HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜   作:ゆゆ式

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予言と競馬

 

 

ピエロをそばに侍らせて

あなたは初めて奇運に触れる

湖の小人たちと戯れるのもいいだろう

行進曲を奏でるゴミの街の住民はすぐそこに

 

闇の世界は薄暗い

だから灯火で諸とも燃やしつくそう

心配はいらない

獣達は夢見せる旅人達が仕留めてくれる

 

絶望と希望が交差する大きな世界

あなたはいつかそこに足を踏み入れる

そうなればもう小人ではいられない

私ではもう見上げることしか出来はしない

 

--天使の自動書記(ラブリーゴーストライター)

 

 

 

明るく照らされた通りを、連れと一緒に歩く。その間、ニシヤはその詩が書かれた紙を眺め、感心した。転生者連合によって確保した人材。その人物が書いた詩。

 

それは抽象的ではあるものの、あまりにも今後を見通した文章。それにニシヤは純粋な驚きを見せ、その感情を共有するためにそばの人物にもそれを見せた。

 

 

「へえ♠一応僕にもメール来てたけど、本気でやるつもりなんだ♥予言からして間違いなくクモかな♣ニシヤ♠このヨークシン、実に僕好みの戦場になるよ♦」

 

「わかってる。幻影旅団。流星街出身のA級賞金首。でも残念だけど、叩くとしたら頭だけだ。それ以外は別の人に任せるよ」

 

「それでも十分さ♦団長と戦えるんだろう♠?もちろん君と一緒にってことになるだろうけど♥」

 

 

ヒソカが不気味な笑みを浮かべながら予言の紙を返してくる。再度その紙に目を向けると、やはり暗黒大陸についても示唆されているのが脅威だった。

 

これが国家や厄介な敵にも利用されていたらどうなっていたか。少なくとも、先に転生者側でこの予言の能力者を確保できたのは僥倖だった。マフィアを潰すのも、楽になる。

 

何せ能力者の彼女はマフィアの娘だったから。まあ、もう終わったことだ。とりあえずニシヤは、ヒソカと並び立ちながら通りにある店をざっと見渡した。

 

 

「あ、串焼き一本くださーい」

 

「はーい、一本100ジェニーね」

 

 

店主から差し出される串焼きとお金を交換して、道すがら食べるものを手に入れる。ついでにヒソカの分も入手し、お互い並び歩きながら舌鼓を打った。

 

ある意味変な光景だろう。殺し合いをしたふたりがこうして並んで歩いているのは。しかしまあ、そんなものだ。お互い恨みがあった訳ではないのだから、所詮戦いが終わればどちらもただの人間。

 

とはいえヒソカは見ての通りもうニシヤに従順な人形に仕立ててあるのだが。そこは便利な能力者が増えたと喜ぼう。特にヒソカは、生前の能力情報を明かしてくれたお陰で、人形状態でも能力が使えるのだから。

 

などとまあ、そんな事もありながら、ヨークシンと言われる街の朝を歩き回る。ここへ来た目的は多くあるが、ここでは世界最大とも言われるドリームオークションが行われる。ニシヤの目的はそれだ。

 

お金は十分にあるので、参加できないということもない。結局前にお金を消費するために始めた森林事業なども軌道に乗ってかなり稼いでいるから、だいたいどんなものでも落札できるだろう。

 

ニシヤはあまり物欲がないと自覚しているが、ここらで一気に使ってもバチは当たらないはずだ。事業も他にも数種類展開してどれも稼いでいるので、むしろ使わない方が世の中にとっては良くない。

 

そこで、そんなお金の利用計画の一環として、ニシヤは競馬場に向かうことにした。世界一のオークションが開催されるなら当然そのような施設もヨークシンには完備されている。

 

そしていざそこにたどり着いてみると、場はとても盛況だった。会場は、大盛り上がり。競馬などの知識は一応ニシヤにもあるが、凄まじい熱気だ。特にパドックに実際レースを走る馬が入ってくると、その熱気は加速した。

 

 

『一番、ココデオドルヨ。鞍上はマリンバ=マカッセオ騎手』

 

 

パドック。レースが始まる前の、お披露目場所のようなもの。そこにまずは一番目の馬がお披露目ついでに入ってくる。実況によると、どうも随分愉快な者たちが最初の入場者らしかった。

 

それから、一番に続くように馬たちがパドックへ入場してきては馬体を誇示しながら観客の前を通り過ぎて行く。それに競馬に熱中する者たちは真剣な目を向け、今日の機運を見極めようとした。

 

 

『13番、ムームーダンス。鞍上はチミヤク=パッカー』

 

 

観客の目が光る中、妙にやる気を滾らせた馬が登場する。何としても勝ってやる!というような。しかし、どこか危うさも感じる気概だ。この馬に賭けるのはよほどの博打打ちだろう。

