HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜 作:ゆゆ式
ビヨンドの仲間になってもやることは同じだ。ハンターとして仕事を熟し、その中で何かを追い求める。かといって、特に目指すものはない。ただ面白そうだから。故にこそニシヤは何事にも挑戦する。
きっと、そこに明確な答えは無いのだと思う。求道者、というほどのものでもないだろう。言うなれば、純粋に、追い求めるもの。ハンター。
ここには無いものを探すという姿勢。そういう意味では、ニシヤはビヨンドと同じだ。
馬は合わないが、どこか目線が同じ。
そんなビヨンドから、仲間になって下された指令はひとつだけだった。「強くなること」ただその一点だけ。それだけ果たしてくれれば十分だという。
それほどに今まで集めたメンバー達に自信を持っているのだろう。ニシヤはあくまでイレギュラーとして現れただけで、いれば便利、という程度の存在。だが同時に、長じれば何ものにも代え難い戦力になる。
だからこその「強くなれ」。ある意味単純明快だ。そして暗黒大陸探索は早くても数年後。力を蓄える期間は十分にある。が、わざわざビヨンドの指令に従う必要もない。
強くなるのはもちろん目指すが、それは今までと変わらず、自分のスタンスとしてだけ。指令のために死にものぐるいで強くなろうとは思わない。
ニシヤにとってビヨンドはリーダーではなく、たまたま知り合って遊びに混ぜてくれた知り合いだからだ。ニシヤにとって暗黒大陸は、なんとなく興味をそそられる場所というだけ。
だから行った結果死ぬ、というのはいいが、行く前に行くための準備を死に物狂いでして死ぬ、というのは嫌だ。ゆえにニシヤは今日も変わらず、ハンター業をする。
依頼の最中、森を歩いている中でそう思った。目標は暗黒大陸。されど日常は変わらず、今もニシヤの周囲を森の澄んだ空気が包んでくれている。今日は、晴れやかな快晴の日だった。
空を見上げると、燦々と輝く太陽が見える。
そんな中でふと、視界の端に鳥の群れが見えた。どこか、騒がしいような。おそらく何かあったのだろう。木の葉の隙間からその方角を覗くと、いろいろと見えた。
遠目に見える鳥たちの種類はカデラスオオトリだろう。黒を基調とした彩りに、僅かに焦げ茶色が混じった群生の鳥。そんな鳥達が、ある森の一帯の上で騒いでいた。
近くの小高い木に登ってそれを確認すると、ニシヤはそのままオオトリ達が騒ぐ場所へと走り出す。何かがあったのは間違いない。今回ニシヤが受けた依頼は危険生物の討伐。
おそらくオオトリ達が騒いでいるのもその危険生物が暴れているか何かしているのが原因だろう。つまり鳥達を目印に歩けば、簡単に標的の元までたどり着ける。今回の依頼は、早めに済むかもしれない。
では、終わったあとは何をしようか。
なにかこの世界特有のアニメでも見るか。骨董品の中から掘り出し物でも探すか。さすがに知人とのお出かけは距離的な制約があるから無理だろう。それとも転生者ネットで何かするか。
とりあえずネットで暗黒大陸の情報を集めるのもありか。本格的な情報はやはりランクがないと接続できないだろうが、表層だけならいくらでも収集できるだろうから。
そんな風に考えながら、ニシヤは依頼を遂行していく。森の騒動は、危険生物の排除という形で着実に進められていった。
そしてその日の昼過ぎ、ニシヤはやるべきことを順当に終えて、ホテルへ帰還する。とはいえ、最近ではこういう危険生物の討伐もあまり請け負っていない。
鑑定眼の質が上がり、発掘ハンターとでも言えるような活躍をできるようになってきたからだ。あとは単純に、モラウやヨノミチと一緒に海に行くことも増えたため、そんな時間がないというのもある。
正直、ほぼ討伐一辺倒の仕事は退屈だったので、ビバ人脈&技術といったところだ。とはいうものの、ニシヤの能力はそういう討伐も重ねないと強化されていかないので、ある程度は必要なのだが。
ともかく。その日の危険生物討伐の依頼は、特にトラブルなく終えて、普通にこなした。
まあ、さすがにビヨンドの指令に反しすぎた生活だとは我ながら思う。しかし実のところ、この頃は才能に限界を感じているのだから仕方ない。
いや、まだまだ強くなることは可能だと思うのだが、正直ビヨンドの言うメビウス湖ではもう純粋に成長することはあまりできそうにない。
今以上を目指すなら、まだ使えていない四つ目の能力を使う必要があるだろう。しかしその能力を使える環境を用意するとなると、なかなか難しい。
