お姉さんのお家で、今日も明日もほのぼの生活   作:TTKTW

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第十二話 手料理

 

 お姉さんのお家で、今日も今日とて、私はのんびりしている。

今は、お姉さんとお家の中を散歩中。とっても広いから、ただ歩くだけでも散歩になる。

 

 トコトコと、お姉さんと手を繋いで歩いていると、トゥルさんに出会った。お姉さんと同じ魔族の執事さんだ。

 

「……おや……?リーシャン様、そちらのローブは……いったいどうなされたのですか?……かなり強力な魔術が付与されていますね」

 

 トゥルさんが私に顔を近づけて、興味津々な目で見てくる。パストグロリさんがやってくれたのだと説明しようとしたが、それよりも先に、お姉さんが誇らしげに話しはじめた。

 

「……トゥル、貴方はやっぱり見る目があるわね!」

 

 お姉さんが私をひょいっと持ち上げ、トゥルさんに私のローブの内側を見せつけるようにひらひらとめくりあげた。

 

「……これは……ふむ。……パストグロリ魔法装飾品店の技術ですね?……見たところ……魔法に対する防衛魔術……さらには、熱感知魔術……でしょうか?……彼は凄腕だとは聞いていましたが……これほどとは。……僕には真似できそうにもありません」

 

 不意に、トゥルさんが口元をニヤリと歪ませた気がする。

 

「……ふふーん。やっぱり魔術の事はトゥルに見せるべきね!知識がある分、面白い反応をしてくれるわ!……フォルスにも見習ってほしいわね……」

「えぇ、ぜひ……今後もよろしくお願いします……。フォルス様も、頑張っていると思いますよ、そう、僕と比べるのは良くありません」

「ただの評価よ評価!……客観的視点が大切なのよ」

「クックック……そういう事にしておきましょうか」

 

 トゥルさんが満足気に過ぎ去っていった。やっぱり、お姉さんの中でもフォルスさんはポンコツ、トゥルさんは優秀のイメージがあるらしい。

 

「さぁ、次はどこにいきましょうか?……フォルスの厨房?それとも、シーアルの研究室かしら?」

 

 うーむ……。と、頭でじっくり考える。どちらもとっても魅力的なのは変わらない。フォルスさんの作る料理は食欲をそそるし、シーアルさんの研究室もパキパキと、心地よい冷たさの良い匂いがする。

 

 

「じゃあ……フォルスさんのとこに行きたい!」

「良いわよ!……アタシのお家にはお食材がたっくさんあるから、リーシャンちゃんの食べたいものを……なんでも!……用意してあげるわ!」

「……なんで……もぉっ……!?」

 

 何が良いか、迷ってしまう。……美味しいお肉?……とっても魅力的だけど、このまえ鶏肉の丸焼きを食べた事があるし、他のがいいかも。

 

 じゃあ、お魚?……これはすっごくアリ。新鮮なお魚なんて食べたことないし、興味がある。

あとは……サラダとか、栄養満点なお野菜……。それと果物が食べてみたいかも……!

 

「……美味しいお魚と、野菜が欲しい!……あと、果物!」

「あらあら……とっても健康的じゃない!……リーシャンちゃんのことだから、お肉とか、それこそ鶏肉の丸焼きをお望みかと思ってたわ?」

 

 

 お姉さんはそう言い、無駄の少ない洗練された動きで、私を椅子の上によいしょと乗せた。

 

「分かったわよリーシャンちゃん!……さっそく、フォルスを働かせてくるから、良い子にして待ってるのよ!」

「ずっと良い子だよ!」

「あはは!……分かってるわよ!これは常套句よ!」

「……じょ……と……?」

「あぁ……えっと……決まり文句よ!」

 

 お姉さんがそう言って、20分くらい経った頃、フォルスさんとお姉さんが一緒に食堂に帰ってきた。フォルスさんの手には、なにかのお魚の料理と、黒っぽい高級そうな木のボウルに綺麗に盛られたサラダ。そして、お姉さんの手には、ホクホク、もわもわと湯気を出している、果物がふんだんに使われたパイが乗せられていた。

 

「……リーシャン様、カワガエリのソテーと、キミドリ草のサラダです」

「こっちはニュウトンの実のパイよ!……シャキシャキしてて、とっても甘いんだから!」

 

 テーブルに乗せられたのは、身が赤っぽいお魚のソテーと、黄緑色の、シャキシャキしていそうなお野菜。とっても薄い葉っぱみたいなお野菜、あと、真っ赤な果物、ニュウトンが使われたパイ。

どれもあったかそうで、見ていると、勝手に涎が出てきてしまうとともに、いつの間にか、私のしっぽもぶんぶんと左右に揺れてしまっている。

 

 まずは、フォルスさんが料理してくれたお魚を、慎重に口に運んでみる。

 

「……っ……!?」

 

