——俺は知っている……。 諦めなければ夢は叶う……なんてまやかしに過ぎないことを……。 むしろ叶わない夢を見続けるのは、辛くて苦しいだけってことを……。 姉ちゃんがそうだったから……。
「——見ててね、天魔……! 私、カプリコーンと一緒に、世界で一番の相棒であるチャピオンバディになって見せますから……!」
「ふふん、期待してなさい!」
そんなしあくと天魔の両親は、JP国の政治家の一人で、ワールドユニオンの影響下にある派閥に所属しており、メカニカルウィッチのことを便利な道具としてしか見ていなかった。
その為、家で働くメカニカルウィッチは皆召し使いの様に扱われており、しあくと天魔には相棒が用意されることはなかった。
だけどそんな中、同郷且つ同じ派閥と言うことで親ぐるみの付き合いがあった、幼馴染の
そして姉とカプリコーンは、憧れのヒーローである
だけど姉たちと優一たちの世代には、あの明日斗博士の息子である黒土陽太とサンがいた。
その強さと才能は圧倒的で、姉たちの世代は明日斗博士の息子とずっと比較されることになった。
「まだ……です……! 優君たちだって……頑張っているんですから……!」
それでも姉たちは、めげることなく頑張り続けた。諦めなければいつか必ず……と信じ続けた。
しかしそんな中、メカニカルウィッチ研究所の事故で陽太とサンが亡くなってしまった。
それによりもう姉たちの世代が明日斗博士の息子と比較されることは無くなる……なんてことは無かった。寧ろ『王者を失った世代』として永遠に比較されることになった。
さらにその後、明日斗博士の娘で陽太の妹でもある黒土美月と姉たちの世代とのエキシビジョンマッチが組まれることになった。
そしてそのバトルで心をへし折られた優一は、ウィッチバトル自体を辞めてしまった。それから自身の相棒であるスコーピオのことも……。
姉は自身の憧れのヒーローで想い人でもある優一のそんな姿にショックを受けていたが、それでもと立ち上がった。
「見てて下さい、優君……! 私たちの頑張る姿を……! だからどうか、優君たちももう一度……!」
それから姉とカプリコーンは必死に努力を重ねていた。全ては優一たちに諦めなければ夢は叶うのだと伝える為に……。
しかしいくら頑張っても結果が振るうことは無かった。姉では天才では無かった。秀才ですら無かった。ただの凡人でしか無かった。
そしてそんな中、陽太と入れ替わる様に現れた
御霊たちも最初こそは戦績が振るわなかったが、バトルの度に相手の技術を吸収し、機体を改造することで着実に強くなっていた。
それにより、明日斗博士の息子と言う遥か先にいる本物の天才と、御霊と言うその才能で後ろから追い越して行ったもう一人の本物天才と比較されることになった姉たちの世代の多くは、心がへし折られてしまった。
そしてそれは姉も同じだった。
「うぅ……ぐすっ……私も……もうバトル止める……! 私なんかがいくら頑張ったって意味ないもん……!」
「姉ちゃん……! そんなことは……!」
「だって私は黒土陽太や冥道御霊みたいな天才じゃないもん……! 私も優君の様にもっと早く気づくべきだったんです……!」
姉はその瞳からボロボロと涙を溢しながらそう口にすると、カプリコーンを自分に手渡して来た。
「姉ちゃん……?」
「しあく……?」
「ごめんね……カプリコーン……。 私は凡人だから、いつもカプリコーンの足を引っ張ってばかりだった……。 相棒としてダメダメだった……。 私はもう……二度とバトルすることは無いけど……天魔ならまだ……」
「「ーーッ!?」」
姉が選んだのは、バトルを辞めた優一が選んだ選択と同じ物だった。
「姉ちゃん、それはっ……!?」
「しあく……! しあくも……優一がスコーピオを捨てたみたいに……あたしのことも捨てる気なの……? 一緒に世界で一番の相棒であるチャピオンバディになろうって約束したのに……!」
カプリコーンが縋る様に目を向けると、しあくは涙を流したまま目を閉じた。
「……ごめん。 ……ごめんね、カプリコーン……」
「ーーッ!? ふざけんなッ!! しあくなんて……大ッ嫌いだッ!!」
——誰も彼もが馬鹿の一つ覚えみたいにする……相棒と一緒に世界で一番の相棒であるチャピオンバディになりたい、と……。 その夢を叶えられるのは、
