メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

88 / 88
幕間5「決戦へのカウントダウン」

 

 

 ——同時刻。ワールドユニオンの本部がある宇宙エレベーター内にある議長室にて。

 

「馬鹿なッ!? ワシの最高傑作にして最強の兵器であるO(オー)S(エス)が負けたじゃとッ!? おのれッ!! 全てはO(オー)の奴が愚かな人間の様な余計な感情を得たせいじゃ……!? このとんだ失敗作めッ!!」

 

 発狂した黒穴博士が怒り狂った声を上げながら、中継を部屋の空中に映し出していたテレビを自身の杖で破壊していた。

 

 そんな黒穴博士の後ろ姿を見ていたアダム議長は、やれやれと言った様子でため息を吐いた。

 

「ハァ……結果は予想通りだったので別に構わないのですが……一応対処できる様に処置してあったとは言え、こちらに確認を取らず独断で『X(エックス)システム』を発動させるとは……。 その上で負け、さらにこの様な醜態を晒すとは……いささか目障りですね」

 

 アダム議長は机の中にあったら銃を手に取ると、黒穴博士を後ろから撃った。

 

「ガハッ……!?」

 

 そのまま黒穴博士はパタリと床に倒れた。

 ……とは言え、死んではいない。今使ったのはあくまでも非殺傷のスタンガンだ。以前はタブーを口にした為、本物の銃で撃ったが……。

 

 アダム議長は気を取り直すと、側に控えている秘書の英斗(えいと)へと声をかけた。

 

「英斗、そこの狂人を最下層の隠しエリアにある研究所に戻しておいて下さい。 それからいい加減に『機械仕掛けの神』の完成に力を入れる様に、爆弾でも使って適当に脅しておきなさい。 この男もこの結果のままでは、まだ死にたくはないでしょうし……」

「は、はい、養父(とう)さん……!」

「それからJP国に新たに送った特殊部隊と、ワールドユニオン軍に、オフィウカスとサーペンスの人間擬きたちの回収を行う様に通達を。 ……ただ回収は可能ならばで構いません。 ()()()()()()()()()()()()()()()()

「了解しました」

 

 指示を受けた英斗は早速自身のタブレットを操作し始めた。

 するとその手を急にピタリと止めた。

 

養父(とう)さん、たった今、JP国にいるワールドユニオンの者から映像付きの情報が届いたのですが……」

「出して下さい」

「はい」

 

 英斗がタブレットを操作すると、アダム議長の目の前にモニターが映し出された。

 

 そして映し出された映像の中では、ネオンとネプチューンが後ろにいる少女とその相棒を庇いながら、銃を持ったワールドユニオンの大人たちを、魔法で一方的に蹴散らしていた。

 ()()()()()()()()()()()()を前に、ワールドユニオンの大人たちは直ぐに倒され、その当のネオンたちは少女とその相棒を連れてそのまま部屋を後にしていた。

 そこで映像が途切れた。

 

「……これは……!? 確かに……海姫ネオンとネプチューンは世間から『魔女の生まれ変わり』と言われていましたが……まさか噂は本当だったのでしょうか……?」

「フフフフフ……!」

養父(とう)さん……?」

 

 映像を見た英斗が驚きの声を上げる中、アダム議長はとんだ吉報に喜びを隠せないでいた。

 

「十中八九そうなのでしょうね。 彼女たちが使っていた魔法は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのですから。 ネプチューンは人工精霊では無く、本来の精霊で間違いないでしょう。 それから海姫ネオンもただの人間では無いのかもしれません」

 

 まさか地ノ星(ちのほし)博士夫妻が残した『擬似集合無意識システム』を完全な状態にするのに必要不可欠な本来の精霊がこんなところにもいたとは。

『擬似集合無意識システム』をコアにした『機械仕掛けの神』は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは言え、本当に棚からぼたもち案件だった。

 

「英斗、JP国にいるセブン大佐に連絡をお願いします。 美月さんとサターンに加え、ネオンさんとネプチューンの捕縛を視野に入れる様に、と。 それから予定通り、美月さんたちの全国大会が終わり次第、私の本命の作戦を実行に移す、と」

