HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜   作:ゆゆ式

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過ぎ去る年月と達する念

 

 

プロハンターになっていくらか経った。正直、ここ最近の稼ぎは異常だ。ちょっと国からの依頼で鑑定をするだけで、数千万、数億と、無限に重なるように口座にお金が増えていく。

 

世界長者番付に名を連ねるのも時間の問題だろう。となると、そのお金を何に使うか。特に思いつかなかったので、適当な事業を立てることにした。

 

名目は荒れている山林の回復。それが済み次第、持続可能な資源の採取といったところか。最初は間違いなく赤字だが、お金の使い先としては悪くないはずだ。

 

そんなこんな思考を回していると、座っているテーブルの正面から声が聞こえてきた。それには、どこかこちらを伺う色がある。

 

 

「それで、プロハンターになったんだって?つまりこれで同輩になったわけだ。しかし、なんだって今頃?」

 

「うん、いや、パリストンて人に誘われてね。V5とかいろいろ障害はあるけど、ハンター業にもなれてきたしモラウさんみたいな人といっぱい関われるならそろそろプロもいいかなって」

 

「そうか。パリストン。あいつはなぁ……ぶっちゃけどうだった?」

 

 

仕事帰りのついでに涼んでいるカフェの中、そこでモラウがズバリ問いかけてくる。その顔はちょっと困り顔だ。まるで仕方がない子供を思い返しているような。

 

 

「まあ、酷い性格してたね。変態って奴だと思う」

 

「だろ?特にあいつの目!ありゃ獲物を見定めてる目だぜ!あいつが新人の時後ろを歩かせてた時は、いつ何をされるか気が気じゃなかった!」

 

「モラウさんも大変だねぇ」

 

「まったくだ!……あいつはやべえぜ。いろいろとよ。まあ、とりあえず。今はプロハンターになったことを祝おうぜ。あいつはまぁ、なんとも言えん」

 

 

そういいながら、モラウが特大容量のレモネードを手に掲げた。それに合わせてニシヤも普通サイズくらいのレモネードを持ち上げ、コップを打ちつける。

 

本当はジョッキなどの方が格好がつくのだろうが、そこはニシヤがまだ未成年ということもあってさすがに無理だった。

 

そんなこともありつつ、お互いがお互いのペースで飲み始め、合間に話を挟みながら時間は過ぎていく。

 

ある休日の、一幕。僅かながら確実に築いた人脈の輪は、間違いなくニシヤの生活を彩っていた。

 

そしてその日はそれで終わり、それからまた幾許かの時間が経つ。ある時、ニシヤはパリストン経由で、まだ正体が判然としていない古代の遺物の鑑定依頼を受けていた。

 

場所はハンター協会のある研究室。もっとも警備が強固で、爆撃を受けても問題ないと評判の場所。そんなところで、ニシヤは遺物のオーラに触れつつ、能力を発動していた。

 

 

「どうです?ニシヤさん。何かわかります?」

 

「……1023年。アシア公国。そこの貴族一家が代々受け継いでいた念具。職人ケトルーが作成するも、その見た目から貴族一家の血筋が途絶えてからは現在まで見向きもされなかった」

 

「ほう!ではズバリその効果はなんですか!?」

 

「番の血を混ぜ合わせ、その杯に垂らすと、混ぜ合わされたその血が特殊な力を持つようになる。そしてその血を番同士が取り込むと、出産時により優れた血統が選択され、常に最優の子供が生まれる」

 

 

ただし注意点もある。

 

何せ常にもっとも優れた血統が選択されるので、本来起こりえない速度で血統の先鋭化が行われる。それは進化と同義だ。

 

本来人類が数十、数百世代と重ねて変化していくのに対して、この杯で世代を重ねた者は数世代で莫大な進化を遂げる。

 

人間離れしてしまうほどに。そうなると、その杯によって生まれたのは果たして人間なのか、という話になるわけだ。

 

貴族家も最初は重宝していたようだが、まあその後は。お察しである。とりあえずは、そのようにパリストンには説明した。

 

 

「なるほどー。あそうそう。実はそれ、あるハンターが見つけたものなんですけどね。その人がそれの効果が全然わからないって言ってたので、ぜひニシヤさんに見てもらおうと思って。きっとその人も喜んでると………」

 

 

そこでパリストンの言葉が途中で止まる。ニシヤに向けられていた視線がそらされ、別の方に向いた。

 

ニシヤも、感じた気配にパリストンと同じ方を向く。すると、その目線の先には不思議な人物がご機嫌ななめで座っているのが見えた。

 

 

「喜んじゃいねーよ。ったく。せっかくそれで遊んでたのにいろいろ台無しだぜ。でもまっ、礼は言っとくぜ。面白い能力を見れたからな」

 

「おやジンさん。どうやってここに入ったんです?警備の人もいたと思いますけど」

 

