——競技場内にある通路にて。
(——咲良先輩たちの機体を撃った、あの謎の狙撃は一体……?)
「……ん。 じゃあ、美月。 私たちは先に行っているね……」
「
「あ、はい……! 分かりました……!」
先程の試合の後、自分と輝とネオンと麗に白金代表から、以前頼んでおいた全国大会の裏でワールドユニオンが暗躍している件についての調べがついたので、指定の場所まで来て欲しいとの連絡が届いた。
それからこの事情について知っている面々も連れて来る様にと……。
そこで自分とサターン、輝とヴィーナス、ネオンとネプチューン、麗とウラノスの他に、焔とマーズ、冬馬とマーキュリー、小春とジュピターの面々も、こうして一緒に、指定された場所へと向かっていた。
しかしその途中、明日の準決勝について大事な話があるからと、自分たちと輝たちと焔たちが運営から呼び出されてしまった。
その為、明日の準決勝がある面々とその他の面々で一旦別れることになった。
「すみません、麗さん。 こっちの用事が片付いたら僕たちも直ぐに向かいますので……。
「はい。 よろしくお伝え下さい」
「よろしくお願いします」
「ああ! 任せておいてくれ、輝君! ヴィーナスちゃん!」
「そうだぜ! この件は俺様たちが何とかしておくから、お前たちは明日の準決勝に集中しな!」
先程の試合のカオスサーペンスの攻撃では無い謎の狙撃に、美月たちの他にも、輝たちやネオンたちや麗たちも気づいていた。
そこで輝たちは、その件も含めて白金代表に伝えて欲しいと、麗たちに頼んでいた。
その一方で、それに気づいていない残りの面々は、明日の準決勝について話していた。
「焔……! マーズ……! ここまで来たんだから、準決勝も決勝も勝つんだぞ……!」
「フッ、今の焔たちなら優勝も夢では無いだろう」
「うんうん! 応援しているからね! あ、勿論、美月ちゃんと輝先輩たちもだけど!」
「う、うん……頑張ってね……!」
「ありがとう、皆! 明日の準決勝は絶対に輝先輩たちに勝って見せるから!」
「ええ、期待しておいてちょうだい!」
そして二手に別れた面々は、それぞれの場所へと向かった。
*****
運営から呼び出された空きの控え室に到着した美月は、部屋の手前の入り口の近くにある椅子に座る様に促された。
ちなみに、焔と輝は反対側の部屋の奥にある椅子に座る様に促された。どうやら明日の対戦相手同士で固まって欲しいらしかった。
後は先程の試合を終えた零とサーペンスが来るのを待つだけだが……。
すると控え室の自動ドアから零たちが入って来た。
しかし……。
「え……?」
こうして間近で見たことで、美月の魔力が見える目が、零が人間で無いことに気づいた。
「メカニカルウィッチ……!?」
「何だって!?」
美月が無意識に呟いた言葉を聞いたサターンが驚きの声を上げた。だけど無理もない。
自分だってこの魔力が見える目が無ければ、気づくのは難しかった。
零はリンや爺やたちと同じ、人間と同じ大きさの最先端のロボットの体を使っていたが、よくよく見れば機械だと分かる既存の物とは違い、ガワに関しては本物の人間にしか見えない物を使っていた。
すると部屋の中央の空中にモニターが浮かび上がり、そこに
それだけじゃない。このモニター自体が手前にいる美月たちと奥にいる焔たちを物理的に遮る魔力の障壁になっていた。
『——フォッフォッフォッ……!』
「「ーーッ!?」」
『こうしてお目にかかるのは初めましてかのう? ワシは
モニターから聞こえて来た怪しい笑い声の主はそう名乗りを上げた。
するとそれを聞いたヴィーナスがワナワナと震えながら声を上げた。
「……何が、
暗闇博士……それは軍用機の
『フォッフォッフォッ……! ワシはあくまでも
「ヴィーナスはヴィーナスです……! それがマスターから貰った名前なんです……! もう
『ふむ……どうやら白金代表の倅のせいで、いろいろと無駄な感情を得た様じゃのう? ハァ……これだから未完成で終わった
「ーーッ!?」
「暗闇博士ッ!! お前のせいで、ヴィーナスはあんなにも苦しんだと言うのにッ!!」
ヴィーナスに対する物言いに輝が本気の怒りの声を上げるが、
