ヴァロストロさんのお話をしっかりと聞いて、廊下に駆け出して、今はどのくらいかな?時計がないし数えてもなかったから、よく分からないけど、たぶん数分後。
「小娘ぇぇ!!まさか、このオレに迷子探しをさせるとはなっ!!」
お屋敷の廊下を歩き回っていると、古臭い木製の扉が目に入った。他の部屋の扉は、だいたいでっかくて重いけど、この扉は簡単に開けれそうで、色もくすんでるし、私のパンチでボーン!てなりそう。……まぁ、鍵穴はついてるから流石に頑丈でしょ!
どうしようかな~?
開けちゃおうかな……?
ヴァロストロさんが追いかけてきてるけど、声は遠くからするし、たぶんまだ見つからないはず。
「オレの庇護下に戻れ小娘!貴様は王にはなれんが、いま姿を現せば、オレの家臣にはしてやろう!」
……いや、ヴァロストロさんの声が近くなってきた。もう考えなくていいよね……よし、入っちゃえ!鍵がかかってませんように!
————バキッ……
……あ……ど、ドアノブが壊れちゃった…
まぁいいか、これでいつでも出入りできるしね……うん、うん……そういうことにしとこう!
私は急いで扉を押して部屋に入った。……中は埃だらけで、扉に見合ったくらいの、妥当な汚さだった。スラムよりは綺麗だけどね?
「おじゃまします……」
タンスと、机。……えっと、ドレッサーっていうんだっけ?鏡のついてるあれがある。あと、お姉さんのお家にもあった姿見がここにもある。……これ、誰かのお部屋っていうよりは、たぶん空き部屋を物置にした感じだ。
手始めに3段あるタンスの一番下を開けてみようとしたら、いきなりクモが出てきてすごくビックリした。
「……っ!?く、クモだった……」
スラムで暮らしてたときは、食べようか迷ったけど、結局食べなかったクモだ。手で叩こうかと思ったけど、もしスラムにいた時に私の運が悪くて、普通の食べ物に何日もありつけていなかったら、虫を食べる生活をしてたかもしれないと思うと、無駄にやっつけたり出来なかった。……非常食ってやつだ。
「ばいばい……もう出ないでね……っ!…………緊急時以外には!」
ふぅ……と息を吐き、気を取り直して物色を始める。まず、クモが出てきたところをもっと探ると、いたって普通の布が出てきた。
触ってみると、質は良いものっぽい。けど流石に、この汚い部屋に放置されてただけあってザラつきはしている。さっきのクモ以外にも虫がいるんだろう。なんか食べられてる跡がある。
次は二段目、こんどは何があるかな……?
……なんにもない。……つまんないの〜……。
今度こそと、期待を胸に、私は一番上の段の取っ手に手をかけた。