(——まさか、きららさんたちも十年前の事件に巻き込まれていたなんて……。 だからきららさんはスーパーメカニカルウィッチとスーパーウィッチバトルを嫌って……いえ、恐れているんですね……)
きららとポラリスの過去を聞いた美月は、思わず言葉を失ってしまっていた。
自分の場合は十年前の事件の際に、一度命を落として精霊として蘇った為、直接襲って来た
だけどきららの場合はそうじゃなかった。人間の身な上に、自身と同じ人間をスーパーメカニカルウィッチが殺す場面を目撃してしまった。
きららもきっと裏では人間が……ワールドユニオンが糸を引いていたのだろうと頭では分かっているらしいが、それでもどうしてもトラウマが消えなかったらしい。
美月は恩人であり憧れの人でもあるきららの抱える苦しみをどうにかしたかったが、良い感じの方法が思いつかなかった。
そんな中、運営からミニ大会が終わった後に、子供たち相手にウィッチバトル教室の様なものを開いて欲しいと頼まれ、了承していたきららとポラリスに着いていく形で、美月とサターンとリンも休憩スペースを後にすることにした。
そして先程きららたちとバトルした、ウィッチバトル用のスタジアムが置かれている場所へと戻って来ると……。
「——あ! 美月ちゃん、発見です!」
『まあ〜、美月さんたちがきららさんたちとバトルしていると、凄い噂になっていたからね。 ぐぬぬ……! 見れなかったのが残念だ!』
何と御影とカロンに加え、咲良とキャンサー、王牙とレオ、秀次とスコーピオ、歌とピスケス、雷牙とイーグル、音牙とオルカが来ていた。何故か御霊は空中に映し出されたモニターの向こうにいるが……。
『すみません……御霊は極度の人見知りの為、お祭り会場に行くのは厳しくて……ホテルの部屋から画面越しに失礼します』
「だから気にしないでね〜」
そんな中、画面の向こうにいるプルートと、この場にいるカロンが息ぴったりにそう説明して来た。
ええ??ま、まあ……御霊は御影とお揃いの彼岸花の浴衣を着てるし、気分だけでもと言うやつだろうか?
すると桜の浴衣を着た咲良とキャンサーが口を開いた。
「美月が取り敢えず大丈夫そうで良かったわ。 輝たちから話を聞いて、心配だから代わりに様子を見に来たの」
「流石に
「ふえっ……!?」
まさか輝と焔から告白されたことを、咲良たちにも知られるなんて……美月は恥ずかしさから顔を赤くした。
そんな中、椿の浴衣を着た歌が興奮気味な様子できららたちの元へと駆け寄った。
「あ、あのっ……!! きららさん!! ポラリスさん!! 私、凄い魔法使いであるきららさんたちの大ファンなんです!! 後でサインを貰えませんか!!」
「う、歌!? 気持ちは分かるけど落ち着きなさい!?」
魔法絡みと言うことでテンションがぶっ壊れた歌をピスケスが必死に宥める中、王牙とレオもきららたちの元へと駆け寄った。
「俺様もだ……です! 引退した今も尚、世界最強と名高いきららさんたちの大ファンなんだ……です!」
「王牙の言う通りなのであーる! 吾輩たちの目標の一つなのであーる!」
「フフッ、皆ありがとう。 もう引退したのに、今だに私たちのファンでいてくれて嬉しいわ」
「本当にありがとねー!」
そんな皆に対し、きららたちは優しく微笑みながら対応していた。
そしてそれに釣られる様に周りの子供たちも、きららたちの元へと次々に集まって来た。流石は初代チャンピオンバディ。今の二大チャンピオンバディの麗とウラノス、それからネオンとネプチューンに負けないくらいの人気だ。
美月がそんな風に考えていると、咲良が改めて話しかけて来た。
「……それにしても、この場所はウィッチバトルができるみたいね。 ねえ、美月、サターン、一つお願いがあるんだけど……」
「お願いですの……?」
「何だ……?」
「もし良かったらなんだけど……今この場であたしたちと本気のバトルをしてくれないかしら?」
咲良はそう口にすると、側にいた秀次の肩をバンバンっと叩いた。
「昨日は直ぐじゃなくて良いと言ったところ悪いけど……秀次がアタシたちの準決勝戦を邪魔したことを今だに気にしているらしくてね……」
「それは……だってお嬢には本当に申し訳ないんっすもん……」
「本当にすまなかった……」
秀次とスコーピオは改めて申し訳なさそうにしていた。
ちなみに、秀次たちワールドユニオンが起こした事件に関与した面々は、他の者と一緒に行動するなら、こうして夏祭りに来ることが許可されていた。
「……と言う訳で、秀次たちの気分を晴らす為にもお願いできないかしら……?」