『それに比べて、ワシが新たなに作った
暗闇博士は狂気の声でそう解説した。
それが本当なら、
『……本当なら、明日の準決勝で戦わせる予定だったのじゃが……
「……はい。 行くよ、
「……了解だ、
「「——マジカルチェンジ」」
足元に巨大な魔法陣が出現すると、巨大な光と音と共にスーパーメカニカルウィッチの姿へと変身していく。しかも
そしてそのせいで部屋の入り口付近が天井を中心に崩壊し始めた。
「くっ……!? 美月!」
「お兄様……!」
それを見たサターンはすかさず人間と同じ大きさの姿に変身すると、美月をお姫様抱っこする形で庇った。
そんな中、魔力の障壁に隔たれた輝たちと焔たちのいる部屋の奥の方に、隠し扉からスーツを着たワールドユニオンと思わしき大人たちがゾロゾロと入って来た。しかもその手には銃を持っていた。
『ワシの今回の目的はあくまでも、明日斗博士の作ったサターンとその機体相手に戦うことじゃからのう? 邪魔されては困るので、大人しくしていて貰うぞ?』
それを見た輝が思わず声を上げた。
「ーーッ!? 麗さんたちは父さんの元へと行った筈じゃ!?」
『フォッフォッフォッ……! 白金代表をちょっとばかり抑えてから、彼を装って呼び出しのじゃよ? 二大チャンピオンバディに邪魔されたら堪らんからのう?』
「お前ッ!!」
「……
「くっ……!?」
輝は悔しそうに歯軋りすると、大声でこちらに向かって叫んで来た。
「
「はい……! 気をつけて下さい……! 暗闇博士の開発した軍用機は、ワールドユニオンが運用している軍用機よりも数段上の力を持っていますから……!」
「うん! 俺たちの方は大丈夫だから! 美月たちは自分たちのことに集中して!」
「ええ! サターン! 美月のことを頼んだわよ!」
「ああ、美月のことは僕に任せろ!」
「そちらも気をつけて下さい……!」
輝たちと焔たちの声を聞いた美月たちは、崩れかけている天井の方へと目を向けた。
「行くよ、美月!」
「はい、お兄様……!」
「「——マジカルチェンジ!」」
変身魔法が発動し、足元に巨大な魔法陣が出現すると、巨大な光と音と共に、スーパーメカニカルウィッチとなったアークサターンが現れた。
それからこの場を巻き込まない為に、そのまま崩れかけた天井を突き破って上へと移動した。
そして建てられている建物のどれもが崩れかけの瓦礫になっていて、その周りにある木々も川も枯れ果てて、その空も黒い雲で覆われている『戦地』にバトルフィールドへと辿り着いた。
『え?? みづみづ?? サー君?? 何で??』
すると先程の試合が終わったばかりなせいか、まだ残っていたMCのステラの声が聞こえて来た。
しかしその声を遮る様に、大きな音と共に地下から二機のスーパーメカニカルウィッチが現れた。
片方は先程の試合でも使用された、黒を基調とし、赤の装飾を纏った人型の機体であるカオスサーペンス。だけど魔力的にはオフィウカスが動かしていた。
もう片方は、黒を基調とし、赤の装飾を纏った非人型の竜の様な蛇の様な異形の機体だった。さらにその大きさも普通の機体の倍以上あり、あの機械仕掛けの竜のクリサリスと同じ約三十メートル近く程あった。
そしてその二機が合体する様にドッキングした。
『え〜と、たった今届いた運営からの情報によると……日程の都合で今から六回戦の準決勝を行うみたい……? ハァ!? イヤイヤ、おかしいでしょ!? 何か……零ちゃんたちが今出して来たのはサポートメカだって書いてあるけど、どう考てもそんな訳ないでしょ!? 何がどうなってるの!?』
ステラの混乱する声と共に、観客席に残っていた観客たちのザワザワする声が聞こえて来た。このままでは不味い。
「スーちゃん! 早く皆に避難指示を……」
『フォッフォッフォッ……! 悪いが外部との連絡は遮断させてもらうぞ?』
「ーーッ!?」
すると聞こえて来た
『安心せい。 この『戦地』のバトルフィールドは特別性ののう? 観客席を守る特別なマジカルバリアも、
オフィウカスたちが二回戦から五回戦までの試合をこのバトルフィールドで行ったのはその為か……!ランダムにしては偏り過ぎだとは思っていたが……!
