お姉さんのお膝の上に捕まってから、そろそろ30分くらい?
目の前にいるハーフエルフの男の人……グラジアさんは、どうやら誰かを探しているらしい。……でも、その方法がまさか、魔族全員に話しかけて、その人に関係ある人を探し当てるだなんて……私でさえ、その方法が無謀なことくらい理解できるのに。
「……というわけだ、まずは君に話を聞こう」
グラジアさんがお姉さんに向かって、低くありつつも、気さくそうな声で質問をし始めた。お姉さんにこんなに強気な人、初めて見たかも…………。
いや、そういえば……荷物検査のお兄さんも、こんな感じ……あ、そういえば、グラディロン団長も……。
「……はいはい、アタシとリーシャンちゃんとの大切な時間を邪魔しないでちょうだい?……いいから、早く席に座りなさいよ。飛行艇でいつまでもウロチョロしてる人は初めて見たわよ……危ないし、リーシャンちゃんの教育にも悪影響だわ!」
「ふむ……」
グラジアさんは溜息をついたあと、私とお姉さんが一つの席に一緒に座ってるところの、一つ隣に座り始めた。
「……貴方いったい……何してるのかしら……?」
「……何を疑問に思う。……俺は、お前に言われた通り、席に座ったまでだ。……そして、お前が質問に答えてくれるまで座り続けるだけだ」
グラジアさんがそう言うと、お姉さんがより一層呆れたような顔を見せ始めた。あんまり見たことがない顔だから、なんか新鮮だ。
「はぁぁ……?そうじゃないでしょう!?アタシは、『リーシャンちゃんから離れた遠くの席に座りなさい』って意味で言ったのよ!!」
「そうならそうと言えばいい。さぁ、まず最初の質問だ……」
グラジアさんが自分の会話のペースを押し付けながら、懐から何か……紙?……みたいなものを取り出して、広げて私たちに見せてきた。その紙にはなんだか、ハンサムで……えっと、凛々しい?魔族の男の人の似顔絵が書かれていた。ちょっとだけ皺があるから、お姉さんよりも年上な感じがする。
「……これだ……。名前はアルコ・テンダーネス。……貴族の魔族だ。……もともと、大きな屋敷に住んでいたのだが……どうやら引っ越ししたようでな。……今では居場所が分からないんだ。……屋敷は……使用人が窓から数人見れる程度のもぬけの殻だった」
「……使用人がいるならもぬけの殻じゃないし……貴方、その名前……アタシのおち……」
お姉さんは、何故か急に口を閉じ始めた。なにか言いたくなかったこととかあったのかな?
「……アタシの?……なんだ。言ってみろ」
「……アタシの恩師に名前が似てたのよ。……たしか……えっと、アルト・ヘンダーソン……もしくは、ヘンドリクソン?……ヘルソン?……だったかしらね?」
(おち……?恩師じゃなくて、『おち』って言ってたよね?……何のことだろう……『おうち』?……お姉さんのお家?……今の家じゃなくて、お姉さんのお父さんとお母さんがいるお家のことかな?)
「…………この阿呆が、あの男の血縁な訳がないな。顔つきは似ているような気がするが……邪魔したな」
お姉さんがなにかやっちゃったのかと思えば、こんどはグラジアさんが、諦めたように席を離れてどこかに行っちゃった。
「……阿呆……?……阿呆って言われた……!?……アタシが……っ!?」
お姉さんがプルプルと震えて、顔がちょっとだけ赤くなってる。
ひぇぇ……怒りんぼお姉さんだ……。久しぶりに見たかも……。たぶん、私が路地裏でお姉さんに拾われたとき以来かな……?
あの時は、私を捕まえて売ろうとしてた男の人が、真っ二つに……!今度はグラジアさんが死んじゃう……!?