いま私は、すっごく怒っている。
ハーフエルフのお兄さん……グラジアさんにっ……!
「…………」
グラジアさんがお姉さんに「阿呆」なんて言ったから、お姉さんが怒って私を離してくれない。心なしか、お姉さんの顔がムスッてしてる気がする。
私のほっぺと、お姉さん自身のほっぺを合わせてスリスリしてくるから、お互いの目に映る自分が見れるくらいには、距離がすごく近い。
……あれ?
……コレ……良いことかも……。
今のはなし!!グラジアさんは、すっごく良い人だった。きっと、私とお姉さんの仲を深めるためにやってくれたんだ。そうに違いない。
でも、グラジアさんはまだまだだね。私とお姉さんは、もうすっごく仲良しなんだもん!
いつ頃、『魔条』に着くのかななんて考えて、ふと窓の外を見ると、さっきは下に真っ白なふわふわ雲景色が広がってたのが、今はそのふわふわの中にいるみたいな景色だった。
変なくらいにぜんぜん揺れないから、飛行艇の高さが下がったのに気づかなかった。普通、こんなに揺れないものなのかな……?
……意識してみると、なんだか、高さが下がるときに、お姉さんのぎゅーが、一瞬だけ強くなってる気がする。……私を持ち上げてるみたいな……気のせいかな……?
「……リーシャンちゃん、そろそろ着くけれど……このままアタシの精神安定剤になっていてちょうだいっ!」
「……う、うん……!今は私がシーアルさんだよ!」
(屋敷だと、お姉さんがお家を……かい……かいじ……灰燼!……灰燼に帰さないように、シーアルさんがお薬でお姉さんをぐっすりしてた!だから、今は私が代わりを務めないと!)
もし怒ったお姉さんに、魔道飛行艇を沈められたら死んじゃ…………いや、お姉さんならそれでもなんとか……てっ、いやいや……そもそも沈められないように……!
「よしよし……良い子〜良い子……お姉さんは良い子!」
「はっ……う……っ」
窓から入り込む光がちょっと眩しくて、片目を閉じて微笑みかけたら、お姉さんがまた仰け反り始めた。……なんかの病気なのかな……?ま、まさか……!シーアルさんがいつもはお薬で治してたけど、今は居ないから悪化しちゃった……!?
「お、お姉さん!お姉さんっ!死んじゃだめ!!」
焦ってお姉さんの胸元に抱きついたら、いつも通り温かくて、ちょっと安心できた。
「や、やめっ……もうこれ以上は過剰摂取でっ……!アタシが倒れるわよ……!」
お姉さんが呼吸を整えると、最後にふぅと溜め息をつき、真剣……いや、ちょっとやわらかい顔で口を開き始めた。
「いい?リーシャンちゃん。……お仕事中は……特に、会議中は……っ!絶対にやらないでね?……アタシの膝に座ってれば良いから!……ね?」
お姉さんは決して怒ってはない……けど、ふざけてもなさそう?
そもそも、私はさっきからもう座ってるだけで、何もしてないけど……。