——今でも昨日のことの様に思い出せるわ……。 今から二十三年前の四月五日の私の十歳の誕生日の日……
きららの父の
その為きららは、JP国にいる母方の祖母の
「——わあ〜、可愛い熊さんのぬいぐるみだ〜! おばあちゃん! ありがとう!」
「フフッ、きららが喜んでくれて良かったわ」
両親が多忙な身な上に、祖母以外の他の親族を
そしてそんなきららは、幼い頃に祖母から誕生日プレゼントとして貰ったテディベアに北極星の『ポラリス』の名前をつけて、世界で一番の宝物として大切にしていた。
しかしその後、祖母が病気で他界してしまった。
大好きな祖母を亡くしたきららは、
そんな自分の姿を見た両親は、これからは出来るだけ一緒にいる為、そして元気づける為に、きららにある提案をした。
「きらら! 今、明日斗博士と言う稀代の天才が凄い物を開発しようとしているんだ! きららもそれを見てみないか?」
「ええ。 もう直ぐ人工精霊が人類の隣人になれるかもしれないのよ? きららもその瞬間に立ち会ってみない?」
「……?」
きらら自身はよく分かっていなかったが、それでも両親と一緒にワールドユニオンの本拠地にある研究所へと向かうことにした。
そこでは当時、進化した人工知能の様に扱われていた人工精霊の体であるメカニカルウィッチの開発が行われていた。
しかしどうやら最終段階で躓いているらしく、両親は「きららの誕生日なのに忙しくてごめん!」と謝りながら、仕事に行ってしまった。
その為きららは少し不貞腐れる様に研究所内を一人で歩いて回った。
しかし……。
「うぅ……ぐずっ……」
あまりにも広過ぎるせいで、いつの間にか迷子になってしまい、きららは
すると……。
「——ねえ、どうしたの? 迷子?」
「……!! ポラリスが喋った……!?」
「ごめんね! こっちの方が子供は安心するかなって思ったけど……逆にびっくりさせちゃったね! 私はね……」
すると
どうやらその子はメカニカルウィッチの実験を手伝っている人工精霊だが、研究の進歩が止まっていて暇だったので、抜け出して来たらしい。そしてその際に泣いているきららのことを見つけたらしい。
「私、きらら……。 極星きらら……」
「私は……まあ名前は一応あるんだけど……ワールドユニオンがつけた記号の様なもので可愛くないからな〜。 あ、そうだ……! ねえ、きららちゃん! 良かったら、この子と同じポラリスの名前で呼んでくれないかな?」
「星の名前だけど良いの……?」
「勿論! だって星の名前って、とても素敵じゃん!」
「……!! うん……! ありがとう、
当時はまだWWⅢの原因となった惑星
それでもきららは星が好きな祖母の影響で、寧ろ星が好きだったが、中々周囲の理解が得られずにいた。だけどこの子は……ポラリスはそれに同意してくれた。それがとても嬉しかった。
それからきららとポラリスはいろんなことを話した。初めて会ったばかりだったが、それでもまるで長年ずっと一緒にいた姉妹の様にも見えるくらいに仲良くなった。
しかし……。
『——緊急事態発生。 緊急事態発生』
隣接した他の研究所内にあった機械が暴走したらしく、しかも運悪くきららたちの元へとやって来た。
「ーーッ!? ポラリス……! 貴方だけでも逃げて……!」
「そんなの絶対に嫌だ! 大丈夫だよ、きららちゃん! きららちゃんは私が守るから!」
そんな中、ポラリスは開発途中だったメカニカルウィッチの体に入り込み、その力を使って暴走した機械を止めて見せた。
最終段階で止まっていた研究の進歩を進める最後のトリガーになったのは、人間と人工精霊の絆だった。
そしてそんな事件の後、両親に泣かれる程心配される中、明日斗博士が自分とポラリスの元へとやって来た。
「君が極星博士夫妻の娘のきららちゃんだね? 無事で本当に良かった……。 それから……」
「ポラリス! それがこの子から貰った私の新しい名前だよ!」
「ああ、ポラリス。 本当に良くこの子を守ってくれた。 本当に偉いぞ。 そして君の……いや、君たちの絆のおかげでメカニカルウィッチが……私の長年の夢がようやく完成したんだ。 本当にありがとう」
それから明日斗博士はいろんなことを説明してくれた。
