メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第82話「舞台の裏側」

 

 

 ——控え室にある個人用のスペースにて。

 

 準決勝戦の試合の準備が終わるまで、ステラが即興ライブで皆を盛り上げている裏側で、焔とマーズは輝とヴィーナスのこれまでの試合内容を振り返っていた。

 

 そんな焔のマジカルウォッチが、輝たちの三回戦の録画を空中に映し出していた。

 そんな映像の中では、雷牙(らいが)とイーグルのキングイーグルがマジカルバリアを破壊されて戦闘不能になり、『荒野』のバトルフィールドに倒れ伏していた。

 

 それを見たMCのステラがバトルの決着を宣言した。

 

『決まったー☆ 勝者はミライトウキョウ校の一位で生徒会長の三年生の白金輝(しろがねひかる)君とヴィーナスちゃんのノーブルヴィーナスだー☆ 二回戦の時と同様に試合時間は三分切り☆ 流石は優勝候補の高校生チャンピオンバディだー☆』

「やっぱり輝先輩たちは煌めき凄いや!」

「ええ、本当に……!」

 

 焔たちは時間もあまり無いので、今度は輝たちの四回戦の録画へと映像を切り替えた。

 

『——さあ、全国大会高校生の部の四回戦☆ 続いての試合は、現在の高校生チャンピオンバディで、ミライトウキョウ校の一位で生徒会長の三年生の白金輝君とヴィーナスちゃん☆ そして、サンスイミヤギ校の一位で二年生の牡羊尾刃(おひつじおじん)君とアリエス君のバトルだよ☆ 学園リーグランキングの一位同士のバトルは果たしてどちらが勝つのか☆ それじゃあ皆お待ち兼ね☆ バトルスタートだよ☆』

 

 映像に映っている『砂漠』のバトルフィールドでは、バトル開始早々に、輝とヴィーナスのノーブルヴィーナスと、刃とアリエスのゴールデンアリエスがぶつかり合おうとしていた。

 

『ヴィーナス! 牡羊尾(おひつじお)君たちは強敵だ! だから最初から全力で行くよ!』

『了解です、マスター……!』

『『——シンクロゾーン!』』

 

 輝たちは初手からシンクロゾーンを発動させた。

 

『『マジカルスキル! ヴィーナスフォーリンエンジェル!』』

 

 さらに白い光と黒い光が無限大を描く様に重なり合った光輪を頭部に浮かべたノーブルヴィーナスが、天使の様な白い翼と悪魔の様な黒い翼の二組の対となる四つの翼をはためかせた。

 

 するとそんなノーブルヴィーナスの元へと、ゴールデンアリエスが黄金ノ刀を片手に、背中の『黄金ノ翼』で飛翔しながら突撃した。

 

『師匠との修行の成果を試すのに、白金先輩たちは相手として申し分ないっす!』

『ああ! その為にも、まずは相手の懐に飛び込むぞ、刃!』

 

 するとノーブルヴィーナスは四機のノーブルマルチウィングC(カスタム)を展開し、四方向からビームを放った。

 さらにそれと同時に二丁のノーブルガンソードC(カスタム)を連結させた、ノーブルスナイパーライフルからも狙撃を放った。

 その全てが高速で飛行しているゴールデンアリエスに吸い込まれる様に飛んで行った。砂漠は砂嵐のせいで視界が悪いのに、輝たちはそれをものともしない射撃の腕前を発揮していた。

 

『させないっす! 師匠!』

『ああ、刃!』

『『マジカルスキル! アリエスカウンター!』』

 

 それに対し、ゴールデンアリエスは武道の動きと魔法を合わせた無敵時間に近い理論で、機体を透過させることで攻撃を回避した。

 

『やるね! ヴィーナス!』

『はい、マスター……!』

『『マジカルスキル! ヴィーナスノーブルゲート!』』

 

 ノーブルヴィーナスはノーブルマルチウィングC(カスタム)で光の門を作り出し、そこに再び分離したノーブルガンソードC(カスタム)のビームを打ち込み、その威力と数を増大させた無限の攻撃を放った。

 

『無駄っす! 師匠!』

『行くぞ、刃!』

『『マジカルスキル! アリエスゴールデンアーマー!』』

 

