赤神春馬は仮面ライダーに憧れて闇暴きに没頭する 作:コヨイクジ
この世界は、常に光り輝いている。
家の照明、ゲーム画面、都会のネオン、夢や希望。
解釈は様々だが、光が多いから人は生活できているし、幸せな日常が続いているのだろう。
だが、光があれば必ずそこには闇が生まれる。
闇と言っても、悪いイメージが付くものばかりじゃない。
優しい闇、悲しい闇、正しい闇。
人によって闇の基準は違うのだが、世の中に良い結果をもたらす闇も存在しているのだ。
しかし、問題なのは悪い闇という一定の人にだけ現れる裏側、すなわち悪意の存在だ。
悪い闇にも訳があるものや、悲しい過去を持ったものなどがあるが、ほとんどの場合、悪い闇は根っからの極悪人や、独りよがりの偽善者、自己中心的な考えを持つ人が手にしている。
そういう人が存在しているから、光り輝くこの世界も、いずれ闇に飲まれてしまうのだろう。
僕はそんな世界、到底理解できない。
だから僕は、この悪い闇を持つ人、通称『闇人(やみびと)』の持つ闇を暴き、いくつもの罰を与えてきた。
全ては生きるために、守るために、そして復讐のために。
実は今日、僕は目の前にある『虹野原高校(にじのはらこうこう)』に転校してきたんだ。
この高校にも、何かしらの闇があるはずだ。
生徒、教師、保護者はもちろん、この僕でさえ『闇暴き』という闇を抱えている。
これが正しい闇なのか、それとも間違った闇なのか、それは自分でも分からない。
先生
『ほら全員席に座って、ホームルームを始めますよ。』
三年A組の担任が、教室の中にいる生徒に席へ座るよう伝えている。
腕時計を見れば、もう午前八時半である。
この時、僕は新しい高校生活への期待と同時に、この高校には闇人がいないことを願った。
なぜなら、僕は以前いた高校で闇暴きに熱中しすぎて、周りから危ない奴だと罵られて苦しい思いをしたからだ。
先生
『えっと、今日の連絡は一つだけ、この教室に転校生が来ました。』
担任が転校生と言った瞬間、教室の中がざわつき始めた。
まあ、そりゃそうだよな。
転校生が来たら一人や二人、驚いたりするよな。
それは僕だって、きっと同じだ。
先生
『それじゃ、入ってきてください。』
担任からの合図が聞こえてきたので、僕は扉を開けて教室の中に一歩踏み込んだ。
生徒全員が僕の顔を見ていた。
きっと僕の顔が普通なのか、美形なのか、それともブスなのかを見極めようとしているのだろう。
僕は担任からチョークを受け取ると、黒板に自分の名前を書いた。
案の定、全員が僕の名前を見て驚いていた。
だって、こんな苗字の人はそうそういないだろうから、全員が驚くことは予想できていた。
先生
『では、自己紹介をしてもらいましょう。』
僕は他の生徒の方を向くと、自分の名前を名乗った。
春馬
『僕は赤神春馬(せきがみ はるま)と申します、今日からこの教室でお世話になります。』
全員が僕を見て、どんな印象を持ったのかは分からない。
ただ、一つだけ言えることがある。
やっぱり、この高校にいる人のほとんどは闇を抱えている。
先生
『はい、じゃあ、あそこの席に座って。』
そう言って担任が指を差したのは、一番後ろで窓際の席だった。
僕はそこに座ると、昼休みが来るまで四時間の授業を受けた。
そして昼休みになった途端、三Aの生徒が一斉に僕の席へ駆け寄ってきた。
特に話しかけてくるのが、隣席の青年である。
青年
『春馬君さぁ、部活どこに入るか決めた、ちなみに、俺のオススメはねぇ・・・。』
春馬
『あの、さっきから凄い話しかけてくるけど、僕はまだ君のこと何も知らないよ。』
