お姉さんのお膝に暖められながら、私は魔道飛行艇の中を見回した。外観と同じように、中も鉄っぽい無機質な内装で、ちょっとは可愛くしないのかと思ったけど、たぶん、大人が乗るような凄い飛行艇なのかもしれない。……それなら、こんなに無機質な見た目でも、おかしくはないのかな?
他の人達も、飛行艇の中に沢山集まってきた。さっきの荷物検査の列に並んでいた人のはずなんだけど、ここにくると、みんながさっきより大人びて見えてくる。幼いのは、どうやら私だけみたい。……そう思うと、ちゃんとしないとって思って、すこし緊張してきた。
だんだんと、席が全部埋まっていく……なんてことはなくて、飛行艇も大きいし、実は席が普通に空いていたりする。
「……お姉さん、これっていつ飛ぶの?」
「そうね……この飛行艇は……あとちょっとね!」
「……ちょっとって何……?」
「リーシャンちゃんがお姉さんに夢中になっている間に、あっという間にひとっ飛びってことよ!」
お姉さんは、たまに何を言ってるのか分かんなくなる。
でもコレは、たぶん……私が理解できてないだけなんだよね?
路地裏に住んでた私と、貴族のお姉さんとじゃ、やっぱりどうしても、頭の出来で話が通じないこともあるのかも……。
そう思うと、出発前だっていうのに、なんだか悲しくなってきた。
「……あら?」
私がちょっと俯くと、お姉さんはいきなり、私の両腕を掴んで上に持ち上げ始めた。
いきなりプカプカ浮かんだ感じになってビックリしたけど、空に浮いてゆらゆらしてると、なんだか楽しくなってきた。
私は魔法とかも上手くないから、自分の力で浮くなんてことできなかった。だから、なんというか……新鮮……ていうのかな?
「ほ〜らほらっ!何を悩んでいても、下にはアタシの脚しかないわよ?……そんなのを見るよりも、前を向いて、横も見て、13歳の今からもっと!広い世界を見ていけばいいのよ!……いい?貴方はもう、路地裏の少女じゃなくて、アタシの可愛いリーシャンなんだから!」
……私が馬鹿みたい。お姉さんの前で、スラムの出身だとか、教養がどうとか考えるのなんて、世界一無駄な時間だったんだ!
「お姉さん……!私はまたひとつ賢くなったよ!お姉さんのことなんて、何も気にせず話せばいいんだね!」
私がそう言うと、お姉さんはちょっとだけ動きを止めて、すぐに口を開いた。
「……り、リーシャンちゃん。……『お姉さんのことなんて気にせず』じゃなくて、『お姉さんと話すときは、なにも不安なんて感じる必要はないんだ』って言いたかったのよね?……えっと……そ、そうなのよね?」
お姉さんの反応が、なんか変な感じがする。
……今、気づいた…………たぶんコレは、私の言い方が悪いんだ……。お母さんかお父さんに、何が悪かったのか聞きたいけど、あいにく、私の両親は奴隷として売られたから、どこにいっちゃったのか分からない。
だから、自分で考えるしかない。
(そういえば……前にフォルスさんの料理を食べた時に……私は『食べられないわけじゃないから!』て言って……その時も……フォルスさんは3秒くらい固まってた……。そして今は……お姉さんも……!!どっちも、私が喋ったあとに空気が凍ってる……!!)
「……ふふっ……その顔、無自覚さんなのね?なら問題無しだわ!!今から出発だけれど、お家に帰ったら、リーシャンちゃんは文字の前に、相手を不必要に傷つけないように、『正しい会話』のお勉強会を開かないといけないわね!」
お姉さんは私の頬をツンと突いてヘコませたあと、私を抱き枕みたいに優しく抱きしめて、硬い椅子に深く座り直した。飛行艇が飛ぶまでは、あとちょっと。