 それに対し、ゴールデンアリエスは魔法で黄金の羊毛を纏うことで、その攻撃を跳ね返した。

 

 三分間だけありとあらゆる全ての攻撃を無効化し、跳ね返す無敵の魔法。しかし輝たちは逃げることなく、逆に突撃した。

 

『『マジカルスキル! ヴィーナスセイバー!』』

 

 ノーブルヴィーナスはノーブルガンソードC(カスタム)の先端に光の剣を発生させると、四機のドローン武器と一緒に連携攻撃を繰り出した。

 速い。シンクロゾーンとヴィーナスフォーリンエンジェルも合間って、神速の如き速さになっている。

 

『くっ……! 速いっす……!?』

『武道を嗜んでいる私たちですら、目で追えないスピードだと……!?』

 

 ゴールデンアリエスは無敵の魔法のおかげでダメージこそ受けていなかった。しかし黄金ノ刀や黄金ノ翼だけでなく、四肢の『黄金ノ爪』や腰の『黄金ノ尾』と言った全ての武装を総動員して抗っているものの、完全にその場で押さえ込まれていた。

 そして三分間が経過し、無敵の魔法が解けた。

 

『今だ! ヴィーナス!』

『はい、マスター……! 決めましょう……!』

『『マジカルスキル! ヴィーナスバスター!』』

 

 その瞬間、ノーブルヴィーナスは二丁のノーブルガンソードC(カスタム)と四機のノーブルマルチウィングC(カスタム)の先端に展開した、六つの魔法陣から巨大なビームを発射した。

 

『うわあッ!? まだまだ修行不足だったっす!』

『刃!? くっ……! これは一から鍛え直しだな……!』

 

 そしてゴールデンアリエスはマジカルバリアを破壊されて戦闘不能になり、砂漠の上へと墜落した。

 

 それを見たMCのステラがバトルの決着を宣言した。

 

『決まったー☆ 勝者はミライトウキョウ校の一位で生徒会長の三年生の白金輝君とヴィーナスちゃんのノーブルヴィーナスだー☆ 流石は優勝候補の高校生チャンピオンバディ☆ サンスイミヤギ校の一位を難なく蹴散らしたぞー☆』

「輝先輩たちはヴィーナスノーブルゲートを囮に、牡羊尾先輩たちが切り札を切る様に誘導していた……。 切り札の効果が切れた一番の隙を作り出す為に……」

「ええ。 そしてその瞬間を狙って一気に勝負を決めた……。 お見事だったわ……」

 

 焔たちは今の試合をそう分析すると、今度は輝たちの五回戦の録画へと映像を切り替えた。

 

『——さあ、全国大会高校生の部の五回戦☆ 続いての試合は、現在の高校生チャンピオンバディで、ミライトウキョウ校の一位で生徒会長の三年生の白金輝君とヴィーナスちゃん☆ そして、オヤシロシマネ校の一位で二年生の射手日大和(いてびやまと)君とサジタリウスちゃんのバトルだよ☆ 学園リーグランキングの一位同士のバトルは果たしてどちらが勝つのか☆ それじゃあ皆お待ち兼ね☆ バトルスタートだよ☆』

 

 映像に映っている『火山』のバトルフィールドでは、またまたバトル開始早々に、ノーブルヴィーナスが大和とサジタリウスのクニツサジタリウスとぶつかり合っていた。

 

『ヴィーナス! 射手日(いてひ)君たちも強敵だ! だから今回も最初から全力で行くよ!』

『はい、同意です、マスター……!』

『『——シンクロゾーン!』』

 

 輝たちは再び初手からシンクロゾーンを発動させた。

 

『『マジカルスキル! ヴィーナスフォーリンエンジェル!』』

 

 続けてヴィーナスフォーリンエンジェルも発動させ、神速の如き速さを獲得した。

 

 するとそんなノーブルヴィーナスへと、クニツサジタリウスは四脚構造を生かした機体の背面に装備した合計八機の巨大な大型の銃にクニツマルチキャノンから、大出力のビームと拡散型のビームを一斉に放った。

 

『オラオラ! 今年こそは白金先輩たちにリベンジして見せるんだぜ!』

『大和兄様の去年の雪辱は(せつ)が果たします』

 