青年
『おっと、こりゃ失礼、名乗るのを忘れてたぜ。』
初めてこいつと話した時、なんか元気ですねって思ったことを覚えている。
青年=勇也
『俺は青木勇也(あおき ゆうや)、よろしくな。』
春馬
『そうか、よろしく勇也。』
こんな感じで多くの友人ができたのだが、彼らは何かしらの闇を抱えている。
しかし、僕が手を下す必要はないと分かって安心した。
なぜなら、彼らから悪い闇は感じられないからだ。
僕は悪い闇を持つ、闇人にしか罰を与えない。
犯罪を犯していない人を追い詰めることは正しいことではないし、それ以前に闇人を狩ることが僕の生きる術であり、僕なりの復讐なのだ。
まあ、とりあえず闇人がいなくて安心したが、これでは金が稼げない。
というのも、僕は裏で犯罪を犯している闇人を警察に突き出すことで、警察から謝礼金を貰って生活しているんだ。
一応、父親はいるのだが、そこまで稼げてるわけじゃない。
要するに僕は父親の稼ぎと、警察の仕事の手伝いをしているんだ。
闇人がいないのは良いことだが、このまま稼げなければ苦しい生活になるだろう。
どうしたものかと考えているうちに、気づいたら四日が経っていた。
だが、クラスに慣れてきた所で、遂に僕が恐れていた、けれど本能的に望んでいた事態が起こった。
それは、僕が高校の廊下を歩いている時だった。
前から、複数人の二年生らしき生徒たちが歩いてきた。
きっと、次の授業が移動教室なのだろう。
全員が一緒に話しながら歩いている中、僕は一人の青年から放たれる違和感に気づいた。
まず、他の連中とは距離を置いて歩いている。
そして、疲れきった顔を下に向けて、まるで自分の表情を悟られないようにするためのようである。
一番気になったのは、何かを我慢しながら、何かを隠そうとする動きである。
僕は一目で分かった。
この青年は闇に蝕まれている。
虐めにあっているのか、家でのトラブルか、とにかくこの青年は他の奴らとは違う闇を持っている。
転校してきたばっかりで、やりたくはなかったが仕方がない。
久しぶりに闇暴きの時間だ。
放課後、僕は青年を探して二年の教室を回った。
教室に残っていた連中に青年の特徴を伝えると、彼は『カケル』というらしく、放課後はアニメ研究部の部室にいるという情報を得た。
早速、アニメ研究部の部室へ向かうと、明かりはなく、鍵も閉まっていた。
今日はいないのかと肩を落とし、家に帰ろうと歩き出したら。
青年
『あの、もしかして入部希望者ですか?』
振り返ると、探していた青年が鍵を持って立っていた。
どうやら、職員室に鍵を取りに行っていたらしい。
春馬
『あぁ、はい、こちらでアニメ研究部が活動していると聞いて来ました。』
青年
『そうですか、ちょっと待っててくださいね。』
青年は嬉しそうに言うと、部室の鍵を開けた。
様子からして、部員は青年一人だけなのだろう。
だから、僕という入部希望者が現れて喜んでいるに違いない。
青年
『どうぞ、中へ。』
部室に入った瞬間、僕は驚いた。
そこには多くの絵やプラモデルがあったからだ。
春馬
『これ全部、あなたが作ったんですか!?』
青年
『そうです、まあ完成度的には・・・まだまだなんですけど。』
春馬
『いえいえ、凄いですよ、こんな素晴らしい作品を作れるなんて!!』
青年
『えへへ、ありがとうございます。』
僕は心から凄いと思った。
絵に描かれた人物は全て、青年のオリジナルキャラであろう。
それに、プラモデルも全く別のプラモデルのパーツ同士を組み合わせて作ってある。
この青年はきっと、自由に創作することが好きなのだろう。