 

 

「よっしゃー!ムームーダンス!君に決めた!」

 

 

どうやらその“よほど”が近くにいたらしい。少年のあどけない声がムームーダンスを指名する。馬のそのやる気を買ったのだろう。

 

ではニシヤはどうするか。ここでは別にあまりお金を使う必要がないので、適当に馬連で。調子が良さそうなオーラを出すココデオドルヨとバーバンクロスを指定しておこう。

 

とりあえずそうニシヤが決めたところで、隣のヒソカはどうするのか気になった。順当な2頭か。それ以外か。一応予算は500万程渡しているが。

 

 

「うーん、僕はヨダンテスアーミーとスワンプスーパー♠ツキヨススムの三連単に決めたよ♦当たればおおよそ600倍は行く計算さ♥彼らが一番このレースを面白くしてくれそうだ♦」

 

 

なんとも変態らしい理論だ。しかし戦闘以外もいけるとは、なかなか多趣味な部類らしい。静かならそれでもいいが、適度に楽しむ術を知っているのはいい事だ。これから先、まだまだ働いてもらうのだから。

 

そんなこんな考えていると、披露を終えた馬たちが一斉にゲートに入って行く。そろそろ、レースが始まりそうだ。どこか周囲の観客からかなりの緊張感を感じる。

 

それに合わせるように、目線の先の馬たちも雰囲気を鋭くさせ、いよいよレースの準備が整った。全馬が、枠内に入場する。あとは、開始を待つだけだった。

 

それから程なく、実況の声が会場に響く。

 

 

『さあ、参加馬16頭全てが出揃いました。第45回ノーウェル記念杯。今、スタートの笛が鳴りました!』

 

 

ゲートが開かれ、馬体が躍動する。さすが古来から人間の移動手段として親しまれてきただけあって、その速度は素晴らしいものだった。そんな馬たちの勇姿に、観客たちは熱狂する。

 

もはや、単なる賭け事のそれではなかった。

 

 

「うーんいい雰囲気だね♦しばらくはこんな感じで遊ぶ予定なのかな♠?ヨークシンの裏の方は今どうなってるの♦?確か君たちのお仲間が色々やってるとか♥」

 

「そうだね。裏って言うと十老頭を潰す計画が進行中だけど、こいつら世界最大規模のサザンピースの裏で地下競売してるんだよね。しかもそのお陰で都合よくマフィアが一箇所にいる。だからまあ」

 

「集まってるところをズドン、てわけね♦でも僕たちはマフィアを相手取る必要はない♠予言にも夢見せる旅人達が勝手にやってくれると書いてあるから♥楽チンだね♠」

 

 

獣達は夢見せる旅人達が仕留めてくれる。これは翻訳すると、面倒な敵はその夢見せる旅人達が始末してくれるということ。そして直近面倒なのと言えば十老頭直轄の戦闘部隊、"陰獣"。

 

そいつらを夢見せる誰かが始末してくれるというのだから、ヒソカの言う通り楽で助かる。陰獣の能力は転生者のマフィア組によっておおよそ把握できているが、純粋に戦闘すると面倒な奴が何名かいるから。

 

まあ、残った旅人はそれはそれで面倒なのだが。そこは頭を叩く事で何とかする。夢見せる、幻影、旅人、旅団。幻影旅団。ヒソカも所属している特級の犯罪者集団らしいが。

 

ヒソカの話す内容からしても戦いはかなり面倒なものになるだろう。もちろん戦いは嫌いではないが、戦闘狂という訳でもない。そんな風に思っていると、競馬の方で動きがあった。

 

 

『ムームーダンス!第4コーナーが近づいてきて一気に駆け上がる!まるでもう無様な踊りはしないとでも言うかのようだ!先頭のバーバンクロスすら追い抜く勢いで───!あーっとッ!ここでムームーダンス!最終コーナーにしてバランスを崩す!これは挽回は厳しいか!』

 

 

あまりにも切ない実況が会場に鳴り響く。最初のパドックでの披露が十分な気迫を見せていただけに、会場にもそこそこの落胆の声が聞こえた。だがまあ、そうなるのはだいたいみなわかっていたようだが。

 

僅かな人間を除いて。

 

 

「クッソー!俺の2億がぁぁ!どう見てもポテンシャルはあったのに!チクショー!」

 

 

事実、五番人気で倍率12倍の割にはムームーダンスが勝ちそうな雰囲気が途中まではあった。そばで悔しがる少年は間違っていない。

 

そう思いながらも随分賭けたなと少年の方を見ると、少しだけ見覚えのある姿が目に入った。

 

 

「あ、君は確かキルアくんじゃないか?ハンター試験で最後まで残った。まあそこからは色々あったようだけど」

 