「ええっと……私は良いのですが……」
美月はそう言ってきららの方をチラッと見た。
するときららは、美月が先程聞いた話を気にしているのに気づいたらしく、優しく微笑みかけて来た。
「美月ちゃん、私のことは気にしなくて良いわ。 寧ろ私は、美月ちゃんにはウィッチバトルが好きだと言う気持ちを大切にして欲しいの……。 だから美月ちゃんたちが楽しそうにバトルする姿を見せてくれる?」
「……!! はい……! 分かりました……わ……! 咲良先輩! その勝負お受けいたしますわ!」
*****
きららたちを始めとした観客たちに見つめられる中、『遊園地』のバトルフィールドにアークサターンとオーガキャンサーが降り立った。
『遊園地』のバトルフィールドは、その名の通り、観覧車やジェットコースター、それからメリーゴーランドやコーヒーカップ、そしてお化け屋敷と言った建物が建てられており、その性質上、特に子供たちからは大人気のステージで、焔とマーズの五回戦のバトルした時もこれだった。
「……と言う訳で、先程と同様、この私めがバトルの進行を務めさせて頂きます。 それでは、バトルスタート」
先程のきららたちとのバトルの時にも、バトルの進行を引き受けてくれたリンが、バトルの開始を宣言した。
「美月! サターン! 悪いけど、最初から全力で行かせてもらうわ! 行くわよ、キャンサー!」
「承知したでござる、咲良! 拙者たちの新たなる力を見せるでござる!」
「「——シンクロゾーン!」」
咲良たちは開幕からシンクロゾーンを発動させて来た。
(いつの間に習得を……!? いや、今は……!)
美月はあまりの驚きに少し面を喰らったが、それでも対処する為に、直ぐに目を閉じてお守りのペンダントを両手で握りしめ、勇気のお呪いを重ねがけした。
「——頑張れ、私! 頑張りなさい、わたくし!」
そして相棒であるサターンへと呼びかけた。
「サターン! こっちも最初から全力で行きますわよ!」
「はい、お嬢様! 咲良たちに勝って、スッキリと明日の決勝戦を迎えましょう!」
「「——シンクロゾーン!」」
シンクロ率が百パーセントのその先へと至ったことで、人間である美月の
文字通り二人で一つの存在となり、一心同体、人機一体となる。
そして遊園地のエントランス付近にあるメリーゴーランドの前で対峙しているアークサターンとオーガキャンサーが動き出した。
「「マジカルスキル!
そんな中、先手を取ったのは咲良たちだった。
両手で鬼の太刀を構えたオーガキャンサーが、刀と足裏に炎を纏わせ、突きを放つように突っ込んで来る。早い……!
「「マジカルスキル! サターンスラッシュ!」」
それに対し、アークサターンは即座に左腕のアークシールドに収納されていたアークソードを展開すると、紫色の魔力の斬撃を放つことで迎撃しようとした。
しかし……。
「「
オーガキャンサーは二刀流になって袈裟斬りを、それからバックパックのサブアームを使って三刀流になって逆袈裟斬りを、そして四刀流になって一文字斬りを放つことで、サターンスラッシュを突破して来た。
「「
「くっ……!?」
「しまった……!?」
そして接近したオーガキャンサーは伍刀流になって真っ向切りを放ち、アークサターンのアーク
やっぱり早い……!シンクロゾーンも相まって、自分のこの一手先の未来が見える目でも動きが追いきれない……!
今の咲良たちは誇張抜きで、あの高校生チャンピオンバディの輝とヴィーナスに匹敵するくらいに強くなっていた。
だけど……!
「それならこれでどうですの!」
アークサターンはフリーになった右腕のアークガントレットをかぎ爪の様に展開して殴りかかった。
オーガキャンサーには咄嗟に回避されたが、問題ない。これはあくまでも囮だ。
本命のアークテールを意識外からオーガキャンサーの足元に引っ掛け、そのバランスを乱した。
「しまっ……!?」
「隙ありですわ! サターン!」
「了解です、お嬢様!」
「「マジカルスキル! サターンアークブレイク!」」
アークサターンは即座にアークソードとアークシールドを合体させてアーク
「キャンサー!」
「分かっているでござる!」
「「
それに対し、オーガキャンサーは六刀流になり突き、袈裟斬り、逆袈裟斬り、一文字斬り、真っ向斬りを同時に繰り出し、アスタリスクのマークを描く様に斬撃を放つことで、ゼロ距離から放たれたサターンアークブレイクを少しでも軽減しようとした。
「くっ……!?」
「咲良!?」
しかし流石に耐えきれなかった様で、遠くにあるお化け屋敷の方へと吹っ飛ばされた。
チャンスだ……!
