ヴァロストロさんのマナー講習を完璧にこなした私の礼儀作法はもうとっても最強……!
どこに行っても、誰と話しても無礼なんて与えないはず!
ヴァロストロさんは私と一緒に寝るときに、『明日こそ、オレの姉の審判の日である!ハッハハッハハッハ!!』って言ってたから、つまりは……今日のどこかで大切なお話が始まる!
今日はちょっと早く起きたから、外はまだ暗い青色。ヴァロストロさんは物凄く綺麗な姿勢で寝ていたから、とりあえず起こさないでおいた。
……あと、起こしたら叫び始めて、お姉さんが起きるかもしれないし……。それは許せない。起こすのは私だ。
ギギッ……ギギッ……ダッダッダッ……っと、廊下を走り回るとたまに木の軋む音が鳴って面白い。
私が屋敷に来てから最初に目が覚めたおっきなお部屋に、お姉さんがいると思って全力でダッシュし続けた。
扉をバァンッと開けて、お姉さんの胸元へとダイブ!
「いやっふーっ!」
「へぶっ!?」
んふふっ……あったか~い……。
お姉さんは魔族だからか、はたまたおっきいからか……体温がすっごい高い。たぶん私3人分はある。
「り、リーシャンちゃん……?こんな朝からなにを……?」
困惑しながらも、お姉さんは優しく抱き返してくれる。
その場の気分で突撃したけど、それでもいっつも優しい人だ。
「お姉さん、だいすきぃ……」
「へっ……!?」
……そんなお姉さんも、魔条で大事なお話に呼ばれるくらいにはすごい人で……って、あれ?お姉さんまた寝てる!?
「…………朝からお元気ねぇ、リーシャンちゃん?……ふぁぁ……」
お姉さんの欠伸で、私の前髪がさらりと揺れた。生温い風と一緒に、魔族特有の、変に甘ったるい香りが私の鼻腔を刺激した。良い香りではないけど……いやな匂いでもないと思う。
お姉さんはまだ寝ぼけ眼で、ググッと伸びをし始めた。
思えば、お姉さんより早く起きたことって…………いや、あったか。2回くらい、紙の聖剣で奇襲したことがあったのを思い出した。
「さて、リーシャンちゃんに起こしてもらえたことだし、準備しないといけないわね……。リーシャンちゃんは、もちろんそのままメイド服でね!」
「分かった!ローブも持っていくね!」
「もちろんいい……っ……いやでも丁重な場だし……まぁ、そうよね……ローブはリーシャンちゃんの大切なものよね……」
あれ、なんかお姉さんの反応が悪い……?ローブって、持っていっちゃダメなのかな……。
私は、「なんでローブは持っていっちゃいけないのか」を、うーんと頭を抱えて頑張って考えた。
かさばるから?
荷物が重くなるから?
私にローブは似合わないから……?……いや、それはないか。
「ん〜っ!もう!そのかわいい顔は反則よ反則!……そうよ、良いことを思いついたわ!リーシャンちゃん、ローブの上からメイド服を着ましょう!」
……はっ……!とさせられた。たしかに、わざわざ手で持ってたら疲れちゃうもんね。そうだよ、中に着ればいいんだ!
「お、お姉さんっ……天才……なの!?」
私は早速、メイド服を脱いで大切なローブを着始めたのであった。お姉さんが提案したんだから、きっととってもお洒落になるはず!