私達を乗せた魔道飛行艇も、飛行が安定してきて、揺れることも少なくなってきた。
私は、お姉さんのお膝の上に乗せられたまま、首にかけていたネックレスを外し、窓に当ててみた。
今の高さは、雲の上。青色の宝石は、空の青色と同化して、眩しいほどの輝きを放っていた。
指で捻って、クルクルと宝石を回転させると、光の反射の仕方も変わって、ちょっとした遊び道具みたいになる。
窓の外を見ると、一面真っ白。雪の大陸なんて、実際に見たことはないけれど、本当にそのくらい、雲の上は広大な雪景色みたいだった。
「……」
身を乗り出して、窓の方に顔を近づけると、窓に反射して後ろが薄っすら見える。
……お姉さんも、私と一緒に窓の外を見てる。やっぱり、お姉さんもこういう綺麗な景色は好きなんだね。
「ふふっ……可愛いわね……」
お姉さんがふいに、思わずと言った感じで呟いた。私の後頭部に、お姉さんのあったかい息が少し掠めた。
(……可愛い?……鳥でもいたのかな?)
「お姉さん、鳥さんはどこ?」
私が振り返り、お姉さんの頭を見上げながら聞くと、突然お姉さんが仰け反り始めた。……背中、痛くないのかな……?
「はぅ……!は、破壊力がっ……!メイド服でやられたら死人が出るわよ……!」
「えっ……し、しにん……?……死人……!?」
私が慌てて周りを見渡すと、お姉さんが背中を優しく擦って、また話し始めた。
「……ち、違うわ、"詩人"よ!……し・じ・ん!……リーシャンちゃんの可愛さを見て、詩にしちゃう人が出てくるかもしれないわね〜?」
「な、なんだぁ、びっくりした……っ」
ふぅ……と、安心の溜息をつき、落ち着いて窓の方に姿勢を戻した。
窓の外は、いつまで経っても雪景色。これもとっても綺麗だけれど、雲だらけで、ちっとも下の景色が見えないのは、ちょっと不満かも。
私がほっぺをぐっと窓に押し当てていると、コツコツと、飛行艇の鉄の床を歩く音が聞こえてきた。
「……違う、……違う……」
その呟きは、どこかで聞いたような声だった。そう、まるで……さっきの列にいたエルフかハーフエルフかのお兄さんのような、低めの感じ……。
呟きが止まり、静かになったからふいに振り向いてみると、やっぱり、そこにはさっきのエルフかハーフエルフかのお兄さんが直立不動で立っていた。
「……お前は、魔族だな?」
お兄さんが口を開き、お姉さんに突然質問し始めた。……魔族かどうかなんて、角を見れば分かるのに。
「……突然だが、俺の名前はグラジア。……グラジア・シメトリーだ……。ある男を探しているのだが……情報提供を頼もうか……」
グラジアさん……。いったい、だれを探しているのかな?
「えと……貴方は、エルフ?……それとも、ハーフ?」
私がそう聞くと、グラジアさんは耳をピクつかせながら、意外にも優しく答えてくれた。
「……ハーフだ。お嬢ちゃん、君はなかなか話が通じるようだな。それは良いことだ。……まともな会話が出来るというのは、とても大切なことだからな」
「……それで?アタシが魔族なことと、その『ある男』にどんな関係があるのよ?」
「あぁ、あるとも。……魔族は数が少ない。手当たり次第に魔族に話しかければ、いつかはその男の血縁に出会える。そこからその男の元に向かえば良い……」
(……手当たり次第……!?……ま、まさか……根性で特定する気なの……!?)
私のグラジアさんへの印象は「優しくてどこか不思議な人」から「根性派の人探しハーフエルフさん」に変わったのだった。
キャラクタープチステータス:
⑩グラジア
年齢:不明
身長:176センチ
種族:ハーフエルフ
好み:魚料理
好きな人:不明