一人でなんとかできると思ってた僕と君   作:思いついたんだごめん

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超人の皮を被った女の子と管理人の皮を被った男の人

ボロアパート。

そういう人がいても無理はない賃貸。

なにせ家賃は脅威の4万。敷金礼金なしで保証人いらず。

ザ・一人暮らし向けの二階建て賃貸アパート……の一角に僕は今、寝床を有している。

17で起業して20でその会社を売却、手元に残った大金で大家業を始め都内外問わず安定した収入を得ている日々。

ローンもなく、友人他人問わず人は僕を世捨て人だの成功者だのなんだのもてはやしたり集ったりする。

……ので、素性を隠してボロアパートの管理人兼大家として余生を過ごしてみようとした。

人間関係に疲れた……というほど長い間生きている訳じゃない。が、こうして自分の道で迷ってこその人生だろうと……そう思っている。

 

そんな、僕の10年後はとある女の子と関わったからか賑やかで華やかで賑やかでうるさくて彩に溢れすぎたモノになっている。味覚エンジンの再現性の検証ということでありとあらゆるゲテモノ料理を食べさせられたり、趣味でしか無かったゲームが副業にくい込んできたり。

出資者として結果的に成功させられ使う予定のないお金だけが口座に積まっていき、それを元手にまた投資やら出資やらして静かに本を読もうとしたら呼び鈴がなる日々。

 

その物語。ハッピーエンドにさせられた僕の人生譚に。変化が加わったのは……

 

「昨日引っ越してきた酒寄彩葉です。よろしくお願いします」

 

凛として綺麗で……だけどどこか諦めたような顔をした女の子が住んでからだろう。

 


 

さて、ここらで僕のことを話そう。

まずは……そう、名前。僕の名前は熊谷(くまたに)邦彦(くによし)。2006年生まれというキラキラネーム騒動の前に生まれたため普遍というか親のネーミングセンスが光るいい名前をつけてもらったと思っている。

職業は大家業。趣味はアパートの管理人……と世話焼き。

そんな僕は年下の……年の離れた妹くらいの女の子に一目惚れをしてしまった。

 

「はぁ……」

 

ため息が出る。

この歳にもなって初恋。しかも、必要ないというか……なんというか。友達らしい友達はアキラぐらいなもので同年代の奴らは集ったり集ったり揺すってきたりの醜さの集大成……いや醜態生と言った方がいいか。

そういうのばかりに巡り会うため、上場しかつ上京もした時に縁は自然と消えていた。

それに彼女と話したことがあるのはもちろん一度きり。

これほどまでに自分が惚れっぽいというのも嫌気がさす。

掃除用具を入れているところから箒やらなんやらを取り出し胸ポケットに入れてあるメガネ型のデバイスをかける。

ARガイドを起動し視界の端には気を向けば見えるようにメールや天気アプリなどを表示。

ほんの少し前まではこんなに便利ではなかったのに凄まじい技術の進歩。時期にゲームのキャラクターが現実に飛び出してくるかもしれない。

本来、管理人の業務というのは人を雇いすることであるため労働時間が設定される。しかし、これは僕が趣味でやっていることのため無賃金でありかつボランティア。

故に朝8時辺りから稼働しても問題は無い。

このアパートに住む人達はほぼ一人暮らし。社会人だったり学生だったりはマチマチだけど……

 

「管理人さんいってきまー」

「はい行ってらっしゃい。お仕事頑張ってくださいね」

 

僕の一人暮らし感からすると返事のない行ってきますとただいまはかなり虚無感に襲われる。

それを抑制するという名目で僕は今日も住民に声をかける。

エプロンを付け箒を持つ今日日創作物でしか見ないような管理人の声掛けはどの程度彼らに届いているかはわからない。

今日は3月の29日。管理人生活が1年終わり新年度の節目も近付きつつも迫る桜前線と花粉に思いを馳せる陽気が漂い始めた日のこと。

かなり遅い初恋煩いをしてしまったダメな大人であることを隠し始めたのだった。

 

「あ……」

 

ふと顔をあげると昨日引っ越してきた酒寄さんが部屋から出るのを目撃してしまう。

昨日に比べやる気……いや、やってやるという雰囲気がほんわりとしている彼女に親しく話しかけれる……わけもなく。

 

「おはようございます酒寄さん」

 

と当たり障りのなさすぎる普通の隣人としての挨拶をしてしまうのだった。

彼女の素性はもちろん知らない。が、安めの賃貸で保証人も立ててないことから訳あり家出少女の可能性が一応考えられる。それか上京して夢をつかみに来たか……僕と同類か。

しかも、その手の情報を私的に利用するのはダメである。個人情報保護法が黙ってない上に普通に気味が悪い男になってしまうからだ。

 

「おはようございます……えっと」

「自己紹介がまだでしたね。僕は熊谷邦彦。改めてよろしくお願いします」

「こ、これはご丁寧に……」

 

会釈ではなくきっちりと腰を曲げ頭を下げるその姿勢は礼儀作法を親に叩き込まれた育ちの良さを感じさせる。整った顔に少し沈んでるけど綺麗な瞳。ああ、この子はきっとモテるんだろうなぁ……と頭の片隅に恋愛弱者の悲観がよぎり出す。

 

「して酒寄さん、今から家具を買いに?」

「ま、まあ……そんなところです」

「なるほどなるほど……それならこれ、差し上げます」

 

