HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜   作:ゆゆ式

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画面が切り替わる(返事がない。ただの屍のようだ)


踊り狂う死と死者の念

 

 

初めはただ、欲しかった。何かが欲しかった訳じゃない。ただ、いつも通りの日常、それだけが男、クロロ=ルシルフルの望みだった。

 

何を捨てても許される街。流星街。そこで育った者は他人より細く、家族より強い絆で結ばれているという。

 

それは「何を捨てても許される場所」と言われるほど、社会から見捨てられたゆえの性質なのかもしれない。

 

それでも、クロロにはそれが心地よかった。家族なんて初めからいない。かと言って、他人などというものも存在しない。ただただ、流星街といういち個。

 

それだけで良かったのに。でも、クロロは奪われた。本当は、見捨てられたとかどうでも良かったのに。ただ、そこにあるがままの環境。それがクロロの全てだった。

 

なのに……クロロ達を見捨てた社会は、挙句の果てにクロロ達から友達を奪った。だから、月並みだが、復讐してやろうと思った。ただ、ただの復讐では終わらせないと誓った。

 

一度流星街を見捨てた連中が、そのままその街から目を背けるように。誰もが恐れる大悪党になる。それが、奪われたクロロの決意だった。

 

他の仲間たちも同様だ。これ以上奪われたくない。そのためには、手を出されないだけの何かがいる。そこに、クロロが頭脳となって答えを出した。

 

それが、幻影旅団の始まり。

 

でも、本当にそれで良かったのかは分からない。分からないから、クロロは、ふと顔を俯けさせてそばの人物に問うた。

 

 

「なあパクノダ」

 

「なあに団長?」

 

「俺たちは、なんなんだろうな?」

 

 

酷く、哲学的問い。

 

それにパクノダは短く答えた。

 

 

「……クモよ。ただそれだけ」

 

「そうだな。俺たちはクモだ」

 

 

クモというひとつの集団。いや集合体。頭に意思の全てが委ねられている訳ではなく、手足はひとりでも動く。そして頭が欠け、手足が何個もげようとも、ただひとつさえ残っていればクモは続く。

 

 

「クモ、か」

 

 

クロロはほの暗い廃ビルの一角で、浸るように呟いた。その目には、もうそばにいたパクノダの事など映っていない。あるのはただ、ふと来たメールを読み取ろうとする心だけ。

 

 

─────

 

※ヒソカ

 

団長へ。端的に述べると、僕はあなたと戦いたい。でもそれは周りの団員が許さないだろう。そこで言っておきたい事がある。

僕は君たち旅団のうち7人の能力を知っている。

そして君たちはA級賞金首。ハンターが狩るには格好の獲物だ。そのうえで、今僕は協会の副会長補佐と組んでいる。この意味がわかるかな?

副会長補佐がその気になればダブルクラスのハンターを複数、ゾルディックも雇える。君たち旅団がどこにいるかも今ならわかる。副会長補佐だって君たちを狩ればトリプルになれるかもしれない。

だからさ、団長。それが嫌なら僕と戦おう。無論こちらが有利な条件になるけど★^_^Å

 

─────

 

 

このメールは、この携帯の画面に映るものはどこまで本当か。少なくとも、クロロの頭の中では真実を見極めるための思考が始まった。

 

 ヒソカの目的   副会長補佐の存在

   鎖野郎    ウボォーの死は予告?

  襲撃の後の接触 旅団と争う理由

功績? 国家の指令?  個人的感情?

   ダブルクラスのハンター

  ヒソカから漏れた情報

 真実   競売襲撃は予測されていた

   死んだはずのヒソカがなぜ生きて?

何らかの能力  旅団には手を出さない

  フェイクの交渉  油断させる為の罠

    どうやって戦力を集めた?

 副会長補佐の権限 否  敵の戦力把握は正確

  旅団を倒せる確信?  真実? フェイク?