自分たちのおかげで完成したメカニカルウィッチがこれから世に広まることになることを……。そしてワールドユニオンに正式なメカニカルウィッチとして登録される第一号はポラリスになるであろうことを……。
そんな中、明日斗博士は頭を下げて頼み込んで来た。
「きららちゃん。 ポラリス。 人工精霊は今はまだワールドユニオンを中心に道具として扱われているのが現状だ……。 だけどそんな人工精霊を人類の隣人として認識して貰う為にも君たちの力を貸して欲しいんだ……! 君たちの持つ人間と人工精霊の絆を皆に示して欲しいんだ……!」
「勿論です! だってポラリスは私の大事な友達……ううん、それよりももっと深い
「そうだね、きららちゃん! 任せといてよ、明日斗博士! 私たちが人間と人工精霊の絆の道標になるから! ……とは言え、一番の絆は私ときららちゃんが譲らないけどね! その為にも……」
「「——
——こうして私は、私の相棒のポラリスは出会ったの……。 そして後にチャンピオンバディと呼ばれるものになる、人間と人工精霊もとい、メカニカルウィッチによる世界で一番の相棒になろうと約束を交わしたの……。
*****
——それから私たちと明日斗博士の努力の甲斐もあってか、世に広まったメカニカルウィッチの体を手に入れた人工精霊のことを、人類の隣人として……相棒として認識する人たちが増えて来たの……。 そんな中、自分と相棒の絆が世界で一番なんだと証明する為のスポーツ競技……ウィッチバトルが生まれたの……。
ポラリスが以前きららを守る為に戦ったのがキッカケとなり、メカニカルウィッチの戦闘力を引き出す為の武器や防具が開発されることになった。
そしてそんな武器や防具を装備した相棒と一緒に、安全対策が施されたバトルフィールドでバトルするウィッチバトルが誕生し、子供たちを含む若い世代を中心として爆発的な大ブームを起こすことになった。
当然きららもポラリスと一緒にその世界に飛び込み、その才能と努力の甲斐もあって、記念すべき第一回世界大会の出場権を得ることができた。
そして世界大会の会場となったワールドユニオンの本拠地では、いろんな出会いをすることになった。
「イテテ……! 前見てなくてごめんルー……って、極星きららとポラリスルー!?
「ああ。 蘭よりも年下でありながら、我らよりも才があると噂されるお前たちのことは気になっていたのだ」
そんな彼女の相棒である
そんな蘭たちとは世界大会の開会式前に起こったとあるトラブルがキッカケで出会うことになった。
それから予選で即席のチームメイトとして一緒にバトルしたり、本戦の準決勝で本気でバトルしたことで、一歳差ということもあり、後に大親友の間柄になった。
「——フッ、私の名はアーサー・パラディン! そして彼はペガススだ! 初めまして、美しきレディたち!」
「まあ、私とアーサーの輝には敵わないがね!」
「「ハハハハハ……!」」
アーサー・パラディンは、銀の髪を後ろで束ねた、金の瞳を持つ、UK国出身の二歳年上の少年で、イケメンのお兄さんだったが、ちょっとナルシスト気味な残念なイケメンだった。
そんな彼の相棒であるペガススは、銀の髪に、青い瞳をした少年で、こちらも同じく残念なイケメンだった。まあ、その実力は紛れも無く本物だったが……。
「——あのっ……! えっと……わたくし、貴方たちに感銘を受けて……! あ、申し遅れましたわ……! わたくしはアーミラ・サハラーと申しますわ……!」
「「「私たちはアーミラ様の従者兼相棒のアルゴよ!」」」
アーミラ・サハラーはロングヘアーの金の髪に、紫の瞳を持ち、頭部に黄金の髪飾りをつけた、EP国出身の小麦色の肌の二歳年上の少女で、高貴な名家の生まれながら、人工精霊を道具の様に扱う両親を含めた周りの人たちを変えようと頑張っている様だった。
そんな彼女の相棒であるアルゴたちは、金髪に、赤の瞳と青の瞳のオッドアイに加え、おでこに緑の瞳がある少女たちで、どうやら三人の人工精霊が合体した存在らしかった。
「ハロー! アタシはコーラル・パイレーツよ! よろしくね!」
「初めまして、お嬢さん方……。
「な〜に、猫被ってのよ、サザンクロス!」
「おいコラ、コーラル姉ちゃん!!
