——同時刻。ワールドユニオンの本部がある宇宙エレベーター内にある議長室にて。
「馬鹿なッ!? ワシの最高傑作にして最強の兵器である
発狂した黒穴博士が怒り狂った声を上げながら、中継を部屋の空中に映し出していたテレビを自身の杖で破壊していた。
そんな黒穴博士の後ろ姿を見ていたアダム議長は、やれやれと言った様子でため息を吐いた。
「ハァ……結果は予想通りだったので別に構わないのですが……一応対処できる様に処置してあったとは言え、こちらに確認を取らず独断で『
アダム議長は机の中にあったら銃を手に取ると、黒穴博士を後ろから撃った。
「ガハッ……!?」
そのまま黒穴博士はパタリと床に倒れた。
……とは言え、死んではいない。今使ったのはあくまでも非殺傷のスタンガンだ。以前はタブーを口にした為、本物の銃で撃ったが……。
アダム議長は気を取り直すと、側に控えている秘書の
「英斗、そこの狂人を最下層の隠しエリアにある研究所に戻しておいて下さい。 それからいい加減に『機械仕掛けの神』の完成に力を入れる様に、爆弾でも使って適当に脅しておきなさい。 この男もこの結果のままでは、まだ死にたくはないでしょうし……」
「は、はい、
「それからJP国に新たに送った特殊部隊と、ワールドユニオン軍に、オフィウカスとサーペンスの人間擬きたちの回収を行う様に通達を。 ……ただ回収は可能ならばで構いません。
「了解しました」
指示を受けた英斗は早速自身のタブレットを操作し始めた。
するとその手を急にピタリと止めた。
「
「出して下さい」
「はい」
英斗がタブレットを操作すると、アダム議長の目の前にモニターが映し出された。
そして映し出された映像の中では、ネオンとネプチューンが後ろにいる少女とその相棒を庇いながら、銃を持ったワールドユニオンの大人たちを、魔法で一方的に蹴散らしていた。
そこで映像が途切れた。
「……これは……!? 確かに……海姫ネオンとネプチューンは世間から『魔女の生まれ変わり』と言われていましたが……まさか噂は本当だったのでしょうか……?」
「フフフフフ……!」
「
映像を見た英斗が驚きの声を上げる中、アダム議長はとんだ吉報に喜びを隠せないでいた。
「十中八九そうなのでしょうね。 彼女たちが使っていた魔法は、
まさか
『擬似集合無意識システム』をコアにした『機械仕掛けの神』は
「英斗、JP国にいるセブン大佐に連絡をお願いします。 美月さんとサターンに加え、ネオンさんとネプチューンの捕縛を視野に入れる様に、と。 それから予定通り、美月さんたちの全国大会が終わり次第、私の本命の作戦を実行に移す、と」
「お任せ下さい、
英斗がタブレットを操作する中、アダム議長はこれからのことを考えていた。
黒穴博士とオフィウカスとサーペンスがこうしてテロリストとして、派手に暴れて負けてくれたおかげで、この後行う予定の自分の本命の作戦を隠す為の良いカモフラージュになってくれた上に、
後は『機械仕掛けの神計画』で運用する
そうすれば、『機械仕掛けの神』も完成し、『機械仕掛けの神計画』も実現できる様になる。
(——
*****
——魔法界にあるスタースピリットの本拠地である城の最新部にて。
「——美月と陽太はワールドユニオンの刺客を……オフィウカスとサーペンスを退けたか……」
帰還したバルカンからの報告を聞いたビッグバンは、安堵の息を吐いていた。
一応もしもの時の為に、バルカンを現地に送っていたものの、取り敢えず一安心と言ったところだった。
「良し! バルカン! それからネメシスとクリサリスも! この後、全国大会の会場から連れ出されるであろうオフィウカスとサーペンスの保護に向かってくれ!」
「心得た」
「はい」
「
ビッグバンからの指示を受けた、バルカンとネメシスとクリサリスは早速、広間を後にしようと扉を開いた。
するとその扉の前では、
ビッグバンとスーパーノヴァを守る為に、ずっとこの城の門の前にいる
「ビッグバン様。 スーパーノヴァ様。 この様なご無礼をどうかお許し下さい。 しかしどうしても、自分と同じく、あの人間の手によって生み出された同類であるオフィウカスとサーペンスの保護に、自分も参加させて頂きたく……」
ワールドユニオンに感情を消去された
やはり彼と同じく、黒穴博士の手によって作られたオフィウカスとサーペンスのことは気になるのだろう
「分かった。 それなら
「ありがとうございます」
ビッグバンは
「——精霊たちよ! 予定通り、美月たちの全国大会が終わり次第、私の計画……『精霊計画』の実験を行う! この実験を、
ビッグバンがスタースピリットのスローガンを唱えると、この場にいる者たちが、同調する様にそれに続いた。
そんな中、ビッグバンは『集合無意識システム』の元へと続く階段の先にある、この広間を見下ろす様にただ一つポツンと置かれた玉座に座り、静かに微笑んでいるスーパーノヴァへと目を向けた。
「スーパーノヴァ、もう少しだ! もう少しで、君と陽太と美月、それから私が開発したメカニカルウィッチに宿る精霊たちの為の世界が完成する! サン! ムーン! 次の作戦では君たちにも出て貰う! 陽太と美月をスタースピリットへと迎える為にも!」
「陽太……!」
「美月……!」
するとスーパノヴァの側で糸が切れた人形の様に静かになっていたムーンとサンが動き出した。
そんな中、スーパーノヴァはまるで母親が我が子を抱きしめる様に、空中へと両手を伸ばしていた。
そしてスーパーノヴァは綺麗で儚く……それでいてどこかゾッとする笑みを浮かべて、その口を開いた。
「——ああ、可愛い、可愛い、
*****
——宇宙を移動する『方舟』にて。
「——ようやく完成したか、美月とサターン、そして陽太の三人専用の機体が……!」
方舟の中にあるラボで、明日斗はアークサターンの後継機として開発した新たな機体を完成させていた。
この新たな機体ならば、本物の魔女である美月の力を十全に発揮できる筈だ。その上、サターンと陽太のバトルスタイルである、剣を主体とした近距離戦闘にも、美月のバトルスタイルである、杖を主体とした遠距離戦闘にも対応できる様にした。
これならば、激化するであろうこの先の戦いにおいて、美月たちの大きな力になってくれるだろう。
明日斗博士は、アダム議長のワールドユニオンと、
だからそれを止める為にも、明日斗博士は
「——スタースピリットとワールドユニオンの決戦が始まる前に、この機体を美月たちの元へと届けなければならない……! その為にも、私自身も地球へと急がなければ……!」
——決戦へのカウントダウンはもう始まっていた。
第5章をお読み頂きありがとうございます。
次回からの第6章は再び、美月君とサターン君ちゃん、焔君とマーズちゃん、輝君とヴィーナスちゃん、そして……のお話になります。