 

結局、どうやって戦力を集めた?旅団を倒すにはただのダブルでは不足。しかしそれ以上となると、動かすのにかなり動的情報を伴うはず。

 

情報が漏れていたのは想定外。なぜならヒソカは死んでいると思ったから。問題はヒソカが脅しに出るほどの戦力。見える範囲なら間違いなく嘘。しかしヒソカには間違いなく乗ってくるという確信がある。

 

仮に、そこそこの戦力が揃っていたとして、クロロなら単独でもどうにかすることは可能。本当に言うほどの戦力があるなら詰み。だがクモはひとりでも生き残れば続く。

 

ならクロロがこの案に乗れば、罠でもなんでも時間稼ぎか、罠の設置の目的自体を破綻させることが可能。クロロ1人が死ねば、クモを生かせる!!

 

 

「団長?」

 

 

そばにいたパクノダが声を掛けてくる。続いて、同じビル内で待機していた仲間たちのひとりがクロロの変化に声をあげた。

 

 

「ん?どうしたんだ団長?ウボォーが鎖野郎にやられた件を悩んでるなら心配ねーぜ。俺が……鎖野郎をぶっ殺してやるからよ」

 

 

まげを頭に乗せた旅団メンバー、ノブナガ。彼のその言葉に、クロロは少し考えてから答える。ウボォーの死は想定外だったが……。

 

 

「そうじゃない。それと、計画変更だ。ウボォーをやったことでおそらくマフィアは調子に乗っている。ならそのまま調子に乗らせてやれ。俺たちは一旦解散する。そして数年後、マフィアを徹底的に絶望の淵に追い込む。それがウボォーに対する弔いだ」

 

「ちょ!ちょっと待てよ団長!何言ってやがんだ!それじゃ鎖野郎はどうする!?どうなる!?ウボォーの仇は!?」

 

「もともと……ウボォーは別に仇なんて望んでない。そんなものよりも、優先するべきはクモだ。ウボォーも間違いなくそう言うだろう。仮に仇を望んでいたとしても……おい、フランクリン。そのガキ共を解放してやれ。俺たちの賞金に釣られて来ただけのただのガキだ」

 

 

クロロは、あのウボォーと最も親しかったノブナガを冷静に諭しながら、賞金に釣られてやってきたガキ共の解放を促す。

 

大男、フランクリンも特に異論は無いのか、ガキ共を縛っていた縄を外し「次は相手を見てやるこったな」と忠告すらしていた。

 

それにクロロはなんとなく微笑みを浮かべ、直後、また団長然とした顔へと戻る。果たしてその変化を見抜いた者がいたのかどうか。

 

あるいは、心を読むのに長けているパクノダなら理解できたのかもしれない。それがおおよそ何を意味するかを。

 

 

「それじゃあ俺はまたどこかに潜る。今回はひとりだ。しばらくしたらまた仕事の為に合流しよう」

 

「おお、突然だけど団長の言ってることは間違ってないし」

 

「とりあえず団長の言ってることは絶対ね」

 

「またね団長。いつかどこかで」

 

 

アジトの団員達が、異論はありそうだが理屈の通ったクロロの命令に、ある程度の納得を示しながら見送ってくれる。クロロは団員全員から声をかけられながら、その場を後にした。

 

その最中、解放されたガキ達が「随分仲がいいんだね!べー!」などと言いながらアジトを出て行っていたが。

 

まあ、そのくらいは見逃してやってもいいだろう。誰がなんと思おうと、結果を出せば幻影旅団はその役割を果たすのだから。

 

そうしてクロロはヨークシンを出て、メールに添付されていたある場所に向かう。

 

3日の夜。クロロは街の明かりに照らされながら、いつも通りの自然な風体で歩き続けた。やがて街の郊外に出ると、万が一の事態にも対応できるように気を配りながら、荒野を練り歩いた。

 

そしてしばらくして、約束の場所にたどり着く。そこには、まだ成人したばかりだろう整えられた容姿を持つ男と、ふざけた道化師風の格好をした男がいた。

 

 

「なんだ?戦力の話はブラフか?」

 

 

ありえないとは思いつつも、クロロは茶化すように荒野に声を響かせる。そのようなことを言っても、特に向かい側の2人には効果は無さそうだった。どころか、むしろ余裕に満ちた返答が返って来る。

 

 

「戦力があるって言うのは間違いじゃないさ♣僕も確認したけど、正直純粋なお楽しみだと勝ち筋が見えない人達が多く味方にいた♦一体どんな修羅場を潜り抜ければああなるんだろうね♥?」