「ん?そんなもん事情を話せば入れてくれたよ。あとは俺が最近仕入れたおもしれー情報を話せば意気投合してはいどうぞだ。良い警備を置いてるな。あいつは伸びるぜ?」

 

 

どこか異国情緒を感じる風来坊のような格好をした男。パリストン曰くジン。彼が、GIの製作者。というより指揮者か。その横顔は、あまり整えられてはいないのに不思議な魅力がある。

 

かといって何かのリーダー、という感じはあまりしない。おそらくそういう立場とかどうでもいいのだろう。楽しいかどうか。結局それが基準の、ある意味同類のような気がする。

 

故にか、ニシヤは一歩前に出た。

 

 

「どうも、ジンさんですよね?GI製作者の。今は荒れてますけど、前にちょっとプレイさせてもらいました。面白いですねあれ」

 

「そうか。ありがとよ。でもやっぱ荒れちまったか。ま、仕方ねえ。ハンター専用ゲームで仲良しこよしなんて、そっちの方がありえねーからな。だが、せっかく楽しんでもらってたのにわりーな」

 

「まあ、多分少しすれば状況も落ち着くでしょうし、構いませんよ。それよりまさかジンさんが遺物に関わっていたとは知らず。申し訳ありません。なにぶんパリストンからは国の所有するものだと聞いていたので」

 

 

部屋の扉のすぐそばで、パリストンを半目で見ながらジンと相対する。見たところ歳の頃は20代半ばほど。

 

纏うオーラは、もちろんニシヤよりも圧倒的な質を誇っている。あれほどのゲームを作れる手腕があるのだから当然だろう。果たしてニシヤが同じ歳頃になった時、同等の位置にいられるかどうか。

 

見るだけでも凄まじい使い手だとわかる。星持ちのハンターというのは、やはりモラウも含めて化け物しかいないらしい。

 

 

「構わねーよ。おめーから見える範囲だと俺にまでは目が向かねえ。ま、パリストンは知ってただろうがな。しかしこいつの二択に乗ったのも俺だ。こいつを止めて遊びを続けるか。こいつがやろうとしていることを見るか。俺は後者を選んだ」

 

「そうですね。おかげで僕は国からかなりの信頼を獲得できる算段ですよ。特に子孫繁栄の能力。これはうまいこと使えば国家への貢献は計り知れません!ひいては人類のためになる」

 

「どうだか。とにかくニシヤだったか?お前は仕事を真っ当にしただけだ。んで、結果として俺はお前の能力を見ちまった。なんか欲しいものがあればむしろやるぜ?」

 

 

パリストンの戯言を挟みつつ、ジンがニシヤの方を見てくる。それは、謝罪の要求だとか以前にむしろ謝ろうとしてくる行為だった。確かに、ジンの理屈で言えば損害を被ったのはニシヤだけなのかもしれない。とすると妥当なのか。

 

とはいえお金を持っていても特に使い道がないように、欲しいものなどあまりない。ならまあ、適当に言ってみるのがいいだろう。

 

 

「それなら、なんかすごい高級食材をいくつか見繕ってもらえますか?そのあたりの伝手は特に持っていないというか、あんまり興味なかったので」

 

「OK。高級食材ね。いいぜ。特上のを持ってきてやるよ。あ、連絡先も交換しとかねーか。お前の能力便利そうだからよ。知ったからには使ってみてー」

 

「いいですね。ジンって呼んでいいですか?なんかジンさんって感じじゃないから。こう、身近な感じがあるというか」

 

「なんだそりゃ。いいぜ。俺もお前をニシヤって呼んでるからな」

 

 

許可を取りながら、連絡先を交換する。直接対面した感じ、ジンの前評判もわかるが、話しやすい人物という印象だった。なんというか、良くも悪くも飾らないというか。

 

そんなジンと話している間。その間にパリストンはなぜか笑みを浮かべながらニシヤ達を見ていた。よくわからないやつだ。単に性格が悪いだけならまだ対処のしようもあるのだが。

 

とにかく、その日の依頼はそんな経緯もあり、なんだかんだパリストンが国からの信頼を着実に積むという形で終わった。そしてニシヤも、協会内でできるだけ影響力を持っておきたいので、次の仕事へと向かう。

 

ハンター業も、なかなか退屈しない仕事だった。ただひとつの業務を取っても、世界に影響を与えうる仕事。実家にいた頃はやべー連中がいるもんだと思ったが、いざその一員になるとこれが随分楽しい。

 

そのうえハンターの集大成とも言える暗黒大陸へ行くには、まだ最低でも10年はかかるそうだ。あまりにも果てがない。だからこそ面白い。

 

そんな風に考えながら仕事を続けていると、ある日ひとつの依頼が舞い込んできた。同じハンターからの依頼だ。

 

