HUNTER×HUNTER立志伝〜世界に追放された異能たち〜   作:ゆゆ式

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終わりと始まり、前半

 

 

ヨリゲツが複製体に取り込まれると共に、辺り一帯の草原に静寂が戻る。しばらくニシヤは手の中に残る感触に、瞠目した。そしてこれが、この世界の裏で起きている日常なのだと理解する。

 

そうなると、ニシヤの精神も不思議と凪いだ。そして、ついで離れたところで戦っているジェイト組の戦闘音が耳に入ってくる。目を向けると、既に戦線は大体の決着がついていた。

 

見たところ、ニシヤが擬似的に蘇生したメンバーは既に制限時間を過ぎて消えているが、それ以外のメンバーは消耗こそあれ、致命打を食らっている様子はない。

 

一方でボナビ組は、もう2人しか残っていないようだった。そしてその2人も相当の消耗をしていて、遅からず決着はつくだろう。そういう状況だった。そんな中でのニシヤの勝利。

 

盤面は完全に固定され、勝敗は明確に分けられる。ニシヤがその戦場に向けて歩みを進めようとすると、目線の先の残りのボナビ組メンバーも諦めがついたのが見て取れた。

 

全員が抵抗をやめ、未だ戦意を喪失していないジェイト組に体を吹っ飛ばされる。なかなかショッキングな光景だったが、ある種事前にそういう光景を見ていたため、その時の衝撃もあり、特に動揺はしなかった。

 

そして、戦闘が完全に終結したことで、依然襲撃は警戒しながらも、ニシヤは隣の人形を伴ってジェイト組の元へと向かう。草原の草葉を踏み締め、こちらに視線を向ける組のメンバー達に歩み寄った。

 

人形の姿形がものがものなので、わずかながら警戒の眼差しを向けられたが、能力については先の疑似蘇生で理解していたのか、特に止められることはなくメンバーの輪の中に受け入れられた。

 

 

「お疲れ様です。こちらは見ての通り完全にヨリゲツを無効化しました。この人形はオーラも満タンなので警戒役もこなせますよ」

 

「ああ、こちらも敵は全員殺した。聞いていたぞ。ボナビ組の奴ら、マフィアに深入りしてこんなことを仕出かしたそうだな。馬鹿な奴らだ。だがうちの組だけでも30以上の被害。これはもうPKを止めることは不可能だな」

 

「ですね。攻略は断念するとして、この後どうします?俺はまだ始めて1週間なので問題ないですけど」

 

「ああ、それは………」

 

 

組のリーダーであるジェイトサリが、今後について周囲のメンバーに聞こえるように話す。曰く、ゲーム攻略からは完全に撤退するそうだった。まあ、当たり前だろう。

 

何年もかけて築いたチームがほとんど壊されたんだ。さすがに攻略報酬がすごいとはいえ、割に合わない。だから今後は、消極的にプレイを続けていくそうだ。

 

とりあえず使えるアイテムは使い、ゲームをオサラバする。そして状況が落ち着けば、またアイテムの恩恵などを受けるためにログインする。

 

それにPKなどが絡まなければ面白いゲームだから、その点でも状況さえどうにかなればたまにログインする、というようだ。

 

あとは、ジェイトサリ直々にあくまで貸すだけとはいえ、残ったメンバーにはGIが1個配られることになった。何かGIに使いたいアイテムがあればそれでログインすればいい、ということらしい。

 

今回の戦いでの功績から、ニシヤもGIの本体を貰うことになった。

 

最終的に、ジェイトサリ組の生存メンバーは5人。残りは全員荼毘に伏した。長年ゲームの攻略をしていたメンバーは、付き合いの長い人達が一気に死んだからか、自然と黙祷を始める。

 

ニシヤもそれに合わせて、手を合わせた。

 

そうして、GIの攻略は終わっていく。

 

しばらくすると、自然と解散する雰囲気になった。しかし危険もまだまだあるので、現実に帰還できる港までは一緒にとのことだったが。

 