コーラル・パイレーツはロングヘアの黄緑の髪をポニーテルにした、ピンクの瞳を持つ、AU国出身の三歳年上の少女で、どうやら名高い冒険家らしかった。
そんな彼女の相棒のサザンクロスは黄緑の髪に、青い瞳をした少年で、素はちょっと生意気だけど、なんやかんやツンデレ気味な子供だった。
「おい、お主ら頭が高いぞ? 早う妾に頭を垂れんか?」
「アワワワワ……!? うちのヒュドラーがごめんね……! プライドが高いだけで悪い子じゃ無いんだ……!」
「ええい、リオ・フロレスタ! 何故お主が頭を下げておるのだ!? 妾の臣下兼相棒としてシャキッとせぬか!?」
リオ・フロレスタは黒い髪に、青い瞳を持ち、メガネをかけた、BR国出身の褐色肌の二歳年上の男性で、どうやらメカニカルウィッチの研究者をやっているらしかった。
そんな彼の相棒であるヒュドラーは、黒い髪に、金の瞳をした女性で、その気性難から開発者のリオが面倒を見ているらしかった。
きららたちは予選でそんな皆と時に即席のチームメイトとして、時に対戦相手としてバトルを繰り広げた。
その後、予選を同率一位で通過しきららたちは、百名による本戦のトーナメント戦の二回戦でリオたちと、三回戦でコーラルたちと、四回戦でアーミラたちと、五回戦でアーサーたちと、準決勝で蘭たちと本気のバトルを繰り広げた。ちなみに一回戦はシード権でスキップした。
そして最後の決勝にて、ワールドユニオンの推薦で出て来たセブンとビッグヘアとぶつかることになった。
「極星きらら……まさかお前の様な
「ポラリス共々、お前たちの力は予測不能だ……」
セブン・ガーディアンは色の抜け落ちた白い髪に、血の様な真っ赤な瞳を持つ、US国出身の五歳年上の褐色肌の男性だった。
そんな彼の相棒のビックベアは、黒い髪に、赤い瞳をした少年だった。
そんなセブンたちとは予選の時から奇妙な縁が出来ていたが、それでもメカニカルウィッチとウィッチバトルに対する考え方の違いから、水と油の様に何度もぶつかり合っていた。
そしてそんなセブンたちとの決勝は激戦に次ぐ激戦になったが、それでもきららたちは明日斗博士の頼みと自分たちの約束を胸に、勝利を掴み取った。
『き、決まった〜! 記念すべき第一回世界大会を制したのは、極星きらら選手とポラリスのテディベアポラリスだ〜!
「「——私たちが世界で一番の相棒! チャンピオンバディよ!」」
——セブンさんたちは結局、それを最後にワールドユニオン軍に入ってウィッチバトルを辞めちゃったけど……それでも蘭ちゃんたちを始めとした他の皆とは、それからもプロリーグの選手同士として、何度も世界大会の場でバトルしたわ……。 それから私たちは四度、蘭ちゃんたちは二度、そして他の皆は一度ずつチャンピオンバディの称号を手にしたの……。
*****
——そして蘭ちゃんたちと一緒にワールドランキングのトップ十の常連となった私たちは、これからも初代チャンピオンバディとして、人間と
その日、きららたちはJP国に建てられたメカニカルウィッチ研究所の式典に、国内ランキング並びにワールドランキングの一位兼初代チャピオンバディとして招待されることになった。
(——あれ……? あの人たちはもしかして……)
そんなメカニカルウィッチ研究所の前で、きららたちは親交のあった明日斗博士の家族の
(フフッ、JP国にもメカニカルウィッチ研究所が出来て……メカニカルウィッチもウィッチバトルもこれから進化を遂げるとお父さんとお母さん、それから明日斗博士もう言っていたし……未来が楽しみね)
きららはそんなことを考えながら、未来に想いを馳せていた。
しかし……。
「——うぅ……」
「きららちゃん!? きららちゃん!?」
その後、ポラリスと出会った日の時の様に、研究所内を歩いて回っていたきららたちは突然起きた謎の爆発に巻き込まれた。
「……ポラ……リス……痛ッ……!? あ、足が……!?」
気を失って倒れていたきららが目を覚ますと、足に激痛が走った。朧げな意識で自分の足元に目を向けると、両脚が瓦礫に押し潰され、血塗れになっていた。
