——俺はお嬢の強さを良く知っている……。 相棒としてお嬢とずっと一緒にいたキャンサーと違って、俺はまだ出会ってから一年くらいだけど……。 それでもお嬢に誘われて入った同じチーム
「——ここがメカニカルウィッチ学園ミライトウキョウ校っすか〜。 さ〜てさて、長期的なお仕事になるっすけど、頑張るとしますかね〜」
「……」
今から一年程前、秀次はJP国の政治家の一人で、ワールドユニオンの影響下にある派閥に所属している両親からある指示を受けた。
それは明日斗博士の娘である黒土美月が来年入学予定なので、ワールドユニオンの協力者として学園に潜伏しろと言うものだった。
そんな訳で、秀次とスコーピオは故郷のシゼンホッカイドウを離れて、こうしてミライトウキョウまではるばるやって来ることになった。
……とは言え、美月が入学するのは一年後の話だし、秀次もこの仕事に対してやる気がある訳では無かった為、普通の一般生徒と変わらない学園生活を送っていた。
しかしあまりにもダラダラ過ごしていたせいか、学園である程度の立場についておけ、と言う追加の指示を通達されることになった。
秀次としてはあまり目立ちたく無いのが本音だった。
だけど同級生の冥道御影が、一年生の学園リーグ戦が解禁されたその日に、九位の座を手に入れてもう既に目立っていたので、自分たちもその影に入る形で学園リーグランキングのトップ十になることにした。
「あ〜、スコーピオ。 俺たちのカモになりそうな近距離戦闘を主体とする、学園リーグランキングトップ十の生徒に、適当に学園リーグ戦を申し込んでおいて欲しいっす」
「……つまり、高校生チャンピオンバディの白金輝以外の面々……例えば、冥道御影などか?」
「あ〜、
「……了解した」
「頼んだっすよ。
あまりやる気の無かった秀次は、スコーピオにその辺の手続きを全て丸投げしていた。
事実、以前はスコーピオは兄の優一と組んで、全国大会にも出るくらいだったので、良い感じのカモを見つけると思っていた。
しかし……。
「アタシたちに挑むなんて良い度胸じゃない! 受けて立つわ!」
「
その結果、学園リーグランキングの二位で二年生の咲良とキャンサーとバトルすることになった。
いや、確かに、頼んだ条件は合ってるけど、何故一番強い相手を選んだのだろうか?
……とは言え、もう決まってしまったことなので、秀次は腹を括って学園リーグ戦に挑んだ。
咲良とキャンサーのオーガキャンサーは、文字通り鬼の様に強かった。
バトルでは、飛び道具を持っていない相手にこちらが一方的に遠距離攻撃できる状況だったにも関わらず、ギリギリの大接戦になった。
秀次も久しぶりに本気を出したし、最後は運も味方したおかげで、どうにか勝利することができた。
「やるじゃない、霧蠍……いえ、秀次! スコーピオ! でもアタシたちは必ずリベンジして見せるわ!」
「アハハ……どうもっす……」
バトルの時は無我夢中だったが、この結果は秀次としても流石に困っていた。
去年、一年生ながら学園リーグランキングの一位になり、高校生チャンピオンバディにもなった白金輝と言う本物の天才がいたものの、流石に一年生ながら二位は目立ち過ぎた。それに咲良にも何か目をつけられてしまった。
そこで秀次は咲良たちのリベンジマッチで良い感じに手を抜いて負けることにした。まあ、本気でやっても多分負けるとは思うが……。
「ちょっと、秀次! アンタ、手を抜いたでしょ!?」
するとそれがバレてしまった。
「……全く! 秀次! アンタ、アタシのチーム鬼神に入りなさい! もう二度とこんなことできない様に矯正してあげるわ!」
それから何故か、流れで咲良たちのチーム鬼神に入ることになった。
「秀次。 アンタ、やっぱり、やればできる子じゃない! ねえ、生徒会に入る気は無い?」
それから普段はバトル以外の面でもサボっていることがバレた結果、また流れで生徒会に入ることになった。
秀次としては面倒くさいことこの上無かったが、学園最強のチームと名高いチーム鬼神に入ったことに加え、生徒会メンバーにもなったことで、元々受けていた指示は果たすことができた。
それに最初は面倒に感じていたが、咲良がサボり癖のある自分に対して、根気強く付き合ってくれたおかげで、秀次もいつしかお嬢と呼んで慕う様になった。この日々を悪く無いと思う様になった。
しかし秀次はあくまでも指示を受けて学園に入った身だった。