そうでなければ、たった一人で活動することなんて今までしなかったはずだ。
青年=翔
『えっと、自己紹介が遅れちゃいましたね、僕は二年C組の緑羽翔(りょくば かける)です。』
春馬
『僕は三年A組の赤神春馬、よろしく。』
こうして翔が友人となり、よく話すようになった。
そして、僕はアニメ研究部の部員となった。
僕は『仮面ライダー』という特撮が大好きで、歴代の作品を全部見ている。
だから、この機会にアニメ研究部に入るのも悪くないと思ったんだ。
翔との会話を楽しむと同時に、僕は翔を蝕んでいるものを調査した。
話している感じ、家族との問題は無さそうだ。
となれば多分、高校の誰かに虐められている感じだろう。
では、その虐めてくるのは誰か。
それらしい人物を翔の周りからリークする必要がある。
それを考えている時だった。
ある放課後、帰り支度をして外に出たところ、校舎裏の自転車置き場から何か聞こえてきたので、校舎の壁に姿を隠し、自転車置き場の方向を覗いた。
そこには自転車の側にいる翔と、数名の男女が翔を取り囲む形で立っていた。
翔の目の前に立つ男の顔は見たことがある。
この高校で成績一番、スポーツ万能、スタイル抜群と噂される三年C組の男。
とりあえず、ここでは奴のことを優等生野郎と呼ぶことにしよう。
僕は優等生野郎を初めて見た時、何か違和感があるとは思っていたが、まさか・・・。
そう思っていると、他の男らが翔の自転車を蹴っ飛ばし、翔の顔面を殴った。
女子はというと、スマホを取り出して翔の苦しむ姿を撮影している。
僕はすぐにスマホを取り出し、この背景の動画を撮り始めた。
すると、優等生野郎が翔に何やら耳打ちし、笑いながら他の連中と帰って行った。
翔は倒れた自転車を拾い上げると、乗りはせずにそのまま歩いて行った。
僕は翔を後ろから追いかけ声をかけた。
春馬
『翔、大丈夫か!?』
翔
『春馬君・・・。』
翔は今にも泣きそうだった。
あの優等生野郎が、翔に何を言ったのかは分からないが、相当嫌なことを言われたことは分かる。
翔
『春馬君、やっぱり見てたんだね・・・。』
春馬
『あぁ、前から何か隠しているとは思っていたが・・・。』
この後、僕は翔の気持ちを考えず、咄嗟に思いついたことを口走ってしまった。
春馬
『なぁ、よければ僕の父親、探偵なんだけど依頼
してみないか?』
僕の父親は探偵業を営んでいて、客は少ないが腕は確かなため、翔の手助けになるのではと考えた。
でも翔は・・・。
翔
『探偵・・・ってことは結局お金を取るんだろ、結局お前も金目当てか!!』
春馬
『違う、落ち着け、僕は本当に君を助けたいと!!』
翔
『誰も僕を助けなかったクセに、お前に僕を助けられるわけないだろ!!』
そう言うと、翔は服の袖を捲った。
そこにはアザだらけの腕があった。
翔
『これ見てよ、いつも隠そうと必死なんだよ・・・。』
春馬
『どうして隠す必要がある、自分から助けを求めなきゃ、何も変わらないじゃないか!!』
翔
『そんな簡単に言うなよ、皆は僕のことを無視するんだ、そんな奴らに助けを求められるわけないだろ!!』
春馬
『じゃあ君の担任は、両親とかはどうなんだよ?』
翔
『どうせ大人たちは僕に期待していない、僕なんかいなくなればいいって思ってるんだ、お前だってどうせ・・・。』
翔は涙を流しながら去って行った。
お金と言っていたことから、きっと優等生野郎どもに金銭を取られているのだろう。
どうして翔が奴らに虐められているのかは分からないが、これだけは言える。
優等生野郎どもこそが真の闇人。
罰を与えるべき存在であり、同情する余地もない。
