HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜   作:ゆゆ式

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先輩と海

 

 

視界の隅で水面(みなも)が揺れる。ハンター業にもだいぶ慣れてきた。数多くあるうちから仕事を選び、完遂する。それはかなりの万能性が要求される作業だったが、その分そこそこ成長できた。

 

そして転生者のコミュニティにも認知されるようになり、今はランゲージリンクの問答無用な情報収集性能から、同じ転生者の所有物の鑑定の依頼を回されたりもする。

 

かなり、充実した日々だ。お金も、ホテル暮らしであること以外はあまり浪費しないから、溜まる一方。しかしだからこそ、次を求める心もある。ここでは十分満たされたから、その先へ、みたいな。

 

言ってしまえば、若さ故の探究心のようなもの。それがどこか心の内にある。とはいえ今でも十分満たされているから、変わらないならそれでもいい。しかし、変えられる機会があるなら変えるべきだろう。

 

そして、今、というか今日がその時だ。

 

現在、ニシヤはある船に乗せてもらっている。ウバルトリコ調査船。全長44m。幅6.5mの、中型に分類される船。それが港で波に揺られながら、多くの乗組員を乗せて出発を待っている。

 

ニシヤも、その船に乗せてもらっており、今回はハントの研修を名目として同行を許されていた。

 

船の甲板の上からは、遠くの景色がよく見える。港側は見物人が大勢いるので顔を出せないが、その代わり海に広く面した方からは、広大な大海原を自由に見ることができた。

 

そうしてしばらく景色を観覧しているうちに、調査船の準備も既に終わり、あとは予定時刻の通りに出発するだけになった。しかし逆に言えばそれまではいくらでも猶予があるという事だ。

 

などという、そんな中。ふと、波風がニシヤの頬を撫でた。そしてそれと同時に話し声が近づいてきて、その場の静寂が破られる。何かと思って甲板の手摺りから振り返ると、そこには太い男と小さな女がいた。

 

 

「ええ?お前が紹介するからどんな大男かと思えば、随分ヒョロいじゃねえか。海人は体格が大事なんだぜ?ま、1番は体のバランスだがな。しかし弱っちい体じゃ話になんねえ」

 

「そう言うなやモラウさん。シーハンターのうちらより、純粋な戦闘力は多分あの子の方が上やで?体の強さはそれで文句ないやろ。それともそれじゃあかん?」

 

「ああ、アカンね。なぜなら俺は目で見て確かめたものしか信じねーからだ。念ってのは想像力も大事だが、それにはまず信じることが重要だからな。そして見た目!まず子供をハンターとして信頼はできねー!」

 

 

船の入口から上がってきたのだろう男女。そのうちの男の方が、こちらを指差して結論を述べる。確かに、言っていることは至極真っ当だった。

 

それはもちろん、普通の子供からは反感を買う発言であっただろうが。大男と甲板で黄昏れる子供という絵面もあって、説得力は間違いなく。論理的に反論することは難しかった。

 

そして、ニシヤの視線の先で噂のモラウさんが体を反転させる。どうやら帰ろうとしたようだ。しかし、そこを連れ添いの女――おそらくドノミチに止められる。ふたりは、そのまま片方は渋々ながらもこちらに向かってきた。

 

 

「……おはよーさん。あんたがニシヤで間違いないな?オーラの質から見て赤の他人ってことはないやろ?」

 

「うん、そうだよ。そういうあなたはドノミチさん?確か本名はヨノミチ=アスズルだっけ?」

 

「そやね。うちがヨノミチ。ほんでこっちが噂のモラウさんや。オーラ量ではハンターでも上位。多分あんたよりも上やで」

 

 

近くまで寄ってきた女の子、とでも言うべき女性。ヨノミチが横に連れ添う大男を指し、紹介してくれる。揺れる甲板の上で、指されたモラウが居心地悪そうにした。

 

 

「あー、お前さん近くで見てると気持ちいいくらい良いオーラしてるな。だがしかし、訂正はしねえ。子供のうちからこの業界に入ってくるなんておめー生き急ぎすぎだぜ。そこの、判断基準って奴がやっぱり信頼たりえねえ」

 

