私がお姉さんの上に座らされたまま待っていると、お姉さんの言った通り、本当にちょっと経ったら飛行艇が飛ぶ準備をし始めた。
魔道エンジンの音がもっと強くなって、いよいよお空に行けるんだという実感が湧いてきた。
路地裏に住んでた頃は、たまに飛んでるのを見るくらいで、絶対に乗る機会なんてなかった魔道飛行艇……それがいまや、実際に乗れてしまって……ワクワクする。
……いや、私が奴隷として売られていたら、もしかしたら乗る機会もあったかもしれないけど、そんな乗り方はぜったいに嫌だ。
「……リーシャンちゃん?ほら、窓の外を見るのよ!……まだ飛んではいないけれど、それでも、王都バイトコルを外から見るのは初めてじゃないかしら?」
お姉さんは、私の身体を直接窓側に向け、外を見せてきた。…………壁だ。どこをどう見ても、まだ飛んでいないのだから、バイトコルの城壁しか見えない。……さっき見たときも壁だけだったんだから、今見ても変わるわけがないのに……。
でもまぁ、きっと、こういう事もあるからこそ、お姉さんと乗るからこそ、楽しいんだと思う。
お姉さんの言動に、内心ツッコんでいると、急に魔道飛行艇が発進して、空中に浮かび始めた。
(……あ、予告とかないんだ……こういうのって……)
ズーンと、重い力が私の身体にかかった感じがする。飛ぶ時って、こんな感覚になるんだってことも、新しく学んだ!
「ほら見て?……リーシャンちゃん!今度こそお空よ!!」
さっき壁を見せられたばかりだから、あんまり期待してないけど、言われた通り、窓の外を見てみた。
違った。
外の世界は、私の期待なんてあっという間に超えて、綺麗で明るくて、スラムなんかよりずっと透き通ったものだった
バイトコルの建物がズラリと並んで、それを囲うようにロの字で造られた、くすんだ白色のレンガの城壁。
その先には、風になびいて揺れる大きな樹木の葉っぱとか、太陽の光を反射して白い光沢を私の目に焼き付けてくる澄んだ川。
山もあるし、森も、その先の地平線だって見える。
「……ぁ……」
あまりの壮大さに、思わず声が漏れちゃった。
それともう一つ、気づいちゃったこともある。
(バイトコル……スラムの部分がすごい汚い……他は栄えてるのに、あそこだけ地下みたい……)
前は私が住んでいたところだから、あまり悪くは言いたくないけど、それでも今は、綺麗な景色だけを見ていたかったのに!
「……地下みたい……」
私がそう呟くと、お姉さんは私のほっぺをぐにっと掴んで、もちもちしてきた。
「……スラムのことね?えぇ、でもリーシャンちゃんは、そんな地下から出てきた最高の掘り出し物なのよ!」
「……掘り出し物……ってなに?……私、鉱石じゃないよ?」
「えっと……宝物のことよ!!そう、まさにリーシャンちゃんのためにあるような言葉ね!」
お姉さんは、私をメイド服越しに優しく撫でたあと、首につけた、青色の宝石付きのネックレスを握った。
そういえば、このネックレスって、フォルスさんが『ただの魔法具ですが……?』って言ってたよね……。お姉さんに貰った時は気にならなかったけど、最近は、いろんなことに興味を持てる余裕が出てきた。
このネックレスは……どんな効果があるのかな?