*****
『——さあ、全国大会高校生の部の五回戦☆ 続いての試合は、明日斗博士の娘で、ミライトウキョウ校の六位で一年生の黒土美月ちゃんとサターン君☆ そして、シゼンホッカイドウ校の四位で二年生の山羊沼天魔君とカプリコーンちゃんのバトルだよ☆ 今大会のダークホースの零ちゃんたちの活躍で隠れ気味ではありますが、もう一組のダークホースである天魔君たちと、優勝候補の美月ちゃんたちのバトルは、果たしてどうなるのか☆』
MCのステラの選手の紹介をする声が聞こえてくる中、『砂漠』のバトルフィールドにハイドカプリコーンが立っていた。
ハイドカプリコーンは暗い赤を基調とした、ミリタリーの様な見た目をした機体で、全身を光学迷彩の効果を持つ魔力でできたマントで置い隠していた。
今回のバトルフィールドの『砂漠』は、その名の通り、砂漠を模した砂の丘や岩場などがあり、さらに砂嵐が巻き起こっていることで視界が悪いと言う特徴があった。
そしてバトル開始の時刻となったことで、MCのステラがバトルの開始を宣言した。
『それじゃあ皆お待ち兼ね☆ バトルスタートだよ☆』
「さ〜て、めんどくせぇが……仕事に取り掛かるか」
「さっさと終わらせて、負けるわよ……」
バトル開始の合図と共に、ハイドカプリコーンが行動を開始した。
このバトルで天魔たちがワールドユニオンから与えられた任務は、準決勝直前の美月とサターンのアークサターンのスペックの確認と調査だ。
特に同じ役割を持っていた心とヴァルゴとの一回戦以降、つまりその後使用したプラネットツリー、それからプラネットウォーター、そしてアークステッキとサターンバーストは、必ずこのバトルでの使用させる必要があった。
……とは言え、秀次たちの報告によれば、美月たちは光学迷彩などの補助系の魔法を見破れるらしいので、相手の手札を見る為に攻撃を仕掛けたら、逆に居場所がバレてそのまま撃破され兼ねない……。
そこでハイドカプリコーンは両手に装備していた『ハイドソードライフル』と『ハイドシールドブースター』を、オート操作のドローン武器として指定した場所へと向かわせた。
どうせこの武装は、オヒュウカスとサーペンス以外の機体での試験運用の為に渡された物なので、こうして囮に使っても本体には支障は無かった。
「お、いたいた。 じゃあ始めるか」
そして砂漠の中を移動していたアークサターンを発見したことで、手始めにハイドシールドブースターで揺動を行った。
『っ……! サターン!』
『はい、お嬢様!』
アークサターンは足を止めると、アーク
その隙に、ハイドソードライフルに死角からビームの狙撃を行わせた。
『ーーッ!? しまっ……!』
『何!?』
それに気づいたアークサターンは回避しようとしたが、足元の砂に足を取られて回避が遅れてしまった。
そしてビームがアークソードごとアークシールドを弾き、それが近くにあった砂地獄の中に飲み込まれて行った。
『くっ……!』
アークサターンはすかさずアーク
しかし既にドローン武器には離脱を命じてあった為、どうにか回避することに成功した。
『あれは……本体じゃ無い……!? ドローン武器ですの……!?』
『くっ……! 本体は砂嵐を利用して隠れているのか……! 厄介な……!』
『それなら本体を引きずり出すまでですわ、サターン!』
『了解です、お嬢様!』
『『マジカルスキル! プラネットウォーター!』』
するとアークサターンは、周囲に展開した水を次々にいろんな武器へと変化させ、それを四方八方へと飛ばした。
四回戦で見せた魔法だ。だけどサターンステッキを使っていないせいか、若干威力が落ちていた。それでも脅威的な物量だが……。
『『マジカルスキル! プラネットファイア!』』
アークサターンはさらに背中に炎の光輪を発生させ、その炎を水の武器へと纏わせた。それにより火力が増強された。
「チッ!」
「何よこの威力!?」
四方八方へと放たれたその攻撃でハイドガンソードとハイドシールドブースターが破壊される中、潜伏していたハイドカプリコーン本体も慌てて逃げ出した。
砂漠の地形は頑丈では無い為、盾として心許なさ過ぎる。
『見つけましたわ!』
するとこちらへと視線を向けたアークサターンから美月の声が聞こえて来た。
光学迷彩で姿を消している上に、砂嵐で視界が悪い筈なのに……!