だがそれがなくとも今のニシヤは十分強い、と自負している。
一度磐石の体制を築けば格上も数でボコれる
『
無尽蔵の手数、選択肢を供給する
『
最後にどのような環境でもそれに適した手札を選ぶことで単体能力を極限まで引き出す
『
どう見ても能力の完成度は歴然だ。一つの能力でできうる限りのことをやっている。しかし逆に言えば、これ以上成長するビジョンは見えない。
そこで四つ目の能力なのだが、ぶっちゃけ実家にいた期間の虎視眈々とした修行が、その能力の発動機会を潰してしまった。もちろんまったく発動できる機会がないというわけではないのだが。
まあ強くなるには相応のリスクが必要だから、現状の環境では使いたくない。
何せリスクにも種類があって、危険の中に存在するリスクはそれ自体が十分なものになるが、安全な中で取れるリスクとなると、その時点ではかなり重いものになるからだ。
故に、ニシヤは暗黒大陸に渡航するまでは今の生活を続ける。そう決めた。おそらく、それが考えうる限りベストだろうから。
そんな風に、思考を終えた折、戻ったホテルの一室でPCを開く。もう今日はしばらく外出するつもりもないので、部屋のベッドに盛大に寝転がった。
そしてそのまま部屋にカタカタという音を響かせる。当然開くのはいつも通りの転生者ネットで、今回は暗黒大陸について調べるため、ネットのホーム画面からロゴを選択し、専門知識AIのページを開いた。
寝転がっていたところで、目の前に例のAIとの会話画面が出てくる。それを見ながら、ニシヤは画面下部のメッセージ記入用の吹き出しをタップして、AIへの質問を書き出した。
『とりあえず暗黒大陸についてこのネットで公開できる範囲のことを教えて。データを羅列してくれると助かる。とりあえずどんなものが知識として知れるのかを知りたい』
かなり適当な質問。それでもページのAIはちゃんと答えようとしてくれているようだった。『情報検索・まとめ中』という思考文がAIの回答欄に表示される。
そこそこの情報量があるのか、AIが回答を出力するのにかなりの時間が掛かった。だがその分情報量は期待できる。そう思い画面を覗き込むと、異様な光景がそこにはあった。
〈専門知識AIサポート〉
検索結果:該当データ多数
V5検閲プロトコルとの衝突を確認
情報の断片化が進行中……強制出力します。
近代五大陸同盟公式記録 不可侵条約
公式渡航回数149 生存帰還者28名
日常への復帰・3名のみ
案内人 門番
兵器ブリオン 欲望の共依存アイ
ゾバエ病 殺意の伝染
人飼いの獣パプ 双尾の蛇ヘルベル
メビウス湖 限界海境線
シマネキ草の群生地帯
ヒトモドキの擬態パターン・致死率不明
邪念樹の養分
アカルヤナの自生座標・特定不能
転生者第4次調査隊全滅 念中枢の強制破壊
リターン確保失敗 未知のオーラ汚染
システム外の厄災 生態系という名の地獄
究極の長寿食ニトロ穀物
万病に効く香草 無尽蔵のエネルギー
代償は命
踏み入るな
あまりにも断片的な情報の群れ。だがそこからも読み取れることはある。V5検閲プロトコル。つまり近代五大陸同盟は、それほどまでに暗黒大陸にトラウマを抱えている。
公式渡航回数149。そのうち生還者は僅か28名。日常にそこから復帰できたのは3名。果たして何人が暗黒大陸に派遣されたのか。
それは分からないが、公式ということからして国規模、何千かは送っているはず。それでも帰還したのはそれだけ。V5のトラウマがよく窺える。
そして何気に転生者も暗黒大陸に手を出して、潰されているようだ。ただ見た感じ、そこそこ情報を持ち帰れる程度の人数は生還しているか。
しかしこれ以上は暗黒大陸への情報接続権限がないと無理そうだ。とりあえず、ここから暗黒大陸の実態を見る限り、暗黒大陸にはとんでもない存在と、その周囲にある凄まじいアイテムがあると見るべきか。
「リターンに、兵器ブリオンとか殺意の伝染とか。さながら
なんとなくしっくりくる。念能力のシステムに近いからか。制約と誓約。リスクを取る代わりにリターンを得る力。それはその生物が生物として持ちうる範囲で強さを増すための能力。
リスクなくして強大なリターンは得られない。それが全世界に共通する常道。つまり暗黒大陸はこの世界よりも広い尺度でその法則を持っている。
リスクを乗り越えられた者には
なぜ人類が滅んでいないのか不思議なくらいだ。きっと歴史上ニシヤより優れた念能力者も多くいただろう。もしかしたら能力面でもニシヤより優れた人物もいたかもしれない。