 

「そういう事。戦力はブラフじゃない。それでも俺とヒソカだけでここにいるのは相応の理由がある。まあ、ここはあえて配慮としておこうか」

 

 

配慮か。それはまた、好都合だ。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

荒野で待つことしばらく。

 

そこは乾いた風が吹く、なかなか居心地の悪い場所だったが、ようやく目的の人物がニシヤたちの目の前に現れた。そして軽い問答の後、数秒の沈黙が場に走る。

 

 

「相応の理由。配慮。それはお前がヒソカにやったようなことを俺にもするつもりか?まあ、それも悪くなさそうだがな」

 

「まあ、気づくよね。そうだよ。俺の狙いはそんな感じ。大前提は厄介な勢力の掃除だけど、個人的に戦力を得られるなら積極的に得る」

 

「それで、わざわざ3人のみがこの場にいるだけなのは、その個人的な狙いが理由か。しかし凄まじいな。ヒソカを見るに全盛期の状態で使役しているように見える」

 

 

純粋な関心がクロロから漏れ出る。それも当然だ。さすがにヒソカクラスとなると戦闘に運用できるのはひとりだけだが、それでも実質戦力は2倍。

 

つまり話は逸れるが、転生者ネットの戦闘力25万というのはオーラ総量に合わせてかなり正確な数値だった訳だ。

 

限界を見切られていたとも言える。そんな戦力倍増マシーンのヒソカを見ながら、クロロと声を交わす。

 

 

「そう、ヒソカは全盛期の状態。能力も使えるよ。そしてクロロ。君もそうなる。ただまあ困ったこともあってね」

 

「ほう、それは?」

 

「うん♥彼の能力、間違いなく素晴らしいんだけど♦能力まで使えるようにするには相手の能力の詳細を知らなければならないんだよね♣」

 

「なるほど。それでヒソカ、お前はまんまと話した訳だ。ある意味お前らしいな。そして奇遇だ。俺も似たような能力を持っている。当然俺も相手の能力を知らないと奪えない。知っているだろうがな」

 

 

こちらの意図を察したように、離れたところでクロロが能力発動の為の本と思わしきものを具現化させる。しかし聞いた限り、随分不便そうな能力だった。

 

俺が勝ったんだからお前のものは俺のもの、程度で良いだろうに。まあ、ひとりで無数の能力を使えるのは凄まじいが。

 

 

「まず俺の能力から説明しよう。知っているだろうがな。俺の能力はスキルハンター。相手の能力を奪う。制約は、①相手の能力を見る②相手にその能力の詳細を質問し………これでいいか?」

 

「OK。俺の能力はもう見てるね?じゃあその質問は紙で答えるのもOK?」

 

「ああ、お前の能力は?」

 

 

不利な立場を自覚しているクロロが、まず先に能力を公開し、ニシヤ側の能力条件を満たす。それを見てニシヤもクロロに能力を明かすことを決めた。ただし能力はかなり複雑なので口頭では面倒だ。

 

そこでクロロに質問をしてもらい、予めニシヤの能力について書かれた紙を投げ渡した。それを離れた場所にいるクロロが手に取り、確認する。

 

 

「ふむ、間違いなさそうだ。おそらく必殺の罠と疑っていたんだがな。案外対等な条件でやらせてくれるようだ。そっちはフェアな戦いが好きなのか?」

 

「それもあるけど、ヒソカができるだけ人数少なくしたいって言っててね。仕方なくって面もあるよ」

 

「なるほど」

 

「そういう事♠」

 

 

戦闘狂の気は知れないが、まあ全体的な局面を万全に支配するならクロロにばかり戦力を割いてはいられない。だからこれがある程度の最適解。そう思っていたのだが。

 

 

「ニシヤ、だったか。ヒソカの案を受け入れたのは失敗だったな。俺の能力を甘く見積もっていたか?今のところ2対1だが……」

 

 

具現化した本を構えたクロロが不気味に呟く。策とかそういうのではなく、能力と来たか。そりゃあ能力を盗む能力からしてどんな能力を持っているのかは不明だが、個人で能力を複数使う以上、相応のリスクは免れない。

 

