦闘不能になったことで、そのまま観覧車から落ちて下へと落下して行った。
それを見たMCのステラがバトルの決着を宣言した。
『決まったー☆ 勝者はミライトウキョウ校の七位で一年生の赤火焔君とマーズちゃんのブラッドマーズだー☆ まさに紙一重の勝負だったねー☆ 両者の機体のギミックとマジカルスキルをぶつけ合ったバトルは、まさにワクワク物だったね☆ これで焔君たちは準決勝の六回戦に進出……その次の相手は先の試合で勝利した輝君たちだねー☆』
*****
——一方その頃。観客席では。
「ば、馬鹿な……!? あの冥道御影が負けただと……!? 今回は間違いなく絶好調だった筈なのに……!? 赤火焔……一体何者なんだ……!?」
「チッ! アイツらは去年までは大した実績は無かった筈なのに……しあくと同じ凡人だった筈なのに……! どうして……!?」
天魔とカプリコーンは信じられない光景を前に、大きく取り乱していた。
するとそんな天魔たちと秀次たちの元に、カガクアイチ校の
「何をこんなところで遊んでいるのですか、
天魔は先程の試合の結果に動揺していた上に、菜々の容姿と性格が、複雑な思いを抱いている姉のしあくに似ていることもあって、不機嫌になった。
「チッ! うるせぇな……。 そのワールドユニオンからの使命を果たす直前で負けた菜々先輩には言われたくねぇよ……」
「くっ……!」
「貴様! 菜々様を侮辱するな!」
天魔の言葉を聞いた菜々は悔しそうに歯軋りをして、右手で自身の左腕を強く握りしめた。
アクエリアスが怒りの声を上げるが、天魔は気にすることなく言葉を続けた。
「高校生チャンピオンバディの
「……天魔。 お嬢は秀才止まりの凡人じゃないっすよ」
すると途中で秀次がムッとした顔で口を挟んで来た。
さらに続けて、心とヴァルゴが菜々を庇う様に間に立った。
「そうですわ! これ以上、わたくしの尊敬する菜々会長のことを悪く言うのは許さないのですわ!」
「心姉様の言う通りなのですぅ〜! これは、ちょっと男子〜、案件なのですぅ〜!」
友人の秀次が自分の同意してくれなかったことに加え、天魔が苦々しく思っている美月のことを何故か尊敬してその真似をしている心たちまで口を挟んで来たことで、居心地が悪くなった。
そこで天魔はこの後の自分の使命のことも考えて、この場を去ることにした。
そして最後に捨て台詞を吐いた。
「チッ! 兎に角、黒土美月と戦う前に行う、オヒュウカスとサーペンスの最終調整の代案は考えておけよ! しくじった誰かさんの尻拭いの為のな! 行くぞ、カプリコーン!」
「はいはい、分かってますよー。 お仕事をして、さっさと負けるわよー。 ハァ……ダル……」