HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜 作:ゆゆ式
俺たちに任せときな
9月6日。ヨークシン。連日開催されている世界最大規模のオークションが、今日もまた幕を開ける。
出品される品は、恐竜の糞という一風変わったものから、アシア公国のボンド公爵が愛用したとされる由緒正しい茶器まで多種多様だ。あらゆる品がこの競売の中で飛び交うことになる。
中でもニシヤが個人的に注目している商品は、当然ながら『GI』だ。一時はジェイトサリとの過去の契約もあり手放したが、今となっては多方面で役に立つ素晴らしい一品である。手に入れない理由はない。
とはいえ、少々厄介な事態にはなっている。大富豪バッテラ。彼がなりふり構わずGIを狙っているというのだ。そしてジェイトサリが最終的にクリア不可能と判断して放出したGIは、実に7本。
さすがにその全てに狙いを定めてくるとは考えづらいが、軽く情報収集してみれば、バッテラのGIに対する執着は異常とも言える。その執念は、おそらくGIのクリア報酬に起因するものだろう。
若返りでも望んでいるのか。
バッテラの資産規模を考えると、正面から競うのは面倒だ。正確な額は不明だが、数千億はあると聞く。彼と競り合っている隙に他の富豪が参戦してくれば、横取りされる可能性すらある。
ここは落とし所を探るのが安牌か。そう考えつつ、オークション会場を見渡す。ヨークシン、ドリームオークション。既に無数の人々が放つ熱気がそこには溢れ、なかなかの賑わいを見せていた。
隣を見れば、無駄に顔の良いふたりが並んでいる。
「ふむ、オークションに客として来るのは初めてだな。お宝を持ち金で吟味するというのも、なかなか面白い」
「おやおや♠クロロは盗賊なんじゃなかったのかい♥?もう団長気取りもやめたのを見るに、さながら今は余生を楽しんでるってとこか♦」
「そうでもない。どうにか操作を抜け出せないかは考えている。しかしまあ、俺がいなくともクモは回るよ」
遠くを見るような眼差しで、クロロがつぶやく。負けたら最後、死ぬまで操作される身なのだから、ある意味潔い。
自我が残っているのはあくまで副次効果。能力にハマった時点で「死んだ」と念的に判断されているのだから、余生という表現もある意味では的確だろう。
そこから、会場には続々と人が増えていく。中には、デオドロザウルスの糞の化石を求めてやってきた変わり者もいるはずだ。
財産の半分をゲームに投じようとしているニシヤも、客観的に見れば同類と言える。ある意味、仲間がそこら中にいるわけだ。そう考えていると、ふと念能力者特有の気配を感じた。
かなり近い。そのうちひとりの気配には覚えがある。具体的には、ひとりで『ムームーダンス2億円事件』を引き起こした問題児の。
「あっ!?」
「あっ♠」
通路側にいたヒソカと、その気配の持ち主が互いを認識する。気配の主たちは何かトラウマがあるようで、嫌な物を見るような目でその名を呼んだ。
「おまっ、ヒソカ!?なんでこんなとこにいんだよ!」
「うわっ!本当にヒソカだ!それにえーと、ニシヤさん!に……幻影旅団の人!?」
呼ばれたことで、ニシヤも通路側に顔を向ける。そこには、ほぼ一方的に見知っている顔の少年たちがいた。片方は、短期間ながら就職先を斡旋した仲だ。
「おや、ゴンくんにキルアくん。ゴンくんは天空闘技場以来だね………それで、どうしたの?君たちも何かオークションで欲しい物があったの?」
ムームーダンスの件を思えば、資金はからっきしのはずだが。そう思考していると、キルアが声を潜めて話を切り出してきた。
「あ、それなんだけどさ。オークションが終わってあんたがある品を落札することがあったら話をしたいんだけど。まあ連れの人は、同席してほしくなっけど……出来ればどっちも。なんかよくわかんねーけど」
「オッケー。ふたりとも同席させないよ。お金の相談には乗れないけど、それ以外ならいくらでも聞くから。競売、頑張ってね」
「うっ、お金の話は……その!……じゃ、よろしくお願いしまーす!」
痛いところを突かれたキルアが、状況を呑み込めていないゴンを連れて、焦ったようにその場を離れていく。