ハンドバッグから取り出したのは株主優待券。

期限が2028年度末……つまり明後日まで。使い忘れというのではなく。使う機会がなかった。お値段以上なところの優待券は10%オフクーポン。家具を頻繁に買い揃えるわけではない上に今の本拠は手狭な感じもあるため手持ち無沙汰になっていたのだ。

 

「も、もらえませんよ……」

「たかが10%引きのクーポンなので気になさらず。それに使う機会が今年無かったので貰ってくださる方が助かります」

「そう、ですか……なら、ありがとうございます」

多少押し切る形で優待券を渡す。お金を使うという目的で買い漁っている株のせいで消費してるのに消費していないことになりかねない僕の生活はよく他者に与えることが多い。

アパートの入口に配布物を置いたりとかそういう。

問題があるような行動する人は弾いてるし、そもそも優良物件ではないのとまだ一年しかここで動いていないためかまだ増長する人はいない。もちろん、頃合いを見て止めないといけないのはわかっている。

 

「なにか手伝えることあればおっしゃってくださいね」

「……えと、ここって管理費とかない……ですよね?」

「はい。ありませんね」

「…………なぜ」

 

通常、こういう管理人付きの賃貸では管理人人件費や共用部分の整備のために管理費を徴収することが多い。

ただ、これは僕がボランティアでやってるのと。大家が僕自身であるため成立してるゴリ押しに過ぎない。

 

「親族に雇われて社会復帰の一環……のようなものだと思ってくだされば」

「は、はぁ……大変です、ね?」

 

普段、このアパートを借りる人なら納得してくれる説明を酒寄さんは納得してくれない。その綺麗な顔に違わない知性を持ち合わせているようだ。

不都合、というわけではない。僕は自分で言うのもアレだが、浮世離れしてるような生活をできる財産を持っているくせに、散々愛想が尽きるような事柄を対人で体験してきたくせに、いまだに人と関わろうと、人はそこまで落ちぶれてるわけじゃないと勝手に思い、身分をほとんど隠して他人に接している。

が、それも完璧じゃないし、物事を隠すことには不慣れではある。ゆえに、妙に小綺麗な衣服に、元ニートが持ち合わせてるのなら普通に考えれば使用を禁じられそうな眼鏡デバイス。

察しのいい人なら嘘だな。と簡単に断言はできる。

 

(絶対嘘やん。胡散臭……)

 

とか思われてそー……すこし傷付くな。

だけど、そこを踏み込まれるほどまだ仲を深めているわけじゃない。

なにせ出会って日がまだまだ浅いのだ。

それは酒寄さんも同様。踏み込むこともまた、今はまだない。

 

「なにか不都合等あれば受け付けますので一階にある意見箱にでも投函しておいてください。QRからもいけますよ」

「あ、はい……」

 

そんな風に始まった管理人二年生の僕の人生。

色々と考えられる不安や不満、トラブルへの対応。あとついでにたまに誘われてやるゲームなどのことも全力で楽しもう。

そうしないと沈んでしまうかもしれない。

不安と面白そうが同居する今が人生であるともいえるか。

俗世をもっと楽しむべき。そうでない人にはふさわしい末路というか。

人との付き合いが浅い僕にとっては異性でも同性でもほどよい仲は少なすぎるのだ。

 

「それでは今日も一日お元気で」

「……はい、いって、きます……?」

 

手を振り見送る。

あのクーポン類は本当に使うことがなくて余っていたもの。

そもそも大学時代に立ち上げた会社を二社ほど売却したことによる資産は余るほどある。

資産運用を心がけ、損切、リスクヘッジ、それらを組み合わせることで他者を知りたい、構いたいという趣味に時間を費やせている。

ただ、久々に101号室という管理人室を兼業している我が家に戻り、それらを押入れから出す。

昔セットアップしてもらった端末を取り出す。そして……

 

「最新式のコンタクトレンズ型VRデバイス……」

 

その外箱にはメモ付箋で『ビビリのニボシには無理だろうけど、つけたら呼べよな』

腹立つな畜生。

アキラこと僕の数少なすぎる友人である帝アキラの中身。

……酒寄だっけあいつも。

珍しい苗字……でも朝日と彩葉に兄妹的なのは……いやいやまさかぁ……

 

「それとなく聞くのもキモイな……断定できるわけもないし……」

 

そう、この時の僕は友人の妹に惚れるというクソキモ初恋ムーブをかましていたのでした。

まじできしょい。おわってる。




オリ主くん概要

熊谷(くまたに) 邦彦(くによし)
現在24(本編開始1年前時点) 帝と同い年。
職業:自営業不動産貸付業
趣味:人間観察(無自覚) 世話焼き
彩葉の住むボロアパートのみならず、都内外さまざまなところに物件を保有する大家。
高校の時に立ち上げたうちの一社を残しそれで大家を続けている。
他二つは株式会社として立ち上げたのもあり、その時点でかなりの金額を稼いでいる。
帝アキラの初期スポンサーであり、彼にとって朝日は数少なすぎる友人。
暇が合えばご飯を食べにいったりしている。
メガネ型デバイスを愛用しており、コンタクトレンズ型を使用していないのは「シンプル怖い」から。
出資とかも色々あちこちにしているため、やっていることは完全に世捨て人。
プロゲーマーに揉まれているため、ゲームの腕前もかなりの物。

一応超かぐや姫!の本編展開をするならアバター:ヤマビコを使う

お話どこからやろうね

  • 本編前(一年ぐらいの
  • 本編から(かぐや降臨少し前
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