HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜   作:ゆゆ式

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天空闘技場と死神狩り

 

 

天空闘技場。地上251階、高さ991m。世界第4位の建造物に認定されている、天高くそびえ立つ塔。

 

そこは野蛮人の聖地とも格闘のメッカとも呼ばれ、凄まじい数の格闘家がしのぎを削っている場所だ。ニシヤも一時はその舞台で戦った。

 

そんな場所で今日、またひとつ観客を沸かせる試合が展開されていた。舞台は200階。死神と呼ばれる男と新星(ニューピー)、そのふたりがリングの上で戦っている。

 

それはもはや格闘ではなく殺し合いだった。だがそれも当然だろう。この天空闘技場では全てが許される。武器の使用、殺し、なんでもありだ。だからこそ観客は見たこともない刺激に満たされ、雄叫びを上げる。

 

 

『出たァー!ゴン選手の石板返しィー!』

 

 

舞台上で新星・ゴンがリングの石板を剥がす。観客席から見ても常人離れした力だった。そのうえでゴンは、持ち上げた石版を蹴り砕く。それによって辺りには粉塵が巻き起こり、舞台上に混乱が巻き起こされた。

 

おそらくそれに紛れて死神に忍び寄る気なのだろう。

 

まだまだ未熟ながら素晴らしい判断能力。時と運もあるが、その光景にニシヤは確かな素質を感じた。

 

おそらく遠くないうちに頭角を現すだろう。そう考えながら、ニシヤは一旦試合から目を離し、隣の人物に目を向ける。

 

 

「ゴン=フリークス。11歳。その歳にしてハンター試験に合格。まさに異才です。我ながらそんな子を弟子として迎え入れるなんて。少し前は考えもしなかった事です」

 

「その割にはきちんと育てているではないですか。あなたも十分その異才に関わる資質がありますよ。ウイングさん」

 

「そう言ってもらえると助かります。どうも私では彼に対して力不足のように感じて。ところで副会長補佐はなぜここへ?」

 

 

眼鏡をかけた、黒髪の穏やかな顔立ちの男。同業のウイングに、なぜこの天空闘技場にいるのかと尋ねられる。

 

それを説明するのは簡単だ。ニシヤはウイングに向けていた視線を、説明のために再度死神とゴンが戦っているリングへと戻した。

 

 

「第287期ハンター試験合格者。ヒソカ=モロウ。ここでは死神と言われているようですが。まあ彼がいると後々面倒な事になりそうなので、ここでハントしておこうと思いまして」

 

「それは……また。確かに彼は危険ですが。しかしあのヒソカを倒せるのですか?それこそ危険を冒す事になるのでは?」

 

「問題ないですよ。見たところヒソカと俺にはそこまで大袈裟な力量差はない。なら狩れる。そういうのが俺の能力の特性ですから」

 

 

準備が必要な分、一度手駒が揃えば同格相手にはまず負けることは無い。そんなニシヤの思考を感じ取ったからか、隣の席に座るウイングも言葉を止める。

 

少なくとも無謀な戦いを挑む訳ではないと理解したのだろう。随分、優しい人だ。ハンター的には常識人でも、大抵どこか非情な部分があるのがハンターというものなのだが。

 

とりあえず一旦話が落ち着き、周囲に気を配り始める。すると、ウイングの隣にいる、まだ念初心者といった風体の少年が気になった。

 

 

「……そちらの子はお弟子さんですか?まだ小さいのに念を覚えてるなんて、凄いですね。普通の子供は瞑想の段階で挫折すると思うんですが」

 

「そうですね。私もそう思います。ほらズシ。挨拶しなさい」

 

「お、押忍!自分ズシっていうっす!ハンター協会の副会長補佐様においては!ぜひよろしくお願いしますっす!」

 

「はい、よろしくお願いします。ズシくん」

 

 

微笑ましく思いながら返事をする。ウイングを挟んで、ズシという少年の緊張が手に取るように伝わってきた。思えばニシヤにもこんな時期があったか。本当に昔の、前世の話だが。

 

ひとまず一連の挨拶を終え、自然と試合に目線を戻す。舞台では一時格闘を中断し、そこからゴンがヒソカに歩み寄り、何かを手渡しているところが目に映った。おそらく、ある因縁の清算だろう。

 

