HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜   作:ゆゆ式

20 / 37
ヒソカはね。どこまでも理論的に、どこまでも自分本位で、赴くままに自己を発散する人物でないと行けないの。


奇術vs暴力

 

 

会場が沸き立つ。様々な色の声が、リングに投げ込まれた。ニシヤにとっては久しぶりの舞台だ。ほぼ復帰戦、と言えるだろう。天空闘技場。200階以上で行われる念能力者による戦闘。

 

それは、命の削り合い。しかもほぼ同等の者同士による、一進一退の戦いだ。正直、興行としてはともかく念能力者からしたらたまったものではない。

 

なんせいくら念能力者と言えども、腕が飛べばツテがない限り一生そのまま。ハンター業ですら命懸けとはいえ同格との戦いはそう無いのだから、ここのシステムがいかにいかれているかがわかるだろう。

 

そんな天空闘技場の、まさに中心。戦いの舞台に、ニシヤは立っていた。すぐ目の前には、笑みを浮かべるヒソカもいる。ここからは、本当に命懸けの真剣勝負だ。

 

 

『さあ始まってまいりました!休みがちの死神ヒソカによる!フロアマスターへの初挑戦!相手はなんと!ハンター協会でも有数の地位につく!言わずと知れた若き天才!ニシヤ!フーズー!!』

 

 

うおおおおお!と、会場が凄まじい声の物量に振動する。純粋な格闘を見ようという観客の熱意が、リング全周を覆った。それに、ニシヤの目の前にいるヒソカは笑う。よほど愉快なのだろう。

 

あらゆる意味で。

 

 

「クックック♠こんな数の人に見られていると、無様な戦いはできないね♦どうか存分に踊ってくれよ♥ニシヤ♣」

 

「そっちこそ。多分俺の手数がわかってないだろうから言っておくけど、無様に踊らないでよ?純粋な初見同士の殺し合いだったら、まだそっちにも勝ち目があったのに」

 

「言うじゃないか♣じゃあ、始めようか♠と言ってもそっちの審判の人が開始の合図をするんだけど♦」

 

 

やる気満々のヒソカが、その前に、と、対峙するニシヤとヒソカの間にいる審判を指差す。指名された審判は、シリアルキラータイプのヒソカを前に、僅かに息を飲んだ。

 

そして一歩前に出てくる。

 

 

「あらゆる武器の使用は認められる。互いに誇りと名誉を懸けて」

 

 

ヒソカの圧力に、それでも感情を表に出さず宣言する審判。それに合わせて、試合前最後のアナウンスが流れた。

 

 

『果たしてどちらが勝つのか!?その行方は──!!』

 

 

会場が、全ての中心を凝視する。そしてその瞬間、戦闘の開始が宣言された。

 

 

「ッッッファイ!!」

 

 

オーラが、膨れ上がる。ヒソカとニシヤ、両者の間にあった距離の狭間で、一瞬オーラがせめぎ合った。だがそれも僅かな間の事で、ふたりは審判が開始を宣言した瞬間に、既にぶつかっていた。

 

 

「いいオーラだ♠」

 

 

拳と拳が交差する。視線が交わり合い、まずはお互いに一撃を相手に見舞った。しかし、その攻撃たちはどちらも相手にぶつかることなく、空を舞う。

 

さすがに、最初から一発、とはいかなかった。だが所詮それはニシヤもヒソカも様子見のもの。本番ははここからだ。

 

 

お終いな年頃(ワンダーチェスト)。プレチニ、ラジリカコヨーテ、ベンルー」

 

 

念空間の中で、代謝を極限まで抑えていた魔獣たちを解放する。それによって、彼らは完全に活動段階へと入った。

 

二足歩行で、爪を剣のように扱える魔獣。念を扱う、時速数百kmで走るコヨーテ。大きな体で空を舞い、相手を狩る大鳥。

 

それがニシヤの周りに蠢いた。

 

 

「うーん♠アニマルセラピーには興味無いんだけど♦それが君の能力なら是非もないよ♥」

 

 