「お任せ下さい、養父(とう)さん。 直ぐにセブン義兄(にい)さんに、暗号で連絡を送ります」

 

 英斗がタブレットを操作する中、アダム議長はこれからのことを考えていた。

 

 黒穴博士とオフィウカスとサーペンスがこうしてテロリストとして、派手に暴れて負けてくれたおかげで、この後行う予定の自分の本命の作戦を隠す為の良いカモフラージュになってくれた上に、()()()()()()の良い理由付にもなってくれた。

 後は『機械仕掛けの神計画』で運用する()()()の実験斗共に、美月とサターン、それからネオンとネプチューンを捕縛するだけだ。

 そうすれば、『機械仕掛けの神』も完成し、『機械仕掛けの神計画』も実現できる様になる。()()()()()()()()()()()()

 

(——()()、もう少しだ……。 もう少しで、()()()()した平和な世界が完成するよ……)

 

 

*****

 

 

 ——魔法界にあるスタースピリットの本拠地である城の最新部にて。

 

「——美月と陽太はワールドユニオンの刺客を……オフィウカスとサーペンスを退けたか……」

 

 帰還したバルカンからの報告を聞いたビッグバンは、安堵の息を吐いていた。

 一応もしもの時の為に、バルカンを現地に送っていたものの、取り敢えず一安心と言ったところだった。

 

「良し! バルカン! それからネメシスとクリサリスも! この後、全国大会の会場から連れ出されるであろうオフィウカスとサーペンスの保護に向かってくれ!」

「心得た」

「はい」

***(ガアッ)……!」

 

 ビッグバンからの指示を受けた、バルカンとネメシスとクリサリスは早速、広間を後にしようと扉を開いた。

 

 するとその扉の前では、()()()()()()()()()()()()()()()のスーパーメカニカルウィッチが跪く様に控えていた。

 ビッグバンとスーパーノヴァを守る為に、ずっとこの城の門の前にいるX(エックス)がここまで来るなんて珍しい……。

 

「ビッグバン様。 スーパーノヴァ様。 この様なご無礼をどうかお許し下さい。 しかしどうしても、自分と同じく、あの人間の手によって生み出された同類であるオフィウカスとサーペンスの保護に、自分も参加させて頂きたく……」

 

 ワールドユニオンに感情を消去されたX(エックス)は、抑揚の無い機械の様な喋り方をしていたが、今日は目に見えて感情が表に出ていた。

 やはり彼と同じく、黒穴博士の手によって作られたオフィウカスとサーペンスのことは気になるのだろう

 

「分かった。 それならX(エックス)もバルカンたちに同行する形で人間界へと向かってくれ」

「ありがとうございます」

 

 ビッグバンはX(エックス)に指示を出すと、この場にいる全ての者へと声をかけた。

 

「——精霊たちよ! 予定通り、美月たちの全国大会が終わり次第、私の計画……『精霊計画』の実験を行う! この実験を、()()()()()()()……()()()()()()()()()への第一歩とするのだ! 全ては精霊だけの世界の為に!」

 

 ビッグバンがスタースピリットのスローガンを唱えると、この場にいる者たちが、同調する様にそれに続いた。

 そんな中、ビッグバンは『集合無意識システム』の元へと続く階段の先にある、この広間を見下ろす様にただ一つポツンと置かれた玉座に座り、静かに微笑んでいるスーパーノヴァへと目を向けた。

 

「スーパーノヴァ、もう少しだ! もう少しで、君と陽太と美月、それから私が開発したメカニカルウィッチに宿る精霊たちの為の世界が完成する! サン! ムーン! 次の作戦では君たちにも出て貰う! 陽太と美月をスタースピリットへと迎える為にも!」

「陽太……!」

「美月……!」

 

 するとスーパノヴァの側で糸が切れた人形の様に静かになっていたムーンとサンが動き出した。

 そんな中、スーパーノヴァはまるで母親が我が子を抱きしめる様に、空中へと両手を伸ばしていた。

 そしてスーパーノヴァは綺麗で儚く……それでいてどこかゾッとする笑みを浮かべて、その口を開いた。

 

