お姉さんのお家で、今日も明日もほのぼの生活   作:TTKTW

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第十七話 グラディロン団長

 

 

 お姉さんに手を引かれ、トコトコと私が着いていき辿り着いたのは、王都バイトコルの外壁から少し外に外れたところにある、広々とした飛行場への入り口だ。どうやら、手荷物検査というものをするらしい。

 

「ねぇ見て、リーシャンちゃん!今からアタシたちは、あの大っきな大っきな魔道飛行艇に乗って空を旅するのよ!」

 

 私はお姉さんにひょいと脇腹を掴んで持ち上げられ、背の高いお姉さんよりも高い目線で、奥を見通すことが出来るようになった。

 

「うん……!す、すごく……大っきい……」

 

 人混みの上から遠くに見えた魔道飛行艇は、灰色を基調とした、とっても、とってもデカい船体だった。

 

 お姉さんの腕がピクピク痙攣してきたから、「ありがとう!もう満足だよ!お姉さん!」と言い、お姉さんに降ろしてもらった。

 

「ふぅ……さぁリーシャンちゃん、そろそろ荷物をチェックされる時間よ。ちゃんとポッケにナイナイしないで、全部荷物を出しておきなさいね」

 

 私の身長じゃ、今は荷物検査の詳細はよく見えないけど、たぶん、あの銀色の籠に荷物を入れるのかな……?

 

 少しずつ列に並んで歩いていると、ついに私とお姉さんの順番が回ってきた。

 

「……おや、ハーフの子だね?ここの籠に、荷物を出してくれるかい?あと、お嬢さんの方も、こちらの籠に荷物を。」

 

 手荷物検査をしているのは、金髪で緑色の瞳の、カッコよくて爽やかな、人間族のお兄さんだった。背丈はお姉さんよりは低くて、私よりは頭一個分くらい高い。騎士の鎧を着ているから、たぶん、バイトコルの警備騎士団なんだと思うけど、騎士団の人の中では、ほんの少し小柄な人みたい。

 

「なかなか良い男ね。……リーシャンちゃんの良さを理解しているのは良い人間族の証拠よ」

「……えっと、お嬢さん?早く荷物を。後ろが詰まってますので」

「……んしょ」

 

私は、お姉さんに貰ったネックレスと、手に握りしめていたお母さんとお姉さんの合作ローブを銀色の籠に入れた。ローブが無くなって空いた手が、なんだか心寂しくなって、お姉さんの手をぎゅっ……と握ってみた。

 

 お姉さんが手荷物を全て入れると、どこにしまっていたのか、焼き菓子が包まれているままの梱包紙だとか、よく分からない魔道具か魔法具かが籠に詰め込まれていた。

 

「さ、行きましょう?お空は本当に高いわよ〜?」

 

 お姉さんが私の手を握り返して、ササッと歩いていこうとすると、さっきのお兄さんが少しだけ大きめな声で言った。

 

「いや、待ってください!魔族のお嬢さん、上着も脱いでください!」

「……あ、そうだったわね……完全に忘れていたわ……」

 

 お姉さんが急に立ち止まり、私はバランスを崩しそうになったが、なんとかお姉さんの腕にしがみついて倒れずに済んだ。

 

「……はぁぁ……まったく、上着くらい良いでしょうに」

「規則は規則ですので」

「お兄さん、なんかすごい……!」

 

 普通の人は、お姉さんと町中で会うだけでもちょっと怖がったりするのに、このお兄さんは怖がるどころか、お姉さんを説教してる……!やっぱり、警備騎士団はすごい人たちなんだ……!

 

 お姉さんが高級そうな黒色の貴族らしい上着を脱ぎ、籠に入れた。私はその姿を見て、少しびっくりした。

 なんと、お姉さんが上着の下に着ていたのは、灰色のノースリーブと簡素なブラだけだったのだ。

 

「……なに見てるのよ。……手荷物検査で上着を脱ぐ必要があるのを、完全に失念していただけよ」

「見てませんが?」

 

 お兄さんが、素早く慣れた手つきで手荷物を魔力検査機に籠ごとに入れ、10秒程経つと、チンッ!と甲高い音が鳴り、荷物がお兄さんの手渡しで籠ごと手元に返ってきた。

 

 お姉さんが「今度こそ行くわよ、リーシャン、しっかりアタシに――」と言いかけた途端、誰かが声を荒げ、こちらに突っ込んで来たらしい。

 