それを言うならこちらはヒソカの性癖に興味はない。しかしその能力自体は利用価値があるので、改めて狩る事を決意する。周りに侍る獣達に最低限の指令を与え、ニシヤは様子見に徹する事にした。

 

獣達だけが、ヒソカに向かって突撃する。とは言えど、それぞれがニシヤに匹敵し得る獣達。特に強化系で固めているから、肉弾戦の能力は言うに及ばず。

 

さすがのヒソカも、かなりのオーラを纏う念獣達に、顔を引き攣らせるのが見えた。戦闘狂とは言っても、状況判断はできるようだ。そこで、ヒソカは天井に向かって粘性のゴム状のオーラを、急速に伸ばした。

 

確かに、賢い選択だ。それならば敵になるのはベンルーだけだ。しかし、それは獣達の知能を侮りすぎではないか?

 

 

「うわ♠!?マジ♥!?」

 

 

ヒソカが会場の天井に張り付いたのを見て、ベンルーは即座に動いた。と言っても追撃に即移行した訳ではない。単独で行ってやられるリスクを鑑みて、比較的体重の軽いプレチニを背に乗せた。

 

そしてそのまま、飛翔する。斬撃能力を持つプレチニは、まさにそのままヒソカへのガンメタだった。

 

バンジーガムで封じられれば次の手を出すのに時間が掛かるので厄介だが、バンジーガムを簡単に切り裂けるプレチニはそう簡単に封じられはしない。

 

結果、天井にも想定外の戦力を持ってこられたヒソカは、さながらスパイダーマンのごとく逃走を開始した。

 

 

「ちょっとニシヤ♥!これはズルくない♠!?」

 

「そういう能力だから仕方ないだろ!!それとも諦めて人形にされるか!?俺はどれでもいいよ!!」

 

「冗談♠!まあ見ててよ♦!」

 

 

鋭い放物線を描きながら空を舞うヒソカ。そのヒソカが、啖呵を切りながら空中で体を反転させた。そして懐から布を取り出し、それを広げる。

 

一体何をするのかと訝しげに見ていると、突然その布がヒソカを覆い隠しながら、石壁に変化した。これには思わず、追撃を行っていたベンルーも止まる。

 

ニシヤも、そりゃあ能力は一個くらい隠しておくよねと思った。しかし違う。その石壁がちゃんと体裁を保っていたのは一瞬で、少しすると、それはペラペラと宙になびき出した。

 

 

薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)!ベンルー!とにかく退避!」

 

 

判明した正体に、咄嗟に回避の指示を出す。それが功を奏したのか、擬似石壁の向こうから飛来したヒソカの蹴りを、ベンルーは何とか回避することができていた。

 

 

「クックック♠まあちょっとしたマジックってやつさ♦」

 

 

攻撃を終え、逃げるのをやめたのか、ヒソカが地上へと戻ってくる。そこをコヨーテが急襲するが、事前に隠で隠していたバンジーガムでヒソカは背後へと後退した。

 

どうやら、念獣達とヒソカでは戦力比があまり変わらず、積極的に交戦しなければ戦線が膠着する程度の差のようだ。ニシヤも混じらなければヒソカを仕留めるのは難しいだろう。

 

 

「接近戦は苦手なんだけどね。まあ、そういう事なら。とりあえず3匹とも、戻れ。俺じゃないとヒソカはやる気が出ないそうだ」

 

 

さすがにランゲージリンクが格上も殺せる能力とはいえ、そこそこの強さの奴に逃げに徹されたら仕留めるのには時間が掛かる。それは面倒だ。だから直接叩く。

 

ひとまず念獣達を呼び戻し、ワンダーチェストにしまった。そして新たにチェストから身体能力に優れた魔獣を取り出し、消費する。

 

 

おひとり様な年頃(ロンリータイム)

 

 

念によって、感覚が書き換えられていくのを感じた。どこか、体が窮屈に感じてくる。だからニシヤは着ている服を破り、あるがままの姿を衆目の前に晒す。

 

しかし恥じるような悲鳴は会場には響かなかった。

 

