HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜   作:ゆゆ式

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エリミネイト、オン。


GIというゲーム

 

 

ドッジボール。それがレイザーのテーマだった。

 

彼の提案したドッジボールのルールはこうだ。まず選手の構成は8名。外野1、内野7で始められる。

 

そしてこのゲームでは特殊ルールとして「クッション性」というものがあり、味方Aに当たったボールが味方Bに同じく当たれば、ふたりは即アウト。ただし味方Bがボールを取れれば両方セーフ。

 

では味方Aから敵Aにボールが反射して当たった場合どうなるかと言うと、この場合は敵Aのみがアウトとなる。ただし敵Aがキャッチに成功すればアウトになるのは味方A。

 

つまりだいたい避けるか止めるかすればこのルールは問題ないものとなる。そのうえで原則として、このゲームに基本復活制度はない。外野が敵内野に攻撃を成功させても内野には復活できないし、外野はそのまま。

 

攻撃を成功すればアウトを取ることは内野同様できるが。

 

しかしその復活制度の代わりとして、『バック』という制度を使えば、一度限り外野から復活することができる。

 

使うタイミングも自由で、内野が1人もいなくなる、という事がなければ問題なく使用できる。逆に内野が1人もいなければその時点でバックも効力を失い、試合終了だ。

 

そんな説明を終えたレイザーが、オーラを滾らせて共同組を見据える。どう見ても念獣にオーラを割いている分、表に出ている顕在オーラと言われるものは衰えているはずだが、とてもそうは見えなかった。

 

 

「じゃあ始めようか諸君。そこのコートに移ってくれ。チームメンバーは決めたかい?全部で8名だが。見たところ、念獣を出してる俺にならそこそこ戦えるのが揃ってるだろう?」

 

 

あまりにも舐め腐った発言。しかし言い返す事は出来なかった。海賊達のいる体育館の中で、共同組全14名が顔を突き合わせてメンバーを選ぼうとする。最終的に選考されたのは、ビスケの言うメンバーだった。

 

 

「参戦メンバー8名!とりあえず製作者の責任としてジン!あとは……あたし、ゴン、キルア、ゲンスルー、ゴレイヌ、ツェズゲラ、サブ!以上の8名!これで決定だわさ!」

 

「OK!じゃあ早速やろうよ!」

 

「おっ、俺か?最近螺旋回転掌ってのを覚えたんだが、それを使う時が来たみてーだな」

 

 

アチョー、と奇妙なポーズを取り始めるジン。その奇行にもはや誰も声を掛けず、一行はレイザーに案内されるままコートへと向かった。

 

自陣と敵陣に分かれた白線。意外とすぐそこにそれはあり、いよいよドッジボールの陣形配置が始まる。

 

 

「とりあえずジンもいるし〜、あたしは外野かしらね。切った貼ったは若い衆に任せるわさ。とりあえず敵を倒したかったらあたしにパスを回しなさいな」

 

「押忍、ビスケ姉さん。しかしジンにビスケ姉さんのふたりもいるとなると簡単に終わるんじゃねえか?確かにあのレイザーとかいう奴はとんでもねーオーラ量だが、あんたらふたりだって負けてねー」

 

「ありがとう。でもそうでもないわさ。どう見てもごく単純とはいえ、あれだけの念獣を使役する能力、尋常ではないわさ。それほどの能力者。先程レイザーは全力でやると言ってたし、念獣にただオーラを割いてゲームキャラに徹するだけ、ってことは無いだろうね」

 

 

右コートから敵の左コートの方へと移っていくビスケに、ゴレイヌが声を掛ける。しかしそのゴレイヌの言葉を、ビスケは否定した。

 

先程までやっていたスポーツ対決もそうだが、ここでは念能力の使用が無制限だった。つまり目に見えるものだけが能力の全てじゃないかもしれないし、純粋に全力を出せるルールになっているのかもしれない。

 

どちらにせよタダでは行かないだろう。そう思いながらビスケは自陣を後にした。残されたゴレイヌは、冷や汗をかく。ああも先輩に言われれば楽観もできない。

 

しかし、と、離れていくビスケを見る目を動かし、自陣の方を見ると、あれほどのオーラを纏ったレイザーを相手にできると喜んでいる末恐ろしい子供が目に入った。

 

 

「すごいねキルア。レイザーってジンの仲間らしいけど、俺ジンとレイザーのどっちが強いか分からないや。そんな相手に、ゲームじゃなくて現実で戦えるんだよね?遠慮しなくていいんだよね?」