「きららちゃん、気をしっかり持って!! 大丈夫、私が直ぐに助けるから!!」
ポラリスは魔法で必死に、きららの救出と手当を行っていた。
そんな中、きららが周囲へと目を向けると、この国の未来を担う筈だった場所は、赤い炎が燃え盛る地獄へと変わっており、同じく巻き込まれた人たちの助けを求める声が聞こえて来た。
だけどそれだけじゃなかった。
ズシン、ズシン、と言う足音と共に、人間を遥かに超える大きさの巨大なロボットが……話に聞いていた進化したメカニカルウィッチであるスーパーメカニカルウィッチが現れた。
「ヒッ……!?」
その姿を目にしたきららは思わず悲鳴を上げた。
焼き焦げた火の粉によって真っ黒に染まった機体に、不気味なまでに赤く光酷く無機質な瞳。まさに感情の欠片もない
きららは確信した。この機体がこの地獄を作り出した犯人だと。
以前、
しかし今度は目の前のスーパーメカニカルウィッチがこの地獄を作り出し、多くの命を奪おうとしていた。
さらに……。
「ーーッ!?」
スーパーメカニカルウィッチは周りの被害など考えずに研究所内を突き進んだ。
そしてその先には怪我で気を失っている母親らしき女性と、泣き叫ぶ幼い子供の兄妹がいた。
このままでは……!?
「ダメッ……!?」
きららは必死に叫びながら手を伸ばした。
しかし足が潰れて動くことができないきららにはどうすることもできず……視界の先にいた女性と子供たちが、
燃え盛る赤い炎に負けないくらいに真っ赤な血が飛び散った。
スーパーメカニカルウィッチが人間を殺す瞬間を目撃してしまったきららは、発狂した声で泣き叫んだ。
「——嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!?」
その後、きららは気づけば病院のベット上にいた。
「——うぅ……」
「——きららちゃん!? 良かった……! 目が覚めて……!」
「……ポラ……リス……?」
「ごめんね、きららちゃん……! 私、きららちゃんを助けるのに精一杯で、他の皆を助けることができなかった……! それに、きららちゃんの足も……!」
「あ……」
きららは何とか一命を取り留めたものの、世間では
それからリハビリを兼ねた入院生活をする中、きららは先の事件で百名もの死傷者が出たことを知って、思わず息を呑んだ。
例のスーパーメカニカルウィッチがそれ程の人間が死ぬ原因を作ったことにきららがショックを受ける中、世界ではメカニカルウィッチをそんなスーパーメカニカルウィッチへと進化させる技術が普及し始めていた。
そしてそれに伴い、プロリーグと世界大会の場もウィッチバトルからスーパウィッチバトルへと移り変わることになった。
しかし……。
「ヒッ……!? 嫌あッ……!?」
「きららちゃん!? 大丈夫だから、落ち着いて……!」
スーパーメカニカルウィッチが人間を殺す場面を目撃してトラウマを負ったきららは、スーパーウィッチバトルに拒絶反応を起こしてしまった。
大好きなメカニカルウィッチとウィッチバトルはまだ何とか大丈夫だったが、スーパーメカニカルウィッチとスーパーウィッチバトルだけはどうしてもダメだった。見るだけであの時のトラウマを思い出してしまうから……。
だからきららは車椅子生活になったのを言い訳に使って、プロリーグの場から引退した。逃げ出した。
初代チャンピオンバディが引退表明を出したことを知った、蘭たちを含めた周りは、必死にきららたちを止めようとした。凄く心配していた。
だけどきららの決断はそれでも変わらなかった。
——私はメカニカルウィッチが……ウィッチバトルが大好きだった……。 十年前の事件の後……それすらも嫌いになりかけたけど……それでもポラリスを始めとした皆のおかげでそれだけはどうにか失くさずに済んだの……。 だけど……スーパーメカニカルウィッチとスーパーウィッチバトルだけはどうしてもダメだった……。 どうしても