うちの庭めっちゃ猫くる。   作:じゅに

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赤バー達成記念のおまけ回。
感想高評価ありがとうございました。


おまけ もちもち軍団襲来。

 

 

 

 

 幼馴染が友達を連れて遊びに来た。

 さすが現役チャンピオンの友人ともなるとタダの人ではなく、聞けばカントーで四天王を張っているという。

 氷タイプのエキスパートで、ついたあだ名が《氷の女王》。

 炎ポケモンすら容赦なく凍らせる、まさに凄腕のトレーナーなんだそうな。

 

「あなたのお庭、いろんな子達が遊びに来るんですってね? とても興味深いわ。ぜひ見せてくださる?」

 

「どーぞー」

 

 怜悧な美貌に完璧な微笑みを浮かべる彼女を、庭に面した部屋に案内する。障子をからりと開ければ、見慣れぬポケモンが三体遊びに来ていた。

 

「もっち」

 

「うっに」

 

「ぶっし」

 

 三体それぞれが妙な鳴き声をあげる。幼馴染が「まあ」と目を丸くした。

 

「ユキハミにバチンウニにナマコブシ。どの子もシンオウじゃ見ない顔よ」

 

「へー。なんかみんなモチモチしてんね」

 

 濡れ縁に座布団を出し、まじまじと観察する。

 すぐにユキハミがもちゃもちゃ近寄ってきた。

 三匹のなかでいちばん好奇心旺盛らしい。

 

 バチンウニはやや警戒しているのか近寄らず、ナマコブシは感情の見えない眼差しでじっとこちらを眺めている。

 試しに指を差し出してみると、ユキハミは躊躇うことなくはむっと咥えてきた。

 

「うは、くすぐったい」

 

「あら可愛い」

 

 幼馴染が真似する。ユキハミはそちらにもすぐに食いついた。

 歯はないようで、ひたすらむにむにと柔らかい。どことなくひんやりしているのは、この子が氷タイプだからだそうだ。

 

「氷タイプだって。育てたことある?」

 

 振り向いたわたしは眉をひそめた。

 幼馴染が連れてきた女王陛下が、石のように固まっていたからだ。

 

 瞼は瞬きを忘れたようにくわっと見開かれ、唇も真一文字に結ばれている。

 眼鏡の奥の瞳が血走っててちょっと怖い。

 

「あ、あのー……」

 

 とおそるおそる声をかけた瞬間、彼女の首がグリンッ! とこちらを向いた。

 

「ひっ」

 

「か」

 

「え?」

 

「かわ」

 

「……かわ?」

 

 

「可愛すぎるっ!」

 

 

 そう叫んで、ばたんと倒れた。

 

 呆気にとられるわたしに幼馴染が解説を入れる。

 

「彼女、可愛いものに目がないのよ。可愛いゲージがキャパオーバーしたのね」

 

「…………そっか」

 

 わたしは、氷の女王様の眼鏡を外し、かっぴらいたままの目をそっと閉じてあげた。

 

 カントーの四天王、大丈夫なんだろかと危ぶみつつ。

 

 

 〇〇〇

 

 

 しばらくするとバチンウニとナマコブシの緊張も解け、近くに寄ってくるようになった。

 

 不思議なことに、わたしが唯一ゲットしたコリンクのリンタロウと、我が家に居着いてしまった苦いもの大好きデンヂムシが、バチンウニの傍から離れようとしない。

 しばらく観察していた幼馴染が、ぽんと手を叩いた。

 

「なるほど。その子、エレキメイカーなんだわ」

 

「なんて?」

 

「とっても珍しい特性よ。自分の周囲に電磁気を張り巡らせるの。だから電気タイプの子達が傍に居たがるのね」

 

「はえー」

 

 人間が岩盤浴に集まりたがるようなもんだろうか。

 

 一方のナマコブシは、持ち上げてもつついてもでろんと横たわるばかりで動く気配がない。感触が面白くてツンツンつついていると、口から白いものを吐き出した。

 

「うっわなんだこれ」

 

「ナマコブシの中身よ。とびだすなかみといって、れっきとした特性なの」

 

「ねえそれ大丈夫? 大丈夫なやつ? 飛び出ていい中身ってそうそう無くない?」

 

「大丈夫でしょ」

 

 幼馴染はあっさりと言い放った。

 本当だな。信じるぞチャンピオン。

 

 最後の一体、ユキハミはというと、気絶から回復した四天王がひっしと抱き抱えて離そうとしない。ユキハミサイドも嫌がってはなさそうなのでほっといてるが、ずーっと泣きながら抱きしめてるのは中々異様な光景である。

 

 時々スマホロトムを操作するので、何の気なしに覗き見してみると、

 

 シンオウ カントー 通勤時間

 シンオウ 住民票 取得

 カンナギタウン 役場 開場時間

 

 という検索項目が並んでた。

 

「ねえこの四天王こっちに引っ越す気マンマンなんだけど」

 

「安心して」

 

 まだはらはら落涙しながら、四天王は頷いた。

 

「あらかた必要な情報は手に入ったから、あとは通勤手段を確保するだけでオーケーよ」

 

 何もOKではない。

 わたしは眉を八の字にしながら提言した。

 

「いや……ていうかゲットしちゃえば?」

 

 なにもわざわざ引っ越さなくたって、手持ちにいれてしまえばいい。

 わたしのポケモンでもなし、どこからも文句は出ないはずだ。

 

 ところが。

 

「それはダメなの」

 

 氷の女王は、低い声で却下した。

 

「カントーには連れて行けない種族だもの」

 

 わたしが首を傾げると、幼馴染が補足してくれた。

 

「生態系や環境を守るために、持ち込んでいいポケモンは地方ごとに定められているのよ。……だからこそ、色々な地方のポケモンがやってくるこの庭があまりに特異(イレギュラー)なのだけれど

 

 後半は声が小さすぎて聞き取れなかったが、ようやくわたしにも事態が飲み込めた。

 ここまで琴線に触れたポケモンを捕まえることも連れていくこともできないのは、さぞ惜しかろう。

 

 わたしはしばらく悩んだ末、好きなだけ写真や動画を撮ってはどうかと提案した。

 

 四天王はにっこり笑い、スマホロトムのカメラアプリを起動し、夕方までずっっっっっっっっと連写・撮影し続けた。

 

 あまりにシャッター音が途切れないので、近くの路地を歩いていた婆さんがしきりに自分の耳を掻いていた。

 

 大丈夫、あなたの耳は正常だよ、婆さん。

 

 

 〇〇〇

 

 

 今日はもちもちした連中が来た。

 ユキハミもバチンウニもナマコブシも初めて見たけれど、親戚筋かと思うくらいフォルムが似ていた。触り心地も(バチンウニの棘以外)似ていたので、大元の種族が同じなのかもしれない。幼馴染が呟いていた。

 

 四天王殿は結局、飛行機を二本も遅らせて写真を撮りまくったあと、「またこの子達が来たらぜひ教えて」とバキバキにキマった目で念を押してきた。

 

 教えなくてもバレはしないだろうが、バレた時が怖いのでちゃんと連絡しよう。生きた氷像にはなりたくないし。

 

 以上、日記おわり。

 

 

 

 

 




いくらでもキャラ崩壊させていい。
そう、二次創作ならね。
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