 

「そだな。まあ現実と同じように戦えるって事だから。でもそれは相手も同じだぞ?あんなオーラの奴に勝てるか?ここは大人しくお前の親父に任せとけって。俺達はサポート枠だよ」

 

「でもそれじゃあ、俺達やることないじゃん。キルアはそれでいいの!?あんなに修行したのに!それで!」

 

「お前なあ………それならまあ、お前の能力で何とかするしかないんじゃね?それで無理なら諦めろよ」

 

「うん!」

 

 

どう考えてもイカれてる。ゴレイヌは思った。そんなゴレイヌの思考も後に、いよいよドッジボールの盤面が整う。8対8。外野内野にそれぞれ念獣や人物が配置され、位置についた。

 

 

「それでは試合を開始します。審判を務めるNo.0です。よろしく」

 

 

コート外で、レイザーに作られた念獣の審判が声をあげる。どうもかなり複雑な思考をなしているように見え、オートながら相当な精度を誇っているのが窺えた。普通のオートだとこうはいかないのだが。

 

とまあそんなハイテクな念獣が審判を務める中で、コート中心、中央部でジャンプボールの準備が行われる。いわゆる初期のボールの奪い合いだ。まずはどちらにボールが預けられるか。

 

それに関してはゲンスルーが担当している。ジンを主軸とするなら、念獣にオーラ量で明確に張り合えるのはゲンスルーだけだからだ。

 

故にスローインの時までゲンスルーは神経を研ぎ澄ませていたのだが。実際に審判によりボールが投げられた時、相手の念獣は対抗してこなかった。

 

 

「なにっ!?」

 

 

想定外の事態に、驚くゲンスルー。しかしレイザーの陣営の方を見れば、なぜボールを奪いに来なかったのかは理解できた。

 

 

「先手はくれてやるよ。というより、くれてやるしかない。さすがに、ジン相手に念獣を多数展開しながら勝てるとは思えないんでねぇ」

 

 

レイザーは、念獣を再び自分の中に戻していた。どうしても普通の念獣は自分のオーラを割いて強化する必要があるから、それを嫌ったのだろう。

 

そもそもそんな事してルール上ありなのかと自陣のキルアは思うが、審判からの返答は「あり」。ゲームとしてそういう設定ならどうしようもない。

 

そうしてオーラを集め、およそ念獣を外野の一体と内野の二体に減らしたレイザーは、自身のおおよそのオーラ量を言った。

 

 

「なにぶん俺自身犯罪者でシャバの基準には詳しくないからあれだが、今の俺のオーラ量はそこのゴンを1000だとすると、ちょうど10000ってところか?」

 

 

あまりにも多い……そんな思考が共同組の中で駆け巡る。そしてその目算がおおよそ間違っていないこともコート内の彼らは理解できた。強いて言えばゴンのオーラがもう少し少ないくらいか。

 

レイザー自身のオーラに関しては恐ろしいほど正確。ゴンも全体的に見れば、十分に中堅の下位には位置し得る。それが本当にただの子供だと思えてしまうほどのオーラ量。

 

 

「やるじゃねーか。俺と別れてからかなりオーラ量をあげたな。ま、頑張り賞ってところだ」

 

「言うじゃないかジン。だがまあ、こっちもまだまだ全開じゃないぜ?お互い久しぶりに実力確認と行こう」

 

「そりゃいいな。じゃ、とりあえず俺の螺旋回転掌見せてやるよ!すごいぜ!?ぐぐぐー!って何もかもねじ切っちまうからな!」

 

 

そんな事を言いながら、ゲンスルーにより確保されたボールを手の中で弄び、そこにオーラを込めるジン。

 

物にオーラを留めて、なおかつそれを放するのは放出系の最も得意とするところだが、幸いジンも放出系は苦手ではなかった。

 

故にジンはオーラを練りながら、確実にボールにオーラを込めていく。そして適当にコートをうろつき、一体の念獣に狙いを定めた。

 

とはいえここではあくまで螺旋回転掌を見せることを目的に、標的を見る。よく観察すれば、ジンの手元のボールにまとわりついているオーラは、凄まじく微細に回転しているのがわかった。

 

 

「んじゃ、まずは一匹目!」

 

 

ようやくその気になったのか、ジンが手に持っていたボールを投げる。球技でも嗜んでいたのか、美しいフォームで標的に向かってそれは投擲された。

 

ボールが空気を切り裂き、狙いの場所へと飛んでいく。ジンの目線の先にいる念獣は、自分に向けて放たれたそれを、避けられないと判断して受けようとした。しかし、それもまた悪手。