「なるほど。でも俺にも言い分があるんですよ。だってこんな、念なんて力を知ってしまったらできないじゃないですか。普通の生活なんて。ならこの業界に飛び込んだ方が楽しい。違いますか?」

 

「お前さん……ひょっとしなくてもイカれてやがんな?まあ、そういうことならいい。そういう奴も一定数いる。いるが……おいヨノミチ。お前の知り合いはこんな奴ばっかなのか?」

 

「いや、そうでもあらへんよ。それにこういうのも可愛いもんやろ?中にはドツボにハマって裏に入ってく連中もおる」

 

「まあ、そうだな」

 

 

甲板の手摺りに寄りかかりながら、両隣をモラウとヨノミチに挟まれた状態で話す。たまに海風が吹き付けるので、その場では大声で話す必要もあった。それがまた、独特の空気感を生む。

 

そしてしばらく。ニシヤは納得して態度を軟化させたモラウと、聞いていた通り小さいヨノミチ。その2人と談笑に身を興じさせた。話すのは、主に陸や海などの独自の話。

 

分野が違うので、3人がそれぞれ自分の話をした。その中で、グリードアイランドの話題を軽く出す。

 

 

「へえ!古き良きRPGゲームを仮想現実で、ねえ。なかなか面白い話持ってるじゃねえか。そんでそのゲーム機も自分名義じゃないとはいえ持ってるって?その歳でなんつうことを経験してやがる」

 

「でも今はPKが横行しててまともにゲームができないんやろ?それはさぞ、製作者も無念やろなぁ」

 

「うん、例えばゲーム性を示すものとして、密度の甘い堅や凝を散らして、攻撃を通してくるモンスターなどがいたり。ストーリーで言うとRPGのクエストのようなものを実際に現実でこなすような感覚になれたり。ゲーム性は完璧なんだよ」

 

 

1週間。ほんの少しの間だけプレイしていた時の記憶を思い返す。テケリンの想定外の奇襲。デンゾウアリの小癪な能力。なんだかんだ、GIでの経験はニシヤにある程度の念での戦い方を教えてくれた。

 

だからGIを作ってくれたゲームマスターには感謝しかない。会えたらお礼を言いたいくらいだ。もちろん、PKなど悪い部分もあるのだが。

 

そんなこんな思い出を掘り返しながら話し込んでいると、大男1人に子供のようなシルエットの人物がふたり、という、ものすごく話しかけづらい空間に、ウバルトリコ号の船員が知らせを伝えに来てくれた。

 

 

「す、すみません!お話中失礼します!当ウバルトリコ号は、本日現時刻8時をもって出航します!シーハンターのマッカーナーシー様とアスズル様、フーズー様におかれましては、ご協力お願いします!」

 

「あいよ。とりあえず深海の有人調査については任せてくれ。ま、今回は初心者のニシヤもいるから成果は期待しないで欲しいが。報告ありがとよ。こっちこそよろしくな」

 

「は、はい!お願いします!光栄です!」

 

 

モラウが報告に来た船員を見て、姿勢を正し手を差し伸べる。甲板の上では固い握手が結ばれ、そこからもモラウの人間性が見て取れた。確かに、これはヨノミチが女版モラウと言われるのを嫌がるのも理解できる。

 

正直、ヨノミチはネット越しに何度か交流した限り、このような人間力は見て取れない。むしろ人間的にはちょっとおかしい側だ。なので自分にその称号が相応しいというのが失礼な話だと理解できているのだろう。

 

それぐらいモラウの人格ができている。子供のためにいちいち感情を露わにするのもその証拠だ。そして、短い握手のあと、船員が感無量といった様子で去るのを見ながら、船が動き出すのを感じる。

 

そうしてしばらくの静寂が訪れた甲板で、また3人で並んだ。初めに、ヨノミチが口を開く。

 

 

「で、せっかくのこの機会やけど、何しよか?うちらが来たのは最近外界からよく来るらしい魔獣の警戒もあるけど。それはそれとしてニシヤの面倒を見るためでもあるからなぁ」

 

「まあそうだな。とりあえず調査船の歩調に体を合わせつつ、浅瀬から徐々に身を慣らさせていく、って感じだろうな。それでいいかニシヤ?」

 