僕は行動に移すことを決意した。
僕は早速、暗くなるのを待って外に出た。
そして翔の家が見える所から、翔が家を出るのを待った。
こういう金銭のトラブルは、夜中の誰もいない所でやるもんだ。
しばらく待つと、家から翔が出ていく姿が見えた。
僕は見つからないように尾行し、翔の後を追った。
尾行を続けて着いたのは、住宅街から離れた場所にある公園だった。
確かに、見た目も場所も、闇取引的なことをするのに好都合だ。
翔が公園の奥にある大きな木に近づくと、そこには既に優等生野郎と数名の男女がいた。
優等生野郎
『よぉ、翔、約束のもんは持ってきたか?』
翔
『はい・・・。』
そう言うと、翔は封筒に入った札束をポケットから出した。
そこまで分厚くない所を見ると、おそらく十万円ほどだろう。
優等生野郎
『ちゃんと持ってきてくれて偉いなぁ、それでこそ俺の財布だ。』
優等生野郎どもは翔の惨めな姿を見て、馬鹿にするように笑っている。
僕はこの光景をスマホで撮影していた。
助けに入りたいが、もっと奴らを裁くにあたる証拠が必要だ。
すまん翔、もう少しだけ耐えてくれ。
優等生野郎
『じゃあ、早速それ貰おうか。』
優等生野郎が手を前に出し、翔は封筒を奴に渡そうとした。
だが、翔は急に封筒を渡そうとする腕を止めた。
そして、何か考える顔をした後、翔は封筒ごと札束を手でビリビリに破いた。
優等生野郎
『あぁぁぁ、俺の金が、テメェ何してやがんだ!!』
そう言うと、優等生野郎は翔の顔を殴った。
翔はというと、殴られた拍子に地面に倒れたが、落ちていた石を拾い上げ、優等生野郎の頭に投げつけた。
優等生野郎
『イッテェ!! この野郎!!』
優等生野郎が痛がるのを見ると、翔は自分の怒りを奴らに言い放った。
翔
『お前らいい加減にしろよ、僕が親と高校に内緒でバイトしているのを知って、黙っている代わりに口止め料を払えって、ふざけてるのか、これは僕が両親のために稼いだ金だ、アンタらに渡すくらいなら、破り捨てたほうがマシだ!!』
優等生野郎
『この貧乏ガキが・・・この俺に逆らってんじゃ
ねぇぞ!!』
翔
『僕はもう、アンタらには従わない、親にも先生にも正直に言う、もう僕は一人で抱え込むようなマネはしない!!』
優等生野郎
『チッ、お前ら、もうコイツは用済みだ、殺して埋めちまえ!!』
優等生野郎が指示すると、男女らはバットなどの武器を取り出した。
翔は完全に包囲されて、もう逃げ場がない状況だ。
僕は撮影を止めて、持ってきた大量のロケット花火にライターで火をつけ、優等生野郎どもの方向に花火の先端を向けた。
数秒後、ロケット花火は優等生野郎どもの方向に向かって発射され、奴らの足元で爆発した。
奴らが慌てふためく様子を見る感じ、きっと火傷したのだろう。
優等生野郎
『クッソ、誰だ!?』
僕は優等生野郎どもに近づいた。
はぁ、遂に僕の本性を出すしかないかぁ。
春馬
『高校一の優等生、その正体はヤンキーグループのリーダー、礼儀正しい姿は仮面に過ぎず、その実態は極悪非道なクズ野郎。』
優等生野郎
『お前は・・・転校生の!?』
優等生野郎どもが僕がいることに驚いている隙に、翔は僕の後ろまで走ってきた。
春馬
『よく頑張ったな翔、後は任せろ。』
翔
『春馬君、君は一体・・・。』
僕は行動を起こす前に、一つ優等生野郎に質問をすることにした。
春馬
『なぜ翔から金を奪い続けた、翔以外にも高校中に、もっと金持ちの奴らがいるじゃないか。』
優等生野郎
『はっ、お前さ分かってねぇな、そいつの家は貧乏なんだ、貧乏な奴から金を奪ってこそ面白いんじゃねぇか!!』