 

念獣の手元にまで到達したボールは、そのまま念獣の体にその質量をぶつけると、そのままそこに込められた念を発動した。

 

 

「うお!?」

 

「ぬっ」

 

「うわ!?」

 

 

コート近くにいた誰もが驚愕の声を浮かべる。ジンのボールを受け止めた念獣が、ふと体勢を不自然に捻らせた。それだけならまだ何かをしていると見ていられたのだが、なんと。

 

それからその念獣の腕周りは、一瞬にして人間ではありえないほどねじ曲げられた。もちろんこれはジンの込めた念によるもの。

 

 

「名付けるなら超螺旋回転掌ってところか」

 

 

人間が受ければ、タダではすまない。それほどの光景を生み出したジンに、みなが畏怖のような感情を抱く。レイザーも、まだ底を見せないジンの力に正面勝負では分が悪いと冷や汗をかいた。

 

 

「しかし、俺の念獣はよく回転を抑えてくれた。今度はこっちの番だぜ?ジン……ついでに、俺の念獣は合体できる。そこの、中堅連中では1番強いゲンスルーって奴も、合体すれば十分に対処可能だ」

 

 

腕が完全に壊れた念獣を外野へ移動させつつ、レイザーが自陣に落ちたボールを取る。そしてオーラを滾らせ、二体になった外野の念獣を一体に統合した。

 

まあこれもキルアいわく「んなのありかよ!?」との事だが、審判いわくこれまた「あり」なのだ。そうして、敵の外野と内野にそれぞれジンとビスケ以外を上回る戦力が生まれる。

 

奇しくも、共同組の内野のジンと、外野のビスケのようなバランスだった。こうなってしまうと一概に楽勝とは言い難い。ある意味ビスケの予想は当たってしまった訳だ。

 

結果自体はあまりにも単純なものだが。

 

 

「じゃあ、行くぜ!!」

 

 

レイザーによる、猛攻が始まった。まずはレイザーの一投。鋭い槍のようなそれは、純粋な直線攻撃だった為に、共同組の全員がたまたま避けられた。

 

続く二投目は外野の念獣による正確な狙撃。ジンがいるところは必ず避け、そことは離れたところに向かって投げた。

 

一応全員がジンの後ろに隠れれば回避することは可能だが、その場合レイザーによって万が一ジンが排除された時に全員が一巻の終わりを迎える。故に全員集結!という訳にもいかなかった。

 

それによって、まずは単純に基礎能力で最も劣るツェズゲラが落とされる。念獣7体のうち4体を吸収したレイザーを1万として、念獣一体あたりは2000オーラ。融合念獣は単純計算で4000オーラ。

 

戦闘系ではない中堅所のツェズゲラにはかなり厳しい攻撃だった。

 

 

「グッ!?」

 

 

優れた攻防力の移動により致命傷は免れるが、自陣でツェズゲラが呻き声をあげる。ボール自体はまともに受けたので、アウト+戦闘不能は固かった。

 

 

「まずはひとーつ」

 

 

このようにして、レイザーは戦略を展開していく。ジンとしても、死なない程度ならわざわざ自分の隙を作ってまで他の奴のアウトを防ぐ気はなかった。結果、内野陣はとてつもない猛攻に晒される。

 

 

「そらそらどうした!お前らはジンとビスケット=クルーガーだけか!」

 

 

合体念獣とレイザーの間で、超速のボール回しが成立する。というか結果的にボール回しになっているだけで、それは立派な攻撃だった。コートの縦を、おぞましいほどの速度のボールが過ぎる。

 

それを内野に残っているゲンスルーを始めとした人物達が転がり、飛び、何とかして避けていく。特にレイザーの攻撃は、ジンが守ってくれる可能性があるとはいえ、まともに当たれば死だった。

 

 

「おいおいなんだこりゃ!?いつからPK以外でGIは殺戮ゲームになった!?おい!ジン!どう考えてもあんたがいるからこんな難易度なんだぞ!?何とかしてくれ!俺は能力も出せないし限界だ!」

 

「うるせー!おめーらが弱いのがわりーんだ!死ぬ前には助けてやるから自分たちで何とかしやがれ!」

 

「つってもこりゃ続いたら俺たちのうち誰かは死ぬだろ!?どうすんだよこれ!あいつ自分を犯罪者とか言ってたけどまじで躊躇がねー!」

 

 