「えっ、あっ、どうも。ってあ!あんたヒソカと戦ってたヤツ!こんな所にどうして………ってヒソカ!?なんで生きてんだよお前!」

 

「クックック♠どうしてだろうね♥まあ同じハンター試験受験者同士仲良くしようよ♦それにもう僕はニシヤの支配下だから暴れられない♣自由には、だけどね♦」

 

 

そばの席から困惑気味に顔を覗かせたキルアが、彼からしてみればおかしい情報を2度も受信して、顔を百面相に変化させる。

 

その困惑はもっともで、なおかつ死んだはずのヒソカに対し、キルアは純粋な驚きを見せた。

 

だがヒソカは我関せず。詰め寄ってくるキルアにも明確な説明はせず、適当にはぐらかした。

 

 

「まあいいや。それよりもしくったなー。全財産スっちまった。なあ、その、副会長補佐だって言う人に聞くのも失礼かもだけどさ、なんか稼ぐ方法知らない?」

 

「知ってはいるけど、もしサザンピースに向けて資金集めしてるならさすがに無理だよ。例えば君たちはハンターだから、俺が管理してるちょっと危険なところで探索とか採集をしてもらえば結構稼げるけど……」

 

「うーん、そういうのじゃなくてさ……やっぱキツイかな?」

 

「うんキツいね。お金を貸してあげることはできるけど、何ジェニー欲しい?」

 

「あー、ははは。最低でも89億ジェニーかな」

 

 

ちょっと後ろめたそうに、頭をかきながらキルアが答える。随分な額だった。さすがにそこまでは出せない。1億とかなら新人ハンターに対する応援という名目で利子も少なく出せたのだが。

 

しかし89億ジェニーとなると、まさにドリームオークション。サザンピースに出品されるある品物の最低落札価格だ。知っている。なぜならそれはニシヤも狙っているものだから。

 

というかこれ目当てで来た側面もある。最低落札価格89億ジェニー。定価58億。ハンター専用ゲーム。グリードアイランド。

 

前まではニシヤも持っていたが、ジェイトサリからの借用期間が過ぎたことにより、返品。出来れば買取りたかったのだが。

 

そしてどうも、ジェイトが事前の契約で期限が来たらサザンピースに提供することを約束していたようで、今回GIがそこに出品される運びと相成ったようだ。

 

まあ攻略できていればそうはならなかっただろうが、ジェイト組にはそれぞれ仕事があり、地位もあるため、本格的に攻略に乗り出すことは難しかったのだろう。

 

残念だ。かく言うニシヤも後に暗黒大陸が控えているため、GIを攻略するつもりはあまりない。ただ便利だと思ったのだ。

 

考えてみて欲しいのだが、まずゲーム内のアイテム。これには相当な効果を持つものがある。中には回復効果があるものもあるだろう。だから、これには利用価値がある。

 

なんなら、GIを上手く使えると、暗黒大陸で無限コンティニューも可能になるかもしれない。

 

だから他の競合には申し訳ないが、ニシヤは今までハンター協会副会長補佐として積み上げてきた資金、そのほぼ全てをGI確保の為に使うことにする。

 

どうせ暗黒大陸に行ったらお金なんて意味がないのだから、普通に全財産の半分位は使っていいだろう。事業を展開していたのもあって、明言はしないが腐るほどお金はある。

 

だからひとまずGIは確実に入手する。キルアには悪いが。まあそういうこともあり、さすがにキルアにお金を貸す事はやめておくことにし、断りを入れる。

 

向こうももはや借りる借りない以前に自分が口にした金額の無茶苦茶さに気づいたのか、貴重な2億をスったことを改めて後悔していた。可哀想というか、なんというか。

 

 

「あっ!そうだ!あんた協会の副会長補佐だろ!?ならなんか天空闘技場みたいに手っ取り早く戦って稼げる場所知らねー!?できるだけ近くで。それならあんだろ!?」

 

「それはいいけど、多分短期間だけしかできないよ?今後の事まで見据えないで稼ぐならまあ紹介できるけど」

 

「?よく分かんないけど紹介してくれんの?でも短期間だけって?」

 

「それは秘密」

 

 

まだレースの余韻が残る騒がしい会場で、キルアと話す。こちらが何かを隠しているのを見て、キルアはちょっと不満そうであったが、紹介自体は喜んでいた。そんな所に、ヒソカが水を差す。

 

 

「ふふふ♥まあ愉快な事にはなると教えておくよ♠ニシヤの代わりにね♦せいぜい頑張りなよ♣」

 

 

不気味に微笑むヒソカが、そう言ってキルアを見た。それにキルアは寒気を覚えたのか、ニシヤにお礼を言いながら去っていく。ヒソカとしては純粋な激励だと思うのだが。

 

もうニシヤによって好き勝手に戦えなくなったわけだし。

 




正直バトル並に描写盛ってしまった気もする→競馬
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