「——ああ、可愛い、可愛い、()()()()()()()()()()()……。 もう直ぐ会えますわ……」

 

 

*****

 

 

 ——宇宙を移動する『方舟』にて。

 

「——ようやく完成したか、美月とサターン、そして陽太の三人専用の機体が……!」

 

 方舟の中にあるラボで、明日斗はアークサターンの後継機として開発した新たな機体を完成させていた。

 

 この新たな機体ならば、本物の魔女である美月の力を十全に発揮できる筈だ。その上、サターンと陽太のバトルスタイルである、剣を主体とした近距離戦闘にも、美月のバトルスタイルである、杖を主体とした遠距離戦闘にも対応できる様にした。

 これならば、激化するであろうこの先の戦いにおいて、美月たちの大きな力になってくれるだろう。

 

 明日斗博士は、アダム議長のワールドユニオンと、()()()()()()()()()のスタースピリットが、美月たちの全国大会が終わった後にそれぞれの計画の実験を行い、それに合わせて美月とサターン、それからネオンとネプチューンを攫おうとしていることを察知していた。

 だからそれを止める為にも、明日斗博士は()()()である『方舟』を、急ぎ地球へと向かわせていた。アダム議長のワールドユニオンと、()()()()()()()()()のスタースピリットがぶつかる決戦の場になるであろう、JP国の全国大会高校生の部が行われている競技場へと。

 

「——スタースピリットとワールドユニオンの決戦が始まる前に、この機体を美月たちの元へと届けなければならない……! その為にも、私自身も地球へと急がなければ……!」

 

 ——決戦へのカウントダウンはもう始まっていた。

 

 






第5章をお読み頂きありがとうございます。
次回からの第6章は再び、美月君とサターン君ちゃん、焔君とマーズちゃん、輝君とヴィーナスちゃん、そして……のお話になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【8/24 1巻発売!】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~(作者:不破ふわる)(オリジナル現代/ホラー)

上位存在に日替わりで性別をコロコロされる生贄系転生者が、因習村を抜け出して怪異風味の現代ダンジョンに殴り込み(強制)を仕掛ける話。


総合評価:23563/評価:9.01/連載:175話/更新日時:2026年08月20日(木) 20:00 小説情報

ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう(作者:マテリ-AL)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

全51話・約32万字/完結済み▼毎日20:18更新▼『ソル&ヴァルキリー 』。神の代弁者・魂導者(ソル)となり、戦乙女(ヴァルキリー)を空へ育て導くヒロイン育成系学園RPG。▼これは、そんなゲームの世界で、▼「戦乙女という空を飛べて広範囲殲滅魔法を使える存在がいるのに、騎士になる意味はあるのか……?」▼と考えてしまい、魂導者となったやられ役のかませ騎士、ルシ…


総合評価:6466/評価:8.47/完結:52話/更新日時:2026年05月09日(土) 10:18 小説情報

拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした(作者:異星人アリエン)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

『リベリオン/戦禍の夜明け』。▼かつてダークファンタジーの先駆けとして、人気を博したアニメタイトル。ネームドでもサブキャラでもない、単なる無名の一般人としてそこへ転生したゲドウ・マルドラークは生きていく上で、仕方なく悪の帝国であるカエレスティス帝国の兵士として働いていた。▼知っている作品なのにそれを活かす頭脳がなく燻りながらも、日々を過ごすゲドウ。▼ある日、…


総合評価:10150/評価:8.21/連載:67話/更新日時:2026年08月16日(日) 20:02 小説情報

ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。(作者:塔乃登)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

[ストーリー/STORY]▼ここはセンクトアル王立学園。▼15歳になった少年少女が集まる国一番の学び舎。▼貴方の目標は学園生活を通して、学校に存在するダンジョンを攻略すること。▼塔の形をしたダンジョンの中には、さまざまなモンスターとシチュエーションが待ち受けています。▼仲間を集めギルドを設立し、その頂上を目指しましょう。▼300名を越える仲間たちと10名を越…


総合評価:16103/評価:8.46/連載:27話/更新日時:2026年08月21日(金) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>