現に先程制約の説明で本を手に持って開き続けなければ能力は使えないとも言っていた。そのはずなのに、目線の先のクロロは余裕を崩さない。そしてそのまま、能力を発動させた。

 

 

「残念だが」

 

「ここからは2対2だ」

 

 

荒野の地面を挟んだ先、そこでクロロの姿がぶれる。そして気づいた時には、クロロの姿がふたりになっていた。無論本は持っているからそういう能力なのだろうが。などと思っていると、クロロのうちひとりがヒソカに向かって急に語り出した。

 

 

「休みがちの死神、だったか。まずは感謝しておこう。天空闘技場でのお前の活躍によってこの能力を見つける事が出来た」

 

「………分身(ダブル)か♠でも彼は死んだはず♦」

 

「それがギリギリ死の淵で息を吹き返してな。能力を盗みに来た俺に願ってきたんだ。能力はやるからヒソカを殺してくれって。だがまあ、その時はちょうどヒソカVSニシヤ戦。俺がやるまでもなくヒソカは死んだ。結果どうなったと思う?」

 

「ああ〜♣そうなると彼は憤死しちゃうかもねぇ♥なるほど♦つまりそのダブルは死者の念という訳だ♠それで♥?効果の程は♦?」

 

 

ニシヤが関与しないところで話が進む。隣でヒソカが、視線の先にいるクロロを面白そうに見つめた。完全にお楽しみモードだ。

 

 

「言っただろう。俺は必殺の罠だと思っていたと。故にこのダブルは、死者の念ということもあって常に俺を蝕む。オーラが吸収されきればおそらく俺の存在はダブルに吸収されるだろう。つまり死だ」

 

 

さすがにA級賞金首と言うべきか。死に対する何かを感じない。そしてさらに、クロロは続けて言った。

 

 

「これほどのリスクを背負った能力。それはもはや独立したひとつの能力とも言えるだろう。つまり、わかるか?俺はスキルハンターも扱うことができる。もちろん、ダブルで生み出した分身の方もな」

 

 

とんでもない情報だ。既に盤面的に2対2なのに、万全に能力を扱える敵がふたり。すぐそこで同じ顔が並んでいるのはシュールだが、威力は本物。

 

しかも実質的に状況を読み込むと、ニシヤ側の戦力はそこまででもない。何か特別な能力がないのがニシヤ側の弱点……!

 

まずい状況だ。とは言えど、準備のレベルがまず違うので、負けはあっても能力を取られることは確実にないが。それはそれとして面倒だ。幻影旅団をここで対処できないのは今後の禍根になりかねない。

 




↓例の考察

※シズクとかにやられたモブ影獣のオーラ量判断

・潜在オーラ量3万
・顕在オーラ量3500

シズクは当時無修行状態。ツェズゲラからはGIやるだけ無駄と言われたオーラ量のゴンに利き腕では無いとはいえ負けている。
おそらくその時のゴンは天空闘技場から毛が生えた程度しか成長してないだろう。

そして天空闘技場のゴンはオーラ量自体が大きく増えていることはないので、初期のギド戦からおおよそのオーラ量がわかる。銃弾はこれまでの予想からして250オーラで同等の威力を出せる。防御力もそれだけあれば銃弾を何とか防げる。
だが初期ゴンは銃弾より防ぎやすい金槌攻撃くらいのギドの攻撃を食らってダメージを受けている。
ここからしてゴンの顕在オーラは300もない。纏の状態だとなんなら30ほど。これなら金槌だろうがかなり効く。

となるとシズクと腕相撲した時ゴンが練をしていてシズクが纏だったとしても、シズクの顕在オーラ量はギリギリ3000とかその程度。潜在オーラにすると3万あるかどうか。ただし具現化系ゆえのオーラロスあっての数値だが。

じゃあシズクは作中でモブ陰獣ことモブ陰を2人相手にしていた訳で、そこでシズクはなんと勝ってしまった。仮にゴンとの腕相撲が利き腕ではなかったとかで潜在が1〜2万上下したとしてもせいぜい5万。つまりシズクに傷さえつけられず殺された陰獣はシズクと同等かそれ以下。となるとシズクの能力が無法なのも考えてモブ陰はおおよそ3万オーラのプロ級。
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