「うん。俺海は専門外だし2人に従うよ。純粋な技術的問題で今は戦闘が多いけど、景色とか変わったものを見るのも好きだしね」

 

「それならちょうどいいな。海ってのは不思議なもんだぜ?それに俺の能力ならいくらでもその海の中にいさせてやれる。ヨノミチの能力も似たようなもんだ。ま、俺の能力の方がよっぽど便利だがな!」

 

 

ガハハ!と、波に乗る船の上でモラウの笑い声が響き渡る。実際それはその通りなのか、ヨノミチもうんうんと頷いた。それによってむしろモラウは「からかいがいのない奴だぜ」と嘆いていたが。

 

そんなこともあり、ウバルトリコ号が着実に海を進んでいくのを感じながら、ハントの準備へと入る。今回のハント対象は、さながら海での景色や環境、といったところか。

 

どうも、今回の調査では聞く限環境保全のための周辺海域のデータなどを収集するらしい。探査機械も導入されるようだが、より詳細な情報を収集するため、シーハンターのふたりがお呼ばれしたようだ。

 

まああくまで定期的な保険に近い調査とのことなので、今後への投資も含めて、ニシヤの搭乗が許されたようだが。

 

 

「よしお前ら。目的海域が見えてきたぜ。とりあえずニシヤは深海寸前までは潜らせる。それ以上はシーハンターの領域だ。俺を信頼してくれるか、なんかそういう能力がねえと、厳しいだろうからな」

 

「うーん、まあ、そういう能力もなくはないんだけど。自分から見てもちょっと趣味の悪い能力だからなぁ。あまり見せたくはない」

 

「そうか?じゃあお先に失礼するぜ。紫煙拳(ディープパープル)

 

 

海を見渡していたモラウが、荷物の中から特大のキセルを抜き出す。それは軽くニシヤの身長ほどあり、柄縁には、豪華な金細工が施されていた。

 

それをモラウは、重さなどないかのような動作で口に運び、そして一息吸うと、能力を発動させる。目の前に、突如煙が現れた。そしてそれは生物のように蠢き、さも意思があるかのような動きをする。

 

おそらく、操作と変化の合わせ技。一見相性は悪いが、ともかく。現れた煙はそのまま脈動し、ある形をとった。

 

 

「おお、魚だ」

 

「相変わらずモラウさんのディープパープルは便利やねぇ。うちの空飛ぶ魚(ファウンドライダー)じゃ太刀打ちできひんわ」

 

「馬鹿言え。それは汎用性の話だろうが。おめぇほど便利な能力持つ奴もそういねえよ。強いて言えばノヴの野郎だが、あいつにお前ほどの即効性はねえしな」

 

 

魚の形を完全に模した煙たちを、モラウが船の手摺りに寄りかかりながら海へと放流する。甲板の上からの放出だったので、落とされた煙魚たちは大きな音を鳴らして、海へと潜っていった。

 

それにしても、モラウはニシヤと同じ操作系らしい。

 

魚を偵察に放ったということは、そういうことだろう。オーラを煙に変化させそれを操る。羨ましい能力だ。能力変更が利くならニシヤも今からその能力を使いたいくらい。

 

もちろん戦力的には今の方が上だと自負しているが、そこは体裁的な問題だ。能力を作った当初はこれ以上ないと思ったものだが。

 

そんなことを考えていると、ふと、ウバルトリコ号が航行を停止させる。そして、それと同時に独特な合図の音が周囲に鳴り響いた。

 

 

「停船確認。無人調査艇を用意しろ!有人での調査はすべてシーハンターのおふたりが受け持ってくれる!まずは元荒廃地の環境回復状態の確認だ!全体!急げ!」

 

 

合図の音が鳴ると共に、船全体がにわかに騒がしくなる。静かだった甲板にも、それが伝播してきた。両隣のモラウとヨノミチは、それに合わせて準備運動を始める。どうやら、事前の準備のまま、特殊な装備もなしに潜るらしい。

 

 

「おら、何やってんだ。おめえも潜るんだから準備運動はしとけよ?念能力者が常人離れしてるっつっても人間ではあるんだからよ。特にお前は海のハンターじゃないんだからな」

 

「OKモラウさん。わかってるよ」

 

