パ リ ピ 時 臣   作:融合好き

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トッキーがこんだけ動き回るZeroとかあんま無さそう


星はすばる:B

 

 

 

致信は正しき報いを受けました。

 

如何なる理由があろうとも、彼は罪なき民に刃を向けた悪逆人。

 

──その身の変生など、言い訳になりませぬ。

 

 

 

…………………

 

……………

 

………

 

 

 

 

「おっはようオジサマ! 今日も張り切って行こう!!」

 

もはや何もかも忘れたい波乱の聖杯戦争が開幕して2日目。いっそ全てが夢であったら良かったのだが、今日も朝から悪夢が全力で迫ってくる。

 

日夜ちまちまと宝石に魔力を込めている都合上、普段から低血圧気味で朝に弱い私にとって、地味ながらその叫びは頭に響きとても辛い。いっそ令呪で黙らせてしまおうか、などと愚かな選択肢が飛び出そうなほどに。

 

「それにしても、いやー綺礼さんちのアサシンさんが凄いったらなんの。昨日暇だったからオールでお話ししてたんだけど、なんと80人に分裂できるんだって!

80ですよ80。一人で宮中の管理とか出来んじゃん! ウチらが毎日必死にあれこれ声を上げてようやく回っていた定子様の世話役も、あの人はなんと単独で全部やっちまうんだぜ!!」

「……ああ、そうか……」

 

言葉の洪水。流星の如き単語の数々。もはや会話を合わせる気力もなく、ただただ全てを受け流す。

 

何を勝手に綺礼と接触しているんだ、とか言いたいことは色々あったが、下手に突っつけば蛇が出てくる程度では済まないだろう。たった一日にして彼女の人格が分かって来たのは良い事なのか悪い事なのか。

 

「しっかし綺礼チャン、なかなか難儀なヒトだねぃ──オジサマもしっかり見といた方が良いよ?」

「……綺礼が?」

 

難儀? 綺礼が?

 

まあ確かに普段から真面目過ぎるというか、奥方を亡くしてからは極端に主張が減ったようにも思えるが、如何に魔術師といえど伴侶を失ったショックは計り知れないだろう。その手の執着が薄い私とて葵を失えば多少は感情が揺らぐだろうし、尊厳を辱めるような真似をされたら激昂もする。

 

綺礼の実父である璃正氏曰く、彼とその伴侶はとても仲睦まじい様子だったそうだし、彼女の病死も避けられない運命だった。となれば、こればっかりは時間が解決することを祈る他ないだろう。

 

「そーいうことじゃないんだけどねぇ……まあいっか。オジサマはそういうの向いてなさそうだし」

 

少し気になったが、それきりアーチャーはその話題を出すこともなく、昨日購入した地域の土産を摘みながら「うまっ何これ食文化進化し過ぎだろ!!」などと大袈裟なリアクションを取っている。書斎でつまみ食いをするんじゃない。ではなく、

 

「ああそうそう。今日もちょい出かけるつもりだから、いい?」

 

駄目だと言っても行くのだろうと、既に彼女の行動パターンも把握して来た私だった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

「あれま。ライダーのおっちゃんじゃん」

「おお! 其処にいるのはキラキラの娘っ子ではないか!!」

 

どう考えても単に奇遇とは思えないしっかりとした足取りで、この広い商店街からピンポイントでライダーを捕捉したアーチャーが言う。

 

やけに急ぐと思っていたら、目的はまさか彼だったのか。というかライダーもライダーでどうして呑気に買い物なんかしているんだ。こいつらは本当に戦争をやってる自覚があるのか?