『改めて紹介しよう、カオスサーペンスもとい、
『『……了解』』
するとカオスオフィウカスを背中に乗せたカオスサーペンスがその大きな口を開いた。
そして『カオスマウスキャノン』から下手なマジカルスキルを超えるレベルの超巨大なビームを放って、開戦の狼煙を上げた。
その光景を目にした美月は、咄嗟にお守りのペンダントを両手で握りしめ、勇気のお呪いを唱えた。
「——頑張れ、私! 頑張りなさい、わたくし!」
これから始まる本物の戦いに備えて、素の精霊人格から人間人格へと切り替える。
それから機体の方もリミッターを解除して、実戦で戦える様にする。
「サターン! 魔王システムの発動をお願いしますわ!」
「了解です、お嬢様! 陽太、頼む! 魔王システム起動!」
「
アークサターンの魔石の中からもう一人の兄の叫び声が聞こえて来ると、機体が紫の炎を身に纏った。
胸部の装甲の一部が展開し、内部にあった魔石が剥き出しになり、さらに背中のアーク
実戦で戦うのは六月に起きたメカニカルウィッチ学園での事件以来だ。
まさか全国大会の舞台でこうして戦うことになるとは思っていなかったが、兎に角やるしかない……!
「「マジカルスキル! プラネットツリー!」」
アークサターンは足元から巨大な木の根を伸ばして自然の盾を作り出すと、カオスサーペンスが乱射して来る超巨大なビームを受け止めた。
「くっ……!?」
「何て威力だ……!?」
しかしあまりの威力に自然の盾がどんどん破壊されていく。
さらにカオスオフィウカスが操る、カオスドールユニットにカオスナノブレード、それからカオスエネルギースフィアと言った大量のドローン武器が襲いかかって来た。
カオスオフィウカスは五回戦で出して来た、本体と同数のドローン武器を使役するカオスマルチコンテナを九機も使役しており、そのせいでドローン武器の数が推定だが合計二百機と言う狂った数になっていた。
「「マジカルスキル! プラネットウォーター!」」
アークサターンは周囲に展開した水を次々にいろんな武器へと変化させ、それを飛ばすことで迎撃した。
しかし数が多過ぎて対処しきれない。その中でも特に、推定合計八十機のカオスナノブレードは驚異的な再生スピードを持つせいで、破壊しきれない。
「やはり数が多過ぎますわ! サターン、一時離脱ですわ!」
「了解です、お嬢様!」
「「マジカルスキル! プラネットファイア!」」
アークサターンは背中に炎の光輪を発生させると、一気に上空へと飛び上がった。
するとそこに推定合計三十八機のカオスドールユニットが追撃して来た。
不味い。このままでは実質的に普通の機体を三十六機同時に相手にするハメになる……!そんなことをしている暇は無い。
「「マジカルスキル! サターンスラッシュ!」」
アークサターンは左腕のアークシールドに収納されているアークソードを展開すると、プラネットファイアを纏ったサターンスラッシュを放った。
それを喰らったカオスドールユニットが散って行く。
すると入れ替わる様に、地上から推定合計八十機のカオスエネルギースフィアがビームを一斉に発射して来た。
「「マジカルスキル! サターンアークブレイク!」」
アークサターンは今度は剣と盾を合体させてアーク
暴力的なまでの紫色の魔力の光がカオスエネルギースフィアのビームを押し返し、そのまま展開していたマジカルシールドを打ち破った。
チャンスだ……!