それでもそのすべてが無に帰した。それはなんという恐ろしさか。今のニシヤでは及びもつかない……しかしだからこそ。その絶望を乗り越えた時の希望も計り知れない。
これが暗黒大陸。
あまりにも、デカイ。
ニシヤは、そう直感的に理解した。それと同時に、意識をPCの画面へと戻す。相変わらず、そこにはめちゃくちゃな検索結果が表示されていた。しかし、これを見る限り転生者も相当頑張っている。
いくつかの長寿食などとんでもないものを除けば、そこそこ調査が進んでいるようだ。ビヨンドに与していなければ、転生者側のツテで暗黒大陸に行くのもありだっただろう。
しかし、なんだかんだ、ビヨンドのおかげで本格的に暗黒大陸に興味を持ったところはあるから、裏切ってまで別ルートで行こうとは思わない。
とはいえ報告位はしておくべきか。一応ネットに所属している訳だし。あるいはビヨンドと転生者ネットの橋渡しをするのもいいかもしれない。
そのように考えながら、ニシヤはPCを閉じた。そこからベッドに預けていた体も起こして、立ち上がる。転生者ネットで得られる情報はもうこれ以上ないだろうから、外の散策へと出かけることにした。
部屋を軽く整理し、荷物をまとめて扉を開ける。
ホテルの廊下に出ると、赤いカーペットを踏みしめながら階下へと向かった。そしてエレベーターでフロントまでたどり着き、受付に挨拶をしてから外出する。
いざ外に出てみると、具体的に何をするべきかわからなかったので、適当に盛り上がっていそうな表通りへと出た。
ホテルの立地はかなり良かったので、表通りまでは歩いて数分もかからなかった。周囲を見渡すと、さすがの活気が見て取れる。
ハンター業で見るのはほとんどが僻地の景色だったので、なんだか新鮮だ。そんな今世ではあまり感じたことのない活気を浴びながら、ニシヤは適当にそこを渡り歩く。
その中で、目についたものをひとつ買った。
「あいよー!ジャポンのおスシだよ〜!新鮮!豪快な舌触り!1個300ジェニー!さあさあ毎度ありー!」
いかにもな格好をしたそれっぽい店主が、寿司を皿に乗せて渡してくれる。観光地の値段設定にしてはかなり良心的だ。その分安いものも一律で300ジェニーらしいが。
まあひとまず、手渡されたそのスシを手に、どこか適当なベンチを探した。辺りを見回し、人垣の中からなんとかそれを見つける。そのまま誰かに座られる前にそこに陣取った。
そして、スシを食べ始める。味は、まあ回転寿司よりはたぶんいい。なにぶんジャポンという国はこの世界ではあまり有名ではないため、味の善し悪しも激しい。
さっきの店主が観光地に店を構えられているのも、ひとえに珍しい料理を扱っているからという一点に尽きるだろう。前世の国のスシとは知名度も味も段違いだ。
まあ、仕方ない。ひとまずニシヤは、「こんな味だったかなぁ」と首をかしげながらベンチに座ってスシを食べた。そして完食すると、次は有名らしい観光地へと向かう。
ブナルゴ森林公園という場所らしい。主に鳥や猿など、愛くるしい小動物がいる場所のようだ。
しかし果たして人垣の厚さが想像以上で、そもそもたどり着けるのかどうか。とにかくそのようにして、ニシヤはその日一日を過ごした。
ちなみにブナルゴ森林公園には、あまりにも入場者数が多すぎて、保護規制のため入れなかった。
予約すれば専用のエリアに入れるらしいのだが、たまたま予定が空いたから外出しただけのことゆえ、致し方ない。そうしてニシヤは、ホテルに戻った。のだが、その最中、受付の人物に呼び止められる。
「当ホテル宿泊のフーズー様でお間違いございませんか?……では、こちらのロビーの方で面会をご要望のお客様がお待ちです」
「客?誰か来れる奴いたっけ?」
「お待ちのお客様はハンター協会のパリストン=ヒル、というお方だそうです。なんでもシングルハンターの方だとか。それ以上はお言伝を預かっておりませんので分かりかねますが」
「パリストン……わかりました。そういうことなら。ありがとうございます」
とりあえず受付嬢にお礼を言って、パリストンが待っているというロビーへと向かう。急な来訪からして、向こうも別に正装などは求めていないだろうと思い、観光をしていたそのままの格好でロビーへと歩み寄った。
なんかランキングから抜けると一人相撲してるみたいだからアンケートしてみますじゃ。暇があればポチッとお願いします。たくさん押してくれれば作者の推敲が捗るかもしれません。え?でも毎日投稿は変わらずだろって?………()
読者、いるか?
-
はいな。いますとも
-
匿名希望の手品師《マジシャン》
-
話は変わるが、ボマーには気をつけろよ