 

「………」

「………」

 

ふと、そこでたまたまライダーのマスターだろう少年と目が合う。──魂で理解した。彼は間違いなく私の“同士”であると。これまでその手の迷信などはまるで信じていなかったが、いざ自らが遭遇するとあっさり考えを改めるとは、つくづく私も視野が狭い男だ。

 

「お、お前はアーチャー……でいいのか?」

 

そこからいつまでもライダーと歓談するアーチャーに、いよいよ待ち切れなくなったマスターの少年が問い掛ける。まるでサーヴァントであることをすら疑うような発言だが、その気持ちは非常によく分かる。

 

対する我がサーヴァントと言えば、キョトンとした表情で出来れば否定してほしい言葉を至極あっさりと告げる。

 

「そだよ。っていっけね。こんなことしてる場合じゃないんだった。ライダーのおっちゃん、ちょっと今から時間貰える?」

「むう?」

 

(彼女にしては)いつになく真面目な表情で切り出す。存在からして冗談にしか思えない彼女であるが、そんな彼女がこれほど真剣に切り出すのは只事ではないことは分かる。

 

覇王であるライダーも同様の思考に至ったのだろう。彼はアーチャーの表情を改めて、既に半ば了承したように「何があった?」とだけ聞き、

 

「ちょっちここいらで()()()をしてる困ったちゃんがいる。あたしはそれが、どうしても許せない」

 

笑った顔で。笑わない目で。有無を言わさぬ迫力を伴いアーチャーは語る。そして、続く内容は予想していたそれ以上に最悪なもので──戦時中であるにも関わらず、相分かったと快く了承してくれたライダーの態度こそが、この事態の深刻さと、それを行う()()()()()()の異常性を存分に示していた。

 

 

…………………

 

……………

 

………

 

 

 

「キャスターのマスターが連続殺人犯だって……!?」

 

ひたひたと嫌な空気が舞う下水道の点検通路で、ウェイバー氏の押し殺した叫びが耳まで届く。

 

連続殺人犯、雨生龍之介。少し前からこの街で話題になっていた人物であるが、まさか聖杯にそのような人物が選ばれるとは思わなかった。とはいえ、考えてみれば道理に叶っているとも言える。聖杯に選ばれる人物とは、強い願い、あるいは渇望を持つ人物。如何に理由が低俗であろうと、実際に殺人を犯すほどの衝動を持っているのなら、この街の誰よりも強い渇望を抱いていても不思議ではない。

 

しかし、心情的には納得出来ようはずもない。崇高なる聖杯を、そのように下賤な人物がそのお零れに預かろうなどと甚だ不快極まりない。何よりも気に障るのは、そんな彼が参加資格を得ていることで、偉大なる魔術のイメージが、神秘性が損なわれてしまうことにある。この際私の心情はともかくとして、魔術師としてその存在を許すわけにはいかない。

 

「うぉっ……」

「これは──」

 

たびたび天井から垂れる水滴が服を汚すことすら気にならぬほど、通路の先の光景は常軌を逸していた。

 

所狭しと並べられた()()。一目でわかる異常性。こんな下水道の先に生活空間が存在することに、ではない。その家具の材料が明らかに人間であることだ。

 

「こんな、これは、行方不明だっていう……」

「………」

 

少年も、私も、流石のアーチャーも、略奪などの残虐な行為に慣れているだろう覇王ですら眉を顰める光景。許してはならない。存在してはならない。意見が一致した瞬間。敵同士ではあっても、この場では紛れもなく我々の目的は同じだった。

 

「……。……待とう」

「え?」

「待つんだ。堪えて、我慢して。奴らがうっきうきでここに帰って来る時まで。

見なよ、アレを。もう助からないけどさ──あの子、()()()()なんだ。

犯罪者は必ず現場に戻ってくる……だっけ? とにかく、逃げられることが何よりも最悪なんだ。だから、待とう」

「………うむ」

 

険しい顔で、押し殺した声で。有無を言わさぬ迫力に、覇王でさえ粛々と従う。

 

彼女が指し示した作業台の先は、もはや改めて確認するまでもない。この場に犯人が居ないのは、おそらくは()()の調達に向かっているのか。不幸中の幸いか、彼にとっては都合の良い加工方法(まじゅつ)を手にしたおかげで、連れて来た被害者が既に犠牲になっている可能性は低いだろう。