差出人はダブルの称号を持つチードル=ヨークシャー。ニシヤはその人に呼び出されて、ある病院へと向かうことになった。

 

指定された場所はそこそこの遠方。なので飛行船に乗るなどかなりの時間を要することになるが、向こうもそれは承知なのか、予定はこちらに合わせると言ってくれた。

 

そのためニシヤはある程度余裕を持って飛行船に搭乗することができ、先輩の懐の深さを感じた。そして空の旅も何日と続けていくうちに終わり、目的地付近の空港にたどり着く。

 

そうして先方にとりあえず空港にまで来たと連絡をすると、少しして迎えの車が寄越された。その中には、件のチードル=ヨークシャーも乗っていた。

 

 

「こんにちは。私が依頼をさせていただいたチードル=ヨークシャーです。今回は遠路はるばるありがとうございます。しかしその苦労の分、得られる成果は保証します。今回あなたが依頼を万全にこなしてくれれば、私はあなたをシングルに推薦してもいいと思っています」

 

 

空港から発進した車の中で、チードルが真摯な態度で話してくる。彼女が言うことは、願ってもない話だった。

 

難病ハンター、チードル=ヨークシャー。その肩書きからも、医療という分野で包括的な活躍をしてきたことが窺える。そんな人に推薦してもらえるなら、シングルは固いだろう。

 

なんなら次回以降の試験でヨリゲツを協会に潜入させれば、ダブルも目指せる。悪い話ではなかった。

 

 

「ありがとうございます。ではお願いします。ウイルスなどの鑑定は、俺の健康にも回り回って関わってくるので。むしろぜひやらせてください」

 

「ありがとう。それにしても素晴らしいオーラをしていますね。年齢を理由に評価を誤らなくて良かった。どうかお願いします」

 

「はい、こちらこそ」

 

 

このチードルという人物は、相当実直であるらしい。緑髪にどこか厳しさと優しさが内在しているような顔つき。その姿を見ていると、どこか申し訳なくなる。

 

何せニシヤは、仮にもタブーとなっている暗黒大陸を目指しているのだから。このような人物からすると、そんなものは言語道断だろう。それでもニシヤはビヨンドを通じて暗黒大陸に魅せられた。

 

だから渡航を諦めることはない。それでも申し訳ないと感じてしまう部分はどうしてもある。特にビヨンドの人間性。それをなんとなく察知しながら誘いに乗ってしまったニシヤ自身の過失。

 

取り返しのつかないことだ。

 

まあもしかしたら杞憂なのかもしれないが。しかし、ビヨンドの信頼できないところは人間性もそうだがパリストンだ。あいつはどう考えても普通とは違う。

 

分かりやすく言うと闇側の人間。要するに、それを重用しているビヨンドもまた闇に近い。それは間違いなく一線を超えているほど。

 

とはいえではどうするのか。ビヨンドもパリストンも、優れたリーダーシップを誇る人物たちだ。それ無くして暗黒大陸渡航は難しい。でも逆に言えば難しいだけだ。

 

だから、別に先頭はビヨンドでも、パリストンでもなくていい。誰でもいい訳じゃない。ただもし、本当にふたりともが闇側の人間なら、ニシヤはもうふたりに何も感慨を抱かない。

 

そう、どうでもいい。

 

最終的に、暗黒大陸を探索できれば、それでいいのだから。

 

とはいえ、今のニシヤの立場ではふたりをどうこうは出来ない。止めることなどそもそも無理だろう。

 

だから、ニシヤにはふたりに依存しない地位があるべきだ。入念な準備をしている彼らほどとは言わないまでも、その喉元に噛みつける程度の地位が。

 

たとえ、ビヨンドをどうこうするにせよ。地位は築くだけなら無駄にはならないのだから。

 

そうして、またひとつ。チードルの依頼で病気に対する対抗力を得る。既にウイルスなどへの能力発動の実験は済ませていた。

 

あとは、実際に有用なウイルスさえ手に入れられれば、あるいはあの情報収集で見たゾバエ病を攻略することも可能かもしれない。

 

やはり、ニシヤの能力はこれ以上なく完成している。そのうえでまだまだ強くなれる。だから、最悪ひとりで暗黒大陸へ行っても構わない。

 

ビヨンドが何色でも、問題ない。

 

暗黒大陸渡航までは、あと10年。

 

果たしてそこは、どんな場所なのか。底知れない未知を前に、その世界の年月は、ゆっくりと過ぎていった。

 




何よりも強く、ただ強く。その念は本質的には孤独の証。それでも形成された繋がりは嘘偽りのものではない。その様はあまりにも純粋。
言うなれば純黒。
約束された成長と繁栄。その先にあるもの。それは本人にも分からない。まさに無限の研鑽。カットを極めたと思っても実はさらに先がある。可能性の極地。例えるならまさにオニキス!
なんちって
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