お姉さんが盛大に階段で転んだ後、グラジアさんがお姉さんをまた怒らせて……いまは、お姉さんがグラジアさんの服を掴んで引き寄せてる。
魔条の土地の風がヒュオーッと吹いて、冷たい空気を私たちに届けるとともに、お姉さんとグラジアさんの服を靡かせて走り去っていった。
「貴方ねぇっ……!なんで階段が濡れてるのよ!!しかも……しかも、リーシャンちゃんの前で盛大にぃっ……!!」
「……俺にあたるな。……そうして喚くほうが、その娘に悪い印象を与えると思うが……?」
グラジアさんが、すっごくまっとうなことを言ったあと、お姉さんが、プルプルと震えてから動かなくなった。
「……お姉さん?……私、何しててもお姉さんのこと、嫌いにならないよ?」
「リーシャンちゃん……!?あぁ……!なんて素敵な子なのかしら〜!!そう、そうよね!リーシャンちゃんがアタシを嫌うわけないわよね!」
お姉さんはとっても怖い鬼の形相から女神みたいな優しい顔つきに戻り、私を大切に、しかし力強く抱きしめてきた。
飛行場の検査とかがあると思ってたのだけど、どうやら、到着した時にはそういうのはないらしくて、ちょっとびっくり。ばいばい、飛行艇さん!
飛行場をあとに、お姉さんに手を引かれてテクテク歩いていくと、ちょっと遠くに、すっごく広い森が見えてきた。
飛行艇の窓から見たときは気づかなかったけど、この辺りは、ものすっごく木がたくさん生えている。私が一人で入ったら、3秒で迷いそう。
「さぁ、こっちにアタシが手配した馬車がいるはずだから、またちょっとの間、移動の時間よ!」
風が吹くたびに、木が揺れたり、葉っぱがザーザー鳴いたりして少しうるさい。バイトコルの緑の草木とは違って、灰青の森は新鮮だから、ちょっとは我慢して景色を楽しむ。
少しだけ、開けた場所に出た。目の前には、お姉さんの言った通り、暗い色の木で作られた馬車。お馬さんが二匹いて、魔族のお兄さんが干草を与えてる。
「……お嬢様ですね。……こちらへどうぞ」
「えぇ、屋敷までお願いするわ。最高級の乗り心地を要求するわよ!」
「……容易いことです」
すごい……!トゥルさんに似てるような、「デキる執事さん」と同じ雰囲気を感じる!カッコいい!!
話しかけようかとも思ったけど、ちょっと緊張するから、やーめた!
私は、魔族の身長に合わせて作られた馬車には上手く乗れなかったから、お姉さんにひょいと抱えられて、上に乗ることができた。
「さぁリーシャンちゃん、アタシのお膝に乗るかしら?」
「聞くまでも……いや、愚問だよ!」
「ふふっ……覚えた言葉を使おうとするの、最高に可愛いし、偉いわね!お膝の上にいらっしゃい!」
「やっふーっ!」
こうやって、誰かにもう一度……いや、何回も甘えられる環境がやってくるなんて、路地裏で暮らしてた一月前くらいの私には、寝る前に想像することしかできなかったなぁ……。