だからきっと、自分の仕事が咲良にバレたら、もうそんな日々を送ることはできなくなることは分かっていた。その覚悟はもう済ませていた。
——お嬢は強い……。 確かに、白金会長や黒土さんと言った本物の天才には届かないのだろうけど……それでも俺はお嬢ならと届くのではと思ってしまう……。 俺はお嬢があの人外相手に番狂わせを起こす様な気がしていた。 だからその時は俺が……。
*****
——『戦地』のバトルフィールドにて。
「くっ……!? 何て数のドローン武器なの!? しかも見た感じ全てがマニュアル操作……! こんなの完全に人間業のレベルを超えているわ!?」
「規格外過ぎるでござる!?」
咲良とキャンサーのオーガキャンサーが、大量のドローン武器から逃れる為に戦地の中を駆け回っていた。
元々カオスサーペンスは、カオスソードライフルとカオスシールドブースターを一つずつ、カオスドールユニットを二つ、カオスナノブレードとカオスエネルギースフィアを八つずつと言う、合計二十のドローン武器を操っていた。
それに加え、五回戦から出して来たカオスマルチコンテナに、見た感じカオスソードライフルとカオスシールドブースターの分をカオスドールユニットに置き換えた以外は同数のドローン武器が搭載されていたことで、その数が合計四十と言うとんでも無い数になっていた。
おそらくこれが、御霊とカロンが推測していた、零とサーペンスのカオスサーペンスの本気状態なのだろう。
マルチタスクを要求されるドローン武器のマニュアル操作は、御影とカロンのシャドウカロンの九つ同時操作が世界全体で見ても上澄中の上澄……と言うか限界だと言われていた。
それこそ秀次とスコーピオのステルススコーピオや菜々とアクエリアスのレインアクエリアスなどの二桁以上はオート操作でなければ無理だと言われていた。
カオスサーペンスのドローン武器も一見するとオート操作っぽく見えるが、注視すると一つ一つが個別に動いているマニュアル操作だと分かる。寧ろ、輝とヴィーナスのノーブルヴィーナスの様な正確無比な操作のせいで、機械が動かしている様に見えるだけだ。
しかもそれを行って尚、カオスサーペンス本体の動きも、全く衰えてはいなかった。
『『……マジカルスキル。 ……
カオスシールドブースターを背中に装備することで飛翔しているカオスサーペンスが、カオスソードライフルで
それと同時に六機のカオスドールユニットで逃げ道を塞いで来る。
「くっ……! 突破するわよ、キャンサー!」
「行くでござるよ、咲良!」
「「マジカルスキル!
両手で鬼ノ太刀を構えたオーガキャンサーは、刀と足裏に炎を纏わせると、突きを放った。
それによりカオスドールユニットの方位を崩すのと同時に、その場から離脱することで
しかし逃げた先にも大量のカオスナノブレードが待ち構えていた。
「チッ! 数が多過ぎる! キャンサー!」
「どんどん行くでござる!」
「「
オーガキャンサーは二刀流になり袈裟斬りを、それからバックパックのサブアームを使って三刀流になり逆袈裟斬りを、そして四刀流になり一文字斬りを放ち、大量のカオスナノブレードを切り裂いた。
だけどどうせ再生されてしまう。早くこの場から離れなければ……。
しかし続けてその場を包囲した大量のカオスエネルギースフィアがマジカルシールドを利用して、オーガキャンサーを閉じ込めた。
さらにそのままビームを一斉に放って来た。
「チッ! 跳ぶわよ、キャンサー!」
「了解でござる!」
「「
それに対し、オーガキャンサーはジャンプでビームを避けるのと共に、五刀流になり真っ向斬りを放ち、包囲していたマジカルシールドの一部を破壊して脱出した。
しかし……。
「ーーッ!?」
まるで咲良たちの動きを予測していたかの様に、空中で待ち構えていたカオスサーペンスが、カオスソードライフルとカオスシールドブースターを組み合わせる様に構えていた。
『『……マジカルスキル。 ……
「「
オーガキャンサーは六刀流になり突き、袈裟斬り、逆袈裟斬り、一文字斬り、真っ向斬りを同時に繰り出し、アスタリスクのマークを描く様に斬撃を放つことで、カオスサーペンスが放った暴力的なまでの赤色の魔力を少しでも軽減させた。
しかし
「くっ……! だけどどうにか耐え……」
『『……マジカルスキル。 ……
「ーーッ!?」
「不味いでござる!?」
すると現在進行形で吹っ飛ばされているオーガキャンサーの目の前に、赤色の魔力に包まれたカオスサーペンスが現れた。何て速さだ……!?まるで瞬間移動だ……!