 

だから、待つのだ。この家を檻に変えて。害虫が二度と世へ蔓延ることが無いように。

 

 

 

 

…………………

 

……………

 

………

 

 

 

「おのれぇぇ……!!!」

 

ずしゃん、とキャスターが消滅した後の床をアーチャーが足蹴にする。何の意味もない行為であるが、多少は溜飲も下がるだろうか。

 

予想通り──いや想像の何百倍も低俗で悪辣で下賤な存在だった。もはや同じヒトであったことすら認めたくもない。記憶に止める価値すらない。害なだけだ。

 

「……終わったか」

 

七人のうち一人が減ったというのに、ライダーの表情は浮かないものだった。無理もない。ウェイバー少年も酷いものだ。私もきっと、到底鏡では見られない顔をしていることだろう。

 

戦闘にすらならなかった。いや、そんなことすら思い返したくもない。無様で、卑劣で、ただただ不愉快な毒虫の駆除が行われた。それだけだ。ここには何もなかった。この場には誰もいなかった。街を汚す害虫が、隅をコソコソ這い回っていただけだ。

 

「……じゃー、解散ね。今日はあんがと」

「……ああ」

 

最後の言葉も、アーチャーの口から出たものとは信じられないくらい淡白なものだった。あれだけ豪快であったライダーも物静かで、しかしそれに違和感は覚えない。

 

覇王であれ、歌人であれ、魔術師であれ大元は人間だ。ひとでなしと呼ばれようとも、何も感じないわけはない。私ですら。

 

その日の出来事はそれきりで、それが気に入らず夜は少し手の込んだ研究を行った。結果は悲惨で幾らかの資産が吹き飛んだが、それでもその日の記録をあの害虫駆除で埋めるよりかは何億倍もマシだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「……おはよう、オジサマ」

 

その日の挨拶は、随分と覇気のないものだった。意外でもなく、思っていたより彼女は昨日の記憶を引き摺っているらしい。今日は無理して寝た、などと報告をしてきたが、それだけ気を紛らわせたかったのだろう。その件については私もあえて触れずにしていると、やがて彼女は頬を両手でぱんぱんと叩き、

 

「いよっし、切り替えた!!

じゃあ早速、今日はセイバーちゃんに会いに行こうと思う」

「セイバーに?」

 

いきなり何を言い出すかと思えば。そんなの認められるわけがないだろう。セイバーと言えば最優とも呼ばれるサーヴァント。というかこいつは弓兵としての自覚はあるのか。弓兵が剣士に堂々と会いに行くな。

 

「前の戦いでケガしてるっぽいし、逃げるくらいは出来っしょ。それよりもまず、話せそうなうちにちょっち顔を合わせておきたい」

「………」

 

昨日の影響か、アーチャーの顔は真剣そのもので、無碍にすることも憚られる。なんだかんだと真っ先にライダーと接触に向かった辺り、何か考えがあるのだろう。

 

「……了承した」

「おっ、意外と柔軟? オジサマもようやくウチのテンションに慣れて来たカンジ?

だったら今日はセイバーも交えてオールでパーリィしようぜぇ〜? トッキーがそのちょび髭外したら大盛り上がり間違いなし!!」

「……これは自前だ」

 

わはははは、と笑う彼女を背景に、昨晩用意しておいた幾らかの礼装を準備する。また手痛い失費になるが、必要経費だと割り切ろう。この地の管理人として、誰に恥じることも無く、せめて堂々と君臨するべく。






エセ魔術師が油断した状態で仮にも一流と呼ばれる時臣含むこの面子に勝てるわけもなく…
ぶっちゃけライダー単独でも余裕。ただライダー単独だと逃げられる可能性アリ。


星はすばる:B

夜の闇が深いほどに、星の光は輝きを増す。
具体的な効果としては、一般的に“悪人”とされる人物との戦闘に際して、ランク相応のバフをかけるスキル。
その実態が単なる根性論であるのは本人だけの秘密である。
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