それ以上は追求する意味が無い。なのでそれが終わると、両者は飛び退き、再び戦闘の構えに入った。ただし、その前にヒソカが口を開く。

 

最初に、ヒソカがゴンに向かって「念について、どこまで習った?」と質問をし、それにゴンが「基礎は全部」と答えた。果たしてそれになんの意味があるのかという話だが、直後。

 

ヒソカがゴンを指差し彼の系統を言い当てる。それは一体どうやったのか。一連の会話の流れでヒソカがゴンをからかうように笑いながらも、自ら説明してくれた。

 

 

「血液型性格判断と同じで特に根拠は無いけどね♦僕が考えたオーラ別性格分析さ♥」

 

 

そう言ったヒソカが、リング上でゴンをねっとり見ながら持論を展開する。何か聞いたことあるような性格分析だ。というかもしかしてこれが知識の源か?

 

 

「強化系は単純一途♥……ちなみに僕は変化系♦気まぐれで嘘つき♠」

 

 

あっている。今までのニシヤの経験則からしても間違いはない。かと言ってそのオーラ別性格分析がすごい役に立つとかはないが。

 

ニシヤとしては個人的に参考にさせて貰っていた。生み出してくれたヒソカには感謝、だろう。とはいえ狩る事はやめないが。

 

そんな風に舞台上で華麗に持論を展開していたヒソカ。彼もそこからしばらくして話を締めると、再びゴンとの戦闘へと戻っていく。

 

決着はすぐ着きそうだった。なのでニシヤはとりあえず、残りのオーラ別性格分析を隣の2人に話すことに決めた。

 

 

「俺の経験則からすると、あの性格分析はかなり正確ですね。そしてもうちょっと踏み込むと、大体の傾向もわかる」

 

「え!?ほんとですか!?なら操作系の性格分析の結果を教えて欲しいっす!」

 

「そうだね。操作系は理屈屋でマイペース。具現化系が神経質。特質系は個人主義、カリスマ性もある。放出系は大雑把な性格。っていう感じかな。もっともこれは俺独自の視点ですけどね」

 

「へー!理屈屋でマイペースっすか!さすがニシヤさんは物知りっすね!やっぱりプロのハンターは違うっす!」

 

 

ズシが、得心がいったという様子で目を輝かせる。それに笑みを返しながら、ヒソカとゴンの試合を見る。どうやらヒソカはそろそろ試合を畳む気のようで、大暴れしながらも能力を発動させていた。

 

よく伸び縮むオーラ。それがゴンの頬にオーラを隠す"隠"を伴いながら貼り付けられている。ゴンは気づいていないようだが、しかし。

 

そこからしばらく、ヒソカがわざと能力を明かすような言動を取ると、ゴンも気づいたようだった。だがその時にはもう遅く、ゴンは完全にヒソカの型に嵌められる。

 

能力を発動させたヒソカの戦闘能力は圧巻で、もうゴンに勝ち目はないと言えるほどのものだった。だがそれでもゴンは奮闘し、ルール上のものではあるものの、僅かに有効打をヒソカ相手に残した。

 

だが、試合自体はそれで終わり。と、そんな中、ニシヤはヒソカに会うために席を立とうとする。しかし、その前に、ウイングに向かってある言伝を残しておくことにした。

 

 

「ウイングさん。良ければゴンくんと、その友達のキルアくんに言っておいてくれませんか。気が向いたらでいいから俺とヒソカの試合を見ていかないかって。多分すぐヒソカは乗ってくると思うので」

 

「……わかりました。伝えておきます。ダブルの称号を持つハンターの貴重な戦闘を見られると。それでは。健闘をお祈りしております」

 

「押忍!健闘を祈っておきます!どうかご無事で!」

 

 

ウイングとズシの声援を背に、ヒソカの所へと向かう。言伝を聞いてゴンやキルアなどが見に来るかは分からないが、ここで重要なのはヒソカを始末することなので、特に問題ない。

 

あくまで副会長補佐にまでなったから、後進の成長の一助になれればという程度の話だ。

 

そのようにしてニシヤは退場する一般客に紛れていき、天空闘技場のロビーにまで移動した。ヒソカが来るまでは完全に何もすることはなく、しばらく広告用のテレビをぼやーとそこで見ていると、後ろから声が聞こえてきた。