 するとノーブルヴィーナスは神速の如き速さでそのビームの雨を回避しながら、ドローン武器を展開させた。

 

『『マジカルスキル! ヴィーナスバスター!』』

 

 ノーブルヴィーナスはそのまま、ヴィーナスバスターを発射した。

 しかし……。

 

『撃ち合いなら俺たち兄妹の得意分野だぜ! サジタリウス!』

『はい、大和兄様。 (せつ)の力を大和兄様に』

『『マジカルスキル! サジタリウスファイア!』』

 

 それに対し、クニツサジタリウスは両手の大型のクロスボウのクニツマルチクロスボウから炎を纏った巨大なビームを発射し、ヴィーナスバスターを真正面から打ち破った。

 まるで今も尚噴火している火山に負けないくらいの凄いパワーだ。

 

『白金先輩たちのスピードは本気(まじ)で凄え! だったら、そのスピードを持ってしても避けられない攻撃を浴びせてやるぜ! 行くぜ、サジタリウス!』

『はい、大和兄様。 (せつ)と大和兄様の前に立ち塞がる者たちは、全て殲滅します』

『『マジカルスキル! サジタリウスクニツインフィニティ!』』

 

 クニツサジタリウスはクニツマルチクロスボウとクニツマルチキャノンを構えると、合計十問の火器から枝分かれしてどこまでも増えていく超火力のビームを一斉に放った。

 

 まるで八百万(やおよろず)の神の如く、無限に分裂してバトルフィールドを覆い尽くしていくビームの雨を前に、ノーブルヴィーナスは思わず足を止めていた。

 

『これは厄介だね……! だけど、ヴィーナス!』

『はい、マスター……! それならこっちはこうするまでです……!』

『『マジカルスキル! ヴィーナスノーブルゲート!』』

 

 それに対し、ノーブルヴィーナスはヴィーナスノーブルゲートを放った。

 無限と無限がぶつかり合うが……。

 

『無駄だぜ! 数は同じくらいだが……火力に関しては圧倒的にこっちが上だぜ!』

(せつ)と大和兄様の前に平伏しなさい』

 

 サジタリウスクニツインフィニティが、そのままヴィーナスノーブルゲートを吹き飛ばした。

 さらにその余波で中央にある火山を含めた辺り一体の地形を滅茶苦茶にしていた。

 本当に凄いパワーだ。だけど……。

 

『『マジカルスキル! ヴィーナスセイバー!』』

 

 そんなクニツサジタリウスの背後から、ノーブルヴィーナスの光の剣が突き刺さった。

 

『確かに射手日君たちは強かった。 だけど……』

『はい。 まだまだ爪が甘かったですね』

『いつの間に……!? 畜生!!』

『大和兄様!? くっ……!』

 

 そしてクニツサジタリウスはマジカルバリアを破壊されて戦闘不能になり、その場に崩れ落ちた。

 

 それを見たMCのステラがバトルの決着を宣言した。

 

『決まったー☆ 勝者はミライトウキョウ校の一位で生徒会長の三年生の白金輝君とヴィーナスちゃんのノーブルヴィーナスだー☆ 流石は優勝候補の高校生チャンピオンバディ☆ オヤシロシマネ校の一位を難なく蹴散らしたぞー☆』

「輝先輩たちはヴィーナスノーブルゲートをぶつけることで、射手日先輩たちのビームの雨の中に通り道を作って、そのまま一気に背後へと回り込んでいた……」

「例えパワーで負けていても、それをものとしない辺り……本当に凄いわね……」

 

 焔たちは今の試合をそう分析すると、輝たちの強さに改めて戦慄していた。

 だけどそんな輝たちに勝たなければ決勝戦に進めない……美月とサターンとバトルできない。

 だから……!