「チッ! 何で見えるんだよ……!?」
「チートが……!」
アークサターンはプラネットファイアで一気に加速すると、こちらへと真っ直ぐに突っ込んで来た。
『このまま仕留めますわよ、サターン!』
『はい、お嬢様! 一気に決めますよ!』
『『マジカルスキル! サターンアークブレイク!』』
アークサターンはそのまま、アーク
不味い。まだプラネットツリー、それからアークステッキとサターンバーストを引き出せていない。
「チッ! カプリコーン!」
「分かっているわよ、天魔!」
「「マジカルスキル! カプリコーントリック!」」
『『ーーッ!?』』
ハイドカプリコーンが手をかざすと、次の瞬間、
位置交換によって攻撃を躱されたアークサターンが慌てて急ブレーキをかけた。
この魔法は初見殺しな以上、二度は通じないだろう。チャンスは今しかない……!
「「簡易変形!
ハイドカプリコーンは
そして足元に魔法陣を発生させると、辺り一体ごとアークサターンを真っ暗な底なし沼へと引き摺り込んだ。
*****
真っ暗な空間に引き摺り込まれた美月は、アークサターンにアーク
すると美月の魔力が見える目が、左側から『ハイドナイフ』が飛んで来るのを察知した。
「っ……!」
『こっちだぜ!』
『キャハハハッ!』
「ーーッ!?」
咄嗟にアークランスで弾くが、それとほぼ同時に、右側からハイドカプリコーンが襲って来た。
アークサターンは反射的にアークガンを発射するが、両手の『ハイドガントレット』で防御された上に、その内部に収納されていたハイドナイフで銃を破壊されてしまった。
そのまま直ぐにハイドカプリコーンは暗闇の中に消えて行った。
やはりこの魔法を発動した相手自身は、この暗闇の中でも見えている。美月も魅力が見える目のおかげでかろうじて見えてはいるものの……。
そして今度は背後からハイドカプリコーンが襲って来た。
それを察知した美月は、アークサターンにアークランスを構えさせるが……。
『喰らいな!』
『キャハハハ!』
「くっ……!?」
「チッ!?」
ハイドカプリコーンは両手に装備した『ハイドショットガン』を至近距離から放って来た。
咄嗟にアークランスを盾にしたが、今ので槍も破壊された上に、機体の各部にもダメージを受けてしまった。
このままでは不味い。兎に角、脱出しなければ……!
アークサターンは破壊されたアークランスの中に収納されていたアークステッキを右手で掴んだ。
それから美月は自分に喝を入れる為に、軽く目を閉じ、お守りのペンダントに触れると、心の中で勇気のお呪いを重ねがけした。
(——頑張れ、私! 頑張りなさい、わたくし!)
そしてサターンへと呼びかけた。
「サターン! 全部ぶっ壊しますわよ!」
「はい、お嬢様! これ以上相手の思い通りにはさせません!」
「マジカルスキル! プラネットダーク! そして、マジカルスキル! プラネットツリー!」
アークサターンは全身に黒い炎纏わせ、擬似的に魔王システムを発動させた。
胸部の装甲の一部が展開し、内部にあった魔石が剥き出しになり、さらに背中のアーク
そしてその状態で足元から巨大な木の根を伸ばし、真っ暗な空間を内部から無理やり破壊した。
『チッ! 俺らの切り札が……!』
『ふざけんなッ!! アタシとあの子が作った魔法が、こんなにもあっさりと……!』
そのまま外へと弾き出されたハイドカプリコーンから天魔たちの驚愕と怒りの声が聞こえて来た。
『チッ! カプリコーン!』
『ああ、もうッ!!』
『『簡易変形!
するとハイドカプリコーンはハイドショットガンをアークサターンへと向けたまま、再び魔力でできたマントを展開して、光学迷彩で姿を消そうとしていた。
逃がさない……!