「今ですわ、サターン!」
「はい、お嬢様! 一気に決めますよ!」
「「マジカルスキル! サターンアークストライク!」」
アークサターンはアーク
しかし……。
「「……マジカルスキル。 ……
それに対し、カオスオフィウカスたちは最強のマジカルスキルであるフィールド魔法を発動させ、バトルフィールド全体を不気味な赤い光で包み込んだ。
するとサターンアークストライクの威力がガクンと落ちた。これはまさか……バトルフィールド全体に
「「……迎撃」」
カオスサーペンスは機体に内蔵された無数の『カオスピットオーガン』から曲がるビーム……いや、実質的なビームの鞭を一斉に放った。
それが動きが鈍ったアークサターンを雁字搦めに拘束する。
「「……殲滅」」
さらに続けてカオスマウスキャノンが放たれ、アークサターンへと直撃した。
そして凄まじい音と光と衝撃が、中にいる美月へと伝わって来た。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」
「お嬢様!? くっ……!?」
*****
——同時刻。競技場内にあるとある休憩室にて。
「くっ……!? 秀次ッ!!」
「咲良、冷静になるでござる……!」
秀次の手配した大人の女性たちに拘束された咲良とキャンサーはこうして閉じ込められたことで、身動きが取れなくなっていた。さっきからスタジアム全体が揺れていて、間違いなく何かが起こっていると言うのに……!
そんな状況に咲良が歯軋りをしていると、さっきまで全く反応しなかった部屋の自動ドアが突然開いた。
「ーーッ!? アンタは確か……美月たちの一回戦の相手の……!」
「はい、
「ヴァルゴですぅ〜」
現れたのは心とヴァルゴだった。
だけどこの場にいると言うことは秀次と同じ、ワールドユニオンの手の者の筈……。
咲良たちが警戒を強めると、心たちは真剣な表情で口を開いた。
「……手短に今の状況を説明しますわ。 今……」
すると心は美月たちが今現在、零もとい、オフィウカスとサーペンスと言う、ワールドユニオンの刺客と戦っていることを説明してくれた。
それから輝たちの面々が捕まっていることも……。
それを聞き終わった咲良は思わず尋ねた。
「……アンタたちはワールドユニオンの仲間なんでしょう? それなのに何で……?」
「わたくしは四月に起きたメカニカルウィッチ研究所のテロ事件で、お姉様……美月様とサターン様に命を救われたのですわ」
心はそう答えると、ヴァルゴに指示を出して、マジカルチェンジを応用する形で使わせた。
すると咲良と心の制服が、それぞれ相手と同じ物へと変化した。
それから心は金髪の縦ロールのカツラを手渡して来た。
「自衛能力を持つ白金様たち、海姫様たち、天王寺様たちと一緒にいない兜蟹様たちが、下手をすれば人質に取られる可能性があって、今一番危険ですわ。 だからわたくしに変装してどうにかこの場から逃げて下さいまし。 そして可能ならば外部に助けを求めて欲しいのですわ」
「分かったわ。 でも、アンタはどうするの?」
「わたくしはワールドユニオンの一員として、裏からお姉様と他の捕まっている人たちを助けて見せますわ! だから……!」
するとヴァルゴが突然慌てた声を上げた。
「不味いです、心お姉様! 菜々様たちから、今どこにいると、メールが届いたのですぅ〜!?」
「何ですって!? 菜々会長たちは鋭い過ぎますわ! 兜蟹様! 早く行って下さいまし!」
「分かったわ、ありがとう、早乙女……いいえ、心! アンタたちも気をつけるのよ!」
「恩に切るでござる!」
咲良は金髪のカツラを被って心に変装すると、キャンサーと一緒に急いでこの場を後にした。
*****
その後、心はマジカルウォッチを使って内部から自動ドアをロックすると、急いで桜色のポニーテールのカツラを被って咲良に変装した。
そして休憩室のベットに潜り込んで寝入っているフリをする。
すると部屋の自動ドアが開いて、菜々とアクエリアスが入って来た。
菜々たちはベットの前まで足音を立てながらゆっくりと近づいて来ると、自分の背後でピタリと止まった。
「……心。 それでバレないと思ったのですか? 一度ならず、二度までも勝手な行動を取るなんて……」
「……これはヴァルゴ共々お説教ですね」
「「ーーッ!?」」
——やはり菜々たちにはバレてしまっていた。