その代わり響くのは、困惑の声。場外で実況も、「これは、なんということでしょう!」などとリポートしている。だがそんな事は気にならなかった。それも今は、関係ない。ただただ野生の本能を解放する。

 

それによって、ニシヤの肌には刃をも通さぬ獣毛が。爪には何者をも切り裂く鋭さが。牙にはなんであろうと噛み砕く力が宿る。

 

そして何より、体に宿る力は、操作系の範疇を超えた莫大なものとなった。それはもう、人間を遥かに超越するほどに。

 

 

「いいね♠いいよ♦獣の力に人の意思♣!それは嫌いじゃない♠!」

 

 

ヒソカが初めて、迎え撃つ構えを取る。今度のは、逃げ腰の姿勢ではなく本気だ。故に、ニシヤもまた、練り上げられたヒソカのオーラを前に、構えを取る。

 

それからしばらく、ニシヤとヒソカの間に静寂が訪れ、向かい合う事となった。とはいえ、これは達人特有の何かとかそういうのではない。むしろ、もっと本能的な、相手の隙を狙うだけの空間。

 

そこでヒソカと睨み合ったニシヤは、ほんの数秒の静寂の末、オーラを爆発させて敵に向かって突撃した。恐ろしいほどの踏み込みに、地面が砕けて破片が散る。

 

あまりの暴威からか、そばの審判が舞台から退避した。

 

ニシヤの斬撃と、ヒソカの殴打がぶつかり合う。しかし当たれば致命のニシヤの斬撃は途中で受け止められ、その隙にヒソカから一発お見舞いされた。

 

だが、一発程度なんの痛痒もない。獣の体に万全のオーラを備えたニシヤの肉体は、ヒソカの攻撃をものともしなかった。

 

 

「硬いね♣骨が折れそうだ♠こっちのね♥」

 

「寒いよヒソカ。他所でやってくれ」

 

「酷いな♦」

 

 

言葉を交わしながら、攻防は加速する。大振りの斬撃は隙が大きいと判断したニシヤは、その時まで斬撃を封印することにした。その為、爪はしまい徒手空拳に移行する。

 

生えた体毛は殴る時に不便だが、しかしそれを、ニシヤは増えた重量でカバーした。それゆえに、あまりにも重い一撃がヒソカを襲う。

 

全てが高水準に纏められたニシヤの拳は、この上ない威力と嫌らしさを両立させるほどのものだった。

 

 

「グッ♠」

 

 

数瞬の攻防で、ヒソカが後方に吹き飛ばされる。技量で言えばそこまでの状況に陥る差はなかったが、純粋な"暴"が技量を無いものとした。

 

 

「これは……♥普通そういうのって野生に飲まれたりするものじゃない♠?」

 

「それはアニメの中の話だよ。設計できるなら獣と人とを合わせた方が強いに決まってる」

 

「ごもっとも♦」

 

 

戯れに納得したヒソカが、再びリングの端から格闘をけしかけてくる。今度は何やら策があるのか、まだまだ余裕そうだった。

 

 

「フッ!」

 

 

ヒソカの鋭い蹴りが頬の横をよぎる。そばで空気が破裂し、おぞましい程の音が鳴った。鞭ですらないのに、恐ろしい限りだ。しかもこれで攻撃系の能力を使っていないというのだから恐れ入る。

 

そう感服しながらも、ニシヤは着実に攻防で有利を重ねていく。僅かでも捻り込める隙があればそこを力でこじ開け、穿つ。

 

 

「グ♠!?」

 

 

打った攻撃が、まるでヒソカを貫くように飛ばした。だが幸い、防御が間に合っていたのか、致命の一撃にはなってなさそうだ。あまりにも頑丈。オーラ量以上に、見事な"流"の技術。

 

突出した能力がなくとも、人格破綻者でなければ一緒に暗黒大陸に連れて行きたいほどの。それほどの能力者。

 

おそらく自惚れでなければ、ロンリータイム発動中のニシヤと戦えるヒソカは世界でも有数。最上位レベル。

 

それを殺すのは惜しい。しかしニシヤの能力なら活かせる。そこがランゲージリンクの便利なところ。

 

