グラディロン団長が、長い刀の刃先を逆手持ちで上に向けて、ゆったりとした動作で近づいてきた。
「……ところで、そこの猫族のお嬢さんは、なぜそんな……フリフリとした服を着ているのか、聞いても良いか?最近では見なくなった趣味だが、よほど、君のご主人様のセンスが良いのが分かるな。やはり、獣族……ひいてはハーフは、人間族や魔族から見れば……人ではなく、"可愛い生き物"というわけだ。俺も猫族の血を引く者だ。……ハーフの扱いは……今までかなり見てきた」
団長が「フッ……」と笑いながらそう聞くと、お姉さんは私の両脇を掴み、団長の方に誇るように……と、同時に、少し怒るようにつき出した。なんで怒ってるのかな?……私はよくわかんないけど、グラディロンさんは、ただ褒めてるだけに見えるのに……。
「……っ……皮肉のつもりかしら……?……メイド服よ、メイド服!……最近でも見るでしょう!?……なにか悪い……?アタシのは、貴方が想像しているような支配欲なんかじゃないわよ……ただ、リーシャンちゃんは世界一可愛くて、崇高だから着せたのよ!……背丈にばかり偏って、栄養が頭に回ってないんじゃないかしら?」
お姉さんがそう言うと、団長は私の方を一瞥してから、「む……」と、納得したように息を漏らした。
「……良いとも。『猫族だから』と尊厳を無視していないのなら。……その子が幸せなら、俺が立ち入る領域じゃない」
なんでか分からないけど、2人の間の空気がピリピリしていたのが、また良くなった。仲良しが一番だから、私としては、何の文句もなし!
団長が飛行艇に乗る人たちの列から離れていこうとした時、曲がり角から、また誰かが来たみたい。
「だ、団長はっ……!?一閃二斬は!?あれは使ったのかっ!?」
たぶんだけど、人間族の人だ。黒色の髪を後ろに流して、瞳は私と同じ水色で、人間族にしては、かなり綺麗な瞳だ。紫っぽいニットのセーターを着込んでいるけど、それ越しでも鍛えてるのが分かる。けっこう強そうな人だ。
「団長!俺はカートス!どうか俺に、一閃二斬を見せてくれ!それが見たくて騎士団に入ったのに!一回も見てないんだっ……!」
男の人は、どうやらグラディロン団長が大好きみたい。グラディロン団長の背があまりにも高いから、小さく見えるけど、それでも団長の胸元位に頭があるから……えっと…………
私は、よく理解していない算術を頑張って扱おうとして、ちっちゃな指を握ったり離したりして、グーパーして計算しようとした。
どのくらい……かな……?…………んと……とりあえず、私よりは高い!
(……一閃二斬って、やっぱり、さっきのズババッ!てやつかな……?……血がたくさん出て怖いし、そんなに良いものじゃないのに……変な人……)
団長は、カートスさんを見下ろしたあと、「……行くぞ。お前には外壁の警備任務が与えられていた筈だろう」と言い、背を向けてゆったりどこかに歩き始めた。
「ちょ、待ってくれよグラディロン団長!」
カートスさんも、ぴょんぴょん跳ねるような軽快な動きで、団長のあとを追いかけて、私の位置からは見えなくなった。
「……あの子……年齢は分からないけれど……なかなかに頭が飛んでそうな子ね……。うちのリーシャンちゃんの方が、やっぱり最高の子猫ちゃんね!」
お姉さんは、私を抱きかかえたまま、頭をよしよしと撫でてくれる。嬉しいけど、今はやらないで欲しい。あったかくて……すぐに寝ちゃう……から……