 

「それでも勝ちに行くよ、マーズ!」

「勿論よ、焔君!」

 

 

*****

 

 

 ——一方その頃。競技場の外にて。

 

 白金代表に保護されることになったオフィウカスは、自分代わりにX(エックス)システムの負荷を引き受けててダメージを負った、半身であるサーペンスの治療の為にも、国の施設へと用意された車で向かっていた。

 そんな中、オフィウカスはレイから貰ったお守りの紙の花を眺めながら、彼女との別れのことを思い出していた。

 

 ——時は一旦、全国大会をこの結果のまま続けることが決まった後にまで遡る……。

 

「——(れい)お姉ちゃん……じゃなくて、オフィウカスちゃん?なんだよね……?」

「……うん、人間に擬態する為の蛇遣異零(へびつかいれい)はあくまでも偽名で、そっちがメカニカルウィッチであるボクの……ワールドユニオンに登録された正式な名前なんだ……。 ……正確に言えば、開発者(黒穴博士)の貰ったO(オー)が本当の名前なんだけど……。 ……あんな人間から貰った名前よりも、ちゃんとしたオフィウカスの名前で呼んで欲しい……」

「うん、分かった! オフィウカスちゃん!」

 

 オフィウカスは競技場を離れる前に、最後にレイと会話を交わしていた。

 

光一(こういち)さん、お願いします……! どうかヴィーナスの妹と弟を、白金家に引き取って貰えませんか? これからはヴィーナスが姉として、あの二人を守りたいんです……!」

「それに、レイならきっと……僕とヴィーナスみたいに、あの二人と相棒になる気がするんです」

 

 そんな中、自分たちと同じく、黒穴博士に開発されたと言う(ブイ)もとい、ヴィーナスとその相棒の輝が白金代表にそう懇願していた。

 

「分かった。 それに私もどの道、特殊な境遇のこの子たちの引き取り手に名乗りを上げるつもりだったからな」

「おじいちゃん、本当!? じゃあオフィウカスちゃんとサーペンス君と家族になれるんだね! それから相棒にも!」

 

 白金代表にの考えを聞いたレイは嬉しそうに飛び回っていた。

 

「そう言う訳でどうかな? まあ、サーペンスの治療もあるし、いろいろと手続きに時間がかかるだろうから、勿論直ぐに決めなくても良いが……是非一度考えてみてくれ」

「ええ。 レイも貴方たちのことを凄く気に入っている様だし……あの子の母である私も大歓迎ですよ?」

「はい……! それに白金家には貴方たちと似た様な境遇の子も沢山いますし……!」

「きっとお互いにいろいろと助け合えると思いますよ?」

 

 そんな中、白金代表とレイの母親の(ひかり)、そして白金家に引き取られたメカニカルウィッチのルミとエールがそう声をかけて来た。

 

「……!」

 

 黒穴博士から教えられるなかった戦闘以外の面での対応に、オフィウカスがしどろもどろな様子になっていると、その手をレイが掴んで来た。

 

「オフィウカスちゃん! 私、待ってるから! だからちょっと間お別れになるけど……さよならは言わないよ! ()()()!」

「……!! ……うん、レイ。 ……()()()

 

 ——そして時は現代に戻り……。

 

「——オフィウカス。 さっき受けた提案はどうする気だ?」

 

 オフィウカスはサーペンスの声で現実へと引き戻された。

 

「……! サーペンス、まだ動いちゃ……!?」

「問題ない。 あの人間に倒す様に命じられていた黒土美月(くろつちみづき)とサターンに逆に助けられたおかげでな……。 それでどうる気だ……?」

「ボクは……」

 

 ——オフィウカスがその答えを口にしようとした……その時だった。

 

 視界の先で爆発が起き、乗っていた車が横転した。

 

「くっ……! ああ……!? あの子から貰った物が……!?」

 

 車から投げ出されたオフィウカスが目を開けると、レイから貰った紙の花が炎上した車の火で燃えてしまっていた。

 それを見たオフィウカスが慌てて火を消そうとすると、黒で統一された何十機もの機体が……ワールドユニオンの特殊部隊が運用する軍用機のユニオンソルジャーA(エース)が現れた。

 

 白金代表が護送の為に手配した人員たちは、JP国が実戦を想定して開発した『ジャスティスポリス』へと乗り込んで、迎撃に移った。

 しかしいくら国が管理している最上位モデルの魔石を搭載していて、バトルフィールドの外でも戦えるとは言え、出力に勝るだけではなく自ら魔力を生み出すことができる魔石X(エックス)を搭載したワールドユニオンの軍用機の前には、完全に押されてしまっていた。

 