 私の脳に、ビリッ!と、心地の良い刺激が走った気がする。ほろほろと、溶けるように口のなかに魚の味が広がっていく。さっぱりしていて、しつこさは全くない。

私の猫耳がピンッと立ち上がり、ピコピコと動いているのが自分でも分かってしまう。

 

 気づけば、お魚をペロリと平らげてしまった。

 

「……フォルスさん……!……すっごく美味しい!」

「……光栄です。リーシャン様」

「ちょっと〜?アタシの果物パイは食べてくれないわけぇ……?」

 

 お姉さんが、冗談めかして唆してくる。果物パイに目を向けると、今もなお、ゆらゆらと半透明な湯気が立ち上っている。それどころか、丁寧に焼かれたニュウトンの実の甘い香りが漂い、誘惑してくる。……私ももちろん、お姉さんの期待に応えたい……だけど、パイはデザートなんだから、最後に食べたい気持ちが、私の中では勝ってしまう。

 

「……パイは……最後が良いの!」

「……そう、そうね!……デザートだもの!……最後にリーシャンちゃんの舌に残るのは、アタシの作ったパイってことよね!あはは!」

 

 お姉さんの手が、私の肩にそっと乗せられる。……少しだけひんやりしてて、それでいて鋭さを感じない、柔らかな手。この手を抱き枕みたいに、ぎゅっ……てしたら、私はこの場ですやすやと寝始めてしまう。そのくらい、お姉さんの手は安心できるのだ。

 

 お姉さんに手を乗せられ、若干動かし辛い右手を動かし、フォルスさんのサラダに手を伸ばす。

 

 フォークで刺すと、シャキッとした感触が、フォーク越しに鮮明に伝わってくる。キミドリ草に付いている水滴が照明の光を反射し、山のなかを静かに流れる川で洗ってきた直後のような、そんなみずみずしさがあった。

 

「……あむ」

 

 口に入れた途端、野菜特有の爽やかさと、少しの甘味がアクセントとして広がってくる。調味料は、いったい何を使っているんだろう?……私が聞いても、きっと何も分からないけど。

 

「……どうでしょうか?リーシャン様、お口に合えば…」

「……なんか……サーッ!て感じでおいしい!」

「あはっ!あはは!……リーシャンちゃん!いっつも最高だけれど、今日のリーシャンちゃんはもっと最高に可愛いわ!……サーッ!って……録音魔道具で録っておくべきだったわ……!」

 

 そのまま、サラダを食べ終わり、次はお姉さんの作った果物パイを近くに寄せる。パイが近づくと、ニュウトンの実の甘い香りが私の鼻により明瞭に伝わってくる。この匂いを嗅いでるだけでも空腹が満たせそうなくらいに……いや、やっぱりお腹が空いてきた。

 

 パイを一切れ、手で掴み上げて口元に寄せる。少し時間が経ち、熱々ではなく、ほどよい温かさになっている。

 

「……あーん……」

 

 サクッ……と景気の良い音が口内に響き、それと同時に、フォルスさんの料理とは違う、濃厚で、私の味覚にダイレクトに甘さを刻みつけてくる味だ。口の中で蒸されたニュウトンの実が、より一層その香りを強めて私の中にこれでもかと充満してくる。

 

「……どう?リーシャンちゃん、美味しいかしら?……ほとんどアタシの手作りよ!」

「うん……!すっごく……美味しい……!」

 

 私がそう言うと、お姉さんは満面の笑みで私の頭を撫でてきた。

 

「本っ当に!良い子ね〜!……リーシャンちゃんとあの路地裏で会えていなかった世界なんて考えられないわ!」

「……リーシャン様。その……あの……私の料理よりも、ずいぶん美味しそうに食べるのですね……」

「あったりまじゃない!リーシャンちゃんはアタシの専属お子ちゃまなんだから!」

 

 フォルスさんが、トホホ……と、物凄く分かりやすい表情で落ち込んでいた。どっちもすごく美味しいのに、私の言い方が良くなかったみたい……勉強して、もっと表現の幅を広めたい……。

 

「……大丈夫!フォルスさんの料理も、食べれないわけじゃないから!」

「……っ!?……なん……です……とっ……?」

 

 私としては、精一杯褒めようとした結果だった。けれど、そう言った瞬間、フォルスさんの顔が落ち込みの表情から悲しみの表情に変わり、3秒くらい動かなくなってしまった。

 

 お姉さんがいつにもまして大爆笑して、フォルスさんはズーン……と落ち込んでいる。……なんでか分からない。……なにがダメだったのかな……?。私だけ話に取り残されて、ちょっと困惑してしまった。

 

 首を傾げている私を、お姉さんはいつものようにひょいっと持ち上げ、そのまま私の部屋に運んでいった。




9日程更新が空いてしまいましたが、実は、アークナイツのイベントに熱中しておりました…。激闘の結果、無事に異格真銀斬と異格巫女のイェラグ兄妹。そしてロスモンティスをロドスに強制雇用する事が出来ましたので、執筆を再開します。これまで通り、不定期更新です。
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