「決めますわよ、サターン!」
「はい、お嬢様!」
「「マジカルスキル! サターンバースト!」」
アークサターンはアークステッキの宣伝に魔法陣を発生させると、闇の力を持った巨大なビームを放った。
『チッ! だが、
『天魔!? 畜生ッ!! やっぱりバトルなんて……! アァァァァァァァァァァッーー!!』
ハイドカプリコーンが巨大なビームに飲み込まれる中、天魔の意味深なセリフと、カプリコーンの発狂する声が聞こえて来た。
そしてそのまま、ハイドカプリコーンはマジカルバリアを破壊させて戦闘不能になった。
それを見たMCのステラがバトルの決着を宣言した。
『決まったー☆ 勝者はミライトウキョウ校の六位で一年生の美月ちゃんとサターン君のアークサターンだー☆ ダークホースを真正面から打ち破り、優勝候補の力を見せつけたー☆ これでみづみづとサー……んんっ、☆ み、美月ちゃんとサターン君は準決勝の六回戦に進出……その相手は零ちゃんたちと咲良ちゃんたちのどちらになるのか☆』
*****
——バトルの後。控え室にて。
「美月! サターン! おめでとう! 煌めき凄かったよ! ね、マーズ!」
「ええ、焔君! 本当に凄かったわね!」
「そうだな。 美月さんたちは、僕とマーキュリーに勝ったんだから、この先も頑張ってくれ」
「フッ、期待しているぞ!」
「そうそう! 美月ちゃんたちは、あたしとジュピターに勝ったんだから、絶対に優勝してね! あ、勿論、焔たちのことも応援しているけど!」
「う、うん……皆頑張ってね……!」
控え室に戻って来た美月とサターンに、同じチームオールスターズの焔とマーズ、冬馬とマーキュリー、小春とジュピターが次々に祝福の言葉をかけてくれた。本当に嬉しい。
「は、はい……! ありがとうございますわ……!」
「礼を言う」
美月とサターンがお礼を口にすると、続けて同じチームオールスターズの輝とヴィーナスが声をかけて来た。
「これで美月さんたちはベスト四以上確定。 初出場ながらこれは本当に凄いよ」
「そうですね、マスター。 ヴィーナスとマスターの時みたいに、初出場ながら優勝しそうな勢いです」
「そうだね。 まだどうなるか分からないけど……決勝戦が楽しみになって来たよ」
輝はそう口にすると、焔の方へと視線を向けた。
「焔君、マーズさん、悪いけど……準決勝は手加減しないよ?
「はい、輝先輩! 俺も輝先輩たちには負けたくありません!」
輝と焔がバチバチとした視線をぶつけ合った。
そんな中、ネオンとネプチューンが周りを気にすることなく、平然と言い放った。
「……ん。 優勝な美月で決まりでしょ……。 私の同類の美月が負ける訳無いし……」
「そうそう♪ 麗とウラノスの様な例外でも無い限り、ネオンちゃんや美月に勝てる訳ないからね♪」
(ね、ネオンさん……! ネプチューン……!)
自分のことを純粋に応援してくれているのは分かっているのだが、流石に輝たちや焔たち、そして咲良たちの前でそれを言われると胃が痛い。
すると話題に出て来た、麗とウラノスがネオンたちをフォローする様に口を開いた。
「まあ、何はともあれ! これでベスト四の内の三組はミライトウキョウ校で確定だな!」
「ああ、後は次の試合で咲良たちが勝てば、全部をミライトウキョウ校が全て独占できるぜ!」
「……とは言え、私個人の見解では、兜蟹咲良さんたちの相手である蛇遣異零さんたちは底がしれない……。 ハッキリ言って、
「はい。 おそらくですが……今までの試合を見るに、まだ本気を出していない様ですしね……」
御霊とプルートの補足……と言うか警告に、控え室が静まり返った。
美月も以前御霊たちから言われてから、零たちの異質さをずっと感じていた。そしてそれはこれまでの試合を見て来た皆も同じだった。
一回戦の相手である心は学園リーグランキングの一位にらワールドユニオンの刺客がいると言っていた。そしてカガクアイチ校の一位の菜々とアクエリアスが咲良たちに負けた以上、刺客はやはり……。
するとそんな空気の中、この後零たちとバトルする咲良とキャンサーが美月たちの元へと近づいて来た。
「美月、覚えているかしら? 以前、アンタたちと学園リーグ戦、それから全国大会の舞台でバトルしてみたいって言ったことを……」
「はい、勿論ですわ、咲良先輩」
まあ、学園リーグ戦の方はいろいろあって叶わなかったが……。
「確かに蛇遣異零とサーペンスは強敵よ。 今大会のダークホースと呼ばれるのも納得の強さと異質さを持っているわ。 だけどアタシとキャンサーは絶対に勝って見せるわ!」
「その通りでござる! 拙者たちは絶対に勝利して見せるのでござる!」
すると咲良とキャンサーは、美月たちに向かって宣戦布告して来た。
「美月! サターン! 一足先に準決勝で待ってなさい! アタシたちも直ぐに登ってくるから! そしてそこでアンタたちに勝って見せるわ!」
「いざ、尋常に勝負でござる!」