「お前ら全員!!ここで死ぬか!動かずに命を優先するか選べ!!」

 

 急な大声にビクッとし、猫耳をペタンと倒れさせ、尻尾を凍ったように固まらせ怯えながら振り向いてみると、犬族の大柄な悪い人が叫んでいるのが見えた。

 手には魔道銃を持っていて、今にも私達の方に撃ち込んできそうでとても怖い。

 

 私はお姉さんの背後に隠れて、お姉さんの腰を腕でぐぐっ……と抱きしめた。こうしていないと、足が震えて倒れちゃいそうだからだ。

 

「ククッ……へへッ……」

 

 大柄な犬族の悪い人が、舌を下品に出しながら、見定めるかのようにジロジロと私達の方を見てきて、それのせいで、また身体が震え上がった。

 

「……アタシ、許せないことが世界でたっくさんあるの。……それの一つが……リーシャンちゃんを泣かせることよ……!」

 

 お姉さんがノースリーブ姿のまま、悪い人をやっつけようと力強く歩き始めた。けれど、私はお姉さんから離れたくないから、「行かないでぇぇ〜!!」と、小さく叫んでお姉さんを止めてしまった。

 

「っ……か、可愛いっ……ち、違う違う……リーシャンちゃん、今はアタシしかあの人を"お説教"出来ないの、だから……ね?今はお兄さんのところにいてくれる?」

 

 お姉さんが笑顔で、あやすように私の頭をポンポンと撫でる。

しかし、荒くれ者は待ってくれたりはしない。お姉さんが犬族の人に背を向けていると、あの人は、魔道銃の照準をお姉さんに向け始めた。

 

「あ、危ないっ……!」

 

 私がお姉さんを守ろうと身を屈めさせようとした瞬間、大柄な犬族の悪い人の右手首と、左腕が一瞬で斬り落とされた。私の目では、剣筋も何も、全く捉えられなかった。誰かが、一閃で二回斬ったのだ。

 

「え、ぇ……!?」

 

 いきなりもっと怖い瞬間を見てしまった私は、目を瞑ることも忘れて、驚きから逆に目を見開いてしまった。

 

「……グラディロンね……。相変わらず、やる事が意味不明だわ」

「グラディロン……?」

 

 お姉さんが私を抱き枕のように胸の前で抱きかかえると、グラディロンについて説明してくれた。

 

「王都の警備騎士団、それの団長よ」

「ふぅん……」

 

 お姉さんに抱きかかえられて、ついに私は、グラディロン団長を直接見ることができた。

 

 背丈はお姉さんよりも二回りは大きくて、顎までのサラサラな白髪と、特別に黒色に塗装された騎士団の鎧と、黒色のマントを風に靡かせていた。団長の水色の瞳は、私達猫族のように、縦に瞳孔が開いて、冷酷さを溢れさせていた。魔族らしい立派な黒色の角が頭の両脇にあり、黒色の大きな翼も左右でしっかり生えている。

 

 見た目からすると、たぶん、魔族と人間族、さらに猫族のクォーターかもしれない。

 

「……フッ……王都は常に騒がしいな。まるで、俺の執務室に舞い込んでくる大量の書類のようだ」

 

 私の耳で捉えた団長の声は、低さと艶めかさを兼ね備えた、惚れ惚れしてしまうようなカッコいい声だった。

 

 犬族の男は、他の騎士団の兵士達に何処かに運ばれていった。斬り落とされた右手首と左肩も、あとで忘れられていたかのように回収されていった。

 

 ゆっくりと、重厚さを醸し出しながら歩いてくるグラディロン団長の手に持つ刀は……普通の刀の二倍は刀身が長いように見えた。いや、明らかに実際に二倍長い。

 

 お姉さんのお家に飾られていた刀もすっごい名刀らしいけど、グラディロン団長の刀は、きっともっとすごい名刀なのかもしれない。

 




今回の第十七話から、投稿時間を【午前7時30分】に変更してみようと思います!
朝の通勤や通学、ちょっとしたスキマ時間のお供に読みに来ていただけたら嬉しいです。今後ともよろしくお願いします!
これまで通り、不定期更新です!


【6月7日追記】

キャラクタープチステータス:

  ⑦グラディロン
   年齢:28歳
   身長:222センチ
   種族:魔族と人間族、猫族のクォーター(推定寿命は1000年前後)
   好み:甘党
   好きな人:不明
   
   グラディロンの刀:
   刀の刃渡り:200センチ
   刀の全長:240センチ
   
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