「サターン!」
「はい、お嬢様! このまま一気に行きますよ!」
「「マジカルスキル! プラネットファイア! そして、マジカルスキル! プラネットダーク!」」
アークサターンは背中に炎の光輪を発生させて、一気にオーガキャンサーに追撃をかけた。
さらに同時に機体の全身に黒い炎を纏わせ、魔王システムを擬似的に発動させる。
胸部の装甲の一部が展開し、内部にあった魔石が剥き出しになり、さらに背中のアーク
そして道中にあるコーヒーカップの近くに落ちていたアーク
すると……。
「「
オーガキャンサーがお化け屋敷の中から飛び出して来た。
腰部のサブアームで鬼ノ太刀を装備して七刀流になると、圧倒的なスピードでビームの雨を回避しながら切り掛かって来た。
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」」
「くっ……! やっぱり咲良先輩たちの方が、近距離戦闘の腕前は上手ですわね!」
「本当に……咲良たちは強くなったよ」
お互いに近距離戦闘が得意な機体だったが、それでもオーガキャンサーがアークサターンを押していた。
流石、生前の兄とサンに負けてからずっと近距離戦闘に特化したバトルスタイルを磨き続けて来ただけのことはある……。
その当事者であるサターンは感嘆気に呟いていたが、美月としては流石にちょっと不味かった。
「サターン! 一旦、距離を取りますわよ!」
「それしかありませんね!」
「「マジカルスキル! プラネットツリー!」」
アークサターンは足元から巨大な木の根を伸ばして、オーガキャンサーの目の前に自然の盾を作り出した。
そしてその隙にプラネットファイアで一気に飛び立ち、遠方にある観覧車の頂上へと移動した。
「逃がさないわ!」
しかしオーガキャンサーは道中にあるジェットコースターを足場にしながら、追いかけて来た。
「「マジカルスキル! プラネットウォーター!」」
それを見たアークサターンは周囲に展開した水を次々にいろんな武器へと変化させ、それを飛ばすことで迎撃した。
しかし……。
「「
それに対し、オーガキャンサーは八刀流になり、その場で連続斬りを行うことで、プラネットウォーターを防御した。
「くっ……! やりますわね……! ですが……!」
美月はアークサターンに、アーク
「わたくしの一番得意なこの
「はい、お嬢様! 近距離戦闘と遠距離戦闘のどちらにも強いのが、僕たちのバトルスタイルですから!」
「「マジカルスキル! サターンバースト!」」
アークサターンはアークステッキの先端に魔法陣を発生させ、闇の力を持った巨大なビームを放った。
「「
それに対し、オーガキャンサーは脚部のサブアームを展開して九刀流になり、一本の刀として扱う様なシンクロした動きで、ビームを薙ぎ払った。
しかし流石に受け流しきれずにダメージを負い、その場で足を止めてしまっていた。
そして観覧車の頂上にいるアークサターンと、ジェットコースターの頂上にいるオーガキャンサーが改めて睨み合った。
「咲良先輩たちは本当にお強いですわ!」
「ああ! 本当にな……!」
「そう言う美月たちもね!」
「誠に天晴れでござる!」
両者は互いを褒め合いながらも改めて武器を構えた。
「美月! サターン! 決勝戦前夜で悪いけど……このバトルはアタシたちが勝たせてもらうわ!」
「いいえ、勝つのはわたくしたちですわ! それに勝負はまだまだこれからですわ!」
「フフッ、そう来なくっちゃ……! さあ、行くわよ、キャンサー!」
「合点承知でござる、咲良!」
「「
オーガキャンサーは十刀流になり、刀と足裏に炎を纏わせると、壱式から玖式までの技を次々に繰り出しながら動き出した。
だけどこっちだって……!