「きゃあっ!?」
「咲良!?」
そのままオーガキャンサーは、カオスサーペンスに吹っ飛ばされては追いつかれ、また吹っ飛ばされるのを繰り返した。
崩れかけの瓦礫になっている建物へと吹っ飛ばされ、それから枯れ果てた木々や川の近くを吹っ飛ばされて、そして黒い雲で覆われている空へと打ち上げられた。
それでも兜蟹流の技を利用して致命傷だけは防御し続けた。
そして
機体はボロボロでマジカルバリアは壊れかけの状態。
それでもオーガキャンサーは鬼ノ太刀を杖にしてヨロヨロと立ち上がった。
「まだよ……! まだアタシたちは負けていないわ……!」
「そうでござる……! まだ勝負は着いていないでござる……!」
「アタシたちはこの試合に勝って、準決勝で美月とサターンとバトルするのよ! そして完全な形では無いとは言え……陽太君とサンに間接的なリベンジを果たすのよ……!」
咲良たちには美月たちとの約束があった。学園リーグ戦と全国大会の舞台でバトルしようと言う約束が……。
学園リーグ戦の方は事件が起きて美月が一ヶ月近く入院することになった為叶わなかったが、それ以上の舞台がようやく巡って来た。
美月たちは、自分たちの初敗北の相手で永遠にリベンジが果たせなくなった陽太たちの妹で、似たバトルスタイルを持っていた。
だからどうしても、陽太たちに憧れて磨き上げた自分たちのバトルスタイルを美月たちにぶつけて見たかった。
だからそうする為にも、このバトルに勝つんだ……!
「——さあ、キャンサー! 最後まで勝利のみを信じて突き進むわよ!」
「勿論でござる、咲良! 拙者たちのバトルスタイルをぶつけるでござる!」
「「
オーガキャンサーは腰部のサブアームで鬼ノ小太刀を装備して七刀流になると、刀と足裏に炎を纏わせた。
そして大量のドローン武器を従えたカオスサーペンスの元へと突撃した。
『『……迎撃』』
カオスサーペンスが放った六機のカオスドールユニットが襲いかかって来る。
一機一機が普通の機体並みの戦闘力を持っているが、漆式のスピードで回避しながら、その全てを捌いていく。
『……!? ……それなら』
カオスサーペンスは続けて大量のカオスナノブレードを四方八方から放って来た。
さらにカオスナノブレード諸共、大量のカオスエネルギースフィアのビームでオーガキャンサーを焼き払おうとして来る。
だけど……!
「「
それに対し、オーガキャンサーは八刀流になり、その場で連続斬りを行うことで、包囲して来たカオスナノブレードを散らせるのと共に、カオスエネルギースフィアのビームを防御した。
そして今の攻防で生まれた隙を突いて、カオスサーペンスの元へと飛び上がった。
「「
オーガキャンサーは脚部のザブアームを展開して九刀流になり、一本の刀として扱う様なシンクロした動きで薙ぎ払いを行った。
「……!?」
それによりカオスエネルギースフィアのマジカルシールドを破壊した。
チャンスだ……!
『『……マジカルスキル。
するとカオスサーペンスはカオスソードライフルを狙撃銃へと変形させると、
だけど無駄だ。今の自分たちは絶体絶命な状況のせいか、
『『
オーガキャンサーは十刀流になり、刀と足裏に炎を纏わせると、壱式から玖式までの技を次々に繰り出した。
カオスサーペンスのマジカルスキルは
そして
零たちはまるで美月たちの様な全てを予測しているかの様な動きで受け流していくが、咲良たちも負けじと攻撃のスピードを上げていく。
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」」
『くっ……!?』
『おーーっと☆ 何と、零ちゃんたちのカオスサーペンスに今大会……いや、学園リーグ戦もだった☆ と、兎に角、初めてのダメージが入ったー☆』
そしてオーガキャンサーの鬼ノ太刀が、カオスサーペンスを切り裂いたことで、MCのステラの声が上がった。
行ける……!
