ゴクリッ……と喉を鳴らして、タンスの一番上の段をゆっくり、慎重に開く。
室内だから風なんて吹いてないはずだけど、少しだけ空気の流れが変わった気がした。
「……紙?」
タンスの引き出しの中にあったのは、紙。……いや、紙というか、羊皮紙。けっこう古いやつだ。文字はちょっと掠れてるところもある。……そもそも私が読めないところも。だけど、まぁ……文字がずっしり並んでるのは分かる。
とりあえず、読めそうなところは読んでみよう。読めたらお姉さんかヴァロストロさんに褒めてもらえるかもしれないし……ヘヘ……。
『園歴7126年、王都バイトコルに、新たな貴族。その貴族はまさかの――であった!?』
今はたしか、園歴7356年。……それは分かるんだけど……うーん、この文字、分かんない……。まさか、の次はなんなの?気になるのに、書いてあるのに読めない……っ!
『先日、王都バイトコルに突然、新しく貴族階級になった――がいる。』
……ここは掠れてる。……いや、私が勉強不足で読めないわけじゃない。……ほんとうに掠れてる。……貴族になった誰か……。……まぁ、たぶん男とか、女とか、人間族とか、魔族とか……そういうことかな?
『彼――の名前はヴァロティア。近国の戦争により混乱が――中、いったい、バイトコルの情勢はここからどうなるか……。来週の大陸新聞も、お―――に!』
……ヴァロティア……。なんか聞いたことある気がするけど、気のせいかなぁ……?見た感じは、戦争があった時の新聞みたい。
バイトコルの新聞が、なんで魔条のここにあるんだろう?……お姉さんは、250歳で、10歳のときには既にこのお屋敷は出てた筈だから……たぶんヴァロストロさんか、お姉さんのお父さんかお母さんが買った新聞なんだろうけど……。うーん……?
「……おい小娘!ようやく見つけだぞ!オレの手を煩わせるとは、余程、己の身の丈を分かっておらんと見える。」
「いっ…!?な、なんで場所がバレて……!?」
「バカもの!王は部下の位置程度、即座に把握できねばならんのだ!」
「そ、そういうものなの……?」
ヴァロストロさんが、怒ってそうで怒ってないような、絶妙に目を鋭くした表情をして私を抱きかかえた。……デッカイぬいぐるみみたいに抱くのは辞めてほしい。サイズ差のせいで、ほんとうにそう見えるから。…………私だって、私だって数年後にはデッカくなるんだからっ……!
「さて小娘。貴様の独自の『ペースにのせられない方法』は中々に肝が据わっていて、見ていてもはや清々しい。やはり、オレと同じように、上に立つものの器だ!ハッハハッハ!追加講習だぞ!喜べ小娘!」
ハッハハッハと笑いながら、ヴァロストロさんが私を両手で高く上げる。……これが、高身長の視界……。……これだけ高かったら、お姉さんのことも上から見れたりするのかな……?
……あれ?そういえば…………
「あ、さっきの新聞紙……おいてきちゃった……。」
私の小さな呟きは、ハッハハッハと笑うヴァロストロさんの声に掻き消された。