春馬
『そうか・・・やっぱりお前、どうしようもねぇクズだな。』
優等生野郎
『なんだとゴラァ!! やっちまえ!!』
優等生野郎が一人の男に指示すると、男は僕に向かってバットを振り上げてきた。
この適当な動き、やっぱり素人だ。
僕はバットを避けると、男の両足を引っ掛ける形で蹴り、バランスを崩した男の腹を瓦割りのように拳で叩きつけた。
男は嘔吐すると、あまりの激痛に気絶した。
もちろん、優等生野郎どもはドン引きしている。
優等生野郎
『なに、お前らも行け!!』
他の男らも僕に攻撃しようとしたが、僕の回し蹴りで頭を打ちつけられ気絶した。
女子どもはというと、この光景を怯えて見ているだけで何もしようとはしない。
春馬
『お前らは僕の嫌いなタイプだ、力が無いくせに自分よりも弱い人間を食い物にして、都合のいいように使い回す、本当に悪趣味だ!!』
すると、女子の一人が僕のセリフを聞いてイラついたのか、バッグの中からスタンガンを取り出して突進してきた。
僕は右足を上に振り上げ、女子の手からスタンガンを弾き飛ばし、そのまま女子の腹に肘打ちを叩き込んだ。
女子は気絶し、他の女子どもは怖がって逃げて行った。
優等生野郎
『テメェ、なんでこの人数を!?』
春馬
『僕の父親は探偵でな、なんかあった時のために稽古をつけてもらってんだよ、あと僕は昔から仮面ライダーが好きでな、マネしてるうちに鍛えられてた。』
優等生野郎
『けっ、何が仮面ライダーだ、やっぱり子供騙しじゃねぇか、俺がスポーツ万能なことを忘れてんじゃねぇのか!!』
そう言うと、優等生野郎は僕に飛び蹴りを当てようとした。
しかし、僕は体を低くしたことでそれを避け、同時に僕は奴の顎にアッパーを繰り出して、奴の体を宙に打ち上げた。
さらに追い打ちで、逆に僕から回し蹴りを優等生野郎に喰らわせた。
優等生野郎
『うぎゃぁぁぁ!!』
春馬
『痛いだろ、翔はお前の痛み以上に苦しみ、我慢してきたんだ、自分が耐えられない痛みを他人に与えて、しかもその姿を見て楽しんでんじゃねぇ!!』
優等生野郎
『ぶっ、ぶっ殺してやる!!』
優等生野郎がナイフを取り出した。
結局は道具に頼るしかない、真の弱者にして卑怯者が。
春馬
『あぁ、そうそう、お前らの行い全部撮影してネットとかに流しておいたから、退学逮捕はもう確定だね。』
優等生野郎
『はっ、ふざけやがって、お前だけでも殺してやる!!』
優等生野郎がナイフを滅茶苦茶に振り回して走ってきたが、問題ない。
僕は『仮面ライダーファイズ』の構えポーズをとると、優等生野郎に向かって突進、ジャンプと同時に空中前転し、その勢いで奴の体にキックを叩き込んだ。
春馬
『クリムゾンスマッシュ・・・ハァァァ!!』
優等生野郎
『うがぁぁぁ!!』
空中前転で威力を増したキックが当たったのだ。
そりゃあ叫びたいほど痛いだろう。
もしかしたら、どこかしらの骨が折れているかもしれない。
そして気づいたのだが、キックの衝撃でナイフが奴の頬をかすってしまい、血が流れていたのである。
奴も自身の体の状況を理解し、特に頬の傷にショックを受けていた。
優等生野郎
『俺の・・・俺の顔が、あぁぁぁ・・・。』
優等生野郎はショックのあまり、まるで力尽きるように気絶した。
僕は翔に歩み寄り、手を取って公園の入り口まで歩いた。
翔の表情からは、解放された安心感と、僕に対する恐怖の気持ちが読み取れた。
春馬
『大丈夫か、翔?』
翔
『春馬君、君は一体何者なの?』
そう聞かれたので、僕は仕方なく自分の本性を明かすことにした。
春馬