零とサーペンスは別ベクトルとは言え、自分たちが今でバトルして来た陽太たちや輝たちを越えかねない強さを持っていた。
それでもお互いを心から信頼し合った咲良とキャンサーは、そんな零たちの強さと言う、目の前に立ち塞がる大きな壁を一緒に乗り越える為に、限界を越えようとした。
シンクロ率が
「「——シンクロ……」」
——その瞬間、飛んで来たビームの狙撃が、オーガキャンサーの鬼ノ太刀を真っ二つにへし折った。
「「ーーッ!?」」
完全に予想外だった攻撃に、咲良たちは集中を一瞬切らしてしまった。
今のはカオスサーペンスのドローン武器による攻撃じゃ無い……!
「秀……ぐっ……!?」
咲良が思わず声を上げようとする中、カオスドールユニットが放ったビームがオーガキャンサーに直撃した。
さらに飛んで来た大量のカオスナノドローンがオーガキャンサーへと突き刺さった。
そして地面へと墜落したオーガキャンサー目掛けて、大量のカオスエネルギースフィアがビームを一斉に放った。
「ーーッ!? 秀次!!」
「咲良!? ぐっ……!?」
そしてビームの光に飲み込まれたオーガキャンサーは、マジカルバリアを破壊されたことで戦闘不能になった。
それを見たMCのステラがバトルの決着を宣言した。
『決まったー☆ 勝者はシゼンホッカイドウ校の一位で一年生の蛇遣異零ちゃんとサーペンス君のカオスサーペンスだー☆ 咲良ちゃんたちも奮闘していたけど、惜しくも逆転にはならなかったねー☆ 勝利の女神は厳しかったー☆』
*****
——バトルフィールドへと繋がる選手用の通路にて。
「——良かったのか、秀次? まだ攻撃が当たったくらいで、オフィウカスたちが有利な状況のままだっただろう? 手を出すのは早計だったんじゃないか?」
「……いいや、あのまま行けば、お嬢はオフィウカスたちに届いてたっす。 勝ってたっす。
ハイドカプリコーンに乗る天魔がそう問いかけると、ステルススナイパーライフルを構えたステルススコーピオに乗る秀次はそう返答した。
やっぱり予想通りの展開になった。咲良たちが四回戦で菜々たちに勝って計画を崩した時から、こうなるんじゃないかと薄々思っていた。
だからこうして、これ以上計画が崩れない様に備えていた。だって自分は咲良の強さを良く知っているから……。だけどそれは向こうも同じだった。
だから……。
「……お嬢は確実に、今の狙撃が俺の仕業だって気づいた筈っす」
「……カオスオフィウカスのドローン武器による攻撃に見える様にカモフラージュしたのにか……? 現にMCを含めた観客たちは誰も気づいていねえぞ?」
「……いいや、お嬢なら絶対に気づくっすよ。 だから……ちょっと行ってくるっす」
*****
「——秀次!!」
「さ、咲良……! 落ち着くでござる……!」
バトルの後、咲良たちはバトルフィールドへと繋がる選手用の通路まで走って戻って来ていた。
全ては試合に介入して来た秀次のことを問い詰める為に……。
するとその件の秀次とスコーピオが待ち構えていた。
「ーーッ!? 秀次!! アンタ、試合に介入するなんて、どう言うつもりなのよ!?」
「……」
咲良は秀次の元へと駆け寄ると、思わず胸ぐらを掴んだ。
真剣勝負を穢されたことで、自分でも抑えきれない程の怒りが沸いて来る。
その一方で秀次は落ち着いた様子で口を開いた。
「……本当にお嬢とキャンサーには申し訳ないと思っているっす……。 だけど……オフィウカスとサーペンスを黒土さんに当てるのは上からの指示だったんっす……」
「ーーッ!?」
秀次の上からの指示と言う言葉に、咲良は冷や水を被せられた様にハッとした。
そう言えば、美月が全国大会の裏で怪しい動きをしている者たちがいると言っていた。
そしてそんな美月は、明言こそしなかったもののワールドユニオンに狙われている様だった。
じゃあ秀次はまさか……!?
するとその仮説を裏付ける様に、スーツを来た大人の女性たちがこの場に集まって来た。
そのまま取り囲まれた咲良は、震える声で問いかけた。
「秀次……アンタ、まさか……!? ワールドユニオンの……!?」
「すみません、お嬢……。 その問いには答えられないっす……。 だけど……これが終わったら俺は学園から消えるので安心して下さい……。 でもその前に……気づいてしまったお嬢には少しだけ大人しくしていて貰うっす……」
秀次が指示を出すと大人の女性たちが咲良とキャンサーを拘束して来た。
「……くれぐれも丁重にお願いします……。 それじゃあ、お嬢……これでさよならっす……」
「ーーッ!? 秀次!!」