困惑する少年。慌てる少年。実に微笑ましい光景だが、彼らが常人を遥かに凌駕する力の持ち主だというのだから、この世界は面白い。
さらにはそれ以上の未知である暗黒大陸も今後には控えている。その対策になり得るGIは、やはり重要だ。出来れば全て買い占めておきたい。
心の中でそう決意しながら、ドリームオークションの開始を待った。会場は既にライトアップされ、準備は着々と整っている。
あとは実際に運営側の動きを待つだけ。というところで、中央のステージで動きがあった。
全周を覆う観客。その只中にありながら、ステージ中央へ向かって舞台の裾の側から入場してくる女性。彼女は風変わりなドレスを着ており、それでありながらその姿は堂々としていた。
さすがに、ドリームオークションとまで言われる場所の人間はどこか普通とは違うらしい。
そしてオークション客全員がその女性の歩みを見守る中、いよいよステージ中央にまで歩み寄った女性が、会場全体へと体を向ける。するとそのまま、開始を静かに待つ客達に声を届けた。
「皆様、ようこそおいで下さいました。このBホールでは、一風変わった品ばかりを──」
淀みない語り口で会場の雰囲気を形作っていく司会者。
『オークション目録に並んでいるのは奇品ばかりだが、そういった癖のある品を集めてこそのコレクターだ』
などと、実に上手い扇動だった。ニシヤもあまりの端的さに拍手してしまったほどだ。それから、会場が温まりきったところで、いよいよオークションが開始される。
「──では早速、一番目の品でございます!デオドロザウルスの糞の化石!」
やはり本当に出てきた。恐竜の糞の化石。普通そういうのはもう少しマイナーなオークションでもないと出てこないと思うのだが、ここでは常識は通用しないらしい。
客席からは「300万!」「500万!」と威勢の良い声が上がってくる。金額はそこから更に瞬く間に上がっていき、最終的にかなりの高額で落札された。
その後も数品を挟み、オークションは着々と進んでいく。そもそもオークションに入るためだけでも目が飛び出るような金額か身分が必要だからか、会場では凄まじい金額が何度も飛び交った。
そんな感じで複数の品を挟みつつ、いよいよ本日のメインイベントへと会場の空気は近づいていく。だがそれは期待と言うよりも、本当にどんな珍品が出てくるのかという興味本位の空気だ。
それでもニシヤからしてみればそれが本命。おそらく誰よりもそのアイテムを実用目的で求めている自負がある。そう思いながらも、時間は過ぎていき、いよいよグリードアイランドの品が司会によって発表される。
「──続いての品。幻のゲーム、グリードアイランド!……皆様、中央のスクリーンにご注目下さい!」
その言葉と共に、ステージ後方のスクリーンにあるゲーム機が映し出される。一見、何の変哲もない旧世代のジョイステーションだ。
だが事前に目録で特殊な品だと理解していた参加者たちは、細部に目を配る。その結果、一部の観客が「コンセントが刺さっていないのに電源がついている」ことに気づき始めた。
それこそが念の力。それから、その気づきを煽るように、司会の女性が薄く微笑んで指を弾くと、ひとりの男をステージに召喚した。
舞台袖から現れたのは、とてつもない筋肉を内包したバーサーカーのような人物だ。彼は巨大な木槌を壇上に持ち込むと、そのままスクリーンに映る実物の商品に対し、渾身の打撃を叩きつけた。
「おおおおお!?」
突然の暴挙に観客たちが身を乗り出す。しかし直後、壇上のGI本体が全くの無傷であるのを見て、驚愕のどよめきが上がった。
司会者はそれを得意げに受け流し、ソフトが持つ不可思議な力を解説する。それがゲーム機本体に挿入されている限り、いかなる衝撃からもハードを守ってくれるのだと。
『ゲーム内で誰かがプレイしている限りは』
そう、その「誰か」とはジェイトサリだ。彼は今も、ソフト自体は譲ると言いながらゲーム内にとどまっている。プレイしているだけで利益が勝手に発生する、それほどの価値がGIにはあるからだ。
あとは単純にそう簡単に出てこれはしないというのもあるだろう。ともかく、プロのハンターでも有用だと感じるほどのものがあるのだから、GIは暗黒大陸でも有用なはずだ。