『僕は今まで、犯罪者の隠す闇を暴くことで
生きてきた。』
翔
『犯罪者の・・・闇?』
春馬
『闇ってのは、いわゆる人間の裏側、本性って奴さ、僕は犯罪者を闇の住人、略して闇人と呼んで憎んでいる。』
翔
『つまり、君は犯罪を隠している人を憎んでいて、その犯罪を解き明かしながら生活しているってこと?』
春馬
『まあ、そういうことだ、とにかく僕は闇人の持つ闇を暴くことで、闇人に罰を与えると同時に、警察から謝礼金を貰って生活しているんだ。』
僕が話し終えると、数台のパトカーが公園の前にやってきた。
ここに来る前に、僕が通報しておいたんだ。
すると、一台のパトカーから見覚えのある中年男性の警官が降りてきた。
警官
『大丈夫ですか、ってまたお前か、今度はなんだ?』
春馬
『よぉ、黄川のおやっさん、今日は金を巻き上げてたヤンキーグループの面々だ。』
警官=黄川
『相変わらず危ねえことするな、ところでその人は?』
春馬
『僕の友人で、今回の被害者だ、怪我とアザがあるから、病院に連れて行ってくれ。』
黄川
『分かった、救急車がもうすぐ来るから、それに乗って行きなさい。』
そう言うと、黄川さんたちは優等生野郎どもの腕に手錠をつけ、奴らをパトカーに乗せた。
翔
『あの警官、春馬君の知り合い?』
春馬
『あぁ、あの人は黄川誠(きかわ まこと)って名前でな、僕が前に住んでた街から世話になってる人だ、正義感が強くて、僕が何度か闇暴きで危ない橋を渡りそうになった時、本気で叱ってくれて、本気で心配してくれた、僕がこの世界で唯一闇を持ってない人だと思える人の一人だ。』
翔
『前に住んでた街って、もしかして春馬君と一緒に引っ越したの?』
春馬
『そうだ、僕は前いた街で闇暴きをしすぎて高校で変人扱いされてな、苦しかったところを父親が引っ越すかって言ってくれて、黄川さんも僕が心配だからって、一緒にこの街へ引っ越してきたんだ。』
翔
『君のお父さんと黄川さん、いい人だね。』
春馬
『あぁ、僕の命の恩人だ。』
しばらくして、僕と翔が救急車に乗ると、黄川さんが近づいてきた。
黄川
『翔君、春馬をよろしく頼むね、こいつ闇人を見ると、すぐ闇暴きしようとするから。』
翔
『分かりました、でも黄川さん、さっきはもう慣れたような態度でしたけど。』
黄川
『最初にこいつと関わった時はビックリしたけど、もう五年も付き合ってるから、そりゃ嫌でも慣れちまうよ。』
黄川さんはとびっきりの笑顔を見せて言った。
本当、感謝してもしきれねえよ。
春馬
『そんじゃ、おやっさん、またな。』
黄川
『春馬、あんまり親父さんを心配させるなよ、お前の過去は知ってるが、お前が死んじまったら、親父さんがどんなに悲しむことか。』
春馬
『分かってるさ、僕も闇暴きは程々にしたいし、これから少しづつ、やらないようにしていくつもりさ。』
黄川
『そりゃよかった、でも忘れるなよ、お前は正当防衛と警察への協力をしてるから捕まらないというだけで、これ以上危険なことをすれば、お前も逮捕されかねないんだからな。』
春馬
『ご忠告ありがとう、肝に銘じておくよ。』
そう言って僕は救急車の扉を閉めた。
黄川さんの言っていることは分かっている。
自分でも闇暴きは辞めたいと思っている。
でも、それは僕の本能が許さない。
なぜなら、僕にはまだやるべきことが残っているからだ。
あいつらへの復讐という名前の使命が、僕には残っている。
これが、奴らとの戦いの始まりに過ぎないことを、この時の僕はまだ知らなかった。
ただ、これだけは言える。
僕の『疾走する本能』は誰にも止められやしない。
第二話『闇の住人』に続く。