ふかふかの毛布の中、私は目を覚ました。お姉さんの温もりはいつの間にか消えて、今ではお姉さんの余熱しか残っていなかった。
「……あれ……?お姉さんは……どこ?」
お家の中は、まるで誰もいなくなってしまったかのようにシーン……。と、静まり返っている。
窓の外を見ると、遠くに黒色の煙が立ち上っている。……まぁ、バイトコルでは、これはいつものことだけど……。
不安になり、毛布をぐいっ……と引き寄せて包まり、窓の外をずっと眺める。毛布に移ったお姉さんの余熱で、なんとか安心しようとする。
王都バイトコルでは、色んな人がいるから、その分悪い人も多い。それを、王都のとっても強い騎士さんたちが、やっつけることで、この国はバランスを保っているから、魔法の影響で空気が揺れたりするのは日常茶飯時なのだ。私がお姉さんに出会えたのは……多分、すっごく幸運なことなんだと思う。
(もし……奴隷を売ったりする人に捕まりでもしてたら……ひぇぇぇっ……)
新しいお家では、たまにお姉さんに消されそうになることもあるけれど、少なくとも、ここではちゃんとご飯が食べられるし、私と楽しそうに話してくれる相手がいてくれる。……今までみたいに……無視されたりはしないもん。
起きたばかりだというのに、窓の外を見て昔のことを思い出すと、どこか悲しくなってきてしまう。
部屋の空気と、私の心がずーん……と重くなった時、まるでタイミングを見計らっていたかのように、いきなり静寂が破られた。
「あら!起きていたのねリーシャンちゃん!朝に撫でた時から変わらずお耳がとってもふわっふわね〜?」
バァン!と勢いよく扉が開かれ、いつものうるさいくらいの雰囲気でお姉さんが帰ってきてくれた。
「……ど、どこ……行ってたの……?」
私が不安そうに聞くと、お姉さんはなにかゴソゴソと取り出し始めた。
「……お外の事は気にしなくて良いのよ!……はい!お姉さんからの贈り物、ちゃんと大切にできるかしら?」
お姉さんの大きな手の上に乗せられているのは、銀色の光沢をギラギラと、しかしやんわりとしてもいる優しい光を放つチェーンのネックレスだった。それには、お日様の光を吸収して、透き通った青色のキラキラの宝石がついている。
「……きれい!お姉さん、これ……なんなの?……動かすと、パキパキ……鳴ってる……」
「ふふっ……。これはとっても優しい街の人に貰ってね?……リーシャンちゃんに絶対似合うって思ったのよ!」
お姉さんは、その綺麗なネックレスを私の首にゆっくりかけてくれた。 お姉さんからの贈り物を身につけると、なんだか常にお姉さんが守ってくれてるみたいで、少しの安心感と、温かさがやってくる。
「……あったかい」
「当然ね!アタシの愛がたっぷり籠もってるんだから!」
「……お嬢様。……その……ただの魔法具ですが…?」
「……黙りなさい……フォルス。……正真正銘、アタシの魔法よ」
お姉さんがギロッ……とフォルスさんを睨みつける。その視線が、毎度のごとくフォルスさんの背筋を凍らせている。……そんなに怖いなら、お姉さんを怒らせるようなことをしなければいいのに……。
「……ほら、リーシャンちゃん!……今の貴方、すっごく綺麗で可愛いわよ!」
お姉さんに姿見の前まで運ばれ、鏡に自分の姿が映る。……そこには、身体をお母さんからの贈り物の、コレだけは譲れないローブに包み、首には、新しくお姉さんからの贈り物をつけた、開いた窓からゆらりと吹く風でサラサラと髪が揺れている私の姿があった。
「……!」
「あらあら、感動で声も出なくなっちゃったかしら?…良いわよ、もっと幸せにしてあげるからね!」
しゃがみ込んだお姉さんに、後ろからぎゅ~っ……と腕を回され、全身がお姉さんに守られる。……ネックレスの温かさと、お姉さん自身の温かさで、私は満たされていった。