そう考えながら、スクリーンに映し出されたジェイトサリの近影を見る。懐かしい顔だが、やはり老けたか。
濃い髭のせいで正確な年齢は判然としないが、彼がなぜGIを放出するに至ったか、その理由を最後に司会が語った。
「『もしも2000年1月1日までに、ゲームクリアを公表し、それを証明し得る者が現れなかった場合。仮にその時点で私を含めた5名のプレイヤーがプレイ中であったとしても……』」
5名。それはニシヤも含めた、生き残りのジェイト組の数だ。
「『無償でこのゲーム7本をハード機もろともサザンピースオークションに提供し、才能ある後輩にゲームクリアの夢を託すことをここに宣言する。プロハンター:ジェイトサリ』」
最後に名前を読み上げ、契約内容の明示を終える。だからこそニシヤは、今こうして競売の場にいるのだ。
契約を無かったことにするわけにもいかない。正規の手順で手に入れる、それだけだ。そして注意事項の説明が終わり、いよいよGIの競売が宣言される。
「それでは10億ジェニーから!お願いいたします!」
変わり種が集まるBホールでも、最高額となる競売がスタートした。会場の熱気は一気に沸点に達し、まずは11億の声が上がる。
「11億!」
「15億!」
「30億!」
値は倍々に跳ね上がり、留まるところを知らない。だが、いずれは天井が来て落とし所が見えてくるはずだ。本来であれば、だが。
最初に均衡を破ったのは、客番号71番だ。ふくよかな少年。彼がいきなり「60億」を提示した。その表情には余裕が窺える。佇まいからして、裏社会の人間だろうか。
だが、それに被せるようにあのバッテラが動いた。
「16番!さらに倍!120億!」
攻めた数字だ。ここで両隣のふたりから「参戦しないのか」という視線が刺さる。もちろん参加する。とりあえず叩き合うため、倍アップの合図を送った。
「10番!さらに倍!240億!」
これで張り合ってくるかどうか。伺っていると、なんとここからさらに倍を重ねてくる猛者が現れた。
「なんと!201番!重ねて倍アップ!480億です!」
正直、正気とは思えない数字だ。よほどの理由がなければあり得ない。だが、201番という番号には覚えがあった。
温和で少し抜けた印象の少年。そう、キルアと一緒にいたあの少年だ。
これは、盛大にやらかしたのだろう。
「10番、すかさず重ねる!なんと490億!アアーッと!16番500億!なんという激戦でしょう!まだまだ続きます!」
ゴンの失態を塗り潰すように、とりあえず10億上乗せする。バッテラも即座に応酬してくるが、ニシヤも一歩も引かずに応戦の構えを取った。
向こうもニシヤの立場を承知しているため、虚勢ではないと理解したのだろう。しばらく熾烈な競合が続いた。結果は、バッテラの競り勝ちに終わったが。
しかし最終落札価格は、驚愕の「643億ジェニー」だ。
ゲームソフト一本にこの値段。もはや世間の騒ぎでは済まない。底知れない狂気すら感じさせる、執念の金額だった。
それによってバッテラの覚悟を察したニシヤは、会場を去る前に、午後の競売を終えた後、彼への面会を要請した。
もちろんそのタイミングでの要請は多大な警戒を受けるに至ったが、それでも何とか受理され、一行はバッテラが占有する一角へと足を踏み入れた。
お互いまだ会場内にいたので、会えるのは比較的すぐで、案内された先にて、ニシヤはバッテラに声を掛けた。
「どうもバッテラさん。GI落札、おめでとうございます」
ここでは純粋な賛辞を送る。だが、向こうの護衛のひとり、マネーハンターのツェズゲラはかなりの警戒をもってこちらに一歩踏み込んできた。
「ハンター協会の副会長補佐が、バッテラさんになんのご用で?まさか競売で負けた憂さ晴らしとは言わせませんよ。いくら何でも、それは権限の逸脱だ」
「ああ、そんなことではありません。賛辞の気持ちは本当ですよ。ただ、ハンターでもないバッテラさんがなぜこれほど執着するのか気になりまして。その姿は、まるで何かに取り憑かれたハンターそのものに見えましたので」
あえてハンターに例えてみる。あるいは、憧れに似た何かがあるのか。ツェズゲラの警戒を制して、バッテラが口を開いた。