ゴレイヌにキルアに、誰もがこの攻防での終わりの結末を連想する。このままだと誰か死ぬ。そんな恐怖感が内野陣に潜み始める中で、ひとりだけ、避けることを最小限に、オーラをやたらめったら練る存在がいた。

 

 

「おいおい!ゴン!そんなに無駄にオーラを練って何をするつもりだ!?そりゃお前が制御できる量を超えてるだろ!?」

 

 

レイザー換算で1000オーラのゴン。そのゴンが、常に纏えるオーラの限界量を超えて、あまりにも膨大なオーラを練る。だが通常そんな事をしてもオーラを無駄に消耗するだけ。

 

それが攻防力になることはない。本来なら。

 

 

「そうだ!わかってる!だからレイザー!勝負だ!」

 

 

限界以上のオーラ量。およそ数千のオーラを噴出させるゴンが、今にも倒れそうな勢いで啖呵を切る。そしてレイザーと合体念獣が超速のパス回しをする中、ゴンは構えた。

 

 

「最初はグー!」

 

 

構え、オーラを一点に集中させ、声を張り上げる。ほぼ完全にレイザーから見ると無防備な状態。にも関わらず勝負と来た。これはあまりにも。

 

 

「面白い!じゃんけんか!?それなら一発!」

 

 

レイザーが、標的を絞る。当てることから、潰すことへと。そのフォームを変化させて。

 

 

「受けてみな!じゃんけんで何とかできるならなぁ!」

 

 

胸を張り、腰を落とし、弓なりに腕をしならせる。それがレイザーなりの、挑戦者への誠意。ある種全力をぶつけられる事への歓喜と感謝。それらを伴って放たれたそのボールは、容易に、音を置き去りにした。

 

 

「じゃんけん!」

 

 

空気を破壊するレイザーの投球。それを視界に収めたゴンが、それでも続けて宣言を続ける。「俺は逃げない」と。

 

その様子はあまりにもイカれている。

 

誰もが死ぬと、逃げるべきだと直感した。

 

しかし、ゴンが"練"で体の周囲に放ったオーラおよそ6000。そのオーラがさらに輝きを増し、拳に収束する。そのオーラは、もしかすると。

 

 

「グー────!!!」

 

 

レイザーを、超えていたのかもしれない。

 

それを最後に、ゴンの意識は途絶える。後に残されたレイザーは、全力で受け止める姿勢を見せた。

 

 

「グッ!ぬううう!!」

 

 

ゴンの全てが集約された一撃。本来ならひょいと避けられる程度の、あまりにも隙だらけなもの。それをレイザーは、「受けた勝負だ」と全身を使って受け止めた。

 

しかし、ゴンのオーラが込められたその球は、レイザーのオーラと競うように削り合い、彼の踏ん張る力を奪う。

 

それでも拮抗の姿勢を見せるレイザーの姿は流石であったが、勝負という面では、残念ながらレイザーに限界が先に来た。

 

 

「………くっ、コート外。しかも球を持ったまま。言うまでもなくドッジボールではアウト、か。仕方ない」

 

 

自陣の白線からはみ出したレイザーは、噛み締めるように声を発する。そして唯一残った内野の念獣を頼りに、『バック』を宣言した。

 

これでレイザーには後が無くなった。とはいえあくまで後が無くなっただけ。まだ戦いは終わりでは無い。しかし勝負自体は、間違いなくゴンの勝利だった。

 

それからは、ゴンの全力を認めたジンによって、レイザーは着実に追い詰められて行った。そして。

 

 

「レイザー選手アウト!よってゴンチームの勝利です!」

 

 

審判によって、最後の判定が下された。

 




↓例の考察

※レイザーのオーラ量判断

・潜在オーラ量14万
・顕在オーラ量1万6000

ヒソカよりゴレイヌがゴンの師匠などと誤解された件から、ゴレイヌはゴン達より明確にオーラが上とわかるので、それを上回る念獣となると1000は確実に超えるオーラ量を持つ。
原作ツェズゲラが迅速な攻防力移動をしても一撃で戦闘不能にされたのからして、念獣一体のオーラは2000程度だろうか?
そしてレイザーが試合中に出した念獣は7体。合計14000オーラ分にもなる。レイザー本体の分を考えるとレイザーの総顕在オーラ量は1万6000程。
潜在は13〜5万程あるか。審判は多分ほとんどオーラ食ってない。


それと一話目にこのレイザー考察を見せてしまった読者はすまない。あまり作品には関係ない者たちの考察をするべきだったが。
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