「サターン! こっちも合体マジカルスキルで行きますわよ!」
「はい、お嬢様! ギアを上げていきますよ!」
「「合体マジカルスキル! ……!」」
*****
「——ふぅ〜、楽しかった!」
「誠に最高のバトルだったでござる!」
バトルの後、咲良たちは全力を出し切ったと言う表情で腕を伸ばしていた。
先程のバトルの結果は……ご想像にお任せしておこう。
そして伸びを終えた咲良たちは、改めて美月たちの方を見て来た。
「美月! サターン! このアタシたち相手にあんなに凄いバトルができるんだから、明日の決勝戦は絶対に勝ちなさいよ!」
「期待しているでござるよ!」
「はい、咲良先輩! キャンサー! ありがとうございますわ!」
「ああ! 明日の決勝戦で僕とお嬢様が高校生チャンピオンバディになるところを見ていてくれ!」
咲良たちの激励を受け取ったことで、美月たちもこの上ないくらいにやる気が満ち溢れていた。
焔と輝からの告白イベントと言う衝撃はあったものの、恩人で憧れの人たちでもあるきららたちと再開できたし、こうして咲良たちと最高のバトルができたことから、有意義な決勝戦前夜になったと言えるだろう。
するとこの全国大会で知り合った面々が噂を聞きつけたのかこの場にやって来た。
夏凛と千秋とジェミニたち、心とヴァルゴ、菜々とアクエリアス、天魔とカプリコーン、闘子とトーラス、正義とリブラ、刃とアリエス、大和とサジタリウス。
ワールドユニオンが起こした事件などでいろいろあったものの、いろんな出会いや発見があったこの全国大会に参加して本当に良かった。
だけどそんな全国大会も泣いても笑っても明日の決勝戦で最後になる。それが少し寂しかった。
……とは言え今日は楽しい夏祭りと言うことあり、美月はこのまま皆と一緒に出店や屋台を回ることにした。
一緒にこの夏祭りに来た焔たちと輝たちには、心が落ち着いたら戻ると言ったが、やっぱり申し訳ないがこのまま後一晩程時間を頂きたかった。後で合流できそうにないと連絡しておかないと……。
それから美月は皆と一緒に、金魚掬いや射的、輪投げやかたぬき、そしてヨーヨー釣りやくじ引きなどの出店を回った。
そしてわたあめ、りんご飴、チョコバナナ、ラムネ、かき氷、たこ焼き、焼きそば、焼きとうもろこし、イカ焼き、ベビーカステラ、クレープ、アメリカンドッグ、串焼きなどいろんな物を勝って皆でシェアする形で食べた。
とても楽しかった。とても美味しかった。とても幸せだった。
*****
——一方その頃。
「——何故じゃ、美月……。 相棒である妾が側にいないと言うのに……どうしてバトルをしているのじゃ……。 何でそんなに楽しそうなのじゃ……。 何で笑えるのじゃ……」
人気の無い神社の屋根の上にいたムーンは、楽しそうに笑う美月を見て、悲しそうな声を溢していた。
十年前の事件が起きる前、まだ幼い美月と陽太、それから乃亜、そしてサンとクリサリスと一緒に夏祭りに行った時のことをふと思い出した。
だけど今はもう、陽太の人格と記憶を受け継いだサターンと、死後呪いとなりアークサターンの核になった陽太以外は、自分も含めて誰も美月の側にはいられなくなってしまった。
その残酷な現実をムーンが噛み締めていると、サンがやって来た。
「……何じゃ、サン? 別にただ、こうして美月のことを見ているだけじゃ……。 安心せい……
「いいや……」
ムーンが不貞腐れながらそう言うと、サンは静かに首を振った。
「……以前の我は……陽太たちがもう既に……我らと同じ存在になっているから大丈夫だと高を括っていた……。 しかし……こうして陽太たちが、相棒である我抜きで楽しそうに笑っているのを見て……腑が煮え繰り返そうになった……。 ようやくムーンの気持ちが理解できた……」
「そうか……」
静かにそう口にするサンの赤い瞳は、ぐちゃぐちゃに濁っていた。まあ、自分も人のことは言えないが……。
そんな二人は改めてかつての自分たちの相棒であった美月と陽太たちを見ながら、その口をゆっくりと開いた。
「……じゃが、もう直ぐじゃ……。 明日の決勝戦が終わり、あの方の……ビッグバン様の『精霊計画』が始まれば、ようやく美月を再びこの手で迎えに行くことができる……」
「ああ……。 そしてスーパーノヴァ様の願い通り、陽太たち
「そうじゃな……。 スーパーノヴァ様の言う通り、
するとスーパーノヴァの名を口にしたムーンとサンの体が、ドス黒く禍々しい魔力に包まれた。
二人は黒いオーラに苦しみ、ヨロヨロとふらつきながらも、それでも美月と陽太たちに向かって、その手を伸ばした。
「——美月……! 妾がもう直ぐお主を……!」
「——陽太……! 我がもう直ぐ汝らを……!」
「「——こんな世界から死なせ、解放して、救って見せる……!」」