「本当にわかってんのか?まあ、自己責任だから俺はどうでもいいがな。弟子以外の面倒はみきれねえぜ」

 

「そんなこと言ってモラウさん。もう十分世話焼きモードに入っとるやないかい。弟子のナックルのことを優しすぎるって言うとるけど、あんたも相当やで?ハンター向いてないんとちゃう?」

 

「うるせえ!お前はお前で俺を尊敬してんのか舐めてんのかわかんねえ奴だな!だいたい俺はシングル!お前はシングル候補だ!」

 

 

ハンターとしては珍しいほどの人格者であるモラウに、ヨノミチの茶々が刺さる。ある意味では正論に近い言葉だ。しかしそこはモラウもさすがの貫禄で、翻弄されつつも実際の功績で言論を封殺した。

 

そうして、しばらく。準備運動も終わり、周りの喧騒も落ち着いてきた。甲板のそこら辺を見ると、周辺海域のデータを見ているだろう作業員たちの姿がある。

 

彼らはさすがプロフェッショナルといった様子で、静かに専用の機器と向き合っていた。そして、その中の監督員のような風体をした男が、準備運動を終えたニシヤたちに話しかけてくる。

 

 

「そろそろ、頃合いですかな?シーハンターの方たちにその教え子様。とりあえずまずは既知の海域の環境調査が始まりましたので、深海調査が始まる前に体を慣らしていただければと」

 

「あいよ。もちろん慣らすだけじゃなくてきちんと何か異変がないかも見させてもらうぜ。教え子がいるとはいえ、手を抜くほどなまっちょろくはねえからな。ニシヤも挨拶しときな。この船の副船長だ」

 

「はい。今日はウバルトリコ号に乗せていただきありがとうございます。まだシーハンターの仕事をこなせるまでに技術を習得できるのかは疑問ではありますが、今日はよろしくお願いします」

 

「ええ、こちらこそ。しかしまだ若いのに、礼儀正しいですねぇ。あなたのような未来あるハンターにはぜひシーハンターとしても活躍してもらいたい。ではでは。アスズル様も失礼いたします」

 

「はーい。海獣が出たら任せときや。ほいじゃ〜」

 

 

軽い調子で、ヨノミチが去っていく副船長に手を振る。本来なら許されない態度のはずだが、シーハンターにして一ツ星(シングル)手前の存在ということで、当然のものとされているのだろう。

 

もちろんそれだけの立場相応の功績をあげているからこそ可能な態度ではある。そこに至るまでに、おそらくヨノミチ自身かなりの苦労を味わっているだろうから。

 

とまあそんなこともあり、やっと海へと潜れる時間が来た。船の手摺りから身を乗り出すと、キラキラと輝く海が見える。そしてさらに見ると、その海の中に僅かな珊瑚礁なども確認することができた。

 

 

「なかなか綺麗なところやろ?今は環境を回復させてる途中なんや。だからここでは、主に厄介者を事前に潰したり、珊瑚を植えたりと。まあ、シーハンターのうちらの主な任務はここだと護衛だけやな」

 

「へー、じゃあ結構ゆっくりできるんだ。というかもしかして、俺がやることってほぼない?」

 

「まっ、そういうこった。見習いのうちは見て盗め。よく言うだろ?海人の間じゃ常識だ。それじゃとりあえずここから飛び込むぞ。念能力者だし平気だろ?」

 

「ええ?ここから?」

 

 

突然のモラウの発言に、再び眼下の海を見つめる。手摺りから見える海の景色は、どう考えても甲板から飛び込むふうなものではなかった。

 

しかしモラウに押され、仕方なく潜水の準備を始める。視界の先に広がる海は、綺麗なマリンブルーだった。

 




推敲っておもしろ!(即落ち)

何故かわかんないけど面白かった。AIくんにこんな楽しみを奪わせていたなんて。


それはそれとして読者たちの応援でまさかランキング一気にかけ上れるか!?ってところまで行ったのはなかなか楽しかったぜ

今まではこんな連載できなかった。読者たちのおかげだ。俺はお前たちの為に連載を全うする。完結日が俺の誕生日!(某イカ)

手動推敲頑張りまする。



なのでとりあえず完結保証はできるけど取り下げということで。お願いします。質を伴う完結保証は難しいかもなので。
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