そんなこともあり、帰還するまでの道中、ニシヤはジェイト組のメンバーと一緒に歩く。さすがにプロのジェイトに選ばれただけあって、攻略に身を乗り出していた彼ら主要メンバーは、かなり強かった。

 

特に念の技術的な面は学びになるところがあり、短い間だが色々教えてもらうこともできた。そうやってゲームの中を進みながら、お礼も言われる。心当たりで言うとヨリゲツを倒したことだったが、どうも違うらしかった。

 

最後に、あの最初に殺されたメンバーと一緒に戦えたのが嬉しかったらしい。ちょっとだけだが話すこともできて、ニシヤには感謝しかないのだそうだ。

 

しかもメンバーの全員が大なり小なりそう思っているそうで、皆の視線にニシヤはこそばゆいものを感じた。

 

そうしているうちに、港までたどり着く。ニシヤは最初に帰還することとなり、僅かながら寂しさを感じた。

 

本当はジェイト組のメンバーとこれから攻略に入るところだったと思うと、少し惜しいのだ。一緒にプレイしていれば、学ぶところも多くあっただろうに。

 

とにかく、ニシヤは、港の前の平野で、ジェイト組の残った全員に見送られながらGIを後にした。

 

 

「ありがとなー!お前のお陰で助かったよー!」

 

「元気でな!若えんだから無茶すんなよー!」

 

「大きくなったら一緒に仕事しようぜー!」

 

 

そんな声を受けながら、港へと入っていく。目線の先には、遥かな地平線が広がっていた。そしてその先に、何があるのか。少し早めの独立を迎えたニシヤには、それを知ることができるだけの行動力があった。

 

だから、次は港の先の海の向こう。どこかの大陸の、遥か遠くに行ってみよう。あまりにも漠然と、そう思った。

 

そして、港を出た後、また再びあのチュートリアル空間のような場所に呼び出され、あの少女と出会う。いや若干雰囲気が違うので、別人かもしれないが。

 

モノクロの空間。やはりどうも不可思議な気持ちを湧かせるその空間を見回しながら、ニシヤはその少女が問いかけてくるのを聞いた。

 

 

「港を選択してください。当ゲームの港から世界50以上の港へアクセスする事ができます」

 

 

端的かつ事務的。選べばそこに行けるということだろうか?

 

 

「うーん、じゃあミンボ共和国のビーツ港ってあります?」

 

「ビーツ港ですね。それでよろしいですか?」

 

「はい」

 

 

ちょっとしたやり取りの後、選択した港に飛ぶことを決める。同意してから、ニシヤはどうなるのかと周囲を軽く見回した。

 

すると、その瞬間、まるでゲーム開始時の時と同じように視界が切り替わる。チュートリアル空間のモノクロから、空の青や、人の喧騒などが聞こえる空間へ。

 

気づくと、ニシヤはビーツ港にいた。

 

眼下には、広大な海やそこから港の堤防へ侵入してくる船が見える。また目線を横にずらすと、そこには魚市場で買い物を楽しむ人たちもいた。

 

思ったよりも短かった現実との別れに、なんだか微妙な気分を覚える。それでも帰ってきたことに変わりはなく、まずニシヤは、銀行へ向かうことを決めた。まずは、何をやるにも先立つものが必要だからだ。

 

そうして、周囲にあまり人気のない高台から降りて、都市部を目指す。街中へ入ると、最初目に入った魚市場ほどの活気は影もなく、それに少し面食らったりもした。

 

陰気、というほどではないが、普通の街、とでも言うような。ある意味では、メリハリがついていて良いのだろう。

 

 

「おーい坊主、1人で大丈夫かー?」

 

「はーい、大丈夫でーす」

 

 

人の少ない小道を歩き、途中年齢などから声をかけられつつ、都市部に向かう。北へ進むほど街並みも変わっていき、やがて目的の都市にたどり着いた。

 

そして、そこで銀行に寄り、この世界の個人金庫から荷物などを取り寄せるよう申請し、ついでに現金なども引き出す。

 