「……私は愛を求めている。GIにはそれがあると判断したのだよ。この回答で満足かな?」
「そこですよ。『愛』です。あなたにはそれほどまでの執着がある。良ければ、お話を聞かせていただけませんか?ここまで入手を妨げられては、こちらも放ってはおけない」
「……もし、話す気が無いとしたら?」
その時──特に何もしない。ニシヤは何も知らないし、関知もしない。遠慮なく、残りのGI全てを落札して去るだけだ。
「別にどうもしません。お力添えもできない、というだけです。正直に申し上げて私はあなたのお力になれるとは自負しているのですが。例えばそういうツテだとか」
「ツテだと……それは例えば、余命が確定した人物をも救えるというほどのものなのか?ありえない。10年どころではない、私がありとあらゆる手段を尽くしたのだ。それでも!」
「そうですか。では結論から述べます。ゲームの%(割合)回復という概念、便利ですよね。地味ながら死に際でも持ち直してくれる。時間制限さえなければ、"無限の回復"すら可能だ。どう思われますか?」
「それが何の……!いや、まさか!?」
驚愕に目を見開くバッテラ。それにニシヤは答えず、ただ微笑むだけだ。そこそこ整った顔でそれを行えば絵にはなるだろうが、それ以上のことはしない。
「本当にあるのか?嘘……いや、あなたの立場でそれはない。ならば本当に?それはどんなものなんだ?頼む、教えてくれ」
「ですから、『%回復』ですよ。グリードアイランドが好きならお分かりでしょう。よくあるやつです。もちろん、相応の労力を伴うのでタダとはいきませんが。知っていますか?『カーネーション連合都市』という場所を」
「いや、知らない。そこを知らねばならんのか?」
「いえ、これから1ヶ月以内にそういう都市ができます。ニュースにもなるでしょう。謳い文句は……『だいたい何でも願いが叶う都市』といったところかな。そこへ行ってみてください。紹介状は書いておきます」
バッテラもニシヤも、腹の底までは明かさない。あくまで「そういう場所がある」とか「例えば」とか。
地位が高くなればなるほど、言動にはそういう曖昧さがつきまとう。これは一種の職業病のようなものだ。だが、そんな遠回しなやり取りの結果、互いの言いたいことは概ね伝わった。
「わかった。ひとまず、ここのオークションのグリードアイランドは譲ろう。私が既に所有しているものも……そのカーネーションで真偽を確かめてから、全て譲渡すると約束する。どうだろうか?」
「なっ!?待ってください!それでは私達との契約はどうなるのですか!?」
「無論、違約金は払う。もしもの場合はだが。しかしツェズゲラ、君に恩を仇で返すような真似はしない」
「……わかりました。では副会長補佐、失礼します」
ツェズゲラが不服そうに一礼し、バッテラ一行はその場を去っていった。紆余曲折あったが、これでGIは全て入手できる。
あとは、話があると言っていたキルアとゴンだ。資金繰りの話からしてGI関連だろうが、副会長補佐という立場上、ハンターの範疇であれば力になれることもあるだろう。
↓例の考察
※ウボォーとやれてた精鋭陰獣のオーラ量判断
・潜在オーラ量6万
・顕在オーラ量7000
これはめっちゃ簡単。まず念能力者はゲンスルーとゴンの戦いの攻防力での描写から、3倍程の自力差があると一方的に攻撃が通るようになり、戦いが成立しなくなる。基本能力などの例外を除いて。そこでウボォーさんに殺された陰獣を見てみると、能力以外で陰獣がウボォーさんと戦えている描写はない。
山犬、骨の玉で瞬殺。ミミズ、ビックバンインパクトでほぼ消し飛ぶ。ここから陰獣とウボォーには2〜4倍程の差がある事がわかる。ただミミズも山犬もウボォーに攻撃を通しているので、それ以上の差はないと考えるのが自然。そこでミミズの描写から考えると、おおよそウボォーと陰獣の差は3倍程。
4倍差があるとさすがにミミズもビッグバンインパクトで消し飛ぶのでそれくらい。何せ4倍差になると硬も含めると8倍パンチがミミズを襲いそれだといくらんでも消し飛ぶので。
6倍ならミミズが地中にいた事も含めて、一時命を繋ぐくらいなら可能と判断。よって精鋭陰獣のオーラ量は6万。顕在オーラは7000。