 

 

「やあ、待たせちゃったかな♠杞憂ならいいんだけど♦こんなところにダブルの、しかも協会副会長補佐様がなんの用だい♥?」

 

 

粘ついた嫌な声。それが背後で響くと共に、ニシヤはゆっくりと後ろへ顔を向けた。すると、奇妙な格好をした男の姿が正面に映る。

 

男は道化師の装いをしていた。それはよく似合っているが、公共の場で着るものではないのは確かだった。

 

さすがにファッションの域を超えてコスプレにまで達している。だがハンターという現実離れした職業もある以上、そういう人にも見えなくはない。

 

 

「なんの用かって言うとまあ、ハントだよ。200階では10勝をあげるとフロアマスターへの挑戦権が得られる。そして先程の戦いでヒソカ、お前は10勝目をあげた。そして俺はここのフロアマスターだ」

 

「つまり、栄光ある天空闘技場の頂点になる為の戦いで、キミを指名しろと♥?普通そんな話に乗るかい♣?キミはダブルの称号を持つ中でもかなりの武闘派として有名だ♦そんなキミと戦うって♥?」

 

「ダメなの?」

 

「もちろんいいさ♠ちょっと休憩は貰うけど、すぐに指名して挑戦すると約束するよ♣でもおかしいな♦君はそこまでの人情家とは聞いてないけど♥それとも何かあるのかな♠?」

 

「まあね。それには俺の能力が関係してくる。とりあえずちょっとあっちで話そう。俺の能力、見せるよ」

 

 

疑問に首を傾げるヒソカに答えるため、そのまま人けのないところへと誘導する。能力を見られると聞いてヒソカも素直についてきて、程なく誰も通らないような通路に到着した。

 

 

「それで、どんな能力を見せてくれるんだい♠?」

 

「単純だけどまあ、こういう能力だよ」

 

 

明かりだけが輝くその通路で、能力を発動する。念空間からある人物を取り出し、ヒソカの前に立たせた。まあ、そんな人物など1人しかいないのだが。

 

 

「こいつはヨリゲツ=ゴップル。犯罪者で10年前くらいに俺が殺した。今はこの通り、念能力も万全に使えるけど俺の操作対象になっている。でも能力は使えないんだよね。そこでだよ」

 

「ふんふん♥つまり能力を使える人形を作りたい訳だ♠そして僕はそれにうってつけ♣天空闘技場なら合法的に僕を操作できるようになる訳だ♦もちろん、勝てばだけど♠」

 

「そういう事。だから能力喋ってくれる?それにもうひとついい情報もあるよ。俺が人形にしても本人の思考は消えない。あくまで俺に逆らえないようになるだけ。だから好きな事を問題ない範囲ならしてもいい」

 

「それはそれは♦敗者に随分手厚い事だ♠いいよ♥能力を話してあげる♦それで楽しい戦いができるならばんばんざい♠それにこれから死ぬ君には能力をバラしても構わない♦」

 

 

凄まじい自信だ。しかしそれも理解できる。ヒソカは下手なダブルのハンターよりもよほど強い。おそらく世界中の最精鋭が集まるハンター協会の中でも、肩を並べるのは数名程だろう。

 

それほどの能力者。

 

出来ればハントなどしたくないが、いかんせん残しておくと何をするか分からないから、戦力増強の意味でもハントは必須。その為ヨリゲツをとりあえずワンダーチェストに再度しまいながら、ヒソカに対面した。

 

 

「ああ、ヨリゲツだっけ♥?可哀想に♠僕に説明する為だけに持ってこられたのかな♦?せっかく自由だっただろうに、君に負けると怖いことになりそうだ♣じゃあ話すよ♠僕の能力、伸縮自在の愛(バンジーガム)薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)♦」

 

 

それから、ヒソカの説明が始まる。まあ、実にそれっぽい能力だった。道化師、とでも言うべきものだ。

 

しかしそれだけだったのが戦力増強という面で見ると微妙か。手数があるニシヤとはあまり相性が良くないだけに、ヒソカにとっては、能力を話したのは悪手と言えるだろう。

 

どちらにせよ能力はゴンとの戦いで見たから、そもそもが挽回のしようなどないのだが。




死人には名乗っても意味が無い♣能力は、バラしても構わない♦
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