 

「ねえニシヤ♠今僕とっても楽しいよ♥」

 

「まあ、俺も戦いは嫌いではないかもね」

 

「それは良かった♣じゃあ、行ってらっしゃい♦」

 

 

不気味に微笑んだヒソカが、身を捩る。その瞬間、嫌な予感を感じて凝をしようとしたが、その後に、身を守るため全身にオーラを回した。

 

ヒソカが、バンジーガムを発動させたのだ。それによって、ニシヤはヒソカを中心に振り回される。ある意味、予想通りの展開だ。いつかはしてくると思った。

 

接近戦をする以上、バンジーガムはいつでもヒソカの意思でつけられる。だがしかし、だからなんだと言うのか。

 

どれだけ振り回し、どこかにぶつけた所で、ニシヤにダメージはない。なのに何故?それにこんなガムなど一瞬で………。

 

ふと、思考が途切れる。バンジーガムを切ろうとしたところで、ヒソカが自らバンジーガムを手放した。それによってニシヤは空中に投げ出される。どころか、それで終わらず、視界が急に見えなくなった。

 

 

「ンが!?」

 

 

急な視界の喪失に、何が起こっているか把握しようとして……失敗する。どこからか来た攻撃に、全ての行動を止められた。

 

 

「敵が硬くて厄介なら、防御できなくさせちゃえばいいんだよね♠さあ、奇術師の幻惑マジック♥とくとご覧あれ♦」

 

 

ヒソカの声だけが木霊する。視界が奪われた中で無数の打撃が襲い来る。その全てがヒソカの攻防力のほぼ全てを注がれた攻撃で、いくら獣の体といえどもそう長く耐えられるものではなかった。

 

だが、視界を奪ったものの正体は感触でわかった。ズバリ、ヒソカが最初の逃亡劇で宙に吊るしていた布。それだけだ。あまりにも子供騙し。しかし実際効果は抜群。

 

てっきり能力を維持する時の労力を考えれば、そうずっと吊るしておけるものではないだろうと思ったから思考から外していた。

 

それに普通に考えれば、投げ飛ばすより先に、ニシヤがバンジーガムから脱出できる可能性もあった。使えるのも1回限り。普通それに全てを賭けるか?

 

やはりヒソカ、イカれている。しかし、だからと言って、そのような手段で視界を奪うことができるのは一瞬。外の様子も、纏ったオーラでおおよそ把握出来る。

 

 

「残念。俺の勝ちだ」

 

「……そうかもね♣でも、やれることはやっといた方がいいんじゃない♠?」

 

 

往生際の悪いやつだった。しかしだからこそ強いのだろう。なんとなくそう思った。そしてニシヤは、そのまま視界の邪魔をしている布を切り裂き、迎え撃つ姿勢のヒソカに突撃していく。

 

盤面は、確実にニシヤのもの。模造品も、作る余裕ができた。もちろんその模造品を、念獣として操作することはできないが。それでも本体には成り代わる機能は変わらずある。

 

間違いなくもうヒソカは終わりであった。それでも諦めないのは、矜恃か、性癖か。おそらくどっちもだろう。底抜けた変態だ。このヒソカという人物は。

 




※この先ヒソカさんっぽい口調の人が例の考察もどきをします。ご注意ください。あと考察周辺を色々弄った影響でどこか見覚えある人もいるかもしれません↓


ヒソカ語らない。

種が割れるようなことは、もちろんしない♠だから彼のオーラ量は秘密♦でもヒントを出すと、モラウは7万オーラ♣そのモラウを足手まといと言った十二支んはそれ以上♠

そのうえで彼は十二支んを戦闘狂として品定めして、90点という指標を出している♥十二支んがモラウに大差をつけた強さを持つのは事実♠その十二支んですら彼を満足させられなかった♣
ならそれが、答えなんじゃな〜い♦?

まあここは7万オーラのモラウの上の十二支んの、さらに上ということで適当に最初に出た数字の2倍とでもしておこうかな♠ちょうど僕が少し前に狩った彼のダブルのように♥
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。