 そしてジャスティスポリスを全機撃破し、オフィウカスたちの側にいた人間たちも()()()()()()()()ユニオンソルジャーA(エース)たちは、ユニオンライフルの銃口をこちらに向けて来た。

 

「オフィウカス……!」

「サーペンス……!」

「「——マジカルチェ……」」

『そうはさせん』

「「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!?」」

 

 オフィウカスたちもスーパーメカニカルウィッチになって戦おうとするが、ワールドユニオンが人格システムの中に仕込んでいた()()によってそれを阻止されてしまう。

 ただでさえX(エックス)システムの負荷が抜けきれていない中負ったダメージに、オフィウカスたちは倒れ伏した。

 

『これより回収に移つ……』

『隊長! 本部より緊急通信です! たった今、スタースピリットらしき正体不明機(アンノウン)が現れ、こちらに向かっていると!』

『チッ! 仕方あるまい。 ならば()()()の指示通り、プランBの()()()に移る』

「ーーッ!? オフィウカス……!」

「サーペンス……!?」

 

 オフィウカスがサーペンスに魔法で突き飛ばされた次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「え……?」

『チッ! ()()()()の癖に、人間の様に庇い合うなど反吐が出る。 だが、説明された通り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は確かな様だな……』

「そん……な……!? サーペンス!!」

『次は貴様の番だ』

「ーーッ!?」

(誰か助けて……!)

 

 ——その時だった。

 

 凄まじいスピードで戦場に介入して来た漆黒の機体が、ユニオンソルジャーA(エース)のコックピットを、右手に装備した巨大な槍で串刺しにした。

 そしてそのまま左手の巨大な盾を構え、オフィウカスを庇う様に立ち塞がった。

 

『隊長!? 貴様ッ!! 良くも!』

『隊長の仇……』

**(グル)**********(ァァァァァァァァァァ)()ーー!!』

『何……!? ぐわあッ!?』

 

 すると今度は大空から現れた機械仕掛けの竜が、他のユニオンソルジャーA(エース)たちのコックピットを次々に潰していった。

 辺り一面が火災に包まれる中、漆黒の機体が人間と同じ大きさの姿へと変身し、漆黒の髪に、無機質な赤い瞳をした、大柄の男性が現れた。

 

『……X(エックス)。 たった今、バルカンから連絡が入った。 ワールドユニオン軍最強のセブン・ガーディアンの部隊がこちらに向かっているそうだ。 それまでに済ませろ』

「了解しました」

 

 X(エックス)と呼ばれた男は、機械仕掛けの竜から聞こえて来た女性の声に返答すると、こちらへと手を差し伸べて来た。

 

「改めて、自分の名はX(エックス)。 お前たちと同様に、あの狂人の手によって作られた存在だ」

「……ボクたちと……同じ……?」

「ああ。 それにすまない。 自分が迎えに来るのが遅れたせいで、お前の半身は……」

「ーーッ!?」

 

 オフィウカスは思わず、動かなくなったサーペンスを胸元で抱きしめた。

 サーペンスが死んだと言う事実に、心が引き裂かれる様な悲しみが沸いて来る。サーペンスを殺した人間に、激しい憎悪が沸いて来る。

 

「これがワールドユニオン……いや、人間のやり方だ。 奴らは結局自分たちのことを道具の様に使い捨てる。 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が率いるスタースピリットは、そんな人間たちを滅ぼす為に戦っているのだ。 そんなあの方と、()()()()()()()()()()()()()ならお前の半身を救えるかもしれない……」

「本当に……?」

「ああ。 救われた自分がその証人だ。 だからお前もこの手を取るんだ」

「……!!」

 

 オフィウカスは一瞬迷った後、その手を取った。

 それでサーペンスが救えるなら……サーペンスを殺した人間たちに復讐ができるなら文句は無かった。

 

 するとそんなオフィウカスの耳にあの子の声が聞こえて来た。

 

『——零お姉ちゃん(オフィウカスちゃん)!』

「……!!」

 

 それでも選択肢は変わらなかった。

 

(……ごめん、レイ……。 ()()()()()……)

 

 ——その場から去り行くオフィウカスたちの足元には、燃えて灰になったレイの紙の花がポツンと、残されていた。

 

 

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