ジェイトサリがゲーム期間中、世間一般の労働時間分の額をちょっとした前報酬として支払っていてくれたので、銀行には十数万ほどの現金があった。

 

その中からいくらか引き出し、そこら辺のホテルに泊まる。荷物の受け渡し時間が来たら、それを受け取り仕事探しを開始した。

 

なんと言っても、世間一般からして、ニシヤは念能力者の中でもそこそこの人間だと理解したから、仕事は引く手数多。

 

能力さえ示せればいくらでも仕事を引き出せる。そのため、ニシヤはこれまたジェイトサリに教えてもらった念能力者専用の会員サイトに登録し、まずは簡単な仕事の案件を引き受け、信用を勝ち取ることを決意した。

 

それから………数ヶ月ほど。ニシヤは純粋な実力がものを言う警護や危険生物のハントを請け負いながら、時たま能力を活かした鑑定なども行った。

 

何せニシヤのランゲージリンクは、時間こそかかるが情報を確実に抜けるものなので。そして、それに生物非生物は関係ない。まあ、その分、複製体は時間経過で消えたりするのだが。

 

とにかくそんなことをやりながら、数ヶ月過ごした。

 

それと、人形にして操作しているヨリゲツについてなのだが、特に必要性も感じなかったので、普通に放流した。

 

万が一マフィアに粛清されてもそれはそれで問題だから、ジェイトより郵送で送られてきたGIに一度入り、その中で『マッド博士の整形マシーン』というものを使わせ、顔を変える。

 

これで狙われることはないだろう。ということで、あとは操作能力で悪さできないように縛りながら、そのまま放流だ。

 

こうしてみると、操作系能力、実に便利である。しかしニシヤの能力は、操作系としては少し捻った程度のものでしかないだろう。能力から言うと、多分戦闘中は人形を三体くらい操るのが限界だし。

 

まあ唯一優れている点は、真っ当な操作系能力であることか。もちろん具現化系と放出系も使うので純正ではないが、具現化は生物の肉を元とすることで最小限。放出も同じく生物の肉を使うことで維持コストを削減。

 

これによって操作系が主体の無駄のない能力が作られている。我ながら素晴らしい能力だ……とまあ、今のニシヤはそんな一風変わった日常を過ごしている。

 

これがまた、なかなか楽しい毎日だ。受ける仕事の性質もあってか、世界を転々とする日々だが、その忙しさに足る充足感を今のニシヤは覚えている。例えるなら、現実でGIをやっているかのような気分と言えようか。

 

そんな生活の中、いくつかハントした生物をランゲージリンクで使役したりもした。そうなるとおおよそ3体の制限も出てくる訳で、そのため、その期間で念獣向けに新しい能力を作っている。

 

作成した理由は、使役するのがいくら半念獣とはいえ、出し入れ不可の存在なので、とにかく場所を取るから。というのと、単純に使役念獣の入れ替えが面倒だから。

 

ここに来て生物であることの不便な面が出てきた形になる。

 

そこで新しい発だ。

 

お終いな年頃(ワンダーチェスト)

 

この発はものを出し入れできる念空間を作るという能力を保有している。そしてこれを使えば、操作できる限界を超えて多くの念獣を使役できる。

 

制約としては、この発で作った念空間に入ったものはその運動を著しく制限される、というものがあるので、中で使役した念獣が勝手に死ぬこともない。

 

その分精密機器などを入れると機能がイカれるから、念獣の保管以外ではあまり役に立たない。だから能力の威力を高める制約として機能している部分はある。

 

それに結局ランゲージリンクは操作に払うコストが高いから、結局多くの念獣を飼っても利点は少ない。操作系で軍隊など、そんなものは無理だ。中にはそのようなことを実現できる操作能力もあると聞くが。

 

まあ、ニシヤにはあまり関係ないだろう。

 

とにかくそんなことをやりながら過ごした数ヶ月。今現在ニシヤは、なんだかんだありつつとあるホテルに宿泊している。ハンター業の合間の、束の間の休息。

 

それを噛み締めながら、ニシヤはホテルの一室で、ネットサーフィンをしていた。ある種の暇潰しと、実益を兼ねた行動だ。

 

というのもこの世界のネットワークの主流である電脳ネット。これはかなり専門的な用語なども調べられる便利な検索機器だったりする。

 

さすがに本当に専門的なものは論文なり何なり見ないとわからないが、特定の専門書と合わせてネットサーフィンをすれば、そこそこ学習速度を高められる。

 

だからニシヤの場合、古物の鑑定などの知識を、専門書とネットの合わせ技で補っていた。まあそもそもなんでそんなことをする必要があるのかという話だが、それはランゲージリンクが関係してくる。

 

そもそもランゲージリンクは情報収集の機能もある能力だ。一方で対象を指定して、それからそこそこの時間待たなければ情報を解き明かせないという弱点がある。

 

非生物の場合は別に何か取り込む必要とかはないが、その分色々と別の制限があるのだ。

 

だからその性質上、鑑定するものが決まっている依頼などでは何の問題もないが、肝心の当初考えていた使い道──埋もれている何らかの作品の発掘、などに対してはあまり使えないことになる。

 

それは、なんとも勿体ない。もちろんあくまでそういう鑑定は能力の副次的な効果に過ぎないが、それでもある意味、その埋もれている作品などを見つけたのがハンターとしての初めての功績なので、できるだけ大事にしていきたい。

 

そう思いながらネットを渡り歩いていたのだが、ふと、PCのメールボックスに一通のメールが来ているのに気づく。何かと思って開けると、これまた奇妙な内容のものが来ていた。

 

 

「んー?転生者連合都市プログラム。差出人は……暗黒大陸対策部?なんだそりゃ?」

 

 

まったく知らない単語が続々と。あまりにもよくわからないその内容に、思わずGIのNPCのような反応をしてしまった。

 

だが仕方ないだろう。転生者はわかるが、暗黒大陸とは?何らかの意味はありそうだが、イマイチ理解できない。

 

故にニシヤは、そのまま向き合っていた机から離れる。そしてPCと一緒にベッドに飛び込み、随分長そうなメールを、ゆっくりと読み重ねていった。そしてしばらくすると、その内容をおおよそ把握する。

 

要するに、このメールはあるプロジェクトの告知と、独自のネットワークへの勧誘を謳っているらしい。

 

 

「転生者専用ネットねぇ。転生者。転生者……」

 

 

今の今まで、忘れていた。確かに、転生者という同胞が、いる可能性は考えてみればあった。何分ニシヤを元の世界から追放してくれた謎の声のいた空間には、とてつもない数の人がいたからだ。

 

とするとこの世界にも他の転生者がいても不思議ではない。しかしネットワークを作るほどとなると、相当数の転生者がいるのだろう。

 

そしてPCのメール画面には、その転生者が大勢いるだろうネットワークへのリンクが貼られている。

 

まあとりあえず、真偽はともかく、ニシヤは手元のキーボードをカタカタと動かし、そのリンクを追跡アプリに放り投げて、危険かどうか確認した。

 

結果は、予想通り。画面には白と表示されている。なので追跡アプリから元のメールに戻り、特に迷う暇もなく青文字のリンクを踏んだ。たとえ念能力だろうと、この程度のことで害を及ぼされることはまずないからだ。

 

 

「おお、あの宇宙だ」

 

 

リンクを踏んだ瞬間、噂の転生者ネットに接続し、画面が切り替わる。まずは起動からなのか、あの謎の声がいた宇宙を画面で完全に再現しており、その後の溶けて消える演出もまるまるそのままだった。

 

そして、画面に『転生者ネットへようこそ』というメッセージが現れ、いよいよ転生者ネットへと入場する。

 




ハンターハンター特有の時間経過形式。単純に私はという話ですがあのミトさんが手紙を読んでる時のようなBGMが好きです。
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